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京都・北野天満宮で、没入体験のその先へ
2026.3.6
蜷川実花 with EiM「KYOTO NIPPON FESTIVAL 2026 -時をこえ、華ひらく庭-」開幕
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京都・北野天満宮で、蜷川実花 with EiMによる「KYOTO NIPPON FESTIVAL 2026 ―時をこえ、華ひらく庭―」が、2026年5月24日(日)まで開催中だ。
日本の「美」と「文化」を京都から世界に発信してきた「KYOTO NIPPON FESTIVAL」。10周年を迎える今年は、アーティスト蜷川実花と、大阪・関西万博テーマ事業プロデューサーも務めた宮田裕章をはじめ、各分野のスペシャリストが集うクリエイティブチームEiMが参画。全国天満宮総本社である北野天満宮を舞台に、歴史ある庭がアートへと変容するインスタレーションとイマーシブ公演が展開される。
京都随一の梅の名所として知られる北野天満宮の梅苑では、約1200本のクリスタルを用いた屋外インスタレーション《光と花の庭》を展開。光を受けたクリスタルが、季節の移ろいや刻々と変わる空の色と呼応しながら、時間とともに異なる表情を見せていく。自然とアートが響き合う瞬間を体感できる作品だ。
また、茶室「御土居 梅交軒」で展開されるのが、もうひとつのインスタレーション《残照》。ここでは、咲き誇る花々と枯れゆく花を対比させることで、時間の循環を可視化。枯れること、朽ちることという一見ネガティブにも思える状態のなかに潜む、圧倒的な美しさを表現している。
ダンスカンパニー・DAZZLE
3月20日(金・祝)からは、世界的に活躍するダンスカンパニーDAZZLEとのコラボレーションによるイマーシブシアター《花宵の大茶会》がスタート予定。本作では観客席と舞台の区別がなく、観客の目の前でキャストたちが縦横無尽にパフォーマンスを展開。北野天満宮の風月殿という歴史的空間で、時空を超える体験へと誘われる。
会場内の特設ショップでは、本展限定グッズも販売。蜷川実花が撮影した北野天満宮の梅の写真を用いたTシャツや手ぬぐい、風呂敷をはじめ、聖護院八ツ橋総本店の「聖 ニッキ抹茶」、松栄堂のお香や匂い袋など、京都の老舗メーカーとのコラボレーションアイテムも充実している。
歴史と伝統、アートが交錯する春の京都。命の輝きを全身で感じる没入体験へ、ぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。
◆KYOTO NIPPON FESTIVAL 2026 ―時をこえ、華ひらく庭―
【会期】
インスタレーション《光と花の庭》《残照》
―2026年2月1日(日)~5月24日(日) ※休苑日有
イマーシブシアター《花宵の大茶会》
―2026年3月20日(金・祝)予定~5月24日(日) ※休演日有
―公演時間:約60分予定
【開苑時間】9:00~20:30(最終受付20:00)
【休館日】会期中休業日あり(HPにてお知らせ)
【会場】北野天満宮(京都府京都市上京区馬喰町)
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2026.2.26
「東京アートアンティーク2026」が4月23日(木)から25日(土)まで開催
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旅館の矜持 THE RYOKAN COLLECTIONの世界
2026.2.10
「別邸音信」大谷和弘社長 長門湯本温泉の再生を成功に導いた中心人物
「別邸音信」に隣接する「大谷山荘」にて。背後に流れるのは清らかな音信川。
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「ザ・リョカンコレクション」に加盟する旅館の女将や支配人を紹介する連載「旅館の矜持」。今回は山口県の長門湯本温泉に位置する「別邸音信(おとずれ)」の大谷和弘氏を紹介する。
