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林 信行の視点
2025.6.11
大阪・関西万博が示した新しい日本像 〈日本館・シグネチャーパビリオンの見どころ〉
佐藤オオキ氏が総合プロデューサー・総合デザイナーとして手掛けた日本政府館の外観。CLTと呼ばれる最近、注目を集めている木材加工の技術で作った杉材の板を並べてできた円環状の建物になっている。
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開幕から2ヶ月が経過した大阪・関西万博。ソーシャルメディアでは古代ローマの彫刻を含む本物が一堂に揃うイタリア館、洗練された雰囲気が漂うフランス館、宇宙旅行を疑似体験できるアメリカ館に加え、異国情緒を感じさせる中東諸国のパビリオンなどが連日話題になっている。
ゴールデンウィーク以降は通期パス利用者の数が増え、連日入場時から大行列が続く人気ぶりだ。訪れているのは日本人だけではない。万博協会が5月17日に発表した統計では訪日観光客も全体の約13%を占めていたという。
そんな中で日本政府は、この国際的な舞台で日本をどのように紹介したのか。実は政府はあえて従来の伝統的なイメージの日本ではなく、多くの日本人にも馴染みのない新しい日本のかたちを提示したのだ。この記事では、あまり触れられていなかった万博における「日本」を紹介したい。
「日本館」が表現したのは日本的循環
万博に関してはよく海外パビリオンの話題を耳にするが、当然、日本のパビリオン「日本館」(正式名称:日本政府館)もある。前回のドバイ万博やミラノ万博では、日本館は最も人気のあるパビリオンだった。実は博覧会国際事務局(BIE)から2回連続で金賞も受賞している。
今回の万博会場ではほとんどの国のパビリオンは、世界最大の木造建築「大屋根リング」の内側に並んでいるが、ホスト国の日本館だけは唯一外側に建てられている。無数の国産杉材の板を一周250mの円形に並べて作った建物だ(設計は日建設計)。落ち着いた雰囲気で、どこか高級リゾートホテルのようだ。
国が同館の総合プロデューサー・総合デザイナーとして選んだのはnendo代表の佐藤オオキ氏——東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の聖火台のデザイナーだ。
佐藤オオキ氏が同館のテーマに掲げたのは世界を構成する無数の小さな「循環」。建物が円環状なのも、それを表している。パビリオンには3つの入り口があり、それぞれがプラント、ファーム、ファクトリーという形で異なる日本の強みを紹介している。
日本館は上から見るとこのような構造になっており3つの入り口のどこから見始めても良い構造になっている。なお、真ん中の水盤エリアにはプラントエリアからしか行くことができない。パビリオンの裏には日本館の舞台裏とも言える「バイオガスプラント」がある。毎日ではないが、時折、興味がある人向けにこの設備のツアーが行われている。【提供︓経済産業省】
「プラント」エリアのサブテーマは「ごみから水へ」。中に入ると建物の外周に沿ったベルトコンベアーの上を色々なものが流れてくる。実はこれ「ごみ」だ。さらに進むと、万博のランチ会場などで使われている紙製の容器が水の中に浸されて分解されている様子を見ることもできる。こうして集められたごみは微生物によって水・熱・電気・CO₂・養分(窒素・リン)に分解されており、日本館はそこで発生したエネルギーによって運営されている。プラントエリアを見終わると日本館の中央にある池(水盤)が現れるが、この水も実は生ごみから取り出したものだ。
その後、日本館の目玉展示の1つである火星の石の展示がある(南極探検隊が56年前に発見したもので100万年前の石と言われている)。日本の精密加工技術で薄くスライスした手で触れることのできる火星の石の展示もある。
プラントエリアではベルトコンベアで運ばれてくるごみや、会場内の飲食店で使われた紙皿が分解されていく様子を見ることができる。
ファームエリアで栽培しているのは、なんと野菜や果物ではなく「藻」類。今、未来の食糧やエネルギーとして藻が大きな注目を集め始めており、日本にはこれを扱うベンチャーを含む企業が急速に増えている。
ファクトリーエリアではドラえもんなどのキャラクターを使ってわかりやすく、「やわらかく作る」という他の国とは少し違う日本の独自のものづくりの姿勢を紹介している。【©Fujiko-Pro】【提供︓経済産業省】
「プラント」エリアの次に現れるのは「ファーム」エリア。サブテーマは「水から素材へ」。藻類の力と、日本が誇るカーボンリサイクル技術を使って、ものづくりの素材を生み出す技術が紹介している。
目玉は無数の緑色の管を立体的に張り巡らせた「フォトバイオリアクター」と32種類のハローキティーだ。このエリアがテーマにしているのは、我々がファーム(農場)と聞いて想像する農産物ではなく海や川に大量に生えている「藻」。石油などの化石燃料への過度な依存から脱却する鍵と言われている。そのまま食品や飼料となるだけでなく、抽出した原料から医薬品、燃料、プラスチック、繊維など様々な素材になる。砂漠や荒地のような農業利用が難しい土地でも、太陽光と少量の水で培養できる。
まだまだ馴染みの薄い藻類に親しみを持ってもらおうと、日本が世界に誇るキャラクター、ハローキティーとコラボをして三角形や四角形、正十二面体などさまざまな形の藻に扮したハローキティーのキャラクターを展示している。
