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鹿児島の「宝」を巡る旅
2025.10.23
注目の自然派コスメを生み出す、鹿児島のボタニカルガーデンと工房を訪ねて
鹿児島のボタニカルガーデンで栽培されている何種類ものハーブが、自然派コスメの原料となる。写真は「ヴィーナスターオーガニクス」が手掛ける、ダマスクローズや月桃などを用いた化粧水など。(価格等の詳細は後述)
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温暖な気候と豊かな自然が残る鹿児島は、ハーブや花々を栽培するボタニカルガーデン(植物園)が多い。自社農園で栽培したハーブなどを用いてナチュラルコスメやアロマオイルなどを作る工房も幾つか存在する。なかには、自社ブランドのみならず、大手コスメメーカーから委託を受けて生産し原料を提供する、いわゆる「OEM」を行っている工房も。つまり、それだけ鹿児島で作られる製品のクオリティが高いということに他ならない。今回の「南の宝箱 鹿児島」を巡る旅では、こうした自然派コスメに携わる「開聞山麓香料園」「ヴィーナスターオーガニクス」そして「ボタニカルファクトリー」の3つの工房や自社農園に足を運んだ。
開聞山麓香料園
80年以上の歴史を持つ、日本で最初のハーブ園
薩摩半島の南端に位置し、美しい稜線を見せる開聞岳(かいもんだけ)。薩摩富士とも称される優美な山の麓に広大なハーブ園を構えるのが「開聞山麓香料園」だ。開園は1941年。日本で最初のハーブ園といわれている。
ハーブ園の広さは、サッカーグランドのおよそ8面分以上に相当する約6ヘクタール。そこにレモングラス、ローズマリー、レモンユーカリ、ティーツリー、ローズゼラニウムなど50種類ほどのハーブが植えられている。なかでも特筆すべきは、1万本を超す芳樟(ほうしょう)の木だ。芳樟はクスノキ科の植物で台湾が原産地。葉にはリナロールという成分を多く含み、抽出されたリナロールがフルーティで甘い香りを発することから、「開聞山麓香料園」では、1947年からこの芳樟の栽培を始めている。
後方にずらりと並ぶ、薄い茶褐色の幹を持つ木が芳樟。なかには20mほどの高さになるものも。開聞岳がボタニカルガーデンを優しく見守る。
早速、副園長の宮崎利樹さんに園内を案内していただいた。道の両脇に高さ7~8mほどの木が立ち並ぶ。これが芳樟の木だ。
「匂いを試してみませんか」
宮崎さんが一枚の葉をちぎり、手渡してくれた。そっと嗅いでみる。甘く爽やかであると同時に、どこか懐かしさも感じさせる香気が仄かに立ち上る。樟(くす)から採れる樟脳の、ツンとした香りとはまったく異なる、どこまでも甘く爽やかな香りだ。
「この甘く爽やかな香りの素がリナロールで、私どもの工場が生産する芳樟精油の成分のうち80%がリナロールです。これほどリナロール含有率の高い植物由来の精油はなかなか他にはありません」
緑も鮮やかな芳樟の葉。爽やかと同時に柑橘系をも感じさせる複雑な香りを放つ。
1947年に台湾から芳樟が持ち込まれたことを契機に、南薩摩地方では芳樟の栽培が盛んになり、最盛期の1970年前後には、知覧や枕崎でも栽培がおこなわれ、年間5トンもの精油が抽出された。しかし、人工のリナロールが登場し、手間のかかる芳樟からの抽出は行われなくなっていた。
「ところが、近年は自然派志向が高まり、合成リナロールでなはく100%天然由来の精油が再び脚光を浴びるようになりました。そうした流れを受けて、『開聞山麓香料園』でも芳樟精油の抽出を再び始めるようになりました。現在では年間約20㎏の精油を生産しています」
農園の奥では、ちょうど芳樟の葉の収穫が行われていた。チェンソーで幹から伐り落とされた枝を一か所に集め、葉だけを手早く小枝から摘み取っていく。響くのはチェンソーのエンジン音だけ。屋外で黙々と行われる地道な作業だ。
チェンソーで刈り取った小枝から、葉を一枚一枚摘んでいく。精油作りはこうした地道な作業から始まる。
「1㎏の精油を抽出するのは100㎏の葉が必要となります」
宮崎さんのこの言葉を聞くと、精油を抽出するのがどれだけ大変な作業であることがよくわかる。しかも一度葉を収穫すると、次の収穫まで3~4年は間を置かなければならないとのこと。1万本もの芳樟は、ある意味では必要な本数だったのだ。
蒸留所では、春と秋に蒸留体験ツアーも実施
蒸留所にも案内していただいた。あいにく、蒸留の作業が行われていない時期だったが、所内に並ぶ3つの蒸留器は、なんとどれも創業時から使われているという年代もの。時代を感じさせる装置が、80年前と同じ精油を生み出しているかと思うと感慨深い。
蒸留所には、丹念にメンテナンスされた蒸留器が3台並ぶ。
園長を務める父の宮崎泰さんをサポートし、精油作りに邁進する宮崎利樹さん。
蒸留所の奥には、大きなフラスコなどが並ぶ、まるで理科実験室の様な部屋も設けられている。蒸留された精油を、この部屋で半年から1年ほどねかせ、香りを落ち着かせる。すべてが、極めて手のかかる完全な手作業で、ようやくひとつの商品ができあがる。
「開聞山麓香料園」のシグネチャーアイテムともいえる、「芳樟精油」。7ml、2,200円・3ml、1,000円(いずれも税込)
「芳樟精油」は、やわらかな甘さと清々しいグリーンの香りが調和した、心をほぐすような優しいアロマ。リラックス効果が期待できるため、ドライハーブに数滴垂らして香りを漂わせたり、アロマディフューザーで寝室を満たせば、一日の疲れを静かに癒してくれる。また、他の精油とブレンドすれば、自分だけのオリジナルアロマを楽しむこともできる。
農園で栽培した月桂樹、ローズマリー、オレガノ、タイムをブレンドした「ハーブの香りだし」。7パック入り、1,000円(税込)
「ハーブの香りだし」とは、ブーケガルニのこと。通常はパセリやタイム、ローリエなどを束ねて煮込み料理に加え、素材の臭みを抑えながら、深みのある香りを添えるものだ。この「ハーブの香りだし」は、開聞山麓香料園で育てられた月桂樹、ローズマリー、オレガノ、タイムの4種を贅沢に使用。シチューやロールキャベツ、スープなどのお鍋にひとつ入れるだけで、爽やかな香気がふわりと広がり、旨味をぐっと引き立ててくれる。いつもの家庭料理が、ひとさじの魔法でレストランの味に変わる──そんな上質な香りのひと包みだ。