美しい河川沿いに佇むモダン・シックな温泉宿
室町時代に開湯し、600年もの歴史を有するのが山口県の長門湯本温泉である。
この温泉郷を代表する旅館が「大谷山荘」だが、山陽・山陰で知らぬ者はいない豪壮な宿だ。それに隣接する別館が「別邸音信」である。
温泉街の真ん中を貫く「音信川(おとずれがわ)」が、宿名の由来だ。春には桜、夏には蛍を鑑賞できる透明度の高い川である。
この宿を訪れた人はエントランスをくぐった瞬間、静寂をたたえた水盤に心を吸い寄せられる。回廊に沿って進むと、円錐状に上に伸びる木組みの美しい天井を持つホールが現れる。
円錐形の木組みが印象的なホールは、高台寺の茶室「傘亭」を模した。
「一見、バリのリゾートホテルの屋根の様に見えますが、京都・高台寺の茶室『傘亭』の屋根を模したものです。」
そう話すのは「大谷山荘」の5代目の主人である大谷和弘・代表取締役社長だ。
このホールには窓がなく、外気にダイレクトに繋がっている。庭園の木立や苔むした石垣が美しい。
別邸が完成したのは2006年のこと。とても20年前の建物とは思えぬほどモダン・シックな数寄屋造りだ。細部を注視すれば、壁に使われた本物の岩や「なぐり」を施した床板など、惜しむことなく贅を凝らした建築には見惚れることだろう。
わずか18室に完全無欠の付加施設
「設計士には、靴を脱いで館内を歩ける造りをリクエストしました」(同前)
ゲストは靴を脱いで玄関から先に進むが、敷き詰められた畳の感触を、足裏で直に感じられるところがいい。
レセプションの奥に広がる空間はとてもゆったりとした造りだ。ライブラリーには地元の誇りでもある、画家の香月泰男や童謡詩人・金子みすゞの書籍をはじめ、趣味のいい美術全集などが並ぶ。13歳未満の入館を制限しているため、館内は静寂が保たれている。
ギャラリーに展示された焼物が見事だ。
「長門湯本からほど近い深川(ふかわ)窯には5軒の窯元がありまして、その深川萩焼を作る5家の作家は創業時以来からのお付き合いです。板倉新兵衛窯、田原陶兵衛窯、新庄助右衛門窯、坂倉善右衛門窯、坂田泥華窯です。萩の三輪休雪窯、天寵山窯、金子司さんとも懇意にさせていただいてます。そして、ガラス作家の西川慎先生ですね。先生方の作品は館内のいたるところに展示してあります。また、『日本料理 雲遊』では、先生方の作品を取り入れたご夕食を提供しています」(同前)
作家を絡めたイベントも盛んだ。
「The Bar OTOZURE」は夕刻のフリードリンクも食後の時間帯も雰囲気が抜群に良い。
ほかの施設として、茶室、大浴場、スパ施設「グランデスパ音信」、フィットネスジムが備えてある。「The Bar OTOZURE」では、夕刻のひとときにスパークリングワインなどが無料で提供される。
客室はゆとりある敷地に、わずかに18室のみ。全室に源泉掛け流しの露天風呂も完備している。
なにしろ至れり尽くせりの宿だと言うことができるだろう。
大谷山荘前にある川床は、焼き立てのパンが供されるカフェだ(冬季はクローズ)。
街の宿泊者数はピークの半分以下に
音信川では、例えば桜の開花目前の3月末に「川床開き」が恒例として行われる。「大谷山荘」及び「別邸音信」の施設の充実ぶりからすると、宿の中だけですべてが完結してしまう。
しかし、長門湯本温泉は実に様々な魅力に溢れていて、思わずそぞろ歩きをしたくなるような温泉街なのである。
今でこそ温泉街は若い人々で賑わうが、実は、現在の活況に至るまでには大変な苦労があった。
以下、大谷社長が語る。
「私が地元に戻ったのは今からおよそ20年前の2005年で、ちょうど『別邸音信』の建築に着手するタイミングでした。翌年の2006年に竣工し営業を始めたのですが、問題は、温泉街自体に徐々に進行していた沈没の兆しでした」
長門湯本温泉郷の最盛期は1984年で年間39万人が宿泊した。そこから観光客は逓減し、2014年には宿泊者数は年間18万人とピーク時の半分以下となった。
「私が子供の頃は団体旅行のバスで賑わったものです。それがインターネットの時代を迎え、団体旅行から個人旅行へと、旅行のスタイルが変化していきました。そんな時代背景の中で、創業150年の老舗旅館が廃業するというショッキングな出来事が起きたのです。」
