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9月になっても、依然として気温の高い日が続いており、駐車中の車内の暑さには注意が必要です。日差しを遮るのにもっとも手軽なのは「サンシェード」ですが、気を付けたい点もあります。車の専門家である筆者が解説します。※画像:PIXTA
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これを食べなきゃ人生ソンだよ
2025.9.5
行列してでも一年中食べたい 東京チャーハンのベスト5はこれだ!
日本独自の和風中国料理として発達した町中華屋のチャーハン
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今回は誰もが好きなチャーハン ベスト5だぜ。
「萬来園」、「鼎泰豐」、「一寸亭」、「中華 兆徳」、「中国名菜処 悟空」の5軒を紹介する。
チャーハンは、具材も五目にエビやらカニやらと様々で、トロミのついた炒め物がかかったメニューもあるが、筆者はシンプルな単体で米料理として食べるのが好きだな。対象とするのは高級店のものではない。それを含めたら、「KOBAYASHI」とか「家全七福」とか、技術を究めた炒飯が頂点に来るに決まっている。
今回対象にしたのは、それとは別種の、日本独自の和風中国料理として発達した町中華屋、そのチャーハンである(この範疇ではないのも1店入っている)。チャーハンは「パラパラ系」と「しっとり系」に大別される。前者は中華鍋を激しく振り、米は火柱の上にかざされて空中を舞い、余分な油分が飛ぶ。後者は攪拌されて空中を少し舞うぐらい。油分は適度に残りしっとりとなる。
本編に移る前に申し述べておきたいことがある。
例えば、東京のチャーハンベストで必ず挙げられる某店がその一例だ。満席の連続で全員がチャーハンをオーダーするのに、たったの30秒で出てくる。選者たちが絶賛してやまないこのチャーハンは、予め大量に作り置きし、ジャーに入れて保温したものだ。油っ気は抜け落ち、まるで炊き込みご飯になっちまっている。「パラパラ系」ならぬ「パサパサ系」なのだ。
こういうのはチャーハンじゃあないよ。出来立ての油の熱を感じさせるものこそがチャーハンなのだと、あたしゃ、言いたい。
この店以外にも、夜に食べてとても良かったのに、注文が立て込むランチではやはり「作り置き+ジャー」の店があった。作り置きは不味い! いくら忙しくとも、その都度、鍋を振ってほしい。そこが旨さの生命線だと思うのだな。
ここが東京一かもしれない
中国料理 萬来園
今回も方々で食べまくったが、最終的にはやっぱりここだよなという結論に落ち着く。
佇まいはカウンターのみの町中華だが、実は半端な店ではない。主人はかつて、フジテレビの「アイアンシェフ」に出演し、「ジョエル ロブション」の須賀洋介シェフに挑んだこともあるほどの腕前だ。昼は1000円前後で、エビチャーハン、五目チャーハン、五目そば、五目焼きそば等が食べられるが、夜は一変して4名以上の貸切り制となり、1人の予算は3万ぐらいらしい。だから本当は本格派の中国料理店なのだろうが、昼のメニューは町中華屋そのものなんだな。
さて、この店が少々厄介なのは、臨時休業がしばしばあることと、開店時間も微妙にズレることだろう。だから、「今日は行くでえ」と意を決してから、念のために電話をかける必要がある。で、「本日は臨時休業です」とか「今日は12時40分からです」と言われる。
全員が調理場にかぶりつきで10席あるが、1巡目で入った場合には、誰もがエビチャーハンを頼む。その同調圧力が凄いために、なかなか他の品目を言い出しにくいところがある。ほかのメニューが食べたいのならば、2巡目、3巡目を狙うのがよかろう。
という私は、1巡目でエビチャーハンを食べ、まだ食べたかったので、一回外に出て30分ほど時間を潰してから再訪し、五目焼きそばを食べた(笑)。アホか。
さて、店は老夫婦と息子の3人構成で回している。実際に鍋を振るのは息子だ。手順は予めちょっと炒めた玉子チャーハンがあって、それを一人前ずつに分けて念入りに炒め直し、味付けを施してから、4尾のエビを加えて完成させる。味付けは塩と白胡椒と化学調味料だけだ。かなりパラパラになるまで炒めるのだが、途中でお湯も少々加えて水分を補う。米一粒一粒への油の染み具合と、焼き焦がしの具合、味のバランスが見事じゃ。出来上がったそれは、高級店のそれではなく町中華風だ。
これは東京一かもしれんと感動する。
目の前で一人前ずつ完成させる「萬来園」のチャーハン
4尾のエビは背ワタを除いて丁寧に油通ししてあるので、エビ臭さなどは微塵もない。むしろ、天ぷらのようにぷりぷりと甘みがあって旨い。なにしろ、目の前で一人前ずつ完成させる手抜きのなさが素晴らしい。分量は一人前でやるのがいちばん旨くできると確信しているんだろうね。最初の10人前を次から次へと炒めていくので、滂沱の汗がしたたり落ちて、脱水症状を起こすんじゃないかと心配になるほどだ。
途中、息子が両親の手際に対して毒づく瞬間があって、ちょっと冷えた空気が漂うのだが、まー、せわしいのですぐ次の場面に通過していく。要は、ちょっとしたハードルを乗り越えても、辿り着くべきチャーハンなのである。慣れた常連は、五目そばの後にエビチャーハンを食べるという理想的な(爆)頼み方をしていた。
ちなみに、五目やきそばは人生最高レベルで旨かった。マジで。
「中華料理 萬来園」の入口
中国料理 萬来園
東京都品川区東大井5-6-8
℡03-3450-5667
月~土:12:30~13:45、17:30~21:30
定休日:水・日
エビチャーハン 1000円
五目チャーハン 850円
五目そば 800円
五目焼きそば 800円
小籠包だけじゃない、玉子チャーハンも食すべき
鼎泰豊 池袋東口店
ここを2番目に出すのはズルかもしれん。日本ではやや高級感が加味されて町中華屋と並ぶような店じゃない。本国の台湾じゃ、あくまでも大衆店のちょい上だ。チャーハンだけを取り出せば、値段はそれほど高いわけでもないから、まーいいでしょ。
「鼎泰豐」は日本に30軒以上あるが、今回の店舗は池袋東口に2025年5月にオープンした日本初の路面店である。もちろん行列店だが、ラストオーダー5分前(20:55)に行ったら、すぐ入れてくれた。
実は筆者はこの6月に台北の店に行ったばかりなのである。常々思ってきたことだが、台北店に較べると東京店の味は確実に絶対的に落ちる。これだけ店舗を増やせば当然のことだ。また、台北の「鼎泰豐」は驚きたまげるほど親切なことで知られているが、池袋東口店も充分に親切な感じがした。ええことや。
飲茶の回でも書いたが、小生は蒸し餃子や焼売には目がないけれども、小籠包というものには余り興味がない。かつて何回か台北店でひと通りの種類を食べたが、旨いとは思うがあまりソソられない。唯一、トリュフ入り小籠包という高額(1個500円ほど)のものには、思わず「うめ~」と呻いた。
さて、私は思うのだが、「鼎泰豐」で食べるべきものは、点心もいいけれども、何と言っても玉子チャーハンもしくはパイクーチャーハンなのである。玉子チャーハンについては、新宿高島屋内に初上陸した時から(この時のこの店が日本ではいちばん良かった)、「こりゃあ、旨えもんだな」とずっと思ってきた。その感想は今でも変わらない。
今回は一人だったので、そんなに多品目はムリ。最初に来たのは、前菜の「茄子の醤油煮」(この品は台北では売り切れになることが多い)。台北に較べると、盛り付けが格段に雑である。茄子の上に肉みそが載っているところが台湾料理っぽい。味は閉店間際なので、茄子に汁がしみすぎだ。前菜の「蒸し鶏ねぎソース」は旨かった。鶏は超柔らかく、ネギと生姜が効いていて、間違いないところだ。
さて、肝心の「玉子チャーハン」である。
具は玉子とネギのみで、味付けは塩と特製調味料だけ。パラパラ系としっとり系の中間で、筆者はこのぐらいのが好きだ。YouTubeで料理長の手順を見ても、ご飯はそれほど宙を舞わない。玉子は結構な大きさで残っている。たぶん、ご飯の投入が遅いからだ。玉子がもっと生の状態でご飯に絡ませた方がより旨くなると私は思う。
とはいえ、チャーハンとしては、多くの町中華屋の上を行く。味は塩も調味料もほのかな感じで非常に上品だ。台湾料理は概して味が濃いのだが、この優しい具合がとてもいい。米粒の旨さがきちんと立っている、立派な米料理だ。ワシワシと夢中で掻き込み続けたくなる。私は途中で酢をかけて味変するのを常としているが、この店の卓上の黒酢はまろやかで、とても良かった。
パラパラ系としっとり系の中間をいく「鼎泰豊」の”玉子チャーハン”
台北では、この玉子チャーハンの上に、タレに付け込んだ豚のスペアリブ(パイクー、排骨)を載せたパイクーチャーハンを食べたが、この揚げたパイクーはめちゃ柔らかくて絶品だった。ちなみに、別の日に池袋東口店で食べてみた。台北店よりも肉の量が少なく、やや硬めで反り返っていた。だが、台北の完成度を知らなければ、これはこれで旨い部類のものだろう。
スペアリブ(パイクー、排骨)を載せた「鼎泰豊」の”排骨チャーハン”
ちなみに最後にやってきた「トリュフ入り桑水流黒豚小籠包」であるが、台北ではあれほど感激したのに、こっちのはそうでもない。皮を縒(よ)った結び目が硬いのと、豚の質が違うのと、トリュフの味が強すぎる。台北では肉にトリュフを細かく練り込んでいたが、東京のは薄切りトリュフが雑に入っていた。同系列店の同じ料理なのに、こうも違うのかと衝撃を受けた。ザンネン。
鼎泰豐 池袋東口店
東京都豊島区南池袋1-23-11
℡03-5924-6911
平日:11:00~15:00 17:00~22:00
土日祝:11:00~22:00
玉子チャーハン 1100円
パイクーチャーハン 1800円
茄子の醤油煮 680円
蒸し鶏ねぎソース 1200円
トリュフ入り桑水流黒豚小籠包(2個)1270円
細切れの叉焼とネギ、細かく刻んだナルトがいい味だしてるよ
一寸亭
千代田線の千駄木駅から徒歩2~3分、「谷中ぎんざ」の真っ只中にある。36度のカンカン照りの下を歩いて、13:15に着いたら甘かった。なんと行列ができていて、店内に2人、炎天下に5人がいて小生は8番目だった。汗がだらだら出てくる。
中を覗いた客の一人が叫ぶ。「なんだよー、真ッ昼間から宴会やってるのが、テーブル席に2組もいるよ。あいつらが独占して動かないんじゃん」。そういうのは別の大箱店でやってもらいたいもんじゃのお(涙)。
ここの店主は、かつては数十種類の品目を作っていたが、いまは寄る年波によって、チャーハン、もやしそば、焼餃子の3種類しかやっていない。にもかかわらず、宴会客がいなくても行列ができる。YouTubeでも見たが、店を始めて50年が経つというのに、厨房はピカピカで仕込みもとても丁寧だ。