匂い袋、お風呂用の香水、石けんなど、ショップにはオンラインでは販売していない園内限定のアイテムも並ぶ。
「開聞山麓香料園」では、芳樟をはじめ、レモンユーカリ、ローズマリーなどの精油、ハーブティや石鹸などの自社製品を併設のショップで販売。広大な農園を散策し、さまざまなハーブが栽培されている様子を実際に見学することもできる。また、定期的に開催される蒸留体験は、予約開始すぐに満席になる人気ぶりだ。80年という長きにわたり、自然派コスメの源流を培ってきた「開聞山麓香料園」。ぜひ足を運んでみたい。
開聞山麓香料園
鹿児島県指宿市開聞川尻5926
Tel:0993-32-3321
開園時間:9時~17時
定休日:火曜日
入園料:無料
ヴィ―ナスターオーガニクス
夫婦二人三脚で手掛ける、高品質の自然派コスメ
月桃、ローズマリー、レモングラス、ローズゼラニウム、レモンバーム……。10種類近くのハーブが植えられたガーデンで、自ら育てたハーブを愛おしそうに眺めるのは、永仮紗彩さん。夫の洋文さんと二人三脚で、「ヴィーナスターオーガニクス」ブランドのオーガニックコスメを手掛ける紗彩さんはカンボジア生まれ。洋文さんと結婚して日本に帰化し、永仮さんの故郷である鹿児島でハーブ栽培を始めた。
自宅兼工房前に設けられたハーブガーデンで、手塩にかけて育でたハーブを見つめる永仮紗彩さん。
ボタニカルガーデンで栽培されているさまざまなハーブ。右上から時計まわりに、レモングラス、ペパーミント、ティーツリー、月桃。
「カンボジアでは、ハーブが日常の食事や医療に深く溶け込んでいます。私自身も幼い頃からハーブに親しんできました。温暖な鹿児島もハーブ栽培には適した気候ですので、ここで何種類ものハーブを栽培し、人工的なものは何も加えない自然派コスメを多くの人にお届けしたいと思います」
自宅兼工房の周囲に設けたハーブガーデンの他に、約2,000坪ほどの農園を持ち、そこでも20種類ほどのハーブを栽培し、それを原料としたさまざまな自然派コスメが作られる。
「霧島は豊かな自然だけでなく、シラス台地が濾過したミネラルが豊富な天然温泉水に恵まれた土地です。雨も多いのでハーブが育ち、それを上質な水を用いて化粧水を作ると、肌に優しい素晴しい商品が出来上がります」
商品開発を担当する洋文さんがリコメンドしてくれたのは化粧水「ジャポニズムローション」シリーズ。ダマスクローズ、ジャスミン、月桃など5種類の商品は、いずれも霧島の天然水に、イチョウ葉エキスやワサビの葉エキスなど4種類の鹿児島産植物エキスを配合し、それぞれのハーブの香りを纏わせたもの。合成香料や合成着色料、鉱物油といったいわゆる人工化合物は一切含まれていない、文字通りの自然派コスメだ。
「ジャポニズムローション」シリーズの中から、「ダマスクローズ」を試してみた。手のひらに取ると、みずみずしくさらりとしたテクスチャーで、驚くほど甘く、華やかなダマスクローズの香りが立ちのぼる。頬や額にそっとなじませれば、潤いとバラの甘い香りで、気分まで上がるようだ。毎日のスキンケアで、この香りに触れるたび、肌だけでなく心までも満たしてくれる、そんな優雅なひとときをもたらしてくれるローションだ。
左から、ジャポニズムローション(ダマスクローズ)、ジャポニズムローション(月桃)いずれも200ml・3,520円(税込)ジャポニズム ツバキマルチオイル 、30ml・3,740円(税込)、ルームミスト(桜島小ミカン×霧島レモングラス)、30ml・1,980円(税込)
鹿児島産椿を用いた「ツバキマルチオイル」もおすすめ。椿油は古くから日本女性のスキンケア、ヘアケアに使われてきたもの。「ツバキマルチオイル」は、低温圧搾法にて圧搾した希少な椿油に、ダマスクバラ花エキス、ダマスクバラ花油、トウキンセンカ花エキス、カミツレ花エキスを配合したマルチオイル。スキンケア、ヘアケアはもちろん、頭皮ケア、爪のお手入れ、ボディオイルとしても優秀。ダマスクローズの香りが素晴らしいので、至福のケアを堪能できる。使い勝手のよいアイテムだ。
15種類のエッセンシャルオイルを80%以上使用した「ルームミスト」もラインナップは豊富。桜島小ミカンの果皮の精油と、霧島産レモングラス精油をブレンドしたルームミスト「桜島小ミカン×霧島レモングラス」は、爽やかさの中にミカンの甘さがあり、気温や湿度が高い時に使えば、リフレッシュ効果は抜群。
ドライハーブにすると、水分が抜けて成分が凝縮され、香りが強くなる。右奥から時計まわりに、バタフライピー、カレンデュラ、カモミール、ダマスクローズ。いすれも自家栽培したもの。
「ヴィーナスターオーガニクス」は自社製品だけでなく、抽出した原料を用いた自然派コスメの開発を、化粧品メーカーとともに行っている。また、さらに良質なものを目指し、来年に向けて自社コスメのリニューアルの検討も始まっている。
「肌に使うものは、新鮮なものではなくてはなりません。また、植物が持つ本来の力を最大限引き出すには、やはり新鮮な植物が必要となってきます。そのためには素材となる植物は自ら作る、あるいはできる限り近いところ、つまり鹿児島県産のものを使うのがベストだという結論に辿りつきました。」
桜島小ミカン、ティーツリー、タンカン、ヒノキ葉、レモンユーカリ、レモンバーベナ……。洋文さんが語るように、「ヴィーナスターオーガニクス」が手掛けるさまざまな原料は、いずれも自家栽培もしくは鹿児島県産から作られる。
高品質の精油を生み出す、ポルトガル製の銅の蒸溜器
工房には、精油や芳香蒸留水を生産する銅製の蒸留器が2台備わっている。「アランビック」と呼ばれるポルトガル産の蒸留器は、現地の銅職人が胴板から手作業で打ち出した伝統工芸品。
「ガラス製やステンレスに比べ、熱伝導率が高いために、植物の生臭さのもととなる硫黄系成分が除去され、高品質の精油や芳香蒸留水を抽出することができます」
2台の蒸留器並ぶ工房は、それほど広くはない。でも、この自宅裏に設けられた工房で、夫婦二人で丁寧に作られた数々の原料が、多くのコスメメーカーへと渡り商品となっていく。マニュファクチュール(家内制手工業)の原点がここにはある。