2014年、江戸時代から続いた老舗ホテルが倒産し、街の中心部に巨大な空家が現れることになった。
温泉街全体のプロジェクトについて説明する大谷社長。
「長門湯本みらいプロジェクト」が始動
「地元民が危機感を共有したのは、このときです。さらに、温泉街の商店も次々と姿を消して、ゼロ軒にまでなっていったのです。」
2014年、温泉街の復興・再生は、住民にとって喫緊の課題となった。
「再生のきっかけを作ったのは長門市の行政でした。これからは観光という時代に、温泉街の真ん中に廃屋があると、長門市全体のイメージ低下に関わるし、街の元気が失われていくからと、税金でそれを解体してくれたのです」
さらに前市長の大西倉雄氏は、その跡地に星野リゾートの誘致を目論んだ。
「話を受けた星野(佳路)代表が回答したのは、『星野リゾートのホテル単体がこの温泉地にやってきても、この状況はあんまり変わらない。エリア全体のマスタープランごとやりませんか』という提案でした。星野さんにしてみれば、その後、日本各地で着手することになる街づくり案件としては、長門湯本が第1号だったのです」
2016年4月、「星野リゾート 界」との事業実施協定が締結、同年8月にマスタープランの策定が完了し、「長門湯本みらいプロジェクト」が本格的に始動する。
「官民連携」が成功したレアケース
温泉郷の真ん中に位置する音信川だが、それは県の管轄となる。ゆえに、山口県庁、長門市役所、民間と、プロジェクトは必然的に三つ巴で進むことになった。
「行政の側に、経済産業省から長門市に出向中の木村隼斗氏がいたことも僥倖の一つでした。彼は優れたリーダーです」
結論を先に言えば、これは「公民連携」がうまくいった国内でも非常に稀有なケースなのである。
行政は地元に対して激しくハッパをかけた。行政が主導してハード面は出来上がるが、ソフト面を細やかに練り上げていくのは地元でなくてはならない。民間の本気なしには成功は見込めないのである。
公民ががっちりと組み合ったプロジェクト推進体制が構築された。
「街には旅館が星野さんも合わせて12軒あります。1軒ごとに考えは違いますから、その調整には時間がかかりました。
私たちの目指すところは、エリアそのものの価値を高めて、そこからお客様を誘導することでした。目標を分かりやすく言うなら、人気温泉地のトップ10を目指すみたいなことです。
それはもう一遍、40年前の姿に戻すことではありません。『今』の文脈の中で暮らしている人たちが、地域とちゃんとコミットしながら生活文化を作っていくことです。そもそも、暮らしの場所に、温泉と川があること自体が素晴らしいこと。例えば、仕事を終えた人が温泉に入ったり、ただただ川を眺めながら雑談をするような実際行為の次元です。そこには、住民もいるし従業員もいる、移住者や観光客もいて、それなりに楽しんでいる。結果として、そこで経済が動き、循環していて、生活のベースがつくられるというイメージです」
「恩湯」では、住吉大明神が見守る中、岩盤から湧出する湯が見える。
「恩湯」が秘めていた凄まじい泉源
マスタープランでは、長門湯本温泉を魅力あるものにする6つの要素に集約された。それらは「外湯」「食べ歩き」「文化体験」「回遊性」「絵になる場所」「休む佇む空間」である。
そのために敢行したのが、川に架けた5カ所の「川床」と、4カ所で川を渡れるようにした「飛び石」だ。川床も飛び石も、様々な検証を繰り返して、設置までには3年以上を要したという。
6つの要素の中でも大谷社長が特に思い入れがあったのが「外湯」=公衆浴場の「恩湯(おんとう)」だ。大谷は再建プロジェクトのリーダーとなった。
「40年前のその頃は、私も入ってましたし、夕方になると子どもたちがここに集う風景がありました。しかし、今から20年前に故郷に戻った時には、その風景は失われ、この浴場はすっかりさびれてしまってました。建物は古いし、メンテナンスも行き届いてなく、若い世代や観光客は寄り付かないような状態に陥ってました。
私はこの街の再生の象徴として、この浴場を再生させたいと強く思いました。でも、ただ綺麗にするだけではなくて、この土地ならではの歴史に基づいた面白い公衆浴場を作りたかった。