順番が来てカウンターに座ると、隣のオッサンは、このクソ暑いのに、餡かけのもやしそばをズルズル食っている。で、しばらくしたら、焼餃子とチャーハンも出てきた。スゲー。ワシも出来れば、こうやりたいところだったが、カラダのことを考えてチャーハンと焼餃子だけにした(笑)。他の客はほとんど全員がチャーハンだ。
主人は一心不乱に中華鍋を振って、先にチャーハンが来た。この細かく刻んだナルトの量がたまらん。他に具は細切れの叉焼とネギという潔さだ。うむ、それでいいのだ。
「一寸亭」のチャーハンの具は細切れの叉焼とネギ、細かく刻んだナルトが特徴
米は適度に焦げ、しかも満遍なく油が染みている。パラパラ系としっとり系の中間ぐらいか。一口食べると、叉焼の味が先に来る。しかる後に、米の旨味とナルトの味がくる。塩と旨味調味料は控え目だ。醤油は使っていない。ベタつきは少なく、どちらかといえばカラリとしている。うん、玉子塩チャーハンやね、旨いなー。
同時に出てきた焼餃子も、しっかりと自家製の感じで、底は良く油で揚げてあって焦げてパリッとしているが、上部の皮は柔らかい。ニラとキャベツとニンニクと挽肉が詰まっていて、とても旨い。しかして、チャーハンと焼餃子はなかなかのカップリングなのであった。餡かけになった「もやしそば」は旨そーだけど、さすがに夏の食い物じゃねえな。いつか食べてみたい。
「一寸亭」の入口
一寸亭
東京都台東区谷中3-11-7
℡03-3823-7990
月~金・祝日:11:00~16:00
定休日:土日
チャーハン 850円
もやしそば 900円
焼餃子 600円
名物 黄金チャーハンのために並んだゾ
中華料理 兆徳
チャーハン好きなら誰でも知っている駒込の町中華屋である。巷では、「黄金チャーハン」の店として有名だ。
であるから、なにしろ昼飯前の行列たるや、もの凄い。開店時間の11:30に到着しても、もう手遅れなほどだ。だから、待たずに食べたい人は覚悟を決めて早めに出かけることをお薦めする。
とりわけその「玉子チャーハン」(=黄金チャーハン)は、ほとんどの客が頼む。ゆえに、見ていると、ガタイのいい兄ちゃんが大振りな中華鍋に玉子チャーハンをてんこ盛りにして作っていた。重いから鍋を大きく振ることは適わぬ。仕上がりは必然的に、しっとり系となる。
ほとんどの客が注文するという「中華料理 兆徳」の”玉子チャーハン”(=黄金チャーハン)
具は卵とネギだけという潔さだ。味付けは塩と化学調味料だけなので、玉子とネギの味が米によく馴染んでいる。ちゃんとした米料理になっていて、なかなか旨い。卓上の自家製ラー油をかけて味変するのも一興で、玉子にラー油がとてもマッチする。
たぶん、注文がまばらな時には、鍋をしっかり振って作り、パラパラ系になるに違いない。筆者はこの玉子チャーハンは、しっとり系よりもパラパラ系のほうが好ましいと思うし、味もアップするはずだと推測する。
この店には他にも名物があって、甘酢餡かけの「揚げ餃子」と「砂肝の黒胡椒風味炒め」である。私は一人メシだったので、後者と焼餃子を頼んだ。砂肝はコリコリっとして、他にピーマンと玉ねぎが入っているが、透明な餡がかけてあり、胡椒がとても効いている。うむ、かなりクセになる味で、ビールのつまみに最高だ。
この店はなかなか一品一品の盛りがいいので、3品食べたら、もー、限界だったわ。
夜は予約が可能なので、何人かで行くのがいい。極めて多くのメニューがあるので、様々に頼んでから、玉子チャーハンと醤油チャーハン、あるいは麺で締めるのが良かろう。
「中華料理 兆徳」の入口
中華料理 兆徳
東京都文京区向丘1-10-5
℡03-5684-5650
火~日・祝日:11:30~14:30、17:30~22:00
定休日:月曜日
玉子チャーハン(塩) 900円
チャーハン(醤油) 900円
砂肝の黒胡椒風味炒め 1200円
焼き餃子(6ケ) 550円
揚げ餃子(6ケ) 700円
味もボリュームも大満足
中国名菜処 悟空
ランチタイムに行ってみた。昼は11時からだが、11:40に店に着いてラストの1席だった。客はひっきりなしにやってくる。銀座のはずれではあるが、まず、値段が良心的であり、盛りがいい。なので、メシをたくさん食べそうな近隣の兄ちゃん姉ちゃんサラリーマンで一杯だ。
工事現場のおっちゃんもいる。太っちょのサラリーマンが焼きそばに白メシという炭水化物ミックスを、豪快に食っていた。「まるで大阪人みたいだね」とか言いながら(笑)。この焼きそばがしっかりと濃い茶色で、実に旨そうだった。
筆者は「五目チャーハン」と「五目野菜のあっさり炒め」を単品で頼んだ。
最初に来たのは野菜炒めだ。キャベツ、モヤシ、ニラ、キクラゲ、ニンジン、ネギが、塩味でシャキッと炒めてあり、片栗粉でトロミがついている。なかなか旨い。続いて、五目チャーハンが来た。
叉焼と玉子とグリーンピースが結構なボリュームで入っている「悟空」の”五目チャーハン”
五目であるから、具は玉子、叉焼、ネギ、グリーンピース、エビ2個である。しっとり系の薄い醤油味だ。典型的な日本の町中華屋のチャーハンである。味は濃くも薄くもない中庸を保っている。だから、オカズとともに食べるのにも適している。普通盛りのはずなのに、食べ進めると、叉焼と玉子とグリーンピースが結構なボリュームで入っているために、半分も食べるとかなりヘビーになった。
そこで初めて、なんだこの盛りの良さは!と気づいた。これ、二人でシェアして丁度いい量だぜ。気前いいね。
で、結局は量が多すぎて4分の1を残した。こんなこと初めてだぜ。
ちなみに、隣も前も海老チャーハンセットを食べていた。このチャーハンは玉子とネギと塩だけで出来ていて、白いチャーハンでなかなか旨そうに見えた。ここも、4人ぐらいで夜に来て、単品をいろいろと頼んでみたい店だと思った。
「中国名菜処 悟空」の入口
中国名菜処 悟空
東京都中央区銀座1-15-7
マック銀座ビル1F
℡03-3566-0059
五目チャーハン 980円
五目野菜のあっさり炒め 980円
海老チャーハンセット 950円
「これを食べなきゃ人生ソンだよ」とは
うまいものがあると聞けば西へ東へ駆けつけ食べまくる、令和のブリア・サバランか、はたまた古川ロッパの再来かと一部で噂される食べ歩き歴40年超の食い道楽な編集者・バッシーの抱腹絶倒のグルメエッセイ。
筆者プロフィール
食べ歩き歴40年超の食い道楽者・バッシー。日本国内はもちろんのこと、香港には自腹で定期的に中華を食べに行き、旨いもんのために、台湾、シンガポール、バンコク、ソウルにも出かける。某旅行誌編集長時代には、世界中、特にヨーロッパのミシュラン★付き店や、後のWorld Best50店を数多く訪ねる。「天香楼」(香港)の「蟹みそ餡かけ麺」を、食を愛するあらゆる人に食べさせたい。というか、この店の中華料理が世界一好き。別の洋物ベスト1を挙げれば、World Best50で1位になったことがあるスペイン・ジローナの「エル・セジェール・デ・カン・ロカ」。あ~、もう一度行ってみたいモンじゃのお。
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これを食べなきゃ人生ソンだよ
Features
秋の青森を満喫する“りんご尽くし”の体験イベント、今年も開催
2025.9.4
青森屋 by 星野リゾート「じゃわめぐりんご祭り」
りんご灯篭回廊
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青森の文化をまるごと体験できる温泉宿、青森屋 by 星野リゾートでは、2025年9月1日から12月1日まで、秋恒例のイベント「じゃわめぐりんご祭り」を開催。
巨大りんご灯篭
“じゃわめぐ”とは、青森の方言で「心が騒ぐ、にぎやかで楽しい様子」を意味する言葉。青森が国内一の収穫量を誇るりんごをテーマに、宿全体がりんごに彩られる。
「りんご収穫ラリー」 時間:15:00~18:00 場所:じゃわめぐ広場 料金:1,000円(4競技セット)
※写真は「りんご射的」
りんゴルフ
12年目を迎える今年は「スポーツの秋」にちなんで、りんごの収穫から出荷までをモチーフにした体験型アクティビティ「りんご収穫ラリー」が新登場。袋はぎや収穫、選別、出荷といったりんごの収穫工程をアレンジした4つの競技を通じて、ゲーム感覚で身体を動かしながら収穫体験を味わえる。
りんごガチャガチャ
時間:15:00〜20:00 場所:じゃわめぐ広場 料金:1回300円
りんごジュースが出る蛇口
時間:8:00~12:00/15:00〜20:00 場所:じゃわめぐ広場 料金:無料 期間:通年
このほかにも、りんごを五感で楽しめる多彩なプログラムを用意。カプセルから本物のりんごが出てくる「りんごガチャガチャ」や、蛇口をひねるとりんごジュースが流れる人気サービス、紅葉の中を巡る「紅葉りんご馬車」では収穫期を迎えたりんごをお土産に。さらに、巨大なりんご灯篭や幻想的な回廊が広がるフォトスポットも登場。りんごの魅力を、見て、味わい、体験することができる。
紅葉りんご馬車
時間:9:00/9:30/10:00/10:30/11:00 場所:敷地内の公園
料金:大人1,870円、小学生1,320円、未就学児990円(いずれも税込)
予約:公式サイト(https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/aomoriya/)にて3日前まで受付
備考:りんごのお土産は大人料金の人数分を提供
秋の青森の象徴であるりんごを通じて、地域の文化や季節感を体感できる「じゃわめぐりんご祭り」。伝統と遊び心が融合した特別な滞在を、ぜひ楽しんでみては。
青森屋 by 星野リゾート
【住所】⻘森県三沢市字古間木山56
【TEL】050-3134-8094(星野リゾート予約センター)
【料金】1泊 23,000円~(2名1室利用時1名あたり、税込、夕朝食付)
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Features
2025.9.4
パレスホテル東京で開催。フランス料理「エステール by アラン・デュカス ーChampagne SA…
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投稿 青森屋 by 星野リゾート「じゃわめぐりんご祭り」 は Premium Japan に最初に表示されました。
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Features
大阪から発信する“ネイバーフッド体験”の集大成
2025.9.2
「キャノピーbyヒルトン大阪梅田」開業1周年を記念した特別企画を開催
(写真右下)ホテルオリジナルクラフトビール『DOYASA!』も1周年記念ラベルで登場。
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2025年9月6日に開業1周年を迎える「キャノピーbyヒルトン大阪梅田」では、これを記念して、地元・大阪の魅力を体感できる多彩な企画を展開している。