3つ目の「ファクトリー」エリアに入ると、いきなりロボットアームや運搬ロボットと協力しながら人が働いている姿が目に入ってくる。このエリアのサブテーマは「素材からものへ」。日本が強いとされる「ものづくり」をテーマにした展示となっていて、前のプラントエリアで準備された藻類が混ぜ込まれたバイオプラスチックの素材から、2台のロボットアームによる3Dプリンターで日本館内を実際に使用するスツールを製作している。
ここで展示しているのはポスト大量生産・大量消費・大量廃棄の「ものづくり」。資源を効率的・循環的に利用しながら付加価値の最大化を図る「循環経済(サーキュラーエコノミー)」のものづくりであり、リデュース・リユース・リサイクル(3R)を重視したものづくりだ。実は日本では数百年前から、資源や部素材の「循環」という発想を強く意識して、”やわらかい”構造を志向して創意工夫を凝らす、独自の「循環型ものづくり文化」を培っている。
ここでキーワードとなっているのが「やわらかく作る」という発想だ。例えば京都・木津川に架かる「流れ橋」(上津屋橋)は、増水した川の流れに耐えるのではなく、橋桁があえて部分的に壊れ流されることで橋全体にかかる負担を軽減している。東京スカイツリーは、あえてしなることで地震のエネルギーを逃がしている。伊勢神宮は20年に一度、神様をお祀りする建物や宝物を新しく作り直す「式年遷宮」を通して永続性を保つ「常若(とこわか)」を保っている。ドラえもんが、こうした日本に従来からあった循環型ものづくりを未来へのヒントとして紹介している。
古代ローマの彫刻など多くのアート作品で話題となっているイタリア館やフランス的ラグジュアリーを感じさせるフランス館と比べると、伝統文化の発信は確かに弱い印象があるが、これまであまり語られることのなかった世界にもインスピレーションを与えうる日本の強さの本質を紹介できている印象を持った。
落合陽一と石黒浩が見せる未来の姿
日本の国を代表するパビリオンというと、この日本館に加えて8つのシグネチャーパビリオンがある。1970年の大阪万博では、アーティストの岡本太郎がテーマ展示プロデューサーに選ばれ、今も残る「太陽の塔」などを手掛けた。
今回の万博では、すべてを1人に任せるのではなく異なる分野で活躍する8人の専門家をテーマ事業プロデューサーとして選任。生物学者の福岡伸一、アニメーション監督の河森正治、映画作家の河瀨直美、放送作家の小山薫堂、アンドロイド研究の世界的権威で大阪大学教授の石黒浩、音楽家でSTEAM教育家の中島さち子、メディアアーティストの落合陽一、慶応義塾大学教授の宮田裕章が、それぞれ「いのち」をテーマに8つのパビリオンをプロデュースしている。
シグネチャーパビリオンの中でも、圧倒的に目立つ存在なのが全面鏡張りの落合陽一氏のパビリオン「null²(ヌルヌル)」だ。55年前の万博で岡本太郎氏の「太陽の塔」がそうであったように、万博を象徴するモニュメントとして中に入らずとも外から眺めるだけで楽しめるパビリオン、「人類が見たことのない光景」を目指して作られた。
落合氏は最強の映像装置は鏡だとしており、鏡には「風景の変換装置」としての側面があると言う。日本でも最大級の鏡には、その日の空模様、来場者自身を映し出されるが、実はこの鏡には仕掛けがあり時折、変形して大きく歪んだり、面が渦を巻くようにねじれたり、鏡面上にさざ波が起きることもあり、一定の風景にとどまることがなく「無常感」を感じさせる。
一方、パビリオン内部は天井と床はディスプレイになっており四方は合わせ鏡の状態、無限に続く映像の中に放り込まれたような体験となっている。あらかじめ予約して体験をすると3Dスキャナーで取り込んだ等身大の自分の映像がその空間の中に現れ、空間そのものが自分自身のデジタルの鏡にする体験ができる。
落合氏は、自然とテクノロジーを対立させるのではなく滑らかにつなげて新たな一体性を見出す「デジタルネイチャー(計算機自然)」という考えを提唱している。「色即是空・空即是色」をモチーフに「空」の文字を「空」を意味するコンピューター用語の「null」で置き換えて「null²」というパビリオン名にしている。世界で趨勢のデジタルテクノロジーは西洋の価値観の中から生まれてきているが、同館は日本的なデジタルテクノロジーの捉え方として海外の人にこそ見て欲しいパビリオンと言える。
まるで映画を1本観たかのようなしっかりとした奥深い体験で好評なのが石黒浩氏による「いのちの未来」館だ。科学技術と融合することで「いのち」の可能性を飛躍的に拡げる未来をテーマにしている。来場者はアンドロイドに案内されながら3つのゾーンをめぐる。
最初のゾーンは「いのちの歩み」。縄文時代の土偶から始まり、埴輪、仏像、そして現代のアンドロイドに至るまで、日本人が古来より「モノ」にいのちを宿してきたアニミズムの文化と歴史が紹介されている。
続くゾーンは「50年後の未来」。映画のセットのような空間で人間とアンドロイドが共存する2075年頃のおばあちゃんと孫の物語が展開する。物語のハイライトの1つが「いのちの選択」——身体機能の衰えによって、まもなく寿命を迎えるおばあちゃんが、身体を機械化してアンドロイドとして生き続けるか、それとも自然なままの身体で寿命をまっとうすべきかという選択を突きつけられ来場者も医師や家族との会話を通して、その議論に思いを巡らせることになる。
「いのちの未来」館、最後のゾーンは「1000年後のいのち -まほろば-」