銅製の蒸留器が2台置かれた、こじんまりとした工房。銅イオンの殺菌効果により、保存期間の長い蒸留水を抽出することができる。
ヴィーナスターオーガニクス
お問合せメールアドレス:mail@venustar-organics.com
*現在、見学には対応していません。
ボタニカルファクトリー
大隅半島の大自然が育んだ、注目の自然派コスメ
温帯気候と亜熱帯気候が入り混じる鹿児島県の大隅半島。4,000種類以上の植物が群生する半島は、豊かな緑に覆われた自然豊かな地が広がる。この大隅半島の最南端に位置する南大隅町に本拠を置く化粧品メーカー「ボタニカルファクトリー」の製品や活動に、近年注目が集まっている。
4,000種類を超す植物が生い茂る大隅半島。「ボタニカルファクトリ―」の本社と工場のすぐ裏手も、濃い緑に覆われた景色が広がる。
「生まれたばかりの娘がかなり重いアトピー性皮膚炎となり、食事療法やさまざまなスキンケアを試したのですが、どれも効果はありませんでした」
「ボタニカルファクトリー」代表の黒木靖之さんが、ナチュラルコスメへ目を向けるきっかけとなったのは、自身の娘さんへの思いからだった。じつは黒木さんは、それ以前から化粧品の輸入販売などを手掛ける事業に携わり、化粧品に対する知識もある程度持っていた。
「自ら化粧品に携わっていながら、自分の娘のアトピーには何の役にも立っていない」
そんな思いを抱いた黒木さんは、肌に優しく、口に入れても安心な化粧品作りへと事業の方向を切り替えていった。
黒木さんが最初に取り組んだのは子どものための石けんとフェイスオイルだった。アトピーに効くとされたダチョウの油を用いた手作りの石けんとフェイスオイルが好評となり、2006年には故郷の南大隅町に工場を設立。
「大隅半島の豊かな自然を生かした、自然由来100%の成分にこだわり続けたいと思います」と、代表の黒木靖之さん。
「以前は気づきもしませんでしたが、南大隅という土地は、月桃をはじめさまざまなハーブが自生するという、アロマオイルを作る原料を入手するには最適の地なのです」
当初は、自生するハーブや自家栽培したレモングラスなどでアロマオイルを作り、それを石けんの香り付けに用いていたが、やがてアロマオイルや蒸留水を使ったスキンケア商品のラインナップが増え、2016年には「ボタニカルファクトリー」が誕生した。場所はもちろん南大隅だ。
廃校となっていた小学校と中学校の校舎をリノベーションして工場に
廃校となっていた小学校と中学校をリノベーション。それが南大隅の地に誕生した「ボタニカルファクトリー」の本社と工場だ。町の協力で借り受けた校舎は、町の人々にとっても思い出がつまった建物。その活用は、地域の人々にとっても嬉しい知らせとなった。それだけではない。町の特産物であるパッションフルーツの規格外品を買い取ってローションの原材料とし、工場は地元の女性やシニア層の働き場となるなど、「ボタニカルファクトリー」の存在は、地域活性化の大きな拠点となっている。
図書室だった部屋を改装し、ショールーム兼ワークスペースに。窓からは広がる大海原を見渡すことができる。
「ボタニカルファクトリー」が手掛ける化粧品のブランド名は「ボタニカノン」。植物の「ボタニカル」と、音楽用語の「カノン」を組み合わせた造語で、植物本来の成分や香りが、カノン(輪唱)のように重なって届いてくることがイメージされている。
地元産のパッションフルーツを用いたローションは、地元の農家から買い取った規格外のパッションフルーツを丸ごと活用。さらりとした付け心地ながらも、気が付くと肌がしっとりし、そのしっとり感は、やがてハリ弾力に変わる。また、南国の太陽を思わせるパッションフルーツ独特の爽やかな香りがほどよく残り、それはいつまでも、まさしくカノンのように嗅覚を心地よく覚醒させてくれる。
また、フェイスオイルはベタつかずさらりとしているにもかかわらず肌馴染みがよく、化粧水のブースターとしてオイルマッサージ後に化粧水を重ねることで、水分と油分とのバランスが整う。
右/シトラス スカルプ&ヘアローション、100ml・2,750円(税込) 左/パッションフルーツローション、100ml・1,650円(税込)
左/ホーリーバジル化粧水、150ml・2,420円(税込)右/フェイスオイルEX、30ml・3,410円(税込)
「こちらへどうぞ」
黒木さんに導かれるまま辿りついた場所。それはかつて校舎だった建物の屋上をルーフトップテラスに改装したスペースだった。きらめく鹿児島湾の大海原を挟み、開聞岳が優美な稜線を見せている。目を見張るような絶景だ。海から吹き抜ける風が心地よい。
「3年ほど前から、リトリートツアーを開催しています。ゲストの方々には、ヨガシークエンスや工場でのオーデコロン作り、その後は天気が良ければこのテラスでランチ、そしてメディテーションと、盛りだくさんのメニューを体験していただきます。最近では県外からお越しになる方も増えてきました」
錦江湾を一望するルーフトップテラスには、ソファが置かれ、流れる時間をゆったりと味わうことができる。
原料から生産までを一貫し、しかも天然成分由来を原料とした化粧品作りをほぼ実現させる一方で、「ボタニカルファクトリー」は、化粧品が出す有害なゴミを減らすために、容器は再生プラスチックへと徐々に移行させている。
「私たちは大手メーカが行っている大量生産、大量消費とは距離を置いています。もともと、それができるような規模でもありません。ですので、現在の体制をベースに、鹿児島という地の利を生かし、今まで以上に地元に密着した自然派化粧品作りを目指しています」
「ボタニカルファクトリー」は、海を挟んだ対岸の「開聞山麓香料園」から原料の一部を仕入れている。大隅半島と薩摩半島、二つの半島の間で原料がやりとりされているのだ。また、南大隅町には国の指定史跡の「佐多旧薬園」がある。これは薩摩藩が薬草を採取していた場所。黒木さんの言葉が物語るように、ハーブ栽培に関する独自の歴史を持ち、ハーブを介した工房間の交流が行われている鹿児島は、自然派化粧品づくりには格好の土地といえよう。
ボタニカルファクトリー
