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永遠の聖地、伊勢神宮を巡る
2025.12.27
人生一度は訪れたい伊勢神宮 Premium Japanがおすすめする参拝とは?
内宮のお参りは宇治橋から。五十鈴川を渡る前に、まず1礼。この鳥居は外宮の旧御正殿の棟持柱を用いている。
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今年、2025年の1月から始まった当連載も、いよいよ最終回。これまでさまざまな視点で、ときに式年遷宮のおまつりに触れながら伊勢の神宮について紹介してきた。今回はその締めくくりとして、ちょっとツウなお伊勢参りを提案したい。改めて参拝方法について整理し、またお伊勢ファンには人気のある遙宮(とおのみや=伊勢から遠く離れた別宮)の瀧原宮(たきはらのみや)、伊雑宮(いざわのみや)も含めた別宮(べつぐう)にも焦点を当て、ご紹介しよう。
お伊勢参りは外宮からはじめる
お伊勢参りは、できれば午前中、それも早朝に行いたい。朝一番の生まれたての光に包まれた神域は、すがすがしさや神々しさが一段と際立って感じられる。
まずは、外宮先祭(げくうせんさい=外宮で先におまつりが行われること)のならわしに倣って、皇大神宮(内宮)より先に豊受大神宮(外宮)を参拝。正門の火除橋を渡って、いざ神域へ。頭上を覆う木々の緑と、ところどころに木漏れ日が差し込む豊かな森に包まれた参道を進むごとに、不思議と心が落ち着いてくる。
お参りは、参道の左側にある手水舎から始まる。柄杓で掬った水で手と口を清め、日々の暮らしで知らず知らずのうちに身に付いてしまった、目には見えない穢れを流し、清浄にするのだ。身体の外を表す手と、身体の中を表す口、両方を清めることによって、心身の禊を行っていると考えられている。
外宮の御敷地(みしきち=次の式年遷宮で御正殿が造営される場所)に立つ大木。
参道を歩くときに気をつけること
外宮の参道は、手水舎が左側にあるため左側通行。右手にある御正宮に対し、遠い側を歩くという敬虔な気持ちを表しているとも言われている。
ちなみに、参道の中央を人が通るのは遠慮した方がよいとされている。
「室町時代の書物『参拝式類聚(さんぱいしきるいじゅう)』にも、参拝作法の心得として、参道の真ん中––––正中(せいちゅう)と言いますが––––を通るときは、慎みの心を持つようにと書かれています。
そもそも参道の正中は、昔は少し高くなっていて、おまつりのときに天皇陛下に代わって、陛下の祈りを捧げる勅使がお通りになる、『置道(おきみち)』と呼ばれる道がありました。ですから、正中は尊いところであり、絶対通ってはいけないというわけではないけれども、通るときは慎みの心が必要だとする考え方が、古くから伝わってきたのでしょう。それが、やがて神様の通り道という信仰的なものに変わっていった。おそらく日本人は、正中には何か特別な、敬虔な気持ちにさせるものがあると、古来感じてきたのだと思います」。
神宮の広報室次長の音羽悟さんは言う。
参道を歩くときは、足元の小さな自然や生き物にも目を向けながら、ゆっくりと。
もっとも、御正宮でのお参りに関しては、
「真ん中でされたいと思われるのは当然ですし、みなさん敬虔な気持ちでお参りされると思いますから、間違ったことではないと私は思います」
外宮の別宮をお参りしよう
御正宮のお参りの後は、外宮の別宮である多賀宮(たかのみや)へ。別宮とは、御正宮に対する「わけ(別)のみや(宮) 」という意味で、御正宮に次いで格式が高いとされている。
ちなみに、一般の神社でも、「宮」は「社」よりも格上の存在。古くは天皇陛下より、「社」から「宮」への昇格を認める「宮号宣下(きゅうごうせんげ)」が下されて、はじめて「宮」を名乗ることができたという。
特に多賀宮は、外宮の主祭神、豊受大御神の荒御魂(あらみたま=ときに臨んで、格別に顕著な神威をあらわされる御魂のお働きを指す)をお祀りする、外宮第1の位にある別宮。外宮創建と同時にお祀りされ、豊受大御神と御一体の関係にあるとされている。
もとは「高宮(たかのみや) 」と称され、社殿は100段近くある急な階段を登った小高い丘の上にあるが、ぜひお参りしたいお宮である。
参道から頭上を見上げる。
外宮の別宮、土宮は、なぜ神宮の中で唯一東を向いているのか
多賀宮の下には、やはり外宮の別宮、土宮(つちのみや)と風宮(かぜのみや)が御鎮座。
土宮には、古くは外宮のある山田原の鎮守の神で、外宮創建後は、宮域の地主神になったという神様が祀られている。
「土宮の社殿は、神宮の中で唯一東に向いていますが、これは御祭神が東を向いているわけではないんです。よく神様はどちらを向いていらっしゃるんですかと聞かれるのですが、神様は大地に根付いてその土地を守っていらっしゃって、一方向だけでなく全体を見渡していらっしゃるんです。
大事なのは、お祀りする側がどちらの向きに祈りを捧げるかで、土宮の場合は西、つまり宮川の方を向いています。古来宮川水域は肥沃な土地でありながら、氾濫による被害に悩まされていたことから、鎮守の神として、宮川に敬意を表するようにお祀りされたのでしょう」。音羽さんは言う。
一方、風宮には、風雨を司る神様がお祀りされている。
ちなみに、両宮が別宮に昇格したのは、神宮のなかでは比較的新しく、土宮は大治3年(1128)、風宮は正応6年(1293)のことという。
夜之食国(よるのおすくに)を治める神様をお祀りする外宮の別宮
別宮のお参りの後は、北御門(きたみかど)から宮域を出て、そのまま北へ。神路通りという名の道を300mほど歩くと、こんもりした森が見えてくる。外宮の別宮、月夜見宮(つきよみのみや)である。
この別宮の御祭神は、月夜見尊(つきよみのみこと)と月夜見尊の荒御魂(あらみたま)。
外宮の別宮、月夜見宮にある楠の大木。伊勢市駅からも近いながら、豊かな森が広がる。