温浴施設を作り、レストランを作るといっても、経営者それぞれの思いでやるとまとまりがなくなってしまいます。川と温泉と広場とレストランなどを、一つの空間設計の中でつなげていくことが大事だと考えました」
だが、一連の過程で、公衆浴場を再建するために老朽化した浴場を壊してみると、驚くべきことが判ったのである。
「岩盤を覆っていた石板が外されると、温泉が岩盤から直接湧いているのがあらわになった。おぉ、自然湧出温泉じゃないか! それは衝撃でした。
その姿は、開湯した600年前と何ら変わらない。この場所の力で、何百万人という人々の喜怒哀楽を受け止めて、また人々を自然の姿に戻すという、つまり、裸にしてきたパワーがあったわけです。これは改めて凄いことだと思いました」
さらなる衝撃が待っていた。
「実は浴槽の下から、もう一個の泉源が出てきたのです。まさに足元湧出温泉です。
一般的に温泉がいちばん鮮度が高いのは地中にあるときです。一旦外に出ると、空気に触れて酸化が始まる。だから、温泉の質は、泉源から浴槽までの距離にかかっているのです。
足元湧出温泉の凄さって、その距離がゼロということです。それは酸化してない温泉が注ぎ込まれるという、とんでもないクオリティなわけで、国内でも稀有な自然資本だったのです。ならば、生源泉をそのまま楽しもうというコンセプトが生まれました」
生まれ変わった「恩湯」の外観。入浴後も施設内でゆっくり過ごせる。
ザバザバ流れる「生まれたての温泉」
温泉は39℃前後の‶ぬる湯″で、湧出量は毎分131リットル。そこで設計士にこのように依頼した。
「岩盤は覆わずにそのまま露出させる。お湯には水も何も混ぜない。温度調整もしない。そのままの湯を溢れさせて掛け流しにしたい」
この要望を聞いて設計士は欣喜雀躍した。
「そこで彼が言ったのは、『これは禊です。だから、温泉に入る行為自体を神聖な行為としてデザインしましょう』と。
コンセプトは神社の仕組みと対応させて、人は神社に行ったら、手を洗い口をゆすいで拝殿に向かう。それと同様に、まず洗い場を手前に配置して、そこで体を清めてから、湯船に浸かる。
と言うのも、この泉源の権利は近くの曹洞宗・大寧寺(たいねいじ)が持っているのですが、実はこの泉源は神様が授けたという物語が600年も前からあるわけです。言わば、神様に守られた『神授の湯』なのですね」
大谷社長が話した物語を要約すると、こうなる。
ある日、大寧寺の境内で3代目の定庵禅師が、石に腰かけた老翁を見かけ、名を尋ねる。その翁は、長門國一宮「住吉神社」の大明神だと。住職は翁を寺に招き、仏道を伝授する。その後、錦の袈裟を授かった翁は、「お礼に温泉を出しておきましたのでご利用ください」と言い残し、龍蛇となって昇天していった。
「再建した浴場の岩盤の上に、神仏習合のコンセプトでデザインしたのは、そういうワケです」
「生まれたての温泉」を味わうために、湯量に対する浴槽面積を計算した。
「男湯と女湯に分けた場合、それぞれを8㎡の浴槽にすると丁度いいことが判りました。狭いけれども、最高度の温泉がザバザバ流れているわけです」
お湯の成分はアルカリ性単純温泉で、浴槽に注がれる温度は36~38℃。ゆえに、20分ほどゆっくり浸かっていると、温泉の成分が皮膚に浸透し、体の芯から温まるのだ。その存在は、まさに、長門温泉の中核を成す「宝物」と言えるだろう。
ちなみに「恩湯」は2023年、京都の大徳寺にて、湯道文化振興会から最高賞である「湯道文化賞」を付与されている。その時は、大谷和弘社長と大寧寺方丈・岩田啓靖氏、そして、長門国一宮住吉神社宮司・鳴瀬道生氏で授賞式に参加した。
再建前の「恩湯」ならびに、周辺の温浴システムで毎年6千万円の赤字を出していたが、再建から5年目の2025年度にはついに、単年度での黒字化を成し遂げた。
灯りイベント「うたあかり」は、日没~22時、3月8日まで連日開かれる。
街の店舗数はゼロから17に
もう一つの観光の目玉は、3月8日まで開催している、金子みすゞの詩をテーマにした灯りイベント「うたあかり」である。詩の朗読と音楽に合わせて光の演出が変化する「幻燈輪舞(げんとうろんど)」では、竹林の階段や広場にいくつもの影絵が踊る。「みすゞのお庭」では、長門市内の児童生徒が制作した数千個の「あかりのうつわ」が広場を埋め尽くす。