真っ暗な空間の中央には1000年後の未来の人類を表した3体のアンドロイドがおり、自らの妖しくも美しい姿を見せつけるように室内を舞う。科学技術と融合し身体の制約から解放された人間たちの姿だ。石黒氏は「ロボットは人類が手にした究極の道具であり、やがて人とロボットはひとつになり、共に生きる未来が訪れる」と語っている。これを受けて衣装デザイナーの廣川玉枝が人間と道具が融合する1000年後のいのちの姿をデザインした。皮膚には生命の起源であるDNAの二重螺旋をモチーフに渦を描く流麗な曲線が描かれており、新たな骨格で今日の人類とは違う翼のように広がる体形をしている(「飛翔するフェニックス」がモチーフになっているようだ)。
落合陽一館「null²(ヌルヌル)」は天井に至るまで前面が鏡面の膜で覆われ、空模様や周囲の風景を映し出している。ただの鏡とは違って時々、表面が変形して渦を巻いたり、さざなみが起きたり、映し出される像は常に変化を続けている。 【写真提供:落合陽一】
「null²(ヌルヌル)」は内部も鏡面張りになっている。ただし映し出されるのは天井と床いっぱいに広がったディスプレイの映像だ。予約して観覧する際には、そこに3Dスキャンした自分の映像が現れ、自分自身と対話ができる。ある意味、それは自分自身を映し出すデジタルの鏡と言える。【写真提供:落合陽一】
石黒浩の「いのちの未来」パビリオンではアンドロイドの存在や人間が自らの身体の一部を機械化することが当たり前になった50年後の未来を体験できる。物語は3D映像や影絵などさまざまな形で展開される。
「いのちの未来」パビリオン最後の部屋は、人が科学技術と融合しどんな姿でも手に入れられるようになった未来がテーマ。衣装デザイナーの廣川玉枝が人間と道具が融合する1000年後のいのちの姿をデザインした。 【写真提供:©SOMA DESIGN】
シグネチャーパビリオンが見せる多様な「いのち」の解釈
2つのはるか未来を感じさせるパビリオンと打って変わって、どこか懐かしさと安心感を感じさせるのが河瀨直美氏のパビリオン「Dialogue Theater ——いのちのあかし」だ。奈良と京都にあった廃校舎三棟を移設し、これらの地域に自生する植栽で庭を作った。
校舎に入ると、ついさっきまで生徒たちがそこで学んでいたような温もりを感じる。河瀬氏がここで展開しているのが今日初めて会う同士の2人による対話。「今日が人類最後の日だとしたらあなたは誰と何を話しますか?」、「最近、あなたは何色ですか?」など184のテーマが用意されており、それについて初対面の2人が話し合う様子を来場者は見ることになる。河瀬氏は、この「対話」は世界のいたるところにある「分断」を明らかにし、解決を試みる実験だと称している。
福岡伸一氏と河森正治氏は、万博自体の重要なキーワードとなっている「いのち」に着目してそれぞれ自らの生命感を表現したパビリオンを作っている。
福岡伸一氏は「いのち」の本質はエントロピー増大に抗うように、絶え間なく自らを壊しながら作り直すことで「動的平衡(バランス)」こそが生命の本質と考え、地球上で生命が誕生してからの38億年の歴史を32万球の繊細な光の粒子を並べて作った立体的なディスプレイ、クラスラを使って表現。
一方、河森氏は「いのちは合体・変形」と捉えている。子どものころ卵・オタマジャクシ・カエル、青虫・さなぎ・蝶と生き物が変態する様子に興味を持ったという河森氏。生物が他の生物を食べる行為やいずれ死んでその死体が大地の一部になることも「合体」と捉えた視座がのちにロボットアニメなどを生み出す自分を形成していったと語る。河森氏はその世界観を2つの映像作品や「いのちの球」と呼ばれる彫刻作品などで表現している。
宮田裕章氏のパビリオンは共同キュレーターに金沢21世紀美術館前館長の長谷川祐子氏を招聘し、塩田千春氏や宮島達男氏といった海外でもよく知られるアーティストの作品を設置。屋根のない半屋外型のパビリオン建築は日本を代表する建築ユニットSANAA(妹島和世氏、西沢立衛氏)が行うなど日本のクリエイティブシーンに詳しい人には見どころの多いパビリオンになっている。
中島さち子氏の「いのちの遊び場 クラゲ館」は、クラゲのような膜屋根の下に、音や触覚で遊べる装置やAR楽器、子どもたちのクラゲ作品、障害者施設や老人ホームにいる人々が思いを込めて作ったタイルによる「よろこびの壁」などがある半屋外型の公園になっており、予約制となっている地下空間では暗闇で音に没入する体験や、360度スクリーンと日替わりの生演奏に包まれながら踊る”祝祭”の時間が用意されている。
河瀬直美館「Dialogue Theater ——いのちのあかし」は、ここ一年でできた新しい建物ではなく、生徒たちの記憶と歴史が刻まれた古い小学校の校舎を使ったパビリオン。ダイアローグを聞いた後は、それを自分の中でゆっくりと吸収できるように散策するための庭や休憩エリアも用意されている。万博会場にあって、ここだけ時間の流れ方が違ってホッとする。
新しい日本像の提示
「自分がイメージしている日本と違う」と感じる人も多いかも知れない。しかし、日本を知らない人が圧倒的に多数だったミラノやドバイでの万博と違って、今回の万博は改めて日本文化を紹介しなくても、万博会場の外に出れば本物の日本食のお店も、伝統文化に触れられる施設もそこかしこにある。あえて従来の日本のイメージではなく、その延長線上に浮かんだ日本の新しい捉え方や、日本の最前線で活躍している人が考える未来像を見せた今の形の方がむしろ来場者の想像力を刺激し、「日本とは何か」を自ら問い直すきっかけになるのではないだろうか。海外からの訪問者にとっても、観光や食体験を通して感じる”リアルな日本”と、会場内で示される”未来を志向する日本”とのギャップが対話を生み、その間にこそ文化理解が深まる余地がある。
大阪・関西万博
営業時間:9:00~22:00(入場は閉場1時間前まで)