『古事記』や『日本書紀』によれば、月夜見尊は、御祖神(みおやがみ)である伊弉諾尊(いざなぎのみこと)が海で禊をされたときに、天照大御神に次いでお生まれになった弟神とされている。このとき右目からお生まれになった姉神、天照大御神は、神々の世界である高天原を、左目からお生まれになった月夜見尊は、夜之食国(よるのおすくに)を治めるよう、伊弉諾尊から委任されたという。
ここまでお参りしてきた別宮の名称に付く「土」、「風」、「月」、そして、内宮にお祀りされている神宮の主祭神、天照大御神の象徴として例えられる「太陽」……。お伊勢参りは、常日頃存在して当たり前だと思っている、さまざまな自然に対する感謝を捧げる行為かもしれないと、ふと思う。
内宮のお参りの前に、内宮の別宮、
倭姫宮(やまとひめのみや)と月読宮(つきよみのみや)以下4別宮のお参りを
さて、お伊勢参りは外宮から内宮へ。もっとも、その途中には、内宮の別宮である倭姫宮(やまとひめのみや)と、月読宮(つきよみのみや)など4つの別宮が御鎮座している。
倭姫宮の御祭神である倭姫命(やまとひめのみこと)は、天照大御神の御鎮座の地を求めて、大和(現在の奈良県)の笠縫邑(かさぬいむら)から、天照大御神の御杖代(みつえしろ=神の杖の代わりとなって奉仕する者)となって各地を巡行されたと伝えられる、第11代垂仁天皇の皇女。
その後、天照大御神の御神託により、倭姫命は現在の伊勢の地に御鎮座の地をお定めになったが、功績はそれだけではない。天照大御神へのお供え物である御料や、お米をはじめとする野菜、果物、海産物といった神様のお食事である神饌の内容、さらに、その御料を調達する場所までお定めになったほか、神嘗祭などの祭祀や奉仕者の職掌など、神宮の経営の規模や組織に関わる基礎を確立されたと伝えられている。
倭姫宮の春の大祭の様子。倭舞や舞楽が奉納される。なお、倭姫宮の創立は、神宮の緒宮社のなかでも格別に新しく、大正10年(1921)。近くには、神宮のおまつりに関する資料や重要文化財を展示する神宮徴古館などもある。
しかも、鎌倉時代初期には『倭姫命世紀(やまとひめのみことせいき) 』が編纂され、倭姫命の巡行地の詳細やその教えが、後世に伝え継がれることとなった。
教えのなかには、たとえば、人の心のなかにはもともと神が存在し(=「心神」 )、その心のなかの神を、汚すことなくそのままに生きる姿(=「正直」 )が理想とされている。だが、日々の生活のさまざまな雑念や私欲によって、穢れはどうしても生じるもの。その穢れを祓によって清め、本来の境地である「清浄(しょうじょう) 」に戻す、というような、参拝の意義について、一般の我々にも参考になる内容も盛り込まれている。
一方、月読宮の御祭神は月読尊。外宮の別宮、月夜見宮の御祭神と漢字こそ違うものの同じ神様で、月の満ち欠けを司るとともに、月齢を読むという解釈から、暦をもたらすと考えられている。
加えて、月読宮の左隣には、月読尊の荒御魂がお祀りされている、月読荒御魂宮(つきよみあらみたまのみや)の社殿。
神域には、ほかにも月読尊の御親神である伊弉諾尊をお祀りする伊佐奈岐(いざなぎの)宮と、その妻(ただし、月読尊がお生まれになったときはすでに他界し、黄泉の国にいた)の伊弉冉尊(いざなみのみこと)をお祀りする伊佐奈弥(いざなみの)宮もあり、4つの社殿が横1列に建ち並んでいる。
なお、ご神名に「尊」が付くのは、『日本書紀』に「至って尊きを尊(みこと)といい、その他を命(みこと)という」の記述に則ってのことだという。
内宮のすがすがしい空気を五感で感じたい
内宮のお参りでは、まず宇治橋の鳥居に注目したい。五十鈴川の手前にある鳥居は、外宮の旧御正殿の屋根を支えていた棟持柱(むなもちばしら)。橋を渡り切ったところにある鳥居には、内宮の、やはり旧御正殿の棟持柱が使われている。
内宮は、外宮と逆で右側通行。
参道の右手に現れる御手洗場(みたらし)で、俗世の垢を祓った後は、別宮ではないものの、祭祀に関しては別宮に準じて執り行われるという五十鈴川の守り神、瀧祭神をお参りしよう。
御正宮をお参りした後は、天照大御神の荒御魂をお祀りする内宮の別宮、荒祭宮(あらまつりのみや)と、風日祈宮(かざひのみのみや)へ。神域のすがすがしさを五感で感じたい。
内宮の別宮、風日祈宮へ向かう際に渡る風日祈宮橋。内宮は右側通行が基本だが、この橋に限り、神職など神宮関係者は左を歩く。
早朝の神域に、清らかな陽の光が降り注ぐ。
お伊勢ファンに人気の高い内宮の別宮で、
遙宮(とおのみや)と呼ばれる瀧原宮(たきはらのみや)と伊雑宮(いざわのみや)
さらに、お伊勢ファンなら1度はお参りしたいのが、内宮の別宮で、遙宮(とおのみや)とも呼ばれる瀧原宮(たきはらのみや)と伊雑宮(いざわのみや)。ともに天照大御神をお祀りしている。
瀧原宮の御鎮座は、約2000年前まで遡る。前述の『倭姫命世紀』によれば、倭姫命が天照大御神の御鎮座の地を求めて、宮川の下流から上流へ向けて進まれたときに、「大河之瀧原国(おおかわのたきはらのくに)」という麗しい土地があり、神殿を造立されたのが起源という。
瀧原宮の宮域にある御手洗場。頓登(とんど)川は、宮川に合流する大内山川の支流。この川を伝って、古くから南方との交通が行われていたという。
瀧原宮の社殿。左には、瀧原竝(たきはらのならびの)宮が並んで御鎮座。2宮並べてお祀りするのは、内宮の御正宮で天照大御神を、荒祭宮で天照大御神の荒御魂をお祀りする形態の古い姿とも言われている。
樹齢数百年の杉の大木が立ち並ぶ参道、その脇を流れる頓登(とんど)川の清らかな水と御手洗場。内宮の佇まいを彷彿とさせながらも、お参りする人はさほど多くなく、ゆっくり参拝できるのも魅力である。
一方伊雑宮は、伊雑の浦にも近い三重県志摩市に御鎮座する別宮。