再生プランを実働させてから10年。街はすっかり蘇った。
「いま温泉街の空き家活用をどんどん進めています。例えば、萩焼の産地だから、萩焼カフェを置いたり、薬屋さんだったところがクラフトビール屋さんになったり、そして、焼き鳥屋さんに瓦そば屋さん。とても美味しいピザを焼くイタリアンレストランのあるホテルも出来ました。店舗数ゼロだったところから、今では17コンテンツに増えました。やはり、ソフトについては民間が継続的に努力するしかありません」
がむしゃらに走り続けた10年間で、培われたのは仲間との人間関係だそうだ。
「大きな温泉街だとこれだけ変革させるのは難しいと思うのです。長門湯本は端から端まで歩いて10分ですから、たまたまスケールが小さかったのが良かった。それと、今でもしょっちゅう仲間とコミュニケーションを取り合っていること、それが財産だなと思います。ややもすれば、毎日毎日何らかの連絡を取り合っています」
全客室に完備する露天風呂。アルカリ性単純温泉で肌はすべすべに。
湯治三昧と三土料理に舌鼓
最後に「別邸音信」に話を戻す。
全客室に源泉掛け流しの露天風呂が完備されていることは冒頭で述べた。泉質はアルカリ性単純温泉であるから、肌にしっとりくる。部屋にあって何度でも繰り返し入れるところが最高に良い。
隣接する大谷山荘のダイナミックな大浴場にも入浴できるので、様々な湯舟で湯治(とうじ)三昧が楽しめる。
日本海に面する仙崎港直送の旨みたっぷりの魚介類。
肝心の食事だが、夕食は「その土地でとれたものを、その土地の料理法で、その土地で食す」という土産・土法・土食の「三土(さんど)料理の哲学」に基づいた会席料理だ。
日本海が至近の距離にあることから、魚介類が実に豊富だ。しかも旨みは極上である。旅館では珍しいことだが、卸売市場の仲買権を持っているので、魚介類や野菜は市場で直接買い付けることができる。
また、朝食で洋食を選べば、自家製の焼き立てパンが素晴らしく美味しい。
夕食も朝食も、丁寧に作り込まれた一品一品の味わいが身体に染みわたるようだ。
宿と温泉街の魅力を堪能するには1泊だけではとても足りない。「次回は連泊で」と心に誓いたくなる。
【別邸音信】
住所 山口県長門市深川湯本2208
電話 0837-25-3377
構成/執筆:石橋俊澄 Toshizumi Ishibashi
「クレア・トラベラー」「クレア」の元編集長。現在、フリーのエディター兼ライターであり、Premium Japan編集部コントリビューティングエディターとして活動している。
photo by Natsuko Okada
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2026.3.4
渋谷で「暮らすように泊まる」ハイアット ハウス 東京 渋谷という選択
独立したベッドルームを備えたデラックススイート。
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JR渋谷駅・新南改札からすぐ。100年に一度とも言われる再開発が進む渋谷駅中心地区の主要施設の一つ「Shibuya Sakura Stage」内に、「ハイアット ハウス 東京 渋谷」はある。歩行者デッキで駅はつながっており、スクランブル交差点や最先端のショップ、レストランが集まるエリアへも徒歩圏内。さらに渋谷駅を拠点に、都内や郊外へのアクセスも抜群だ。
このロケーションに誕生した同施設は、単なる「便利なラグジュアリーホテル」ではない。コンセプトは「暮らすように泊まる」。ハイアットが運営するサービスアパートメントスタイルのホテルとして、1泊のショートステイから中長期滞在まで、自分のライフスタイルを維持したまま快適に過ごせる空間が提供されている。
流線が美しいデザインの車寄せ。
全室キッチン・洗濯乾燥機付き。自宅のような快適性
客室はスイート18室を含む全125室となっており、約32㎡以上の広さを確保している。すべてがアパートメントタイプだ。
スタンダードルームは約32㎡。数字以上に広さを感じるのは、長期滞在を前提とした設計だからだ。全室にキッチンを備え、調理器具や食器、カトラリーも完備。冷蔵庫も食材を入れるには十分なサイズで、オーブンレンジも設置されている。海外からの旅行者が近隣のスーパーマーケットで日本の食材を購入し、日本料理や自国の料理を自由に調理して過ごしているという。