鹿児島県肝属郡南大隅町根占辺田3222(旧登尾中学校)
Tel:0994-24-3008
豊かな自然と、そこで暮らす人々の知恵が結びついたとき、その土地にはさまざまな「宝」が生まれる。鹿児島県の各地で生まれ、光り輝く数々の「宝」。それらは今や、世界が注目する存在になりつつある。
そんな鹿児島の宝を巡る旅は、これからも続く。これまでの「南の宝箱 鹿児島を巡る旅」は以下から。
Photography by Azusa Todoroki(Bowpluskyoto)
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鹿児島の「宝」を巡る旅
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Features
アマン京都で味わう特別なランチ体験
2025.10.17
色づきはじめる森の庭を眺めながら、秋の美食を堪能
京都・鷹峯の森の中に佇むアマン京都のレストラン「ザ・リビング パビリオン by アマン」では、色づきはじめる庭を眺めながら秋の味覚を楽しめる2つのランチメニューを提供している。
11月30日(日)まで開催される「秋のガーデンテラスBBQ」では、シェフが目の前で仕上げるコース仕立てのバーベキューランチを、開放感あふれるテラス席で味わえる。
メニューは、脂の乗った渥美プレミアムラスサーモンのシーザーサラダに始まり、旬の茸や秋野菜、ぷりっとした海老を熱々のオリーブオイルで仕上げたアヒージョなど。メインディッシュには、専属シェフが絶妙な火加減で焼き上げる黒毛和牛サーロインが登場する。
締めくくりには、キャラメリゼした焼きパイナップルとミルクアイスのデザートが登場。澄みわたる秋の空気とグリルの香りが溶け合う、贅沢な秋の昼下がりを楽しめる。
香ばしくローストした七谷鴨胸肉に赤ワインとゴボウの香るソースを添えて。
一方、11月18日(火)まで開催される「秋の恵みを味わうコース」は、色づきはじめる森の庭を眺めながら旬の美食を楽しむランチコース。
全7皿または全5皿から選べるコースの前菜には、旬の戻り鰹を主役に、トマトとビーツを重ねたカルパッチョが登場。メインディッシュは、京都亀岡産のブランド鴨「七谷鴨」のロースト。赤ワインソースとゴボウの香りが重なり、鴨の旨味を一層引き立てる。ラストを飾るのは、京都城陽産の完熟無花果を多彩な技法で仕立てたデザート。みずみずしい甘みがコースの余韻をやさしく包み込む。
芳醇な甘みと繊細な香りが織りなす京都城陽産の無花果を使用したデクリネゾン
秋の気配に満ちゆく庭を前に、季節と対話するような美食体験を味わえる2つのランチメニュー。アマン京都ならではの、贅沢で静謐な時間を堪能してみてはいかがだろうか。
秋のガーデンテラスBBQ
【期間】開催中〜2025年11月30日(日)
【料金】BBQコース 15,000円(税・サービス料込)、フリーフロードリンクオプション +5,000円
【時間】12:30~
【予約】2日前17:00までの事前予約制
【場所】アマン京都 ザ・リビング パビリオン by アマン
秋の恵みを味わうコース
【期間】開催中〜2025年11月18日(火)
【料金】テイスティングメニュー(全7皿)18,000円/シェフズリコメンド(全5皿)15,000円
【場所】アマン京都 ザ・リビング パビリオン by アマン
【予約・問い合わせ】075-496-1335(9:00~18:00)
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Features
北欧の名作家具に出会う宿
2025.10.16
カール・ハンセン&サンの名作家具と古民家宿が響き合う「Hygge Stay by Carl Hansen & Søn」
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デンマーク王室御用達の家具メーカー、カール・ハンセン&サンが、瀬戸内の伝統的な日本家屋で北欧のヒュッゲを体感できる、宿泊体験型インスタレーション「Hygge Stay by Carl Hansen & Søn」を開催中。2026年2月15日(日)までの期間限定で宿泊が可能だ。
会場は、香川県丸亀市・本島に佇む一棟貸しの古民家宿「Villa Tomari」。かつて郵便局長が暮らしていた旧松野邸をリノベーションした宿は、当時としては珍しくモダンな造りで、北欧家具との相性も抜群。
伝統的な日本家屋が蓄えてきた「経年の美しさ」が光る空間に、ハンス J. ウェグナーの「CH23」や「CH88P」、ボーエ・モーエンセンの「BM0121 ダイニングテーブル」などの名作家具が自然に溶け込んでいる。
さらに屋外スペースには、カール・ハンセン&サンのアウトドア家具を配したサウナエリアも。風と光、そして静寂に包まれながら“ととのう”ひとときを堪能できる。
館内にはカール・ハンセン&サンの貴重なオリジナルのアーカイブ写真や、デンマークの海の風景、本島の地図などをアートピースとして展示。時の流れとともに深みを増す空間で、時代を超えて受け継がれる名作家具の魅力を体感してみてはいかがだろうか。
◆「Hygge Stay by Carl Hansen & Søn」
【期間】開催中~2026年2月15日(日)(瀬戸内国際芸術祭 秋会期(10月3日~11月9日)と一部重複)
【場所】Honjima Villa「Villa Tomari」(香川県丸亀市本島町泊494-16)
【形式】宿泊体験型インスタレーション(1日1組/4名まで)
【料金】50,000円(税込)~/1泊(食事別途予約制·有料)
【宿泊定員】4名まで
photo: Shinsuke Inoue
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Experiences
Spotlight
モータージャーナリスト清水和夫の車探訪
2025.10.15
清水和夫が唸る 新型「フェラーリ849・テスタロッサ(Testarossa)」の特別感