天照大御神が伊勢の地に御鎮座された後、倭姫命が天照大御神へのお供え物を採る御贄地(みにえどころ)を定めるために、志摩の国を巡行した際、伊佐波登美命(いざわとみのみこと)が豊かに稔った稲を奉ったことがきっかけで、創建されたという。
現在も、当宮の御田植式は有名で、千葉の香取神宮、大阪の住吉大社とともに、日本3大御田植祭の1つに数えられ、国の無形文化財に指定されている。
伊雑宮の宮域にある古木。さほど広くはないが、風格があるお宮。
伊雑宮の御田植式は、「おみた」とも呼ばれ、郷土色豊かな内容。褌(ふんどし)1つの青年たちによる竹取の神事が終わった後、太鼓やササラ、笛などが奏でる田楽の調べに合わせて、早乙女が田植えを行う。
そもそも志摩の国は、『古事記』にも「島の速贄(はやにえ=志摩から朝廷に納められる初物の海産物) 」として登場するなど、古くから御食都国(みけつくに)として知られた地。神宮でも、この地の鮑を神嘗祭などの三節祭でお供えするよう、延暦23年(804)編纂の『皇太神宮儀式帳』で指定されているという。
知れば知るほど奥深い神宮の世界。興味は尽きないが、ひとまずこれで区切りとしたい。なお、神宮では大晦日の夜から「どんど火」と呼ばれる大かがり火が1晩中焚かれ、内宮、外宮ともに、12月31日の朝5時から1月5日の20時まで、夜間を含めて終日参拝が可能という。一般でも夜間参拝が叶う貴重な機会。ぜひお参りをしたい。
伊勢地方の注連縄。1年中飾るのが特徴。
年に数度、お伊勢参りをするようになって10数年。なぜこんなにもお伊勢さんに惹かれるのか、自分でもよくわからない。強いて言えば、理由なく足を運びたくなる。それがお伊勢さんの魅力かもしれない。何より、感謝の気持ちのみを捧げるお参りは、あれこれお願いばかりするよりも、ずっと爽快で、心根にさっぱりとした感覚を残す。
頭で理解するのではなく、目と心、そして耳を澄ませて日々の自分をリセットする、そんなお伊勢参りを、これからも続けていけたらと思っている。
Text by Misa Horiuchi
伊勢神宮
皇大神宮(内宮)
三重県伊勢市宇治館町1
豊受大神宮(外宮)
三重県伊勢市豊川町279
文・堀内みさ
文筆家
クラシック音楽の取材でヨーロッパに行った際、日本についていろいろ質問され、<wbr />ほとんど答えられなかった体験が発端となり、日本の音楽、文化、祈りの姿などの取材を開始。<wbr />今年で16年目に突入。著書に『おとなの奈良 心を澄ます旅』『おとなの奈良 絶景を旅する』(ともに淡交社)『カムイの世界』(新潮社)など。
写真・堀内昭彦
写真家
現在、神宮を中心に日本の祈りをテーマに撮影。写真集「アイヌの祈り」(求龍堂)「ブラームス音楽の森へ」(世界文化社)等がある。バッハとエバンス、そして聖なる山をこよなく愛する写真家でもある。
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河瀨直美監督、8年ぶりのオリジナル脚本映画『たしかにあった幻』
2025.12.29
2026年2月6日公開。時を超えて運命が交差する珠玉の人間ドラマ
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河瀨直美監督の最新映画『たしかにあった幻』が、2026年2月6日(金)より公開される。河瀨監督にとって本作は劇映画としては6年ぶり、オリジナル脚本としては8年ぶりの作品となる。
第78回ロカルノ国際映画祭でワールドプレミア上映され、「河瀨直美のマスターピース」と評されたことでも注目を集める本作。物語が投げかけるのは、「人は亡くなったら、どこへいくのだろう」という根源的な問いだ。
物語の背景にあるのは、日本の臓器移植医療の現実と、年間約8万人にのぼる行方不明者問題という二つの社会的テーマ。本作では、“愛のかたち”と命のつながり“をモチーフに、失踪と心臓移植の現実を重ねて描く。
フランスから来日し、日本で臓器移植の普及に尽力するコリーは、異なる死生観や倫理観の壁に直面し、無力感を抱えながら日々を過ごしている。屋久島で出会った青年・迅との生活にもコミュニケーションの問題が生じるなか、心臓疾患を抱える少女・瞳の病状が急変し、物語は静かに、しかし避けられない運命へと進んでいく。
「幻」と「たしかにあった」という相反する言葉を重ねたタイトルは、二項対立を超えてゆく新しい思想を提案する本作の内容を知らしめている。河瀨監督はこれまでも『あん』『光』『朝が来る』などで、血縁や常識に縛られない関係性の中に存在する「愛」を描いてきた。本作でも「死」が終わりではないという気づきの先に、移植医療が人の命を繋いでゆき、「生」の意味が問いかけられる。
主人公コリーを演じるのは、ルクセンブルク出身のヴィッキー・クリープス。優しさと孤独を併せ持つ女性像を、全身全霊で演じ切る。迅役には、河瀨作品初参加となる寛一郎。さらに、尾野真千子、北村一輝、永瀬正敏ら実力派俳優陣が脇を固める。加えて、河瀨監督がオーディションで見出した、子役の中村旺士郎と中野翠咲のリアリティある演技も見逃せない。
心臓移植のシーンや医療現場のディスカッションは、実際に小児臓器移植に関わる医師や看護師の協力のもと、ドキュメンタリーのように撮影。また、世界遺産・屋久島の屋久杉が織りなす風景も河瀨監督のフィルモグラフィーと響き合い、生命の源たる息吹を放っている。
目に見える形が失われても、別の誰かの体や記憶の中で生き続ける命。そうした命のあり方を見つめながら、“愛のかたち”と“命のつながりを描く映画。観る者の心に静かに残る一本となりそうだ。
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2025.12.18
松屋銀座開店100周年・『婦人画報』創刊120周年記念
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京都通信