CC:CARBON COPY(シーシー カーボンコピー)
!JaJa!Bar(ジャジャバー)「DENKYU クラフトビアガーデン」
館内のオールデイダイニング「CC:CARBON COPY」、バー&ラウンジ「!JaJa!Bar」、カフェ「Bean there, UMEDA」では、最大30%オフのタイムセールを実施。予約は9月11日(木)まで、利用期間は9月6日(土)から10月31日(金)(カフェは9月30日まで)となっており、大阪らしい食文化と洗練された空間を、気軽に味わうことができる。
1周年記念特別プラン「World of Canopy」ランチ/ディナーセット
また、同日より特別ランチ/ディナーセット「World of Canopy(ワールド・オブ・キャノピー)」も登場。大阪を含む世界各地の「キャノピーbyヒルトン」が誇る“地元の味”を一度に味わえるコースで、まるで世界を旅するようなユニークなダイニング体験を楽しめる。
ホテルロビー ウォールアート
さらに、海外ホテル宿泊券が当たるソーシャルメディアキャンペーン「1周年記念!大阪の旅の想い出」も開催。9月6日(土)14:00から9月25日(木)23:59までの期間、公式Instagramアカウントをフォローし、対象投稿に「♡」と旅の思い出をコメントすることで応募が可能だ。
エレベーターホール ウェルカムアート
1周年当日の9月6日(土)には、書道家・美紗稀(みさき)氏によるライブ書道パフォーマンスや、夜にはホテル南側の客室を使った「1」をかたどるライトアップも予定されている。
客室|キャノピービュールーム&プレミアムビュールーム(ツイン)
“ネイバーフッド(地域とのつながり)”を大切にし、その土地の文化や食をゲストに伝えることをブランドフィロソフィーとしている、ヒルトンのプレミアムライフスタイルブランド「キャノピーbyヒルトン」。今回の記念企画は、大阪に息づくカルチャーと、世界に広がるキャノピーbyヒルトンの魅力を同時に体感できる絶好の機会となるはずだ。
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青い空、青い海、ヤシの木、自転車、ローラーブレード。ロサンゼルスと言って思い浮かべる風景は、ほとんどがこのサンタモニカのもの。サンタモニカは、ロサンゼルスにあるビーチで、シカゴから続く、昔の主要幹線道路ルート66の終点でもあります。今回はサンタモニカへのアクセスから、ビーチやショッピング、ホテルの情報まで紹介します。
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林 信行の視点
2025.8.26
ヤマハのリゾートホテル「葛城北の丸」に3室のラグジュアリーなスイートが誕生
47年の歴史を持つ葛城北の丸の一棟が、現代のラグジュアリーを感じる新しい3室のスイートに生まれ変わった。手掛けたのは内田デザイン研究所。
)
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ヤマハがつくった泊まれる城
世界のミュージシャンに愛される日本ブランド、ヤマハ。同社のグループが名門ゴルフクラブとリゾートホテルを営んでいるのをご存知だろうか。つくったのは同社を今日の形にした四代目社長、川上源一。1976年に葛城ゴルフ倶楽部を、その2年後の1978年にリゾートホテルの葛城北の丸を作った。
この夏、その歴史あるホテルの一棟がラグジュアリーでサステイナブルな現代の要請に応えた特別仕様のスイート3室に生まれ変わった。手掛けたのは内田デザイン研究所。京都・嵐山の「MUNI KYOTO」や日本のデザインホテルの先駆けと言われる「HOTEL IL PALAZZO」を手掛けたデザイン事務所だ。「月」と名付けられた部屋に試泊しつつ、他の2室も内覧させてもらった。
いずれも今日我々が慣れ親しむ西洋的価値観のラグジュアリーと日本の美意識を融合させた21世紀的「和洋折衷」と言える優美で快適な部屋だった。
川上源一の古民家保存への思い
葛城北の丸は北陸の古民家七棟を移築し屋根を遠州瓦に変えて改修し、回廊で繋いだ山まるまるひとつを敷地に持つ巨大施設。遠州の平城をイメージして作られたという。
リニューアルオープンした桜殿は地上階にあるが、一度、階段で2階に上り遠州瓦の風景を臨む渡り廊下を経て再び地上階に下りる作りになっており川上源一の強いこだわりを感じる。
「葛城 北の丸」は、名前も、見た目も、山ひとつまるまる抱える大きな敷地もまるでお城のようだ。それもそのはずで設立時には、客人を殿様に見立て、城の中で疲れを癒すように食事や寛ぎを与えることをコンセプトにし、お城の北の丸、つまり将軍や大名家族の居住空間のような施設にすることを目指したという。「葛城」という名は、この地が元々、葛(くず)の産地だったことにちなんだという。
ヤマハ掛川工場に近く、本社ともそう遠くないこのホテルは、世界の著名ミュージシャンやスポーツ選手が訪れるヤマハの客人をもてなす迎賓館としての側面もある。
その大事なホテルを作るにあたり、川上源一は、面白いことにあえて新築するのではなく古民家を移築して作ることを提案する。北陸地方には強さと温もりを持つ良い古民家が多い。それが失われつつあることを知ったのがきっかけで、それを宿泊施設計画に活かせないかと考えたのだという。
百軒ほどある古民家から七軒を選んでこの地に移築し、屋根には地域の伝統である遠州瓦を乗せた。それらを回廊で結び、花の名前をつけた4つの宿泊棟を持つ建物にした。建物の正面に常夜灯を備えた大きな門を建て、その周囲にお堀を作った。こうすることでまるで平城のような外観になった。
川上は高度経済成長を経て古い日本家屋がどんどん失われていくことに危機感を感じ、そうした風景を残すことに使命感を感じていたと言う。あえて廊下を2階に作り、遠州瓦の屋根が並ぶ風景を見せるなど、ホテルには随所に川上のそんな想いが見てとれる。
昭和モダンの館内に漂う木の温もり
ロビーエリアにあるBarの一枚板のバーカウンターは葛城ゴルフ倶楽部宇刈コース13番ホールの落雷で倒れた老松で作られたという。手前のテーブルは屋久杉で作られている。ここだけでなく旧来の部屋に置かれた家具などほとんどの家具が木製で2013年に別資本になって社名が変わったヤマハの家具・住宅設備部門ヤマハリビングテック株式会社製。
そんな歴史ある風情を持つ施設だが、建物に一歩足を踏み入れると、そこにはまったく別の時空間が広がっている。葛城北の丸の館内には、日本が豊かだった昭和の良い時代の風情が漂っている。玄関正面の日本庭園に向かって開かれた窓の並びにはゆったりとした木製の家具と共にヤマハのグランドピアノが置かれている。
ピアノの向かいには、ワインセラーや巨大な一枚板のバーカウンターも備えたバーラウンジエリア。バーカウンターの上には楽器のホルンの形をした照明が置かれ、ヤマハのコンパクトオーディオで同社が応援するクラシックやジャズのミュージシャンの音楽が流れており、ここがヤマハの施設であることを思い出す。
だが、このバーを訪れて、実はヤマハには楽器メーカー以外に、もう1つの顔があることに気付かされた。一枚板のバーカウンターは葛城ゴルフ倶楽部宇刈コース13番ホールの落雷で倒れた老松で作られたものだという。そのすぐ近くのローテーブルは屋久杉で作られていた。二階へと続く階段の手すりは雪の重みで倒れ起き上がった松をそのままの形で使っていると言う。
見渡すと北陸の古民家を復元した天井も木製と、ホテル全体が木の温もりに包まれている。楽器メーカーであるヤマハは、実は優れた木工技術を持つ会社でもあるのだ。なるほど、だからこそ木への愛が溢れ、消えゆく北陸の古民家を放って置けなかったのだと気がついた。
ホテルで使われている木製家具もほとんどは今は無きヤマハの家具部門で作られたもので、西洋の家具を日本人の体型や生活習慣に合わせて作り直した木工家具たち。どこか安心感を覚える昭和ラグジュアリーの佇まいの正体はこれだったのかも知れない。
21世紀のラグジュアリー「桜殿」の誕生
「萩殿」は古民家の佇まいをそのまま生かした棟。建物の中に入ると土間があり、その先に囲炉裏を備えた大きな共用空間があり、その周囲に10畳、8畳、6畳と大きさの異なる計5部屋の客室が用意されている。一棟をまるまる貸し切って、夜、囲炉裏を囲みながら会話に花を咲かせるといった使い方をする常連も多い。「桜殿」は元々、この萩殿と似た作りだったという。
近世のお城のような外観と昭和モダンの内装。この2つの時間軸が交差したリゾートホテルに、2025年春、21世紀のラグジュアリーという3つ目の時間軸が加わった。内田デザイン研究所の手掛けて生まれ変わった「桜殿」の3室だ。
葛城北の丸には花の名前がつけられた4つの宿泊棟がある。「葵殿」は28平米の最もポピュラーな部屋で山の深緑を楽しめる和モダンな客室、「藤殿」は広大な庭の片隅にある藤棚に面したバルコニーを持つ33平米の部屋、「萩殿」は古民家の佇まいをそのまま生かした棟で、囲炉裏を備えた大きな共用空間の周囲に計5部屋の客室が配置されている。
今回、新しくなった「桜殿」は、この「萩殿」と似た作りだったという。ただ、今回のリニューアルで、旧家の外観はそのまま残しつつも、内装はかつての様子が想像できないほどドラマチックに変わっている。
共有スペースをなくしてその分、1つ1つの部屋を80-100平米と広くし、専用庭や露天風呂を設けた「月」、「灯(あかり)」、「凪」と名付けられたまったく個性の異なる3室が誕生した。
3室は「真・行・草(しん・ぎょう・そう)」という日本の伝統的な美意識・格式の分類でデザインされたという。つまり端正で格調高い「真」の部屋として作られたのが「月」、やわらかさや華やかさを持つ「行」の部屋として作られたのが「灯」、もっとも自由でリラックスした雰囲気の「草」の部屋として作られたのが「凪」というわけだ。
日本空間の「型」を現代に継承
各部屋とも玄関が広く、その外には三室三洋の手水鉢が置かれた贅沢な作りになっている。こちらは「月」の手水鉢で長く伸びた金色の筧は横から見ると三日月のように見える。
3室のデザインには共通している部分も多い。その1つは日本的空間の「型」だ。
3室とも立派な玄関を備えており、「浄め」と「もてなし」の意味を持つ手水鉢が用意されている(手水鉢の見た目は部屋のコンセプトに合わせてそれぞれ異なっている)。履き物を脱いで床にあがると外の景色へとつながった開放感を感じながらくつろげる広間があり、それぞれの部屋を特徴づけるゆったりとしたソファが置かれている。そこから部屋の奥に向かうほどプライベート感が高まる。
また全室ともつくり天井を取り払った天井高のある空間の開放感を感じながら、元々の古民家からそのまま継承した梁や柱といった建物の記憶を辿って楽しめるようにもなっている。この古民家の記憶を大事にする姿勢は川上源一の遺志にも通じている。