アクセス:大阪メトロ中央線「夢洲駅」下車すぐ(東ゲート徒歩約2分)、京阪神主要駅・関西国際空港・伊丹空港からのシャトルバス、水上アクセス(港湾シャトル船)もあり
Profile
林信行 Nobuyuki Hayashi
1990年にITのジャーナリストとして国内外の媒体で記事の執筆を始める。最新トレンドの発信やIT業界を築いてきたレジェンドたちのインタビューを手掛けた。2000年代からはテクノロジーだけでは人々は豊かにならないと考えを改め、良いデザインを啓蒙すべくデザイン関連の取材、審査員などの活動を開始。2005年頃からはAIが世界にもたらす地殻変動を予見し、人の在り方を問うコンテンポラリーアートや教育の取材に加え、日本の地域や伝統文化にも関心を広げる。現在では、日本の伝統的な思想には未来の社会に向けた貴重なインスピレーションが詰まっているという信念のもと、これを世界に発信することに力を注いでいる。いくつかの企業の顧問や社外取締役に加え、金沢美術工芸大学で客員名誉教授に就いている。Nobi(ノビ)の愛称で親しまれている。
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【6/19(木)〜29(日) 東京都・セイコーハウスホール】
2025.6.17
「重要無形文化財保持者認定30周年 井上萬二白磁展 ―白き道ひとすじに―」
白磁丸形壺 径34.5×高さ32.6cm
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銀座・和光のセイコーハウスホールにて、2025年6月19日(木)から29日(日)まで、「白磁」の重要無形文化財保持者(人間国宝)の井上萬二氏による、和光では通算49回目となる展覧会「重要無形文化財保持者認定30周年 井上萬二白磁展 ―白き道ひとすじに―」を開催。
白磁瓜形壺 径31.2×高さ42cm
【特別企画作品】白磁香炉 径11.4×高さ11cm
佐賀県有田町に生まれ、白磁一筋に情熱を注いできた井上氏。轆轤(ろくろ)の精緻な技と高い精神性が融合した作品は、現代工芸の美の頂に位置づけられる存在。96歳を迎えた今なお、技と表現が進化し続ける姿勢は、国内外から高い評価を集めている。
白磁線鶴首花瓶 径25.6×高さ29.2cm
白磁花形花器 径38×高さ23cm
本展では、井上氏の原点ともいえる“白”を主題に、代表作である丸壺、鶴首花瓶、渦文壺など、清廉かつ凛とした佇まいの作品を多数展観。
白磁ひねり壺 径20.6×高さ30cm
静謐な白磁に込められた日本の美意識と、進化を続ける造形の力を体感できる貴重な機会。会場でぜひ、美と工芸の真髄に触れてみてはいかがだろうか。
【特別企画作品】白磁紫青海波文組皿 大:9.5×15×高さ4.2cm、小:8.7×13×高さ4cm
「重要無形文化財保持者認定30周年 井上萬二白磁展 ―白き道ひとすじに―」
【会期】2025年6月19日(木)~29日(日)
【会場】セイコーハウスホール(東京都中央区銀座4-5-11 セイコーハウス 6階)
【営業時間】11:00~19:00(最終日は17:00まで)
【入場】無料
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2025年 SAKE COMPETITION 日本酒順位発表
2025.6.13
本当に美味しい日本酒 純米酒・純米吟醸・純米大吟醸・・・2025年度受賞日本酒 全順位紹介
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本当に美味しい日本酒はどれか? 日本酒選びの基準にもなる日本酒品評会の一つである「SAKE COMPETITION(サケ・コンペティション)」の2025年度表彰式が6月10日に開催された。
2012年からスタートしたSAKE COMPETITIONは、今年で11回目となる。
「ブランドによらず消費者が本当に美味しい日本酒にもっと巡り会えるよう、新しい基準を示したい」という理念のもと、東京の酒販店らが中心となって、消費者に分かりやすく日本酒の魅力を伝えようとして企画された品評会である。
審査対象は市販されている日本酒であり、銘柄を隠したブラインドテイスティングで行われ、日本酒のおいしさ(酒質)のみで競う。そのため、ブランドや銘柄に左右されることなく、どんな日本酒でも1位をとるチャンスがあるとされている。
2025年の審査部門は、「純米酒」「純米吟醸」「純米大吟醸」「Super Premium」「海外出品酒」に加え、「モダンナチュラル」が新設され、日本全国の358蔵から1,163点の日本酒が出品された中から受賞酒が発表された。
TAKANAWA GATEWAY CITYで開催された表彰式で、一堂に会した受賞者たち。
「純米酒部門」
1位は、1830年創業の老舗、静岡県焼津市にある磯自慢酒造株式会社の「磯自慢 雄町 特別純米53」。
「日本酒の原点である純米酒の部門で第1位をいただけたことは作り手冥利に尽きます。岡山県の雄町の特等米の米質にあった酵母を選択しており、手抜きすることなく作りました。和食だけではなく、イタリアンやフレンチにも合うお酒です」と語った。その味わいは果実感より米感の味や香りを感じ、後味はキレがいい。
2位 「天上夢幻 旨口 特別純米」株式会社中勇酒造店(宮城)
3位 「流輝 純米ドライ」松屋酒造株式会社(群馬)
4位 「飛露喜 特別純米」株式会社廣木酒造本店 (福島)
5位 「AKABU 純米酒」赤武酒造株式会社(岩手)
6位 「みむろ杉 ろまんシリーズ Dio Abita」今西酒造株式会社(奈良)
7位 「自然郷 円融純米」合名会社大木代吉本店(福島)