2025.12.25
京都のゆく年くる年──年越しからお正月まで暮らしの中に息づくしきたり
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こうした習わしに込められた意味を知ることで、京都の年の瀬と新年を、より深く、豊かに味わうことができるでしょう。
京の年越し──をけら詣りと除夜の鐘
大晦日の夜、八坂神社ではその年最後の神事・除夜祭が執り行われたあと、境内に設けられた灯籠に「をけら火」が夜を徹して焚かれます。この火をいただくための参拝が「をけら詣り」です。
をけらとは、キク科の薬草「白朮(おけら)」のこと。燃やすと独特の強い香りを放つことから、古くから邪気を払う力があるとされてきました。
大晦日の夜に焚かれる「をけら火」。をけら詣りは八坂神社のほか、北野天満宮でもできる。
この白朮と護摩木をくべた灯籠の火を火縄(吉兆縄)に移して持ち帰り、神棚の灯明やお雑煮の火種に使うことで、1年の無病息災を祈願するのです。火が消えないように縄をくるくる回しながら歩く人々の姿は、京都の年越しの風物詩。燃え残った火縄は火伏せのお守りとして、台所に祀られます。
夜が更けるにつれ、聞こえてくるのは除夜の鐘の音。17人僧侶が「えーいひとつ」「そーれ」の掛け声のもと大きな梵鐘を打ち鳴らす知恩院のものが有名ですが、約1700もの寺院があるといわれる京都市内では、まちのあちこちで鐘が撞かれます。
しんと静まりかえった夜に響く鐘の音とその余韻が冷えた空気に溶け込んで、静かに年が改まっていくのを感じさせてくれます。
年の瀬から新年へ──にしんそば・大福茶
京都のそばと聞いて、にしんそばを思い浮かべる人も多いでしょう。甘辛く炊いた身欠きにしんをのせた一杯は、京都の年越しの定番として広く親しまれています。でもなぜ、海から遠い京都で「にしん」なのでしょうか。
流通の少ない時代、北海道から北前船で運ばれてくる「身欠きにしん」などの干魚類は、新鮮な魚介類が手に入りにくかった京都の人々にとって貴重なたんぱく源。保存が利くため、おばんざいの食材としても使われるなど、京都の食文化と深く結び付いてきたのです。
にしんそばが生まれたのは明治時代。祇園・南座の隣にある蕎麦屋「松葉」が発祥とされている。
新しい一年の始まりに「大福茶(おおふくちゃ)」をいただくのも、京都ならではの習わし。
梅干しと結び昆布を入れたこのお茶は、古くから伝わる縁起もの。平安時代に京都で流行した疫病を、六波羅蜜寺の空也上人が梅干し入りの薬茶を振る舞って鎮めた故事にちなんで、一年を元気に過ごせますようにという願いが込められています。
正月を迎える京の味──白味噌雑煮と花びら餅
元日の朝、台所から漂ってくるのは白味噌のやさしい香り。地域によって雑煮のかたちはさまざまですが、京都は茹でた丸餅と頭芋、大根、金時人参などを入れた白味噌仕立ての雑煮が定番です。
汁はポタージュのように濃厚でまろやか。甘みのある白味噌と、やわらかく煮た具材が合わさり、体にすっとなじんでいく、上品で味わい深いお雑煮です。
うっすらと透けて見える淡いピンクが、新春の華やぎを感じさせる「花びら餅」
お正月の縁起菓子にも、白味噌の風味をいかしたものがあります。白味噌餡と蜜煮にしたごぼうを、やわらかな求肥や羽二重餅で包んで半月状に折った「花びら餅(菱葩餅)」です。
その由来は、平安時代の宮中で行われた正月行事「歯固めの儀式」。鏡餅、大根、押鮎(塩漬けした鮎)、橘などを食べて歯の根を固め、長寿を願う儀式で、この歯固めの品が「菱葩(ひしはなびら)」という餅に変化。それが花びら餅の原形になっています。
新年の装い──根引きの松と正月飾り
年の瀬からお正月にかけて、京都のまちを歩いていると、家々の軒先に松が掛けられているのに気づきます。根を残したままの松を、和紙や紅白の水引などで飾ったお正月飾り「根引きの松」です。
京都で最も多く見られるお正月の玄関飾り「根引きの松」。門松の原型だといわれている。
根をつけたままなのは「地に足をつけ、成長し続けられるように」という願いが込められているから。生命力の象徴とされ、新しい年に歳神様を迎える依り代として用いられてきました。
自然な枝ぶりをいかしたその姿は、門松と比べると随分控えめ。新しい一年を静かに迎える心持ちにふさわしい凜とした美しさが宿っています。
松や注連縄、裏白など、それぞれに由来があり、願いが込められているお正月飾り。こうしたお正月の装いは、華美でも目立つものでもありません。それでも、年の変わり目をきちんと受け止めるために欠かせない行いなのです。
Text by Erina Nomura
野村枝里奈
京都在住のライター。大学卒業後、出版・広告・WEBなど多彩な媒体に携わる制作会社に勤務。2020年に独立し、現在はフリーランスとして活動している。とくに興味のある分野は、ものづくり、伝統文化、暮らし、旅など。Premium Japan 京都特派員ライターとして、編集部ブログ内「京都通信」で、京都の“今”を発信する。
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京都通信
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投稿 京都のゆく年くる年──年越しからお正月まで暮らしの中に息づくしきたり は Premium Japan に最初に表示されました。
【管理栄養士が回答】ダイエット中にケーキが食べたいときは、使われている材料に注目してみましょう。選び方や食べる時間帯を工夫することが大切です。
Features
日本の美を引き立てる「帯留め アラベスク」
2025.12.22
ウェッジウッドからジャスパー製の和装アクセサリーが限定登場