849 Testarossaとともに登場したフェラーリジャパン代表取締役社長ドナート・ロマニエッロ氏(左)と、本国からヘッド オブ プロダクト マーケティング マネージャーマルコ・スペソット氏が登場。
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まだ残暑厳しい9月の終わりごろ、都心の真ん中でフェラーリが誇る最速のスーパーカーが発表された。その会場は高輪ゲートウェイ隣接のコンベンションセンターだが、そこは足を踏み入れることすら躊躇してしまうほど、イベントスペース全体が赤で染まっていた。
赤といえばフェラーリのアイコンだが、今回の新型は「フェラーリ849・テスタロッサ(Testarossa)」と命名された。テスタロッサとはイタリア語で「赤い頭」を意味し、その名の通りエンジンのカムカバーが赤く塗装されている。テスタロッサの名前は1950年代の名車「250 Testa Rossa」の伝統を受け継いでいるが、当時のフェラーリはフロントにエンジンを搭載するFR(フロントエンジン・リヤ駆動)方式を採用していたため、赤く塗られたエンジンはフロントに収められていた。兎にも角にもテスタロッサは、歴史的にレースのDNAを持つフェラーリのフラッグシップモデルだったのだ。
フェラーリの由来とは
フェラーリという名前を知らない人はいないと思うが、その由来は創業者エンツォ・フェラーリの名前にある。1950年代、レーシングドライバーだったエンツォ・フェラーリはその後、レーシングチームを設立し、イタリア北部マラネロにレーシングカーと高性能スポーツカーを製造するメーカーを立ち上げた。
創業時からの哲学は「レーシングカーと高級スポーツカーのみを少量生産する」という方針を守り続け、それがブランドの根幹となった。しかし、フェラーリはただ速さを追求するだけでなく、スタイリングの美しさ、オーケストラに喩えられるエンジンサウンドなど、そのすべてが芸術的と評価されてきた。この「機能美」と「芸術性」の融合こそが、クルマ文化の象徴としての地位を築いたのである。
なお、「テスタロッサ」の名を冠した市販モデルがデビューしたのは1984年。その発表会はパリ・シャンゼリゼ通りの「キャバレー・リド」で行われた。筆者はその記事を自動車雑誌で知ったときから、「テスタロッサ」は特別なフェラーリなのだと感じていた。
プロドライバーも憧れるスポーツカー
私もプロのレーシングドライバーとしてのキャリアがあるものの、フェラーリのステアリングを握ってレースバトルを繰り広げることは夢のまた夢。叶わない夢であっても、そのコクピットに収まる自分の姿をイメージしながら、今回の発表会に出席した。
2025年9月24日、プラグイン・ハイブリッド・ベルリネッタ849Testarossaが日本で初披露された。849 Testarossa Spiderもラインアップされ、14秒で開閉可能なリトラクタブル・ハードトップによるオープンエアも楽しめるという。
ここで簡単にフェラーリ849テスタロッサのプロフィールを紹介しておこう。基盤技術は3モーターのプラグイン・ハイブリッド。プラットフォームは「SF90ストラダーレ」の後継となるが、あえて「テスタロッサ」と命名したのは、現行フェラーリの中で最速を誇るからだろう。中身はSF90ストラダーレをベースにしているが、スタイリングは大きく異なり、新しいフェラーリのデザイントレンドを示している。
フェラーリはまた、SF90ストラダーレをベースによりサーキット志向を高めた「SF90XXストラダーレ」もリリースしている。筆者は幸運にも、この究極モデルをマラネロのサーキットでドライブする機会を得たが、まるで公道を走るレーシングカーのような速さに驚かされた。
ただし「SF90XXストラダーレ」は限定799台。ステアリングを握れるオーナーは限られている。最高出力1000ps超をプラグイン・ハイブリッドとV8エンジンで叩き出すその走りは、まさにF1マシンをロードカーに移植したかのようだった。
このモデルは0-100km/h加速を2.3秒以下で達成すると発表されているが、新型テスタロッサも細部の改良により「SF90XXストラダーレ」に迫るパフォーマンスを実現している可能性が高い。
発表会に参席していたマルコ・スペッソット氏は、テスタロッサの速さは「SF90ストラダーレ」を上まわるとコメント。言葉を選びながらも、孤高の存在である「SF90XXストラダーレ」と肩を並べる性能を秘めていることを示唆していた。ボディスタイルは2ドアクーペのベルリネッタと、格納式ハードトップを備えたスパイダー(オープンカー)が発表されている。
水平なダッシュボードを持ち、ステアリングホイールには各種スイッチ類が配置され機能性を重視。まるで浮遊したかのようなシフトゲートが印象的だ。カーボンファイバー製シートと、コンフォートシートの2種類が設定される。
“849”という新たな称号が与えられた
ボディサイズ=全長4718mm×全幅2304mm(ミラー込み)×全高1225mm、ホイールベース=2650mm。車両重量は1570kg。タイヤサイズはフロントが265/35R20、リヤが325/30R20。
「849」の意味は、V型8気筒エンジンの1気筒あたりの排気量が490ccであることを示している。
この4.0L V8エンジンはターボを備え、リヤミッドに搭載。もちろんエンジンカバーは赤く塗られている。新開発の4.0L V8ターボは従来比+50psの830psを発揮。
さらにプラグイン・ハイブリッドシステムはフロントに2基、リヤに1基のモーターを搭載し、モーターのみで220PSを発揮。システム総合出力は驚異の1050psに到達する。0-100km/h加速はSF90より0.2秒短縮されており、「SF90XXストラダーレ」を凌駕している可能性すらある。バッテリー容量は7.45kWhで、EVモード航続距離は25kmを確保。フェラーリ・ジャパンは国内価格を6465万円と発表した。
タイヤサイズはフロント245/35R20、リア325/30R20で、ピレリ、ミシュラン、ブリヂストンの3社が選べる。ブレーキはバイワイヤシステムが採用され、独自のABS技術を投入する。
テスタロッサは「SF90XXストラダーレ」の化身か?