8位 「土佐金蔵 特別純米」高木酒造株式会社(高知)
9位 「一白水成 特別純米酒 良心」福禄寿酒造株式会社(秋田)
10位「大盃 特別純米」牧野酒造株式会社(群馬)
「純米吟醸部門」
1位は、伊勢の地で家族の手作業による日本酒を代々受け継いできている、寒紅梅酒造株式会社(三重)の「寒紅梅 純米吟醸 山田錦50%」である。
「今年はお米の品質自体があまりよくなく、酵母も立ちづらかった為、試作では中々満足行くものが作れなかったのですが、工夫と試飲を繰り返しながら、改良を重ねた結果このような賞に繋がったと思っています」。
味わいは、華やかな果実の香りとフレッシュな酸、山田錦の旨味が感じられ、冷やして楽しみたい。
2位 「而今 純米吟醸 山田錦」木屋正酒造株式会社(三重)
3位 「東洋美人 限定純米吟醸 愛山 醇道一途」株式会社澄川酒造場(山口)
4位 「大嶺 3粒ひやおろし 山田錦」大嶺酒造株式会社(山口)
5位 「楽器正宗 雄町 中取り」合名会社大木代吉本店(福島)
6位 「作 奏乃智」清水清三郎商店株式会社(三重)
7位 「磯自慢 純米吟醸」磯自慢酒造株式会社(静岡)
8位 「町田酒造 純米吟醸 山田錦」株式会社町田酒造店(群馬)
9位 「中島屋 純米吟醸」株式会社中島屋酒造場(山口)
10位「AKABU 純米吟醸 愛山」赤武酒造株式会社(岩手)
「純米大吟醸部門」
1位は創業200年になる神奈川県あつぎの黄金井酒造株式会社の「盛升 純米大吟醸」が受賞した。授賞式は欠席だったが、インスタグラムでは「マジか!!」と驚きの呟き。
その味わいは七沢の名水で丹精込めて仕込まれており、フルーティーなニュアンスを感じながらも、甘みと旨味が調和した繊細な味わいが特長。
2位 「望bo: 純米大吟醸 雄町」株式会社外池酒造店(栃木)
3位 「南部美人 純米大吟醸」株式会社南部美人(岩手)
4位 「有機純米大吟醸 天鷹 槽搾り原酒」天鷹酒造株式会社(栃木)
5位 「石鎚 純米大吟醸」石鎚酒造株式会社(愛媛)
6位 「燦爛 純米大吟醸 夢ささら」株式会社外池酒造店(栃木)
7位 「南部美人 純米大吟醸 結の香」株式会社南部美人(岩手)
8位 「AKABU 極上ノ斬 純米大吟醸」赤武酒造株式会社(岩手)
9位 「白鶴 Alternative 純米大吟醸 白鶴錦」白鶴酒造株式会社(兵庫)
10位 「天吹 純米大吟醸 愛山」天吹酒造合資会社(佐賀)
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「Super Premium部門」
特定名称酒に限らず、720mLで小売価格が10,000円(外税)以上、1,800mLで15,000円(外税)以上の清酒から選ばれる。
1位「極聖 純米大吟醸 天下至聖」宮下酒造株式会社(岡山)
2位「田酒 純米大吟醸 PREMIUM」株式会社西田酒造店(青森)
3位「くどき上手 命」亀の井酒造株式会社(山形)
「海外出品酒部門」
DASSAI USA lnc.(アメリカ)の「DASSAI BLUE Type 23」が1位を獲得した。
「モダンナチュラル部門」
新設された当部門は、純米酒かつ「生酛/山廃/菩提酛」の清酒であり、2023年7月1日~2024年6月30日(2023BY)、および2024年7月1日~2025年6月30日(2024BY)の期間に醸造された清酒から選ばれ、次世代の日本酒が選ばれる。
1位は株式会社西田酒造店(青森)の「田酒 純米大吟醸 山廃」が獲得した。
「重いやクセがあると思われがちな純米大吟醸ですが、山廃の純米吟醸は決して変なクセがあるわけではなく、スッキリとした酸が出ているのが特徴です。これが本当の山廃なんだと伝えたかったので、今回賞をいただけたのはその証だと実感しています。今年初めて出品し、まさか賞を2つもいただけて、うれしいです。」と、受賞の喜びを語った。
2位 「雨降 水酛愛山 “MIZUMOTO”」吉川醸造株式会社(神奈川)
3位 「松の司 純米大吟醸 AZOLLA50」松瀬酒造株式会社(滋賀)
4位 「山城屋 STANDARD CLASS」越銘醸株式会社(新潟)
5位 「仙禽 モダン 壱式」株式会社せんきん(栃木)
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Events
フリッツ・ハンセンの家具が並ぶ空間で、ヒュッゲな夏時間を
2025.6.11
「フリッツ・ハンセン × ニコライ バーグマン NOMU」期間限定でコラボカフェを開催
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デンマークを代表する家具ブランド、フリッツ・ハンセンと、フラワーアーティスト・ニコライ・バーグマンが手がけるカフェ「ニコライ バーグマン NOMU」が、東京・南青山にて期間限定のコラボレーションカフェを開催中。7月13日(日)まで、NOMUの空間が、北欧デザインと花のアートで彩られる。
期間中、店内の家具はすべてフリッツ・ハンセンのプロダクトに。セブンチェアやスワンチェアといった名作が、ニコライ・バーグマンのフローラルデザインと響き合い、洗練された北欧空間を演出している。また、一部の家具には、耐用年数を迎えたチェアや、使用しなくなったチェアを回収・再利用するサーキュラープログラムによるものを取り入れるなど、サステナブルな取り組みも実施。
NOMU オリジナルホットドッグとKAMIKATZ ビールセット 2,090円
カフェメニューには、デンマークの定番メニューをNOMUらしくアレンジした品々が並ぶ。ジューシーなポークソーセージをサワードウバンズで挟み、ピクルスやフライドオニオンをトッピングしたホットドッグは、2種のソースから選択可能。