部屋の内側と外の空間が曖昧なのも日本の空間らしい特徴かも知れない。各部屋に個性的なテラスがついているが、設計を行った内田デザイン研究所では、これをテラスではなく「広縁(ひろえん)」と呼んでいる。テラスが屋外空間なのに対し、広縁は部屋の外に広がった縁側であり、屋内と屋外の中間領域だ。その向こうに広がる大きな庭と、凛とした屋内空間のどちらともつながりを感じることができる居心地の良い場所になっている。
なお広縁や各部屋の露天風呂具には石庭を含む自分専用の庭や植栽があるが、これらや玄関にある手水のデザインは造園計画集団、和想デザインが手掛けたという。
日本的建築はこうした部屋の外側と内側を格子や障子といった光や風を通す柔らかい境界で仕切るのが特徴だが、桜殿の3室も、こうした要素をシックな佇まいに合う現代的な形で再解釈しつつ取り入れている。
天井高を最大限に活かした空間の多い桜殿の部屋だが頭上を見上げると元々の古民家の個性的で力強い梁がそのまま残されており、古民家の記憶を感じることができる。こちらは月の寝室の梁。
各部屋とも部屋とテラス(広縁)が一体となった屋内と屋外の境界が曖昧な日本的な作りになっている。こちらはホテル全体の庭にもつながった月のテラス。灯のテラスはファイアーピットが、凪のテラスは鏡のように光や風景を反射する水盤が特徴になっている。
三室三洋の魅力
—「月」― 真の格調が宿る最上級の空間
白漆喰の壁の白と濃い色調の木のコントラストある2色が基調でシックな佇まいの「月」。そうでなくても3室の中で最も広いが、寝室からテラスまでが一直線に並ぶことで部屋の引き戸を全開放するとさらに広く感じることができる。リビングの天井も最も高さを感じる。
「月」の部屋につた露天風呂。苔むす枯山水の真ん中に立つもみじがきれいなシルエットを描き出す。この贅沢な露天風呂に加えて、2名で利用できる専用の岩盤浴も用意されている。
まずは「真・行・草」の「真」にあたる「月」の部屋から。この部屋は桜殿の歴史と性格を最もよく表しているオーセンティックな部屋となっている。靴を脱いで玄関に上がり、扉を開いてリビングに入ると、右側にテラス、左手の奥に寝室が一直線に並んでいる。木製サッシを全面開放すると庭を望むテラスとリビングの一体感が楽しめる。室内面積が101平米。テラスと露天風呂を合わせた面積が37平米と3室の中で最も広い。
白漆喰の壁や黒い梁や造作家具、古民家の記憶を残す躯体とモダンな家具のコントラストが印象深いシックな空間で、かなり天井高があるのも心地がよい。リビングの一角には、この白黒のシックな空間に合わせてヤマハリゾートが選んだ書家 大杉弘子の作品が飾られている。
リビングにある引き戸の1つを開くと洗面台とお風呂場が姿を表す。お風呂は苔むす枯山水と青紅葉(あおもみじ)が楽しめる露天風呂になっているが、それに加えて3室の中でこの部屋だけ石庭を臨むプライベート岩盤浴も用意されている。岩盤浴が好きな人は昼夜時間を問わず、何度でも何時間でも利用し汗をかきリフレッシュできる。
寝室は引き戸を開けたまま庭の景色を楽しみながら利用することもできれば、引き戸を閉めると、外の気配の一切ないプライベートな安らぎを感じる空間に様変わりする。ベッドに横たわると頭上で建物の歴史を感じさせる大きな黒い梁が交差している様子を楽しめる。寝室の横にはクローゼットも兼ねた大きなパウダールームが用意されており、しっかりと自分と向き合う時間を楽しむことができる。
—「灯」— 行の華やかさと炎の魅力
朱色のラウンドソファが強い印象を残す灯の部屋のリビング。古民家の屋根の形を屋内からも感じることができる斜めになった天井も特徴だ。寝室はテレビの後ろにある格子で仕切られただけのワンルーム構成になっている。
灯の部屋の魅力はテラスに用意されたファイアーピット。夜は満点の星空の下、ここで炎を見つめながらお酒や会話を楽しむことができる。
「真・行・草」の「行」に当たる「灯」の部屋はガラリと雰囲気が変わる。床や天井はぬくもりを感じる木材の色をそのまま生かしており、全体的に部屋の印象が明るい。
そんなリビングの片隅に朱色のラウンドソファ(半円形のソファ)と丸テーブルが置かれている。すべてが直線的だった「月」と対照的だ。テラスに沿う形で横に長く広がったリビング——ソファと反対側には格子で仕切っただけのリビングと柔らかくつながった寝室がある。広さは室内が80平米、広縁と露天風呂が合わせて35平米だ。
この部屋の最大の特徴はそのテラスにある。真ん中で仕切られたテラスは左側が印象的な赤いリクライニングチェアが置かれたウッドデッキに、右側が石ばりのベンチで囲まれたファイヤーピットになっている。
夜は満天の星空の下、炎を囲みながらゆったりと会話を楽しめる場になっている。これももしかしたら囲炉裏を現代風に解釈し直したものなのかも知れない。このテラスをリビングだけでなく、ベッドからでも間近に眺めることができ、露天風呂からも完全には見えないが気配を感じることができるテラス中心の部屋となっている。
ファイヤーピットや赤いソファに合わせるように、この部屋には日輪のアートや赤い墨で描いた「炎」という字を描いた書の作品が飾られている。
「灯」の部屋のもう1つの特徴は傾斜のついた天井だろう。桜殿の3室は造作天井を取り払い、屋根の高さまで抜けた開放感を味わえるようにしているが、そのため三角屋根の形に合わせて天井が高い部分と低い部分がある。「灯」の部屋では、屋根の頂点にあたる最も天井高がある部分を玄関に持ってきて、居間では傾斜した屋根の形がそのまま天井になっている。
—「凪」—草のやすらぎと水の癒し
木の風合いを強く感じるナチュラルな雰囲気の中でリラックスできる「凪」。リビングルームもシンプルな構成。天井には元々の古民家の梁を楽しむことができる。
シンプルな構成の「凪」だが、夜、室内照明を落とし、テラスの木々の照明をつけると木々が鏡のような水盤に映る美しい光景が現れる。この景色に日本的情緒を感じながら過ごせるのが「凪」の魅力だ。
3つ目の部屋「凪」は、天井の高い部分と低い部分を水平にし段差をつけた天井になっている。テラスに近い側の天井が低くなっており、自然と視線がテラスの下側に向くが、実はテラスのその部分には水盤が張られており、夜、照明を落とすとその水盤にテラスの木々が映り込んで美しい眺めを作り出す。日中は水盤が太陽の光を反射して室内に光の揺らぎを描き出す。
「月」同様に寝室、居間、テラスが一直線に並んだ配置で室内面積83.4平米、テラスと露天風呂が25平米の広さだ。
色調は木のナチュラルな風合いが生きる明るい色調の木仕上げで、壁は天然木仕上げでスッキリと仕上げられており、「真・行・草」の「草」らしく、もっともナチュラルな雰囲気が漂うリラックスできる空間に仕上がっている。
日本を代表するブランドが作り出すラグジュアリー体験
朝は1周20分ほどのホテルの敷地の散歩をすると心地よい。日本庭園やプールもある巨大な庭だが、最も高い位置には一般には非公開の迎賓施設「梅殿」がある。中にはヤマハの最高級オーディオシステムや100周年記念で作られたグランドピアノ、1908年頃に作られたオルガンなどが飾られている。たまにこの梅殿で自分のCDを楽しむ宿泊プランも用意されることがある。庭には他に川上源一の実父の大正時代の家も「青々庵」と名付けられ移築されている
3室共通で大型テレビにはヤマハのサウンドバー(音響システム)が付いており迫力の大音響で映画が楽しめる。また冷蔵庫のビールやワイン、ジュースに加え、地元の掛川茶を利用したホテルオリジナルの最上級深蒸し茶のティーバッグとこの土地で取れる陶土にこだわった森山焼きの湯呑み茶碗が用意されているのも嬉しい。
夕食は大きな窓から夜の庭の景色が楽しめるレストラン「椿の間」で提供される。5種類のコースが用意されているが、桜殿に宿泊の場合は、おすすめコースの舞または吟いずれかのコースを選ぶことができる。
名産品の袋井のクラウンメロンの味がするスープには意表をつかれたが、近海のお造りも楽しめれば、三ヶ日牛ロースの炭火焼きといったメニューにここが海の幸も山の幸も楽しめるロケーションなのだと改めて気がつかされた。翌朝の朝食も、こだわり野菜のしゃぶしゃぶと三段重にこの地の豊かな食材を活かした料理がたくさん詰まっていた。
どちらの料理も生産者の顔が見える地域の豊かな食材を伝統的な和の技法で調理しながら、現代的な感性も取り入れた「和魂洋才」の料理哲学で作られている。ここにも川上源一氏の「日本人の心のふるさと」というコンセプトが一貫して表現されている。
施設内にはヤマハがかつて同社のVIPを招いたり音楽イベントなどを行った梅殿という迎賓館もある。一般には非公開だが、最近ではオーディオルームとしてこの部屋に置かれたヤマハの最高級オーディオでお気に入りのCDを楽しむことができるようだ。
1周約20分の庭の散歩を楽しむと特徴的な屋根を持つ建物の外観だけは楽しむことができる。庭には他にも川上源一の実父でありヤマハの中興の祖でもある川上嘉市の住まいを移築した青々庵や四季折々の花々が楽しめる花木苑もある。
川上源一が1970年代に抱いた「消えゆく古民家を救いたい」という思いは、半世紀を経て新たな形で花開いた。それは単なる保存ではなく、歴史を尊重しながら現代の感性で進化させる「継承のデザイン」の実践である。
「桜殿」の3室はまもなく50周年を迎える施設の哲学や理念を継承しつつ、日本の伝統的価値観と西洋的ラグジュアリーを見事に融合した新しい和洋折衷、日本ならではの西洋的ラグジュアリーを確実に示していた。今回のリニューアルが同施設の次の50年に向けての起点となることを期待したい。
静岡県袋井市宇刈2505番地の
フリーダイヤル:0120-211-489(受付時間9:00〜18:00)
Profile
林信行 Nobuyuki Hayashi
1990年にITのジャーナリストとして国内外の媒体で記事の執筆を始める。最新トレンドの発信やIT業界を築いてきたレジェンドたちのインタビューを手掛けた。2000年代からはテクノロジーだけでは人々は豊かにならないと考えを改め、良いデザインを啓蒙すべくデザイン関連の取材、審査員などの活動を開始。2005年頃からはAIが世界にもたらす地殻変動を予見し、人の在り方を問うコンテンポラリーアートや教育の取材に加え、日本の地域や伝統文化にも関心を広げる。現在では、日本の伝統的な思想には未来の社会に向けた貴重なインスピレーションが詰まっているという信念のもと、これを世界に発信することに力を注いでいる。いくつかの企業の顧問や社外取締役に加え、金沢美術工芸大学で客員名誉教授に就いている。Nobi(ノビ)の愛称で親しまれている。
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永遠の聖地、伊勢神宮を巡る
2025.8.29
この日だけの特別に出合える 伊勢神宮「お朔日(ついたち)参り」とは?