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英国王室御用達ブランド、ウェッジウッドを象徴するオリジナル素地「ジャスパー」の250周年を記念して、ジャスパー製の「帯留め アラベスク」が数量限定で登場。
ジャスパー「マグノリア ブロッサム」
モチーフは型から一つずつ取り出し、英国工場の熟練職人が丁寧に手作業で貼り付けている。
ジャスパーは、創設者ジョサイア・ウェッジウッドの探究心から生まれた独自素材。現在も英国バーラストン工場にて、誕生当時と同じ製法で熟練職人の手により作られている。マットな質感とやわらかな色合いは、ジュエリーやコートのボタン、刀装具、ハイヒールの装飾など、時代や用途を超えて愛され、装いに上品なアクセントを添えてきた。
「ジャスパー 帯留め アラベスク」(ペールブルー)27,500円・数量限定(ウェッジウッド公式オンラインストア、全国のウェッジウッドショップ、およびツカモト市田株式会社の販路でも販売)
「ジャスパー 帯留め アラベスク」(ブラック)27,500円・数量限定(ウェッジウッド公式オンラインストア、全国のウェッジウッドショップ、およびツカモト市田株式会社の販路でも販売)
日本限定の「帯留め アラベスク」は、葉や蔓が優雅に絡み合うアラベスク模様をモチーフに、中央に愛や美しさを象徴するバラの花をあしらったデザイン。英国の職人が一点ずつ手作業で仕上げており、合わせる着物柄や帯締めによって、さまざまな表情を楽しめる。
さらに、ウェッジウッドの代表的な柄を着物として表現した新コレクション「Wedgwood – KIMONO COLLECTION」も誕生。「フェニックス」や「フロレンティーン」などブランドを象徴する6種のモチーフを、訪問着や付け下げ、帯、小紋といった多彩なアイテムで展開。和と洋の伝統工芸が響き合うコレクションとなっており、ツカモト市田株式会社を通じて販売される。
250年にわたり受け継がれてきたクラフトマンシップと、日本の美意識が出会った記念コレクション。装いに静かな品格を添える一品として注目したい。
「Wedgwood – KIMONO COLLECTION」
▼展開品・販売価格(税込)
訪問着:2,178,000円~(2柄1~2配色)
付け下げ:638,000円(3柄各2配色)
帯: 363,000円~528,000円(8柄各2~4配色)
小紋: 385,000円~638,000円(7柄各2~4配色)
色無地:385,000円(1柄5配色)
帯留め:27,500円(1柄各2配色)※ウェッジウッド製※催事、百貨店、着物専門店、他にて随時販売を開始。
(帯留め以外は、ウェッジウッドショップでの販売はありません)
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Features
2025.12.18
松屋銀座開店100周年・『婦人画報』創刊120周年記念
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投稿 ウェッジウッドからジャスパー製の和装アクセサリーが限定登場 は Premium Japan に最初に表示されました。
Features
“チョコレート&ストロベリー”をテーマにした特別プラン
2025.12.20
スカルペッタ東京が冬限定のアフタヌーンティー&バープランを販売中
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ニューヨークに本店を持つモダン・イタリアンのアジア1号店「スカルペッタ東京」が、2026年2月末まで、毎週土曜日限定のアフタヌーンティー「Chocolate &Strawberry Afternoon Tea」と、ディナータイムに「Chocolate & Strawberry Dolce Vita」を販売中だ。
心ときめく冬限定のアフタヌーンティー「Chocolate &Strawberry Afternoon Tea」は、サラミに見立てたチョコレートスイーツ“サラーメ・ディ・チョッコラート”、艶やかなグラサージュで仕上げたチョコレートの“セミフレッド”、スパイス香るチョコレートクッキー“モスタッチョーリ”など、イタリア各地の郷土菓子をモダンにアレンジしたショコラスイーツに、4種のセイボリーをセットで提供。
また、バーエリア限定で、シャンパン「ローラン・ペリエ ラ キュヴェ」を心ゆくまで堪能できるフリーフロー付きプラン「Chocolate & Strawberry Dolce Vita」も提供中。スカルペッタの人気料理を気軽なシェアスタイルで味わいながら、締めくくりにはチョコレート&ストロベリーのデザートプレートを楽しむことができる。
あなたも神谷町で冬のご褒美時間をゆったりと過ごしてみてはいかが。
◆土曜限定アフタヌーンティー「Chocolate & Strawberry Afternoon Tea」
【レストラン名】スカルペッタ東京
【住所】東京都港区虎ノ門4-1-1神谷町トラストタワー1F
【価格】6,000円(税込・サービス料別)
【販売期間】2026年2月28日(土)まで
【販売時間】14:00~16:00のご入店で2時間制(L.O. 90分)
◆テラス&バー限定 シャンパン・フリーフロー付きプラン「Chocolate & Strawberry Dolce Vita」
【価格】11,000円(税込・サービス料別)
【販売期間】2026年2月28日(土)まで
【販売時間】17:30~20:30 L.O.(土曜 17:00~20:30 L.O.)
※詳細は公式サイトで要確認
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Lounge
Premium Salon
これを食べなきゃ人生ソンだよ
2025.12.18
週に一度は食べたくなる「生姜焼き定食」、 お届けするのは東京のベスト5+1軒だ!