さらに、 “ゼロ・ウェイスト” 活動を進める徳島県上勝町のRISE & WIN Brewing Co. によるクラフトビール「KAMIKATZ BEER」とのペアリングセットも。柚香の皮を香りづけに使用した白ビール「カミカツホワイト」と、鳴門金時芋をアクセントにした黒ビール「カミカツスタウト」の2種が楽しめる。
ルバーブソースとカスタードのデニッシュケーキ 770円
ブラックレモネード 880円
スイーツは、デンマークの伝統菓子「カルトフルケーケ」を夏向けにアレンジ。カスタードクリームを詰めたシュー生地に、甘酸っぱいルバーブソースとマジパンを重ねた、見た目にも美しい一皿。このほかにも、竹炭パウダーを加えたブラックレモネードなど、視覚と味覚を楽しませるドリンクもラインナップしている。
家具、花、食がひとつに溶け合う、感性豊かな空間。北欧の暮らしに根付く“ヒュッゲ”の精神に触れながら、心地よいひとときを楽しんでみては。
期間限定コラボレーションカフェ
「フリッツ・ハンセン× ニコライ バーグマン NOMU」
【期間】開催中~2025年7月13日(日)
【場所】Nicolai Bergmann NOMU(東京都港区南青山5-7-2)
【営業時間】10:00~19:00(7/7は休業)
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グルメ最前線 トップレストランを探訪する
2025.6.12
石川「オーベルジュ オーフ」、そこには 魂が震える食体験が待っている
シェフの糸井章太氏。背後にあるのは館内の至る所に飾られたパリ在住のアーティスト・小川貴一郎氏の作品。
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若手の登竜門「RED U-35」で史上最年少で優勝、このたび「デスティネーション・レストラン2025」に選ばれた「オーベルジュ オーフ」に行くのなら今のうちだ。
里山の真っ只中にある至高の店
5月28日、ジャパンタイムズが毎年発表している「デスティネーション・レストラン」だが、2025年度の受賞店の1軒に選ばれたばかりの石川県小松市観音下町にある「Auberge〝eaufeu″オーベルジュ オーフ」に出かけてきた。
北陸新幹線の小松駅から車でたったの20分、小松空港から車で30分の距離にある。東京からなら3時間余で到着できる。
開業からもうすぐ3周年、糸井章太シェフはまだ32歳という若さで北陸ガストロノミーの先頭に立ち、その手腕はますますの進化を遂げている。
最初に結論めいたことを言えば、北陸にはミシュランが何年も来ていないから更新されないが、来さえすれば、星を獲ることぐらいは確実な店であることを指摘しておきたい。
オーベルジュの外観は小学校なのだが、中は実にモダンで洒脱なデザインだ。
廃校だった小学校を大胆に改装した。
廃校となった小学校を大改装した当施設は、オーベルジュであるから宿泊もできる。過疎化の結果なので、周囲には本当に何もない。小さな村落と、古い石切り場、少し離れて隣に〝酒造りの神″と言われる農口尚彦研究所の酒蔵があるだけだ。
すぐ近くの小山の新緑と田植えが済んだ田んぼが美しい。オーベルジュには、時たま通り過ぎる車以外、人工的な音は何一つ聞こえてこない。鳥のさえずりと蛙声(あせい)のみ。到着しただけで、思わず、ウーッンと一度、背伸びをしたくなるような開放感がある。空気がうまい。
自家製の湯葉とそら豆。シンプルで余計なものは削ぎ落されている。写真を見ると、衝撃的な味が蘇ってくる。
余計なものを削ぎ落とした料理
さっそく、ディナーに入りたい。
冒頭で、本日使われる野菜のプレゼンテーションがある。山菜の時期は過ぎたが、それでも地元の野菜に多種の野草が混ざっている。まだ瑞々しいから、午前中に近場で摘んだばかりなのだろう。
幾つかのアミューズの後に運ばれたのは「そら豆」。茹でたそら豆を包むのは、小松で採れた大豆から作った自家製の湯葉である。味付けはオリーブオイルと塩だけというシンプルさだ。豆の甘みと湯葉のコク、その塩加減が抜群にいい。ここまで余計なものを削ぎ落とした料理なのに、なんとも豊饒で余韻が深い。
何よりも、これを摂り込んだ身体が喜びに浸っている。この序章だけで、いや~、東京からはるばるここまで来た甲斐があったと、思った。
合わせてくれたのは、農口尚彦研究所の「SHOCHU2022」。酒粕で作った奥行きのある焼酎が湯葉のとろみを切ってくれる。
イワシのねっとり感とジャガイモのシャクシャク感の組み合わせが堪らない。
「イワシ ジャガイモ」は、イワシのマリネをジャガイモのせんべいで挟んだもの。ねっとりと熟成感のあるイワシのマリネがジャガイモのシャクシャクと混ざり合う口中の感覚が心地よい。しかも味付けは、野のハコベ、酒粕のペースト、クリームチーズにアンチョビ……意図的に盛り込んだ発酵食品が満載だ。
その一体感は、しかるべきところに味のパズルが組み合わされたようで、天与の感性をびしびしと感じさせる。
「食材には旅をさせない」
糸井シェフはどのようにして出来上がったのか。その出発点は辻調理師学校で、卒業すると渡仏し、アルザスの3つ星「オーベルジュ ド リル」で修業し、その後もアメリカの3つ星「フレンチランドリー」と、今は閉業した3つ星「マンレサ」でも研鑽を積んだ。
辻調とフランス本国で料理の下地を作り上げ、アメリカで料理の自由さに触れた。恐らくは、アメリカの経験がなければ、今の糸井シェフはなかったのではないか。