八朔参りの様子。筆者がペットボトルに水を汲んでいると、隣にいた年配の女性が、容器いっぱいに水を入れると、1年間水が腐らないこと、持ち帰った水は、痛いところに付けるだけでなく、玄関を清めたいときにまくこともある、などと教えてくれた。なお、近年は八朔の夕刻から夜にかけて、外宮をゆかた姿で参拝する「外宮さんゆかたで千人参り」も行われている。
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新しい月のはじまりの日に、氏神様などの神社に参拝する「お朔日(ついたち)参り」。前月の1ヶ月間を無事過ごせたことに感謝を捧げ、新たな1ヶ月間の無病息災や家内安全を祈るというこの風習は、日本各地で古くから行われてきた。
なかでも伊勢地方では、その昔、8月1日の早朝に神宮の内宮、外宮の両宮をお参りし、粟や稲の初穂を神前にお供えして、五穀豊穣と無病息災を祈る「八朔参宮」のならわしがあったという。
今回は、そんな「八朔参宮」を今に伝える「八朔参り」とともに、普段とはちょっと違う神宮参拝のあれこれをご紹介しよう。
「八朔(はっさく)参り」という言葉をご存知だろうか?
そもそも「朔(さく)」は、旧暦の太陽太陰暦でその月の第1日目を指す言葉。つまり「八朔」は「八月朔日(さくじつ)」の略で、8月1日を指している。
ちなみに、朔日は「ついたち」とも読む。月の満ち欠けの周期を利用した太陽太陰暦では、毎月最初の日が新月に当たることから、「ついたち」という言葉も、「月立ち(つきたち)」から転じたと考えられている。
「八朔参宮」の源にある祈りと、現在の「八朔参り」
「八朔参宮」が行われていた旧暦の8月1日は、新暦の太陽暦では8月下旬から9月下旬(令和7年は9月22日)に当たる。つまり、米作りにとっては、稲穂が膨らみ、黄金色になって稔りを迎える大切な時期。おそらく農家の人々は、とりわけこの時期、朝に夕に天候を気にしながら、不安と緊張の中で稲穂を見守っていたことだろう。
特に伊勢の神宮の主祭神は、太陽にもたとえられる天照大御神。近隣に住む農家の人々にとって、これほど心強い存在はなかったにちがいない。五穀豊穣への祈りは、自ずと他の「お朔日参り」より切実なものとなり、年によって収穫が間に合えば、稲の初穂を携えて、それが無理ならば、当時は五穀の中で1番早く収穫ができたという粟の初穂を神前にお供えし、これまで無事に稲が育てられたことへの感謝と、来たる豊かな稔りを祈ったことが、八朔参宮の源にあるのではないか。そんな推察も成り立つ。
神前に五十鈴川からいただいた水をお供えし、これまで無事過ごせたことへの感謝と、1年間の無病息災、家内安全を祈る。「お供えする際は、ペットボトルの蓋を外すこと」と、年配の女性に教わった。その後、このペットボトルの水は、自宅の神棚に供える。
現在は、さすがに粟や稲の初穂を携えて、とはいかないものの、新暦の8月1日の早朝に、やはり外宮、内宮の両宮に参拝し、五穀豊穣や家内安全、無病息災を祈る「八朔参り」が行われている。
特に内宮では、この日に宮域内を流れる五十鈴川の水を汲み、川のほとりに鎮座する瀧祭神(たきまつりのかみ)にお供えし、1年間の無病息災と家内安全を祈るという、伊勢地方独特のならわしが伝えられている。
ちなみにこの水は、持ち帰って自宅の神棚にお供えし、もし体のどこかに痛みが出たときは、その箇所に浸けると痛みがとれると信じられている。
五十鈴川のほとりに鎮座する瀧祭神とは、どんな神様?
五十鈴川の水をお供えする瀧祭神は、内宮の所管社の1つ。と言っても、お社に社殿はなく、御祭神の瀧祭神は、御垣(みかき)と御門に囲まれた岩の上にお祀りされている。
お社の近くには五十鈴川と島路川(しまじがわ)が合流する、いわゆる川合(かわい)があり、たつ瀬、つまり、水が激しく流れる瀬のほとりに鎮座することから、川の守り神として、天照大御神が鎮座する前から祀られていたのではないか、とも考えられている。
内宮の所管社の1つ、瀧祭神。すぐ近くに五十鈴川が流れている。
ちなみに、地元では御正宮へお参りする前に、まず御手洗場で手と口を清め、瀧祭神で自身の住む場所と名前を告げた後、「これから向かいますのでよろしくお願いします」などと、天照大御神に取り次いでいただくならわしがあり、「とっつきさん」、「とりつぎさん」などと呼ばれているという。
そんな庶民にとって身近な存在である一方、祭祀に関しては、別宮に準ずる扱いを受けているとも聞く。どうやら瀧祭神は、特殊な神様であるようだ。
毎月1日、神馬が御正宮を参拝する「神馬牽参(しんめけんざん)」
おかげ横丁のその日だけの楽しみ
毎月1日は、「神馬牽参(しんめけんざん)」と呼ばれる定例行事が行われる日でもある。神馬とは、天照大御神・豊受大御神に捧げられた御馬のこと。この神馬が、内宮、外宮の両宮で、毎月1日、11日、21日の朝に、皇室から捧げられていることを示す菊の御紋入りの馬衣を付けて、御正宮にお参りする。
外宮での「神馬牽参(けんざん)」の様子。神馬は、内宮は石階(せっかい)と呼ばれる石階段の下、外宮は御正宮を囲む1番外側の板垣の南御門の前で拝礼する。
馬は古来、神の乗り物とされ、神社に献納されるならわしが奈良時代からあったという。そのならわしは、時代とともに絵馬に置き換わっていったものの、神宮では、今も皇室からの献上が続いている。
人を乗せることはないというこの神馬は、両宮それぞれで2頭ずつ飼育され、神馬牽参の後は、しばらく両宮の宮域内にある御厩(みうまや)に控えている。涼やかで優しい目、穏やかな表情。見ているだけで心が和んでくる。
この日は、内宮の門前町であるおはらい町も、早朝からにぎやか。毎月の朔日参りに合わせて、さまざまな店で朔日粥や朔日餅が月替わりで用意されることから、それを目当てに訪れる人たちが、午前4時台から長蛇の列を作っている。
ちなみに、伊勢の老舗和菓子店「赤福」が8月に用意している朔日餅は、「八朔粟餅」。伊勢地方では、8月1日に縁起物として粟餅を食べるならわしがあったという。
おかげ横丁では朝市も開かれ、地場産の野菜などが並んでいた。
伊勢の老舗和菓子店「赤福」の前には、八朔餅を求める人たちでにぎわっている。
朔日粥は、さまざまな店で食べることができる。
現在は多くの食事処や土産物屋が建ち並ぶおはらい町。だが、江戸時代までは、その様子は少し違っていたようだ。
というのも、当時この一帯には、御師(おんし)、つまり、諸国を巡って神宮の御神札(おふだ)を配布するなど、伊勢信仰を広めていた神職たちの館が軒を連ね、参拝者が訪れた際は、自身の館に宿泊させ、お祓いやお神楽を上げるなど、手厚くもてなしていたという。
かつてのお伊勢参りを想像しながら、外宮から内宮へ通じる参宮街道を歩く
八朔参りをきっかけに、伊勢地方独特のならわしに触れ、昔と今を行き来しながら取材を進めてきた。そんな1日の最後に、かつてのお伊勢参りの様子を想像しながら、外宮から内宮に通じる参宮街道を歩いてみることにした。
ご案内いただいたのは、神宮司庁広報室次長の音羽悟さん。駆け足のお参りでは味わえない、伊勢の新たな一面を知るひとときとなった。
伊勢市には、主に3本の河川が流れている。西から宮川、勢田(せた)川、五十鈴川の3本で、かつては関東、関西のどちらの方面から伊勢に入っても、宮川を渡らなければ神宮に参拝することができなかった。
関東方面から伊勢街道を歩いてきた人々は、現在JR参宮線の鉄道橋がある近くの「桜の渡し」、関西方面から伊勢本街道を通ってきた人々は、少し南にある度会橋(わたらいばし)付近の「柳の渡し」で船に乗り、宮川を越えたという。その後、両者は、現在欄干のみが残る筋向橋(すじかいばし)で合流。そこから外宮へ向かったとされている。
つまり、かつて徒歩で参拝する一般の人々は、地理的な面から、外宮の、しかも正門ではなく北御門(きたみかど)から参拝するのが自然だったという。
宮川を望む。現在JR参宮線の鉄道橋が架かる近くに、関東や東国から伊勢街道を歩いてきた人たちが利用する「桜の渡し」と呼ばれる渡し場があった。かつて堤には桜が咲き、茶屋が建ち並んでいたという。
正門を利用するのは、勅使(ちょくし=天皇の使者)などが訪れたとき。彼らは、現在の外宮参道の一角に設けられた下馬どころで馬を下り、そこから歩いて御正宮に向かったという。
参拝後は、室町時代末期の永禄年間に作られたという「伊勢古市(ふるいち)参宮街道」を歩いて内宮へ。
ちなみに古市とは、外宮と内宮の中間に位置する「間(あい)の山」にあった歓楽街で、江戸の吉原、京都の島原と並ぶ日本の3大遊郭の1つとして栄えた場所。江戸時代後期の作家、十返舎一九(じゅっぺんしゃいっく)による滑稽本『東海道中膝栗毛』でも、弥次さん喜多さんが古市の街を訪れた様子が描かれている。
かつての歓楽街、古市の面影を残す麻吉(あさきち)旅館。当時、古市で遊ぶのは神宮へお参りする前ではなく、後という暗<wbr />黙の了解があったという。
かつての参宮街道を巡る。歴史の名残が随所に見られる「間(あい)の山」
もっとも、音羽さんは、本来の参宮街道は少し違うルートを通っていたと言う。
「現在外宮の前を通っている御木本(みきもと)道路も、御幸(みゆき)道路も昔はなく、勾玉池を周回する道も、江戸時代の寛永17年(1640)に整備されたものです。それ以前は、今はありませんが、外宮の風宮(かぜのみや)から、裏手の山を尾根づたいに下りて(宮域外の)岡本に出るか、もしくは、現在の外宮参道にある「豚捨(ぶたすて)」という店の前を通ってから岡本に出て、そこから現在の伊勢古市参宮街道を歩き、御贄(おんべ)川(=勢田川の異名)の川筋に沿って歩いたのでしょう」。
御贄川を渡る際は、小田橋(おだのはし)を利用したとされている。この橋の名は、平安時代の文献にも記されていることから、その歴史は古いと思われる。
だが、現在の小田橋から続く尾部坂(おべざか)は新しい道。江戸時代以前は、小田橋より1本北にある現在の簀子(すのこ)橋から、「間(あい)の山」と呼ばれる小高い丘陵へ続く細い道を歩いていただろうと、音羽さんは言う。
外宮と内宮の中間に位置する間(あい)の山の道。奈良時代からこの道を通って内宮へ向かっていたという。左には外宮神主の度会(わたらい)一族にも関係する岡崎宮妙見堂があったが、今はない。
倭姫命の御陵とされる宇治山田陵墓参考地。
「現在の簀子橋のことを、昔は小田橋と呼んでいた可能性もあると思います」。
たしかに、簀子橋から伸びる細い道を歩くと、積み重なる歴史を感じさせる場所が随所にある。たとえば、1000年以上の歴史を持つ妙見堂の跡があること、また、江戸時代まで代々外宮の神主だった度会(わたらい)一族が、弥生時代と平安時代に居住したとされる住居跡があり、一族の氏寺も、かつてこの近辺にあったこと、そして、倭姫命の御陵と考えられる、宮内庁管轄の宇治山田陵墓参考地があること‥‥‥。興味深い場所が次々に現れる。