パフォーマンス的に「SF90XXストラダーレ」と肩を並べるとすれば、849テスタロッサの走りを想像するのは容易だ。ここで筆者が2年前に試乗した「SF90XXストラダーレ」の記憶を呼び起こしたい。
2023年11月、イタリア北部マラネロのサーキットはあいにく濡れた路面だった。冷えたタイヤとマシンへの不慣れさもあり、最初は慎重に走るしかなかった。だが、1030psのモンスターを前にして、スロットルを全開に踏み込む衝動を抑えきれなかった。
瞬間、背後からV8ターボの800psが目を覚まし、モーターのトルクが加わることで強烈な加速Gが身体を押し付ける。まるでロケットにまたがったかのような感覚だった。路面温度が上がり、タイヤの接地感がステアリングを通じて明確に伝わってきたとき、「攻めの走り」に移行できる準備が整った。
1030psを使いこなすにはブレーキングが決定的に重要だ。カーボンコンポジット製ブレンボブレーキと進化型ABS「ABS-evo」の組み合わせは、半乾きの路面でも安定性を失わない。左右で路面状況が異なる場面でも、ダウンフォースと電子制御により不安定な挙動は見られなかった。
さらに高速コーナーでは、大型リヤウイングが250km/hで530kgものダウンフォースを発生させ、F1直系の空力技術が安定性をもたらす。200km/hのコーナーではステアリングがずっしりと重くなり、強い接地感が伝わる一方、低速コーナーではダウンフォースが薄れ、ステアリングは軽快になる。
エアロダイナミクスは、冷却性能の最適化とダウンフォースの増強を狙い、512Sや512M、FXX-Kなど、往年のレースカーを思い起こさせる。ダウンフォースは250km/hで415kgに達し、SF90Stradaleをも凌ぐ。
新世代フェラーリはハイブリッドを駆使するサラブレッド
849テスタロッサは一見、手に余る荒馬のように思えるかもしれない。しかし実際には、最新テクノロジーによって調律され、史上最速かつ最も洗練されたサラブレッドへと進化しているはずだ。
フェラーリが追求するスポーツカーは、単なる速さだけを誇るマシンではない。ドライバーに感動と情熱を呼び覚ます「パッションクリエイター」である。
「山男には惚れるな」という格言があるが、フェラーリ好きの男性にも惚れてはいけない。どんな美女がパッセンジャーシートに座っていようと、その存在を忘れてしまうほど特別な世界がフェラーリにはあるのだ。
清水 和夫 Kazuo Shimizu
国際自動車ジャーナリスト 神奈川工科大学自動車工学部客員教授
1972年のラリーデビューし、1980年代からプロのレースドライバーに転向し、国内外の耐久レースに参加する一方、国際自動車ジャーナリストとして活動。現在はラリーから始まりレースにプロとして参戦し、再び全日本ラリーに復帰。自動車の運動理論・安全技術・環境技術などを中心に多方面のメディアで執筆活動を行うほか、TV番組のコメンテーターやシンポジウムのモデレーターとして多数の出演経験を持つ。
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Features
ニコライ・バーグマン×PEANUTSがコラボレーション
2025.10.15
25年と75年。ふたつのアニバーサリーが重なり合う限定品
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フラワーアーティスト、ニコライ・バーグマンが手がけるオリジナルフラワーボックスの誕生25周年を記念して、誕生75周年を迎える『PEANUTS(ピーナッツ)』とコラボレーション。特別なフラワーボックス「Nicolai Bergmann meets PEANUTS.」 が数量限定で発売中だ。
(左から)フレッシュフラワーボックス Imaginary White S(11×11×H9cm) 7,700円、プリザーブドフラワーボックス Imaginary White S(11×11×H9cm) 19,800円(共に数量限定品)
今回のコラボレーションでは、『PEANUTS』の物語の奥深さを2種類のデザインで表現。楽しそうに舞い踊るスヌーピーを、きらめく箔押しで描いた“Imaginary White(イマジナリー ホワイト)は、華やかで心弾むデザイン。⾒る⼈の⼼を解き放ち、無限の想像⼒を掻き⽴てる。
(左から)フレッシュフラワーボックス Journey Black S(11×11×H9cm) 7,700円、プリザーブドフラワーボックス Journey Black S(11×11×H9cm) 19,800円(共に数量限定品)
もう一方は、スヌーピーとウッドストックのコミックのワンシーンを、マットブラックにあしらった“Journey Black(ジャーニー ブラック)”。ボックスの側面や底面には、75個のスヌーピーの足跡と25個のウッドストックの足跡が散りばめられ、過去から未来へと続く“旅路”を象徴している。
今なお世界中で愛される『PEANUTS』と、フラワーデザインを通して感動を届けてきたニコライ バーグマン。節目の年を迎えた両者による、今だけのフラワーボックス。ぜひお見逃しなく。
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星のやに泊まる、星のやを知る
2025.10.10
星のや軽井沢「森林養生」プログラム 森に身をゆだね、心身を解き放つ3泊4日の旅
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“その瞬間の特等席へ。”をコンセプトとする星のやブランドの始まりの地である「星のや軽井沢」。今年開業20年を迎え、「谷の集落に滞在する」をテーマに、「日本の原風景」を描いた美しい景観と心豊かな時間が過ごせる宿として、多くの人々を魅力し続けています。今回ご紹介する「森林養生」プログラムは、ただ休むための滞在ではありません。森を歩き、湯に浸かり、旬の養生食をいただき、体を調えていく。この体験を繰り返すことで、驚くほどに心身がリセットされていく体験プログラムです。今回は3泊4日のプログラムの一部を体験し、その背景を開発者に伺いました。