2018年、若手の登竜門と言われるコンテスト「RED U-35」で、史上最年少の26歳という若さでグランプリを獲得している。まさに、嚢中(のうちゅう)の錐(きり)、を地で行く感じなのである。
しかし、最終的に彼を覚醒させ才能を解き放たせたのは、里山なのではないか。
そこには、まずミネラルたっぷりの水があり、野生の草花、根や木の実や、近場の農家の野菜、野生のジビエ、肉も魚も至近の距離にある。
「食材に旅をさせないこと」(シェフ)は、料理人にとって究極に理想的な条件であるに違いない。そして何よりも、そのことは美味しさに直結するのである。都会では望むことのできない、地方のガストロノミーの可能性はそこにこそある。
シェフは話す。「3年やって来て、やっとここでやる意味が見えてきました。この時期には、あの野草があそこにあるとか、農家さんのサイクルとかも分かってきました。食材はほぼ、この辺です。はずれても新潟か京都ですね」
環境負荷は、最小限で済んでいることだろう。
フライにされたどじょうは、清らかとしか形容できない。ディップは発酵食材が満載だが、発酵は糸井シェフのテーマでもある。
圧巻のクリエイティブな想像力
面白かったのは「どじょう」だ。土地の清い水で育った半養殖のどじょうを、農口さんの焼酎に浸して酔っ払いどじょうにする。それを米粉でくるんで揚げるのだ(発想は中国料理からか?)。まったく臭みがなく清らかなフライである。自家製の甘酒と自家製のヨーグルトと自家製の柚子胡椒、自生のヨモギで作った発酵ディップをつけて食べる。
何というか、食す者は誰もが、土地の恵みに感謝したくなるだろう。そして、この土地の生気に満ちた食材に日々触れていたら、シェフのクリエイティブな想像力はぐるんぐるんと爆進していくのが、その一皿一皿から分かる。いや、凄いです。
全品を紹介したいところだが、かなり端折(はしょっ)ている。
夏に相応しい冷菜。柑橘系とトマトの甘みのジュースで食べるいかそうめんは、ひれ伏したくなるほど美味しい。
「赤いか トマト」にも筆者はひれ伏した。甘みにとりわけ秀でた「プチぷよ」のミニトマトのスライス、その下にいかそうめんが敷いてある。コブミカンとスダチを軽く絞って、トマトのジュースが甘味を加える。上に載せた緑のアクセントは野草のミョウガタケだが、ミョウガに似たような清涼感があり山の力強さが味わえる。
「岩牡蠣 スナップえんどう」も忘れ難い。岩牡蠣とスナップえんどうを、ともに炭火で炙った。エゴマと青梅の塩漬けのソースは、ジェノベーゼのようなソースだが、青梅のピリリと来る味の配分は天才的だ。茹でた野生のカラスノエンドウの花が添えてある。
この2品とも、味の重層性と補完性が見事すぎる。口に入れるたびに、どれだけ「美味しい」をつぶやいたか分からない。
奥底に眠るDNAが揺さぶられる
シェフは美味しいものを目指してシンプルに考えている。結局、料理とは食材に尽きるのだ。野山を歩けば食材に突き当たる。季節が変わり、変化は無限だ。シェフの感覚は研ぎ澄まされていくだろう。それに農家直送の野菜が加わり、直送の魚と肉が加わる。
それぞれの食材が持つ固有の美味しさを引き出し、唯一無二の皿を構築する確信に満ちた手さばきは、和歌山「ヴィラ アイーダ」の小林寛司シェフを思い出させる。
もう一つ思ったのは、日本人は太古の昔から野草を摘んでは食べてきた。糸井シェフの料理に食べ手の魂が打ち震えるのは、凄まじく美味しいせいでもあるが、われわれの奥底に眠るDNAが揺さぶられるためでもあるかもしれない。
鹿もセリも地のものである。そこに加えられた野草たちが、野趣を引き上げ本能を刺激する。素晴らしい。
一週間過ぎても美味しさが舌に残る
また、「鹿 山野菜」の美味しさの刻印は、一週間が過ぎた今でも味蕾の中に刻み込まれている。
鹿肉は藁でたたき上げにして、セリの軸とカキドオシをまぶした。野生のカキドオシはミントのような爽やかさを添えてくれる。鹿の火入れが凄い。揚げた野ゼリの根が重層性を引き上げる。そして、すべてをまとめ上げる鹿肉から作ったコンソメが、料理というものの深淵へと引き込むのである。
「オーフ 巻き」はいわゆるタコスで、創業当時からのスペシャリテだ。皮も中身も季節によって変わる。その意味では旬を味わうのに最適な一品だ。
新緑の今は、緑をイメージして、生地にホウレンソウ、山で採れたアザミを練り込んだ。具材は、西田農園の葉野菜、ヌカに付け込んだ白菜、パクチー、ミント、白山でとれた羊のソーセージ、ハーブ、自生のローリエ。トマトをベースにしたオレンジのソースを加えた。
合わせた農口さんの日本酒17年ヴィンテージものを熱燗にしたところにセンスを感じた。
火入れされたキジハタの弾力が見事で、浅利出汁のソースがあまりにも素晴らしい。
薫香ときちんと熱がある料理
「なめら 蕨」にはガツンとやられた。「なめら」はキジハタのことだ。皮目を香ばしく焼いて、付け合わせは山で採ってきた蕨を炭でさっと炙った。ソースは浅利出汁、ケッパー、アサツキ、ナメラの上に発酵させた玉ねぎを載せ、レモンジュースとレモンの皮で香りづけした。
キジハタは焼くのが難しいはずだが、魚は身が熱くぶりんぶりんと弾力がある。ちょっと信じがたいほどの味だった。
糸井シェフの料理がフレンチから遠くにあると思わせるのは、まずその香りである。一般にフランス料理は香ることが極めて稀だ。あくまでも口中で展開される芸なのである。糸井シェフの料理は薫香が豊かに立って来る。そしてきちんと熱くあるべきものが熱いのも特徴だ。ネコ舌の欧米人は料理を熱く作らない。
イノシシは毛のついたまま届けられたそうだ。野性味と火入れの妙、人生でいちばん美味しいイノシシであった。