度会氏の居宅があったとされる隠岡遺跡。「度会氏は、当時は磯部と名乗っていたでしょう」と音羽さん。弥生時代後期のむらの跡や平安時代の建物群跡が中心の遺構(いこう=生活の跡)で、眼下に勢田川(別名御贄川)が見渡せる。
外宮と内宮の間を流れる勢田川。神宮へ献上する魚を獲っていたことから、御贄川(おんべがわ)の異名がある。物流も盛んで、川沿いには伊勢の台所と呼ばれる問屋街もあった。
気がつけば夕刻。今と昔が交錯するなか、夢中で伊勢の町を歩いた1日が、静かに、ゆっくり暮れようとしていた。
Text by Misa Horiuchi
伊勢神宮
皇大神宮(内宮)
三重県伊勢市宇治館町1
豊受大神宮(外宮)
三重県伊勢市豊川町279
文・堀内みさ
文筆家
クラシック音楽の取材でヨーロッパに行った際、日本についていろいろ質問され、<wbr />ほとんど答えられなかった体験が発端となり、日本の音楽、文化、祈りの姿などの取材を開始。<wbr />今年で16年目に突入。著書に『おとなの奈良 心を澄ます旅』『おとなの奈良 絶景を旅する』(ともに淡交社)『カムイの世界』(新潮社)など。
写真・堀内昭彦
写真家
現在、神宮を中心に日本の祈りをテーマに撮影。写真集「アイヌの祈り」(求龍堂)「ブラームス音楽の森へ」(世界文化社)等がある。バッハとエバンス、そして聖なる山をこよなく愛する写真家でもある。
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永遠の聖地、伊勢神宮を巡る
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Features
ブルガリが描く、色彩の万華鏡
2025.8.30
国立新美術館で開催「ブルガリ カレイドス 色彩・文化・技巧」
《コンバーチブル・ソートワール=ブレスレット》ゴールド、アメシスト、ターコイズ、シトリン、ルビー、エメラルド、ダイヤモンド 1969年頃 ブルガリ・ヘリテージ・コレクション
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ローマを代表するハイジュエラー、ブルガリ。その比類なき色彩美に迫る大規模展覧会「ブルガリ カレイドス 色彩・文化・技巧」が、国立新美術館にて開催される。会期は9月17日(水)~12月15日(月)。
《「ビブ」ネックレス》 ゴールド、プラチナ、エメラルド、アメシスト、ターコイズ、ダイヤモンド 1968年 リン・レブソン旧蔵 ブルガリ・ヘリテージ・コレクション
《ペンダントイヤリング》 ゴールド、プラチナ、エメラルド、アメシスト、ターコイズ、ダイヤモンド 1968年 リン・レブソン旧蔵 ブルガリ・ヘリテージ・コレクション
日本におけるブルガリの展覧会としては10年ぶり、そして過去最大のスケールとなる本展には、約350点のジュエリーが集結。サファイア、ルビー、エメラルドといった原色に、アメシストやターコイズなど半貴石を自在に組み合わせ、カボションカットでその輝きを際立たせる「色石の魔術師」ブルガリ。その大胆かつ独創的な色彩の調和を生み出す唯一無二の手腕に、ジュエリーや現代アートを通じて光を当てていく。
《ブレスレット》 ゴールド、プラチナ、シトリン、ダイヤモンド 1940年頃 ブルガリ・ヘリテージ・コレクション
《ネックレス》 プラチナ、エメラルド、ダイヤモンド 1961年 ブルガリ・ヘリテージ・コレクション
本展では、ブルガリの色彩の革命を3つの章を通して探求。シトリンとダイヤモンドをあしらい、ローマの夕焼けを彷彿とさせる温かな輝きを放つ《ブレスレット》(1940年代頃)や、七つのエメラルドを配した「セブン・ ワンダーズ」と呼ばれる伝説的ネックレス《ネックレス》(1961年)、さらに、ネックレスにもブレスレットにも変化する多色使いの傑作《コンバーチブル・ソートワール=ブレスレット》(1970年代頃)など、ブルガリ・ヘリテージ・コレクションを中心に、歴史的傑作から希少なアーカイブまでが勢揃いしている。
《コンバーチブル・ソートワール=ブレスレット》ゴールド、アメシスト、ターコイズ、シトリン、ルビー、エメラルド、ダイヤモンド 1969年頃 ブルガリ・ヘリテージ・コレクション
さらに今回は、ジュエリーに加え、三人の現代女性アーティストによる新作も展示。回転する色とりどりの洗車ブラシを用いたララ・ファヴァレットのインスタレーションや、古事記に着想を得た森 万里子の瞑想的空間、水、音、鉱物顔料が混ざり合い、流動的なフォルムを形成するさまを空間に投影する中山晃子のインスタレーションなど、それぞれがブルガリのジュエリーと呼応し、色彩の持つ力を多面的に体感できる構成となっている。
会場デザインは、日本の建築家ユニット「SANAA」と、イタリアのデザインユニット「フォルマファンタズマ」が協働で担当。古代ローマ浴場のモザイクパターンと、東京のイチョウの葉の形に着想を得た空間は、訪れる人々を色彩の世界を巡る感覚の旅へと導く。
ジュエリーから現代アートまで、万華鏡のなかを巡るかのような体験をもたらす展覧会。壮麗な展示の数々を通じて、ブルガリの芸術性、クラフツマンシップ、そして精巧さを堪能してほしい。
◆ブルガリ カレイドス 色彩・文化・技巧
【会期】2025年9月17日(水)~12月15日(月)
【休館日】毎週火曜日 ※ただし9月23日(火・祝)は開館、9月24日(水)は休館
【開館時間】10:00~18:00(入場は閉館の30分前まで) ※毎週金・土曜日は20:00まで
【会場】国立新美術館 企画展示室2E
【観覧料】一般 2,300円、大学生 1,000円、高校生 500円
*本展は事前予約制(日時指定券)を導入
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2025.8.30
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打楽器芸術の“今”を、一夜に凝縮
2025.8.30
世界初演から大作まで──パーカッションの頂点を体感「Time for Percussion 2025」
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マリンバ独奏から打楽器8重奏(+ピアノ)まで、世界水準のパーカッシブアーツの“今”を紹介する「Time for Percussion 2025」が、10月23日(木)、サントリーホール ブルーローズにて開催される。
演奏を率いるのは、マリンバソリストの小森邦彦。ドイツ・ヴィッテン音楽祭やニューヨーク・キメルセンターなど世界の舞台で多くの初演を担い、教育者として欧米やアジアの主要音楽院でマスタークラスを行うなど幅広く活動。現在は愛知県立芸術大学で後進を育成しつつ、国際的に演奏を続けている。
今回は、小森氏と7名の次世代打楽器奏者たちが共演。プログラムには、尾高賞・武満作曲賞・芥川作曲賞を唯一すべて受賞した坂田直樹によるマリンバソロ処女作の委嘱世界初演をはじめ、フィリップ・マヌリによる緻密な“鍵盤練習曲”マリンバデュオ、アジア初演となるアレハンドロ・ヴィニャオによる壮大な九重奏など、現代打楽器作品の名曲群が並び、圧巻のパフォーマンスを繰り広げる。
世界初演作品から、話題作ながら実現困難とされた過去の大作までを網羅し、打楽器芸術の最前線を体感できる一夜。サントリーホール・ブルーローズの空間に響く“パーカッシブアーツの頂点”を、ぜひ体感してはいかがだろうか。
◆「Time for Percussion 2025」
【日時】10月23日(木)
18:15開場 18:30プレトーク 19:00開演 21:00終演
【会場:サントリーホール ブルーローズ(東京都港区赤坂1-13-13)
【料金】一般 5,000円、学生 3,500円
障がい者手帳お持ちの方と付き添い お一人まで 3,500円
*未就学児入場不可
*学生・障がい者チケットでご入場される方は会場受付にて証明書をご提示下さい
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旅館の矜持 THE RYOKAN COLLECTIONの世界
2025.8.15
神々の住まう宿「旅館 神仙」の佐藤久美女将 ここにしかない美味と、磨き抜かれたサービスに心和む。
女将の佐藤久美さん。正門のしめ縄から一歩中に入ると、結界に入ったように空気感が変わる。
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「ザ・リョカンコレクション」に加盟する旅館の女将や支配人を紹介する連載「旅館の矜持」。今回は宮崎県高千穂町に位置する「旅館 神仙」女将・佐藤久美さんをご紹介する。
高千穂町は神話の町だ。天照大神(アマテラスオオミカミ)が隠れた天岩戸(あまのいわと)があり、それを解決するために八百万の神が集まった天安河原(あまのやすかわら)の大洞窟がある土地でもある。
また、瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)が天界から降り立った天孫降臨の地だ。霊感ってものには縁がなくても、何となく‶神域〟を感じてしまう人もあるようだ。
今回紹介する「旅館 神仙」にしても、インフルエンサーたちがインスタに投稿する際に、「#神様のいる旅館」などのハッシュタグをつけたりする。
佐藤久美さんは、高千穂随一の名旅館の看板女将である。明るく朗らか。
東京から向かうと、阿蘇くまもと空港から車で1時間20分、女将に会った瞬間に心がほぐれる。
若女将から女将へ
佐藤さんは直系の2代目であるから、女将になったのは自然なことでもある。
「母が初代の女将として旅館に出ていて、私は若女将の時代がありました。17年前のあるとき、楽天トラベルの『女将さん‶おもてなしの心″コンテスト』への参加を楽天さんから打診されまして。父が、『母ではなくて、お前が出なさい』と言うので、私が応募したのです。日本全国、北海道から沖縄まで、自薦他薦で宿の女将さんが30数名出まして、オンラインでの投票でしたが、私が優勝してしまいました。そこからは、若女将の若が取れて、女将となり、母は裏方に回りました」
こうして30代の女将が誕生した。
「30代前半の女将さんて、なかなかいないじゃないですか。50代でも若いぐらい。ですから、もの凄くハードルが高くて、とても思い悩んだ時期もあったんですよ。最初の5~6年はいちばん辛かったです……。とは言え、いまだにお客様の前に出るときには緊張しますけれども」
女将っぷりは堂に入っているのでご安心を。
でも、なぜ「#神様のいる旅館」?