文=バッシー
今回は「生姜焼き定食」である。
生姜焼きに限定すると、いい店を取りこぼすので、ポークジンジャーも入れることにした。
今回紹介するのは、「檍食堂 蒲田東口店」「かつれつ四谷たけだ」、「まるやま食堂」、「danchu食堂」「やまだや」のベスト5と、プラス1の「生姜焼きバカ 赤坂見附」の6軒である。
「檍食堂 蒲田東口店」はトンカツが売り
しかし、生姜焼きも侮れない
トンカツで有名な、あの檍(あおき)である。急速に全国に拡大している。メニューとしては、トンカツだけじゃなくて様々な揚げ物もあるが、生姜焼きを出す店舗もある。
蒲田東口店は、「バラ生姜焼き1200円」、「肩ロース生姜焼き1300円」、「リブロース生姜焼き1500円」と3種類があり、安いほうから売り切れる。筆者が13:30に入店したときも、リブロースしか残っていなかった。
さすがに有名なトンカツ屋だけあって、使っているのはブランドの林SPF豚だ。健康に育てられて、肉質は柔らかく、脂は甘いのが特徴である。山盛りキャベツの上に載っているのが大きくやや厚めのスライス4枚だ。量的には十分。生姜は荒いみじん切りで、タレは辛味に寄っていてシャープ。そのタレがキャベツの下にたんまりと溜まっているところが、世の生姜焼き好きのハートをがっしりと掴む。
「檍食堂 蒲田東口店」の”リブロース生姜焼き” 。 肉はブランドの林SPF豚を使っている。
まずは豚肉だけを味わう。肉が柔らかく脂も甘くて、生姜が効いていて旨い。いい肉だねえ。うむ、これは白飯をワシワシと掻き込みたくなるわな。
あ、この店では注文の際に、白米か玄米かを聞かれる。やはり、白米だよねー。その白米はトンカツ有名店なだけに、艶光りしていてなかなか上等なものだ。
続いて、タレをたっぷり浸したキャベツを豚肉でくるんでワシッと頬張る。うむ、これは人をさらに幸せにしてくれる。だが、最後の味変といえば、理想的なのはマヨネーズだよな。甘辛のタレとマヨネーズの相性は抜群である。だから、キャベツにタレとマヨネーズをまぶしたヤツを豚肉でくるんで口に放り込むのだ。
うーん、極楽じゃのお。
「分かってるねえ」と店員の肩でもポンと叩きたくなるのは、マヨネーズは100円で「使い放題」とあることだ。「使い放題」とは何のことかと思えば、マヨネーズをゴロンと1本差しだしてくれるのである。豪快じゃのお。でも、そんな店、他にある?
具が豊富でなかなかゴージャスな白みそ仕立ての豚汁も漏れなくついてくる。壺漬けもいい。次回は、「バラ生姜焼き」か「肩ロース生姜焼き」を試してみたくなるね。8席しかなく行列するので、訪問時間には気をつけたい。
「檍食堂」蒲田東口店の入口
檍食堂 蒲田東口店
東京都大田区蒲田5-21-11
℡03-5703-0200
(火~日)11:00~15:00、17:00~20:00
定休日:月曜
何でも旨い「かつれつ四谷たけだ」
帰り路には多幸感で溢れる
強烈に好きな店である。
カツとフライが主要なメニューだが、年がら年中、行列が絶えない。特に牡蠣のシーズンともなれば、行列はとんでもない。並んだ時間によっては2時間待ちとか。誰もが、「カキバター焼定食」を目掛けてやってくるのだ。
何でも旨いのだが、筆者は「サーモンバター焼定食」を頼むことが多く、それだけでは足りんから、トッピングで大体、「カキフライ」「カニクリームコロッケ」「エビフライ」なんかをかますのが常だ。図に乗ったときには、「カレーちょいがけ」なんかもオーダーしちまう。
さて、この店では生姜焼き定食は夏だけで、通年で出しているのは「ポークジンジャー定食」だ。こいつがまた、おったまげるほど旨い。
「かつれつ四谷たけだ」の”ポークジンジャー定食” 肉はやわらかな熟成もち豚ロースを使用。
肉は「やわらかな熟成もち豚ロース」を使い、「高知県産黄金しょうがたっぷり甘辛醤油ソース」と説明書きが貼ってある。
確かに、軽く小麦粉を振ったブタちゃんは1・5センチほどの厚みがあるのだが、とても柔らかい。豚肉自体は甘みがあり、その薄くまぶした小麦粉がほどよくタレを吸い込んでいる。豚は火を通しすぎるとすぐ硬くなるが、これはまさにジャスト。店の大将の腕は確かだ。
しかも、そのタレは、たっぷりの生姜を含んでいるが、爽やかでやや甘く、辛味に寄った見事なバランスを体現している。こいつで薄切り豚肉を生姜焼きにしたら、さぞかしと思うわ。
注文が入ってから、一品一品を丁寧に仕上げる。キャベツも水っぽかったりせず、ご飯は硬めで艶々、とても旨い。ワカメの味噌汁も、卓上の壺漬けもいい。
要するに、完全無欠と言える。
押し寄せる客のオーダーを、厨房に立つたったの3人で次から次へといいリズムで片付けていく様子には感動すら覚える。大将が同僚を怒鳴ったりイラついたりすることがない点も好感度が高い。
この店から帰るときには、必ず常に、深い満足感に満たされる。実に貴重な店だ。
かつれつ四谷「たけだ」の入口
かつれつ四谷たけだ
東京都新宿区四谷1-4-2 峯村ビル1階
℡03-3357-6004
11:00~15:00、17:00~21:00、土曜日は昼のみ営業
定休日:日曜、祝日
ポークジンジャー定食 1650円