自然に抱かれ、ゆっくりと深呼吸するように身体が調っていく「森林養生」プログラム
チェックインを済ませると、3泊4日のスケジュールの説明と共に、現在の身体の状況をお話するコンサルテーションが行われます。
ただのんびりするだけではなく、身体を見つめ直して、身体を調えることに焦点を合わせた旅。
どんな旅になるのか、果たして効果を実感できるのか、そんな想いを抱きながら、プログラムがスタートします。
まずは、「深呼吸入浴法」を学びながら大きく呼吸をして身体の緊張を解していく。
その後は、プログラムの主軸の1つである「森林浴ウォーキング」に向けて、ノルディックウォーキングポールの使い方を敷地内でレッスン。ノルディックウォーキングポールは通常のポールとは使い方が異なり、ポールを身体の前で杖として使うのではなく、身体の後ろでウォーキングをサポートするようにして使います。そのためにウォーキングを後押ししてテンポよく歩けて、姿勢を正して足を出すことで身体が温まっていくようです。
説明によると、ノルディックウォーキングポールを使うと、普段よりも腕を大きく振ることで全身運動となり、運動量が高くなるとのこと。緑豊かな環境で身体を動かすことの心地よさを感じながら、頭を空っぽにして歩みを進めることに爽快感を感じていきます。
到着後の緊張した身体をゆっくりとほぐしながら、「深呼吸入浴法」を学ぶ。
いざ、森林浴ウォーキングへ出発。コースはその日の体調に合わせて基本3つのコースから選ぶことができます。もちろん相談すれば、別のコースを選択することも可能とのこと。
軽井沢の名瀑「竜返しの滝」と「白糸の滝」、二つをめぐる道を選びました。途中まで車を走らせ、そこからは歩いて森の深みに分け入ります。足を踏み出すごとに、土の柔らかな感触が体に響き、小鳥のさえずりや木々のざわめきが心を優しく撫でていく。静寂に抱かれた世界で感覚がひとつずつ研ぎ澄まされ、絡まっていた思考がほどけていく。気づけば、胸の奥まで風が吹き抜けるように、心がすっと軽やかになっていくのです。
ポールを使うことで足取りが軽くなり、歩くことが楽しくなっていきます。
「竜返しの滝」まで来ると、一気に空気が変わり、気温も下がり、自然と深呼吸がしたくなっていく。
鍼灸・ボディケアの施術で、身体と深く向き合う
心地いい疲労感に包まれた後は、楽しみにしていた鍼灸・ボディケアの施術。実は鍼灸ははじめての体験。一度はやってみたいと思っていたものの、信頼できる先生でないと不安ということもあって未だに体験できていませんでしたが、星のや軽井沢が選んだ国家資格を有する、鍼灸・柔道整復師の方であれば安心です。
初日のカウンセリングで体調を細かく確認。3日間にわたり、その日の体調に合わせ、丁寧に施術が行われていきます。約150分の施術後は不思議と身体の痛みが和らぎ、さらに血が巡ってきたのか身体はポカポカです。
さらにいえば、朝起きた瞬間から腰痛に悩んでいましたが、翌朝は久しぶりの清々しさに包まれて、「こんなに自分の体は軽かったのか」と効果を実感しました。
完全個室のスパ棟では、水のせせらぎしか聞こえてこない。
施術は痛みを感じることなく、心地いい。
食べることも「森林養生」の大切な要素
「森林養生」のさらなる柱となるのは食事です。このプログラムではスポーツ栄養学に基づいた薬膳仕立ての特別食と星のや軽井沢のメインダイニング「日本料理 嘉助」での食事が三食用意されています。つまり滞在中の食事も徹底的に管理。
今回の夕食は「日本料理 嘉助」で『山の懐石』をいただきます。秋の食材である松茸や鮎、信濃雪鱒、薩摩芋などを使った料理はとにかく美しく、そして体に染み入る優しい味わいに仕上がっています。身体が調っていたせいもあるのか、ペロリと完食。
プログラムでは、2日目の夕食は特別食「山の旬菜鍋御膳」です。旬の野菜や薬膳素材が美しく盛られた鍋は、体に優しいだけでなく、食欲を満たす力強さもあるレシピ。
椀盛「中秋月」は、十三夜豆腐とすっぽんの身を入れた白玉は兎に見立てて。
重陽の節句をイメージした、進肴「被綿」。菊花蕪の中に鹿真薯が入り、上には松茸が乗っています。
素晴らしい環境の中での適度な運動、ボディケア、美味しい食事で大満足の1日の終わりは源泉かけ流しの温泉「メディテイションバス」で「深呼吸入浴法」を実践。ただ湯に浸かるのではなく、呼吸を整え、湯の中で軽く体を伸ばす。体が温泉に包まれながら、深い呼吸を繰り返すと、一日の疲れが取れるとともにエネルギーがみなぎっていくようです。温泉の力を“積極的に活かす”入浴法があることを今回はじめて知りました。
心も体も健やかになり、その日の夜はすぐに眠りにつくことができました。
朝食は、地元の山の恵みを薬膳の知恵と掛け合わせた「山の旬菜粥朝食」をいただく。滋味深いお粥を口に運ぶと、体がじんわり温まっていきます。朝からしっかり食べることは、新たな一日の始まりを整え、体を養う行為だと実感します。
特別朝食「山の旬菜粥朝食」。右奥の養生粥は戻貝柱ほぐし身、銀杏や百合根、小豆などが入った香り豊かで優しい味わい。
今回は3泊4日のプログラムの一部の体験ではありましたが、自分の身体の内に耳を傾け、自然の中で体を調えていく経験でした。都会でトレーニングをするのとは異なり、まさに心身が調っていくことを実感できます。貴重な休日をどう過ごすかを考えた際、食事や運動、そして鍼灸が調った環境にただ身を置くだけで、心も体も驚くほど軽くなっていきました。
完全個室になっているスパ棟。
星のや軽井沢からはじまった「養生」という発想と取り組み