「旅館の敷地内に入られただけで、『結界が張られたような空気感があるね』とお客様に言われることが多いですね。『部屋で座敷わらしに会った』とお話しになる方もいらっしゃいます。みなさん、お化け系の怖い話じゃなくて、とても楽しそうなんです」
筆者の前には出てくれなかったが。
「露天風呂付和洋 月詠」の縁側はとても落ち着く。
祖母が始めた10室の旅館
この「旅館 神仙」、今でこそ押しも押されもせぬ名旅館であるが、そこに至るまでの道は決して平坦ではなかったようだ。女将の話に耳を傾けよう。
「この場所で旅館を始めたのは私の祖母です。1973年8月のことでした。当時の国鉄が1970年に、個人旅行の拡大を狙ってディスカバー・ジャパンというキャンペーンを始めたときに、宮崎県はハネムーン客で人気になりました。高千穂の町は世間でそこまで認知されていなかったのですが、そのときから人がどっと押し寄せるようになって、町には宿の部屋がぜんぜん足りなくなってしまったのです」
その機を捉えたのが祖母だった。
「10部屋で旅館をスタートしました。一部屋の間取りは6畳一間。大浴場が一つあるだけで、お手洗いは共用でした。民宿とも旅館ともどっちともつかないような宿でしたね(笑)。宿の始まりがこうですから、もー、懼れ多いことばかりで、『ザ・リョカンコレクション』に混ぜていただいただけで光栄なんです」
「もー」と身悶えする女将が可笑しい。
「露天風呂付洋室 和楽」の室内。ベッドの寝心地は抜群だ。
社長の一大決心
時計の針を今から50年ほど巻き戻す。この宿にとってのキーマンは、女将の父親・佐藤功宏氏だった。
「祖母からの要請で、父は大学を中退して郷里に戻りました。ちょうど20歳の頃です。当時お付き合いをしていた19歳の母を連れてきて、その何もわからない若い夫婦が旅館業を始めることになります」
父は21歳で初代社長となり、旅館の名前も「神仙」とする。しかし……。
「私と妹が生まれたころには、本当にお客さんがいなくて、旅館が私たちの遊び場でした。かくれんぼをしても、広いから絶対に見つからない(笑)」
10年後の30歳の頃に、一大決心をする。
「こういう経営をしていては、地元の似たような旅館とお客さんの取り合いにしかならない。『その状態から抜け出して、上を目指すぞ』と。純和風の方向に舵を切って、倉庫をつぶして囲炉裏のある部屋を3つ造ったり、料理も全部見直して、京風懐石のようにしました。少しずつ改装を重ねて、1985、6年には一応の形にはなっていました」
磨かれるソフト面とホスピタリティ
佐藤久美さんは中学生の頃から旅館の手伝いをしていた。結婚して一旦は外に出るが、やがて実家に戻ってくる。そして、事実上の女将になるのが冒頭のくだりだ。
「旅館を手伝い始めてからは、お客様に教えていただく方が早いので、客室にアンケート用紙を置きました。散々な書かれようではありましたが(笑)、いろいろ教えていただきました。ハード面はすぐに変えられませんが、ソフト面で出来ることから変えていきました」
そこには深いワケがあった。
「今は違うのですが、長い間、旅館に到着する寸前の道の幅が狭くて、お客様は着いたとたんに機嫌が悪いんです。『あんな道を通らせて』って。宿にいらした瞬間から怒ってらっしゃるので、そこからが勝負でした。もうマイナスからのスタートなので、一生懸命にみんなで盛り立てて、最後に帰られるときには、『ワハハ』というところまで持っていく。笑ってお帰りいただく、それが目標ですから。だから、ソフト面は非常に磨かれましたね(笑)」
現在は異常なほど幅の広い道から駐車場に入れるのだが、ナビに従うとその‶客を不機嫌にさせた細い道″に導かれ、坂の上からの下りの導線になってしまう。だからであろうか、上から車で降りてくると、下の駐車場で待機していたスタッフ2人が猛暑の中、坂を駆け上がってきた。確かに、極めてにこやかで丁重で、「なに、この歓待ぶりは?」と思ったほどだ(笑)。
鬼八塚のある庭「仙乗苑」の太鼓橋上にて。米国人から、この橋の上でサプライズの求婚の演出を頼まれたことも。
庭をいじり包丁も握る社長
父である社長の変革は続いた。
「現在、客室は15室ですが、一つとして同じしつらえの部屋はありません。天井もすべてが違います。設計士は埼玉県の方でしたが、細部の注文は父がしました。父は本職を入れることを嫌うんです。そのようにすると、他の宿と似てしまうからと言うのです。ですから、庭園も京都のお寺さんを独学で勉強して、地元の庭師さんに自分が思い描くイメージを伝えて造園しました」
敷地を拡張していったのも社長である。
「私が戻ってきたときには、旅館の周囲は田んぼと畑でした。カエルの大合唱がBGMでしたね。今ではうちの「はなれ」や「別邸・神庭(こうにわ)」になっています。それと、高千穂には悪行を働いていた鬼八(きはち)の伝説がありまして、退治された後に、三つに切り離されて、首塚、胴塚、手足塚の三カ所に埋められました。その胴塚がちょうど隣の敷地にあったんです。災いばかりが起きるので持ち主が売りたがっていまして、父が買い取りました」
鬼八塚を含む小さな森と庭園は、「仙乗苑(せんじょうえん)」と命名されている。
「鬼八塚を手に入れてから、ウチはうまく行っていますので、見えない何かに守られているなあって感じますね」
社長はツキもあるし、なにしろ多才だ。
「竹の垣根なんかも父がスタッフに教えながら一緒に造っていましたね。できる限り自分たちの手でと言って、庭木の剪定や庭の整備もやっていました。かつては父が、お客様にお出しする鯉を捌いたり、ヤマメの姿造りを作ったりしていました」
現在、73歳になった。
「今日も、ご希望のお客様にお出しする天然の鮎を釣りに行っています。川に腰まで浸かって、命がけです(笑)。鮎が釣れる川は近くに3本あるんですが、今日は見立川ですね」
社長がイメージして造園した本館の日本庭園にて。
社長が高千穂町に抱く郷土愛
社長の高千穂町との関わり方は珍しい。
「父は30歳で煙草をやめたのですが、ご飯が美味しくなって太った。ダイエットのために地元の運動公園で走り始めたら、高校生や陸上部の生徒さんと仲良しになりまして。それをきっかけにして、高千穂高校駅伝部の指導をすることになったのです。3年計画を立てて生徒を鍛えました。宮崎県で駅伝の名門と言えば小林高校ですが、そこに勝って全国高校駅伝大会に行ったのです。周囲からは棚ボタだと言われて、ならばと奮起して、もう一度勝ちました。この3年計画を立てた経験が、その後の旅館の経営にも活かされたそうです(笑)」
歩くことも好きだ。
「父はうちの旅館をスタートして天岩戸神社まで歩く『高千穂歩こう会』を始めたんですね。それが発展して、マラソン大会になった。やがて高千穂町を巻き込んで『神話の里高千穂マラソン大会』となり、前夜祭も企画しました。前夜祭があれば、宿泊も増やせますから。ある程度盛り上がったところで、高千穂町に主催を渡しました。町は数年間続けてから、立ち切れになったようです」
「高千穂トゥギャザーウォーク」というウォーキング大会は町に渡して今も続く。
「父は高千穂に生まれ育っていますから、町のことが好きで高千穂を盛り上げていきたいという気持ちが強いのだと思います。だから発起人になって、何かを始めてしまうのです」
高千穂と言えば、高千穂峡に行かずしては帰れない。レンタルボートなら滝の真下まで行ける。
癒し空間を提供することに特化
現在、「旅館 神仙」のことを考える中心は女将に他ならない。
「ザ・リョカンコレクションに参加してから、各施設様がいろんな体験をお客様に提供しているのを見て、うちは何が出来るのだろうかとずっと考えてきました。でも、高千穂という町自体には素材がいっぱいあります。例えば、高千穂峡や神話史跡コース巡り、あまてらす鉄道、阿蘇山のアクティビティもあります。ですから、旅館から提案する必要はないかなと思い始めています。逆に、地域のDMC(地域に特化した旅行会社)の方たちを応援しながら、様々なプランを作り上げてもらう。その部分は旅館からも紹介して彼らにお任せする」
「露天風呂付洋室 和樂」の露天風呂。各部屋に露天風呂が完備されている。
では、「旅館 神仙」の立ち位置は?