カキバター焼定食 2000円
サーモンバター焼定食 1480円
「まるやま食堂」の生姜焼きの
ラインナップは凄えぜ
蒲田というのは、檍食堂もあるし、ひょっとして生姜焼きの聖地なのかもしれん。
この店は定食天国やねー。働く兄ちゃん、おっちゃんたちが行列をなしている。98%は男の客だ。
基本的なメニューは豚のバリエーションだ。とんかつ、しょうが焼き、とんかつカレー、かつ丼。それに加えて、あじフライ、えびフライ、ホタテ貝柱フライなどが並ぶ。
目指すのはもちろんしょうが焼きで、「ばらしょうが焼き定食」、「ロースしょうが焼き定食」、「リブロースしょうが焼き定食」、「カタロースしょうが焼き定食」、そして限定新メニューとして、「マンガリッツァ豚しょうが焼き定食」と5種類もある。ちなみに、マンガリッツァ豚はハンガリーの国宝豚とのことだ。
豊富なラインナップが魅力の「まるやま食堂」の生姜焼き。
多くの客が頼むのが、「ばらしょうが焼き定食」(300g)である。1700円とランチにしては高いのにね。筆者もそれにした。なにしろ、300gというのはなかなかの量だ。肉はここも林SPF豚なので、肉自体が旨い。タレは甘辛だが、辛味が強い。
例によって、キャベツの下には、タレがたんまりと溜まっている。従って、キャベツをタレに浸して、豚でくるんで、ひたすら食う。
この店が絶妙なのは、半熟の目玉焼きが付いていることだ。目玉を真ん中で割って、トロンと流れ出た黄身を豚肉でぬぐう。うひょー。マヨとは違った素晴らしいまったり感だ。新しい世界が、眼前というか口中に現れる。
新しい世界とは、至福と呼び変えてもいい。なかなかハッピーにさせてくれる店なのだ。おっさんたちが一心不乱にメシを掻き込む光景が壮観でもある。
ただし、シジミが濃厚で味噌汁は旨いけれども、白米はいかにも古米って感じでいま一つなところが、ちと残念だな。
「まるやま食堂」の入口
まるやま食堂
東京都大田区蒲田5-2-7渡辺ビル1F
(月~土・祝)11:00~15:00、16:00~21:00
定休日:日曜
ばらしょうが焼き定食 1700円
ロースしょうが焼き定食 1700円
リブロースしょうが焼き定食 2000円
カタロースしょうが焼き定食 2000円
マンガリッツァ豚しょうが焼き定食 2500円
「dancyu食堂」の豚はいいんだけどさ
いろいろと改善の余地があるな
有名な植野編集長が辞めて、すっかり買わなくなってしまった雑誌『dancyu』がプロデュースする店である。昼は定食、夜はおつまみで一杯やれるそうだ。なにしろここは、ランチの行列が凄いから、開店後は覚悟しなくてはならない。
「唐揚げ定食」「生姜焼き定食」「焼売定食」なんかが人気みたいだ。もちろん、お目当ては生姜焼きである。
「豚肉は上品な脂の甘さが特徴の千葉県匠味豚を使用。あと引く美味しさを追求した結果、数種の野菜や果物のすりおろしを加えたタレが出来上がりました」……てえのが売り文句だから、楽しみにしていた。
開店後15分着で20分ぐらい待ったかな。その間に注文は済んでいるから、席に着いて5分ぐらいでやって来たぜ。
「dancyu食堂」の生姜焼きは、野菜や果物のすりおろしを加えたタレを使用。
見た目はなかなか麗しい。真ん中に生姜焼きの皿で、キャベツがこんもりでマカロニサラダが横ちょにあるのが嬉しい。小鉢は3つで、浅漬けとヒジキとオカカの振りかけが少々。味噌汁は海藻入りだ。
さて、結論から言うと、豚の生姜焼きはなかなか旨い。ただし、手放しでホメるわけにはいかない。ここから小姑っぽい小言が始まる(笑)。
まず、ご自慢のタレが、筆者にはやや苦く感じられた。もう少し甘みを加えたほうが旨くなるヨ。使っている生姜に問題があるのかも。あるいは季節柄、果物に甘みが足りないのかもしれん。
肉は焼き色がついて、柔らかくて良い。脂も旨いし、いい豚肉だ。だが、一緒に炒めてあるタマネギがまったく甘くない。これも問題だ。タマネギは絶対的に甘くなくてはならぬ。たぶん、炒める時間が足りないのかな。肉とは別に炒めてドッキングさせたほうがいいんじゃねえかな?
しかも、盛り付けてある千切りキャベツが、長くクネクネしていて、なんかどうにも食いにくい。口触りが良くない。あまり瑞々しさも感じない。手切りじゃなくて、業者の機械切りなのかと思ってしまう。あるいはクルクル回す器具切りかも(手切りだったらごめんなさい)。
味噌汁も、なんか、出汁を感じさせないライトなもので、いまひとつですな。白米は普通に旨いが、なんせ盛り方がセコいッ!
と文句ばかり垂れたが、生姜焼きはそこそこ旨いのだから、肝心のキャベツとタレと味噌汁を改善してもらいたいもんだ。
ついでに言っておくと、オプションで頼んだ唐揚げも、まー、きわめて普通でした。ニンニクを足すとか甘みを足すとか、
あ、マカロニサラダは旨かったヨ。
「dancyu食堂」の入口
dancyu食堂
東京都千代田区丸の内1-9-1東京駅グランスタ八重北1F八重北食堂
℡03-6810-0525
11:00~23:00 無休
生姜焼き定食 1780円
唐揚げ定食 1680円
焼売定食 1580円
豚汁で有名な「やまだや」
あまりの自由さには驚き感激だ!