この「森林養生」プログラムの開発背景について、星のや軽井沢総支配人の赤羽亮祐さんと、スパ開発を手掛け、さらには今回の「森林浴ウォーキング」のサポートもしてくださった髙橋明日香さんに話を伺いました。
「養生」とは、自分を養い、健やかに生きるための知恵。そう語るのは、星のや軽井沢総支配人の赤羽亮祐さんです。
「日本には古来から、食や呼吸、休息を通じて自分を整える文化がありました。星のや軽井沢ではその知恵を現代に置き換えて、軽井沢の自然や温泉の力を借りて心身を調える体験として「森林養生」プログラムを開業して間もないころから提供しています。
星野リゾート入社後、プログラム開発に従事。2015年に「星のや軽井沢」総支配人、2019年に「星のや東京」総支配人を務め、2021年から再度「星のや軽井沢」総支配人を務めている。
「森林養生」プログラムが始まったのは開業当初から
「当時はマクロビオティック(マクロビ)が注目されており、健康的な食事への関心が高まっていました。そこで「森林養生」でも食事を中心としたプログラムを行っていましたが、当時は今よりずっとストイックで、玄米を百回噛む、ゴマをすり続けるといった厳格な食事法でした」と赤羽さん。
「当時は食事の際に横に座って指導をするほど徹底的な指導でした。その甲斐あって、滞在中に減量ができたり、フェイスラインがすっきりしたなど目に見えた効果を感じていただきましたが、いまは無理なく続けられることを重視しています。大切なのはゲストが自分のペースで“心地よさ”を見つけることですから」とプログラムを企画・開発した髙橋さん。
「森林養生」プログクラムのスタート当時から企画に携わっている髙橋さん。ご自身もマラソン大会に出場するほどのアスリートである。
さらに髙橋さんは「森林浴ウォーキング」で新たに採用したノルディックウォーキングポールについても話してくれました。
「通常のポールは杖のように使用しますが、このノルディックウォーキングポールは腕を大きく振って、ウォーキングのサポートをしてくれる道具になります。ウォーキングの助けになるとともに、全身運動となることで運動量も増加します。このポールを使ったことで、普段より長い距離を歩けたとおっしゃるお客様もいて、帰宅後にポールを購入されて日常に取り入れているようです。ここでも体験が一時的なものではなく、帰ってからの生活に生かされることは嬉しいですね」と話します。
ウォーキング中は腕に心拍計をつけて、運動による心拍の変化をチェックしていきます。
まずはポールの使い方をレクチャーしていただく。ポールを使うと、姿勢を正して、テンポよく進むことがラクになります。
エビデンスに基づき、あらゆる角度から養生を行っていく
もちろん食事を大切にする発想は、スタート当時から変わることなく反映されています。
「薬膳は特別なものに感じられるかもしれませんが、基本は旬の食材を活かすことからはじまります。信州ならではの恵みを取り入れ、運動や施術の効果を高める献立を提供しています。今回より地元で、アスリートの運動や食事指導を行っている公益財団法人『身体教育医学研究所』と『ニッスイ湯の丸アスリート食堂』の力をお借りしたプログラム構成になっているのも特徴です」。
また鍼灸をはじめとする東洋医学のアプローチも、今回から導入したものです。3日間に渡って行われる鍼灸とボディケアの施術は、それぞれの体調を見ながら行われます。連日の施術で、より体の声に耳を澄ませることで、自分に合った回復法を見つけるきっかけとなるはずです。
星のや軽井沢を象徴するランドスケープ「棚田ラウンジ」を背景に。
さらに特徴的なのは、スタッフ全員がプログラムに関わっている点です。外部講師に任せるのではなく、スタッフ自身が知識や技術を学び、ゲストに寄り添っていく。
「だからこそ小さな変化に気づけるのです。ゲストが自分なりの物語を紡ぐ、そのそばに寄り添うのが私たちの役割だと思っています」と赤羽さんは語ります。
いまではその発想は他の「星のや」にも広がっています。星のや竹富島では「島時間養生」、星のや東京では「深呼吸養生」といった形で展開され、土地固有の自然や文化を取り入れながら、ゲストが自分を見つめ直すきっかけを提供しています。
広大な星のや軽井沢。悪天候の日は、星野温泉 トンボの湯へ続く「イチイの丘」で、軽いランニングなどで身体を慣らすのもおすすめです。
取材を終えて思うのは、このプログラムは「癒し」を超えた存在だということです。森を歩き、湯に浸かり、旬をいただき、ただ休む——。そのシンプルな行為の積み重ねが、自分自身を深いところからリセットしてくれます。
赤羽さんが最後に語った言葉が印象的でした。
「ここは“何かをする場所”ではなく、“何もしないことを思い出す場所”なんです」
森に抱かれながら過ごす3泊4日の滞在は、忙しい時間を過ごす私たちが忘れかけていた“調和・調整”を呼び戻す意味深い時間になりました。
◆星のや軽井沢「森林養生」
・実施 通年
・料金 1名270,000円〜(税・サービス料込)*宿泊料別
・含まれるもの コンサルテーション2回、深呼吸入浴法レクチャー1回、森林浴ウォーキング4回、鍼灸・ボディケア3回・浅間山ストレッチ1回・のびのび深呼吸1回、夕食「日本料理 嘉助・山の懐石」2回、特別夕食「山の旬菜鍋御膳」、朝食「日本料理 嘉助・山の朝食」1回、インルームダイニング朝食1回、特別朝食「山の旬菜粥朝食」1回
・定員 1日1組(2名まで)
・予約 公式サイトで10日前までに受付
・対象 星のや軽井沢宿泊者
・備考 身体バランスや要望、天候に合わせてスケジュールは変更になる場合があります。
仕入れ状況やスケジュールにより食事内容が一部変更になる場合があります。
2名でご予約の場合は一部滞在スケジュールを変更させていただきます。
Text by Yuko Taniguchi
Photography by Natsuko Okada(Studio Mug )
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