「私どもの宿は『癒し』の部分を重点的にお引き受けすることだと思っているのです。例えば、お風呂は各部屋に露天風呂が付いていますから、タトゥーがあろうがなかろうが、好きなだけ入っていただける。食事もすべて個室ですので、小さなお子さんがいて泣いても何しても、気にされることなく楽しめます。もちろん、情報を望んでおられれば一生懸命に一緒に探します。そうやってお客様に寄り添った癒し空間を提供することに特化するのがウチらしいのかな」
これが幻の尾崎牛のしゃぶしゃぶだ! 何と言う美味しさか。
ここでしか味わえない料理の数々
食事処は14カ所ある。夜と翌朝は個室を替えてくれるので、違う雰囲気で食事が楽しめる。そして、夕食の口開けは、青竹から注いだ熱燗の「かっぽ酒」とキャビアで始まる。
「九州はご飯が美味しいと言われますね。日本三大秘境と言われる椎葉村が宮崎県にあります。そこで養殖しているチョウザメは、耳川の源流かけ流しの水で育てているので、水温が低いために育ちが遅いのです。普通は6年ぐらいでキャビアを取るのですが、ここでは8年まで育てます。すると、卵形が大きくなりますが、その中でもいちばん大きなものを『神仙キャビア』としてお出ししています」
確かに、味わったことがないくらい粒は大きく、塩気は少なく、卵黄のようにすこぶるクリーミーだった。毎年一回のワイン会では、<wbr />チョウザメの解体ショーが目玉になっている。
「お客様の前で捌いて、取れたてのキャビアをお酒で洗って提供しています。生産者しか食べられないフレッシュそのもののキャビアです。これをご飯に載せてキャビア丼も楽しめますよ」
ひゃー、それは堪らん。残念ながら、とりあえず、<wbr />来年3月開催が最後の予定。
幻の尾崎牛もある。
「尾崎牛は一年中お出しできます。この牛肉は融点が28度ととても低いので、舌の上でも脂がすぐに溶けます。ぜんぜんくどくないですね。それをしゃぶしゃぶとステーキの両方でお召し上がりいただくことも可能です」
確かに戴きました。凄まじいばかりに美味しい肉でした。中居さんがソッと明かすには、女将のコネクションがあってこそのものだそうだ。
朝食の目玉は卵かけご飯。箸で切れるほど黄身がプリプリ。五ヶ瀬町の「ひのひかり米」もねっとり甘くて秀逸。
他にも、農家との繋がりも緊密だ。
「宮崎の農家さんのマンゴー、熊本の農家さんのスイカ、メロン、ナシなどは収穫のお手伝いをさせていただいて、直接に仕入れています。ちょっと傷がついて売れないものでも、味は変わりませんから、旅館で使います。少しでも農家さんのお手伝いになるように考えています」
大プロジェクトが進行中
実は、来年7月の開業に向けて、大プロジェクトも進行中だ。
「大分の別府に『別府 神仙』をオープンします。場所は市内の鉄輪ではなくて南立石のほうです。6棟の宿ですが、土地を買って一から建てていまして、高千穂よりもハイレベルなものを目指しています。部屋は120平米から200平米で、お子様はNG、大人の宿にします。50数年間にわたって宿をやってきた私ども、というか父の集大成になるはずです」
女将 佐藤 久美(さとう くみ)
1974年宮崎県西臼杵郡高千穂町生まれ。1992年宮崎県立高千穂高等学校普通科卒業、1994年CICカナダ国際大学通訳翻訳科2年課程卒業を経て、「旅館神仙」入社。1995年スペイン・マドリードのEstudio International Sampereにて5週間の語学研修。2006年楽天「女将〝おもてなしの心〟コンテスト」日本一に輝き、母(現大女将)から女将を引き継ぐ。2009年バリ島にてBalinese Traditional Body Massage Diploma取得、翌年バリ島にてBalinese Traditional Facial Massage Diploma取得。2013年日本ソムリエ協会認定ソムリエ資格取得。
構成/執筆:石橋俊澄 Toshizumi Ishibashi
「クレア・トラベラー」「クレア」の元編集長。現在、フリーのエディター兼ライターであり、Premium Japan編集部コントリビューティングエディターとして活動している。
photo by Toshiyuki Furuya
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2025.8.29
「”Dîner de la Sincérité” ~杉本雄の”サンセリテ”~」美食レポート 帝国ホテル総料理長・杉本雄が京都の食材に出会ったら
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「”Dîner de la Sincérité” ~杉本雄の”サンセリテ”~」とは、帝国ホテル総料理長・杉本雄さんがプロデュースする、食への真摯な敬意が込められた特別な食事会。
もともとは料理長が料理をふるまうイベントとして、第11代帝国ホテル 東京の料理長だった村上信夫さんが1978年にスタートさせたもの。杉本さんも、第14代帝国ホテル 東京料理長に就任した2019年から継承されています。
杉本シェフが日本各地の素晴らしい食材と向き合い、ゲストのために一期一会の皿を創り上げるこの会を、毎回楽しみにしているファンも存在するほど。このイベントに参加する貴重な機会を得ました。
杉本さんのモットー「美味しく社会を変える」。それを実施する取組みのひとつとして、杉本さん自ら地方に出向き、生産者の方々と交流して新しい食材に出合い、そして、生産者の方々が食材に込めた思いを杉本さんの料理に乗せ、お客様に楽しんでいただくことを大切にしているそうです。
今回の「サンセリテ」のテーマは京都府産の高品質な食材たち。杉本シェフみずから幾度も京都を訪れ、準備してきました。「帝国ホテルには素晴らしい食材が集まってきますが、厨房を飛び出して実際に生産地を訪れ、新たな食材と出会うことは、料理人として極めて重要な経験です」と述べています。
杉本シェフがセレクトした京都府の食材。京都は、豊かな食材の宝庫。今回は丹後ぐじ、美山の鮎、万願寺甘とう、賀茂なすなど、京都の海と山の恵みを揃えた。
今回、杉本シェフが選び抜いた食材は、京都府産の万願寺甘とう、賀茂なす、鮎や鱧、丹後ぐじ、そして宇治抹茶など。ペアリングするワインや日本酒も京都産を用意する徹底ぶりです。杉本シェフの技術とユニークな発想によって、どのような一皿に変貌するのでしょうか。
杉本シェフの食材へのリスペクトから生まれる美味なるコース
テーブルに置かれたメニューからすでに京都とのコラボレーションは始まっていました。スリーブをそっと外すと、この日のために選んだ「黒谷和紙」のカバーの中にメニューが入っているのです。厚みのある、独特の手触りが心地よい「黒谷和紙」は、なんと文庫本サイズのブックカバーにもなるというすぐれものです。
杉本シェフがアミューズをサーブしてくださいました。帝国ホテルの総料理長である杉本シェフが直々にテーブルまで来てくれるなんて。その近さに驚きました。聞けば、そもそもこの「サンセリテ」は、杉本シェフのお料理を直接ゲストにお出したい、それも宴会場ではなくレストランで、ゲストと会話をしながら楽しんでいただきたい、という思いから始まったそうです。杉本シェフの即妙でテンポのよい説明が期待を高めてくれます。
「鮎 初夏野菜のタルトレット オシェトラキャビアを添えて」は、タルトそして美山川の鮎のベニエのサクサクとした軽やかな感触が心地よい一品です。京都・美山川の鮎は、清流で育つことで身が引き締まり、香りと繊細な味わいが特長。藻を食べて育つため、ほんのりとした香ばしさがあります。
「鱧 炭落とし 茸のミジョタージュと黒トリュフ香るコンソメスープ」。炭落としとは、鱧を皮目から炭にはわせて火入れを行うという、和食の技法を取り入れたそう。炭火と黒トリュフの香味が広がり、新しい鱧の味わいを知りました。
「オマールブルー 海老のナヴァランとコニャックのフランベ 万願寺甘とうのトリコロールパプリカのゼブラ」。万願寺甘とう、本当に長い!この形状にインパクトがあります。「万願寺甘とうを見た時、このポテンシャルをそのまま表現したいと思いました」と語ってくれた杉本シェフ。だからそのままの魅力的な姿を活かしたそう。オマール海老とさわやかな万願寺甘とうがマッチ。
「甘鯛 カリカリの鱗焼き モダンに仕立てた白ワインバターソース」。京都では「ぐじ」と呼ばれるアカアマダイ。ぐじの皮をカリカリに焼き上げると、白バターソースがよく絡みます。食感と香ばしさ、なめらかなソースの旨味がリッチな味わいです。今回採用した「丹後ぐじ」は、延縄漁で釣り上げた後、厳格な品質管理のもと高鮮度で出荷されるブランド魚。平成24年(2012年)には「京のブランド産品」にも認証されました。
「賀茂なす イチボ肉のミソナードと牛生ハム ヴィテッロ・トンナートソースで」。賀茂なすは「京の伝統野菜」の代表格。大きさと肉質の良さで「ナスの女王」と呼ばれているそう。賀茂なすはふんわりとやわらかく、なす独特の甘みとイチボ肉がよく合います。
「京丹波 日本鹿 ロース肉のカイエット 黒コショウをきかせたジュ」。ジビエは鹿肉。京丹波の鹿肉をミンチにしてボール状にしたものを網脂で包んで焼いたもの。ジビエの旨味が凝縮。鹿肉は「国産ジビエ認証」の第1号を取得した、衛生管理と品質に優れた鹿肉を提供する専門店「鹿肉のかきうち」より取り寄せました。
「ロース肉のカイエット 黒コショウをきかせたジュ」と一緒に供された「鹿ブリオッシュ」。鹿肉のミンチが入ったブリオッシュ!ブリオッシュの甘みとジューシーな鹿肉が楽しめる一品。
デザートの準備に取り掛かる杉本シェフ。このデザートのために茶道の先生のレッスンを受けたそう。杉本シェフが立てている抹茶は、丸利????田銘茶園のもの。宇治市小倉地区で16代にわたり続く、老舗茶園です。
杉本シェフが目の前で仕上げた「丸利????田銘茶園 抹茶 宇治タルトレット 濃茶のアフォガード カモミールアイスクリーム」。丸利????田銘茶園の上質な抹茶の風味のタルトレットとカモミール味のアイスクリームの妙。カモミールのアイスクリームは記憶に残る味わいでした。
京都産のものをメインにしたペアリングもユニーク。お料理との相性も抜群。
シャンパンを除き、すべて京都産のもので揃えたペアリングのラインナップ。右から京都宇治玉露 玉兎、Palmer & Co. Blanc de Blancs、神蔵 純米 無濾過 無加水 生酒 クリア、京都丹波 ピノ・ブラン シュール・リー 2023、京都丹波 タナ 2020、季のTEA 京都ジン。
杉本総料理長の料理への情熱に触れて
今回の「”Dîner de la Sincérité” ~杉本雄の”サンセリテ”~」は、杉本シェフの食材へのあくなき興味と追求、そして彼の情熱を感じさせるものでした。
ゲストはそれぞれのテーブルで、この一期一会のお料理を楽しみます。杉本シェフがセレクトした、京都のさまざまな食材が、この一皿に昇華したその瞬間を目撃できるよろこびがあります。その食材の来歴や、料理へのアイディアなど、杉本シェフと触れ合いながら、コースが進んでいくのです。料理を介して、京都の食材を知り、その土地や人々の営みに触れるという、稀有な体験がここにはありました。
それは、杉本シェフをはじめ、サービスのスタッフのレベルの高さがあるからこそ可能なこと。すべてのテーブルに気を張り巡らせながら、親しみやすさと隙のないサービスが両立していました。
京都府は南北に細長い地形を持ち、京都市をはじめ、山城・南丹・中丹・丹後の5地域に分かれています。海と山の恵みがもたらす、さまざまな食材を供給する、豊かな土地です。今回、その京都の食材をどう料理として昇華させるのか、一皿ごとに杉本シェフの発想に驚かされつつ、スタッフ全員の情熱に心をつかまれた、素晴らしい一夜でした。
中嶋千祥 Chisa Nakajima
編集NことPremium Japanの編集長ダイリ。1950~60年代の日本映画鑑賞とワインを飲むのが大好き。戦後の女性誌収集が趣味というちょいオタク。
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