一駅先は埼玉県だ。東京のはずれの東武東上線の成増駅から、徒歩1分にある素晴らしい店である。確か、『dancyu』にも載っていたような記憶がある。
この店の名物は豚汁だが、何が素晴らしいかと言って、その自由さだ。客の銘々が、自宅にいるかのように勝手な注文をしている。例えば、筆者が訪れたある日の光景。開店10:30と同時に、おっちゃんおばちゃんたちが入店する。必ず相席となる。
向かいのおばちゃんは、朝からビールの大ジョッキにヤリイカの刺身と白菜の漬け物だってさ。ビールを飲み干すと、「エビフライ定食、ご飯は半分で、味噌汁はいらない」と叫ぶ(笑)。隣のテーブルのおっちゃんは、やはりイカの刺身とカツ煮、それとウーロンハイだ。途中から日本酒になだれ込む勢いである。朝っぱらからこれかよ。
あるいは、「銀ダラ照り焼きセットで、ご飯は少なめ、納豆と冷ややっこつけて。あ、味噌汁は豚汁に替えて」。「サバ塩焼セット」を一人で大人しく食べている女子学生もいる。もー、勝手な注文ばかりが乱れ飛ぶのだ。厨房はよくやるよな。
それで筆者は、「生姜焼定食に、目玉焼きを添えて。それと白菜の漬け物と、切り干し大根ね」にしてみた。
何度でも通いたくなる「やまだや」。
さて、肝心の生姜焼きであるが、これは今回紹介した6軒の中で、いちばん生姜が薄い。豚肉はロース肉だがごく普通レベルのもので、まあ、格別に旨い生姜焼きってワケではない。横に添えたマカロニサラダがいいね。
やはり、豚汁が旨い。大根、ニンジン、ゴボウ、コンニャク、豚バラがたっぷりで、白味噌を使っていてやや甘い。切り干し大根も白菜の漬物も旨い。要するに、生姜焼きは普通だが、総合的に定食屋的視点からすると、何度でも通いたくなるとても高度な店なのである。場末の安さも良心的だ。
「やまだや」の入口
やまだや
東京都板橋区成増2-19-3
℡03-3930-5760
(月~金・日)10:30~15:00、16:30~20:30
定休日:土曜
生姜焼定食 930円
とん汁定食(生玉子・サケ付) 840円
エビフライ定食 1030円
「生姜焼きBaka(バカ) 赤坂見附店」は
その‶生姜教″ぶりが面白い
最後に、生姜焼き自体は大して旨いわけではないが、面白い店を紹介しておく。
その‶生姜狂″ぶりというか、‶生姜教″の域にまで達しているところが面白い。なにしろ、2階に併設してあるのが「金の亀 赤坂見附本店」なのだが、これが生姜サウナなのである!
そっちまでは体験していないが、生姜のもみ出し水風呂があったり、サウナ店内でも生姜焼き定食が食えたりする。要するに、生姜尽くしのサウナってわけだ。
で、「生姜焼きバカ」のほうだが、客を洗脳しようとしているのか(笑)、壁にズラッと生姜の効能書きが並んでいる。曰く、
「生姜は400種類近くもの天然成分を含んだ健康素材」
「生姜は低カロリーで、糖分や脂肪の吸収を抑える効果も」
「生姜は生と加熱のそれぞれに健康メリットがある」
「生の生姜に多く含まれる成分はジンゲロール」
「ジンゲロールは血行促進して代謝アップに期待」
……ほか、云々。
頼んだのは一番人気の「BaKa生姜焼き定食」だが、「生姜5倍ましまし!生姜焼き定食」みたいなラーメン二郎かよってなものもある。「BaKa 旨!生姜カレー」「台湾ルーロー風生姜焼き定食」などもある。要となる生姜は高知県の壬生農園産の「囲生姜」を使っているとのことだ。生姜焼きの豚は「大麦仕上三元豚」を使用している。
その名の通り‶生姜教″の域にまで達しているところが面白い「生姜焼きバカ 赤坂見附店」の生姜焼き。
肝心の味はどっちかと言うと、豚はパサついておるな。玉ねぎは擦ってタレに溶け込んでいる。豚肉をタレに漬け込んで焼くので、タレが溢れることはない。その代わり、‶生姜教団″なだけに、まとわりつく生姜の量はいちばん多い。生の生姜も添えてある。
タレが少ないのだよ。‶汁だく″にしたほうが断然良くなると思うけどな。改善点はそこだ。
豚汁は野菜たっぷりで、味が濃くて旨い。と思ったら、味が濃いのは生姜味噌汁だからだ。大根、ニンジン、ゴボウ、豚こまの他に、白菜と厚揚げが入っているところが珍しい。ご飯が麦ご飯という点も良いね。
最も嬉しいのは、山盛りキャベツの千切りにマヨネーズを好きなだけ掛けられることだ。なにしろ、マヨネーズをかけたキャベツを生姜焼きでくるんで食べたら最強でしょう。それがわかってくれているところがイイね。タルタルソースも添えてあるんだが、マヨのほうがはるかに旨いよな。
ご飯一杯が無料で、生姜味噌スープは飲み放題と気前がいい。さすがは‶生姜教団″だな(笑)。客層は圧倒的に男の若者が多い。まー、不思議な店だね。
生姜焼きBaka(バカ) 赤坂見附店の入口
生姜焼きBaka(バカ) 赤坂見附店
東京都港区赤坂4-2-4 赤坂LeeBLD 1F
℡03-6441-3890
(月~祝日)11:00~15:30、17:00~22:30
定休日:不定休
「これを食べなきゃ人生ソンだよ」とは
うまいものがあると聞けば西へ東へ駆けつけ食べまくる、令和のブリア・サバランか、はたまた古川ロッパの再来かと一部で噂される食べ歩き歴40年超の食い道楽な編集者・バッシーの抱腹絶倒のグルメエッセイ。
筆者プロフィール
食べ歩き歴40年超の食い道楽者・バッシー。日本国内はもちろんのこと、香港には自腹で定期的に中華を食べに行き、旨いもんのために、台湾、シンガポール、バンコク、ソウルにも出かける。某旅行誌編集長時代には、世界中、特にヨーロッパのミシュラン★付き店や、後のWorld Best50店を数多く訪ねる。「天香楼」(香港)の「蟹みそ餡かけ麺」を、食を愛するあらゆる人に食べさせたい。というか、この店の中華料理が世界一好き。別の洋物ベスト1を挙げれば、World Best50で1位になったことがあるスペイン・ジローナの「エル・セジェール・デ・カン・ロカ」。あ~、もう一度行ってみたいモンじゃのお。
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