メインの最後に出た「猪 ほうれん草」は、炭火と薪火の合わせで焼いたイノシシで、周囲のカリカリ具合と、血のしたたるレアの火入れが最高。猪の骨やクズ肉から取ったソースのコクがいい。最もクラシックな一品だったとも言えるが、ソースにはエシャロットに粒マスタードを加えてあり見事だった。
合わせたイタリアの赤「CARDIN」は濃厚なフルボディで、猪の野趣を引き上げていた。
デザートの「いちご 黒文字」の斬新さにも驚いた。コンポートにしたいちごと、山でとれた薬草でもある黒文字の葉を乾燥させてタルトの中に入れた。上に薬草のイタドリのコンポート。黒文字で味付けしたアイスクリームを添えた。
最低限を足す料理の凄さ
「最近料理をしていてよく思うのは、これはいらない、が多いことです。削ぎ落としていって、最低限を足すみたいな考え方になっていますね」
という糸井シェフの言葉を聞いた。言うに易く行うに難しだろう。しかし、今宵食べたすべての料理について、「なるほど」と深く納得がいった。
ジュニアスイートの部屋。無駄なものがなく気持ちがいい。色合いもロロ・ピアーナとかクチネリっぽくて素敵だ。
最後に宿泊施設にも触れておきたい。1Fに糸井シェフ特製のハンバーグを出すカフェがある。ここは誰でもフラリと入れる。奥にダイニングがあり、ゲストルームは2Fと3Fで12室ある。
各部屋はベージュと茶色と白のアースカラーを主にしていて、こざっぱりとして実に爽快感がある。元教室の窓が大きい。黒板が白塗りで残っているのも面白い。
清浄な空気と無音であるためか、かつてないほどの寝起きの心地よさがあった。
写真は、徒歩7分のところにある観音下(かながそ)石切り場にあるテーブルで朝食を広げたもの。
一夜開けての朝食だが、今年4月から、朝食バスケットを手に、館内や屋外の好きな場所で楽しめるようになった。サラダ、ジュース、熱いスープ、ペストリーなど、シェフこだわりのメニューだ。
ここは何度でも戻ってきたくなるオーベルジュであることは間違いない。
Auberge〝eaufeu″オーベルジュ オーフ
住所:石川県小松市観音下町(かながそまち)口48番地
TEL:0761-41-7080
営業時間:(月・木・金・土・日・祝日)18:00~22:00、(土日のみ)12:00~15:00
定休日:火・水
ランチ:15,000円~(税サ別)
ディナー:15,000円~(税サ別)
宿泊(1泊2食付き、2名1室利用時の1名の料金):45,600円~(税サ込み)
Toshizumi Ishibashi
「クレア」「クレア・トラベラー」元編集長
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平安の避暑地・嵐山で出逢う、五感で愉しむ京の夏
2025.6.10
「星のや京都」夏の催しを開催。お囃子舟や納涼床、移ろう季節を楽しむ
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平安貴族の避暑地・嵐山に佇む、全室リバービューの旅館「星のや京都」では、8月31日(日)まで、夏の風物詩や古き良き京文化を味わうさまざまな催しを開催している。
書と雨音に浸る「雨づつみのすすめ」
窓を額縁にした絵画のような風景が広がるライブラリーラウンジでは、雨天時にのみ、振る舞いや書籍を提供。京都の書店「恵文社一乗寺店」がセレクトした“雨”にまつわる書籍が並ぶ空間で、雨音を聞きながら静謐な読書時間を楽しむことができる。
開催日 :2025年6月30日(月)まで
開催時間:15:00~18:00
料金 :無料
予約 :不要
※雨天時のみの開催
渓谷に響く音律「京のお囃子舟」
6月21日(土)、22日(日)、28日(土)、29日(日)の4日間限定で開かれるのが、京都の夏の風物詩である祇園囃子を優雅に楽しめる「京のお囃子舟」。祇園祭の鷹山が、山鉾から大堰川に浮かぶ屋形舟に舞台を移し、囃子を演奏。渓谷に響く音色を鑑賞した後は、囃子方とともに合奏に興じる貴重な体験も楽しめる。
開催日 :2025年6月21日(土)、22日(日)、28日(土)、29日(日)
開催時間:17:30~18:30
料金 :無料
予約 :公式サイトにて3日前までに要予約
※天候や川の状況により当日でも舟の運航中止、開催場所・時間変更の可能性があります。
文字に託す願い「奥嵐山の七夕体験」
7月1日(火)~10日(木)、8月21日(木)~31日(日)に開催されるのが「奥嵐山の七夕体験」。朝の静けさのなかで行われるこちらは、梶の葉に想いをしたため、七夕行事の供え物から発展したとされる素麺を旬の鮎のから揚げと共に楽しむ催し。自然の涼を感じながら七夕の風情を味わい、風流な時間を過ごすことができる。
開催日 :2025年7月1日(火)~10日(木)、8月21日(木)~31日(日)
開催時間:6:30~7:15
料金 :1名 6,050円(税・サービス料込、宿泊料別)
予約 :公式サイトにて7日前までに要予約
「水の庭」にしつらえる、夏季限定の納涼床
7月1日(火)から8月30日(土)まで、夏の星のや京都を象徴する納涼床が登場。光がやわらかく差し込み、青もみじが揺れる納涼床は、京都の夏の風物詩である川床を彷彿とさせる特等席。三浦照明による行灯や、京焼や京仏具職人による風鈴の音色も華を添え、目や耳から夏の涼やかさを感じることができる。
開催日 :2025年7月1日(火)~8月31日(日)※雨天中止
料金 :無料
予約 :不要
平安貴族の別荘地であった嵐山。雅な情景が息づくこの地で、風雅な滞在を楽しんでみてはいかが。
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