さらに客室内には洗濯乾燥機もあり、操作方法はQRコードから動画で確認できる。小さな子ども連れの家族や長期滞在者にとって、これ以上ない安心材料だ。スーツケースを広げたままでも動線が確保され、収納もスペースもゆったりとしているので、荷物が多い傾向のある海外からのゲストにも喜ばれている。
広さ64㎡のゆったりスイート。
全客室には洗濯乾燥機が備えられている。
バスタブもゆったりとしたサイズで、アイロンやアイロン台も装備。“整った日常”を大切にしていることが、このような配慮からも伺える。
6階から14階に位置するスイートルームは、各フロアに2室(スイートルーム1室、デラックススイートルーム1室)がある。スイートルームはスタンダードルームとコネクトしてツーベッド仕様にすることも可能なので、ファミリー利用にも対応する。
何より、このホテルの隠れた魅力は眺望だ。天候によっては横浜方面まで見渡すことができる。スクランブル交差点のエネルギッシュな印象とは異なり、窓の外には穏やかな都市のレイヤーが広がっている。渋谷の“生活する街”としての一面が見えてくるのも新鮮である。
ホテルのサービスと施設の充実が、快適な滞在を支える
ホテルのロビーフロアには、ブランド共通のカジュアルバー「H Bar」の大きなカウンターが目を惹く。朝6時半から夜10時まで営業しているので、コーヒーを片手に朝の予定を立てるもよし、夜に軽く一杯楽しむもよし。肩肘張らない空気感が心地よい。もちろん宿泊者以外も利用が可能だ。
開放的な大きな窓とカウンターが印象的な「H Bar」。
また同じフロアには、レストラン「MOSS CROSS TOKYO」がある。和のエッセンスを取り入れたジャパニーズフレンチに定評がある。宿泊者にはビュッフェ形式の朝食も提供している。
また渋谷という立地から、企業イベントや貸切利用なども多いと聞く。大きな窓から光が差し込む空間は、都市の中にあるとは思えないほど開放感に満ちている。
ジャパニーズフレンチを提供する「MOSS CROSS TOKYO」。
そして、渋谷では珍しいプールの存在も見逃せない。朝8時から夜8時まで利用可能で、年間を通して楽しめる。夜になると照明の色が変わり、落ち着いた雰囲気に包まれる。家族連れの利用も多く、「渋谷でプール」という非日常的な体験はちょっとした贅沢気分だ。
さらに24時間営業の「Hマーケット」も併設されているので、軽食やドリンク、ワイン、スナックなどをいつでも購入できるため、部屋でゆっくり過ごしたい夜や、小腹が空いたときにも重宝する。キッチン付きの客室と組み合わせれば、まさに“暮らす”感覚での滞在が可能だ。
ジェットバスやランジャーを備えた屋内温水プール。
軽食やドリンクのほか、渋谷をアイコンとしてデザインしたグッズも販売されている「H Market」。
街との取り組みで、日本の生活体験を提案
このホテルのもう一つの特徴は、地域との距離の近さにある。地元の祭りやイベントと連携し、地域とのつながりを大切にしている。館内では、お茶を点てる体験や音楽イベントを開催し、元旦には餅つきも実施。世界中から訪れるゲストが日本文化や渋谷ならではのカルチャーに触れられる機会を設け、街の魅力を発信している。
海外からの宿泊客は、ここを拠点に富士山やスキー場、京都などへ向かうゲストも多い。空港からアクセスしやすく、一度荷物を預けて地方へ向かい、再び戻ってくる。旅慣れた利用者は、日本の宅配サービスを活用し、荷物をスキー場へ直接送るなど、そんな“ベースキャンプ”的な使い方ができるのも強みだ。
ロビーフロアには、宿泊者のみ使用できるビジネススポットもある。
再開発の街に見つけた、新たな旅の拠点
再開発によって姿を変え続ける渋谷は、訪れるたびに新しい発見がある一方で、少し迷いやすい街でもある。そんな中で、このホテルは変わらない“旅の拠点”となっている。
豪華さやきらびやかさを前面に出すのではなく、生活の延長線にある快適さを大切にしているのだ。渋谷で遊び、食べ、働き、そして部屋に戻ればいつもの自分に戻れる。都市滞在のあり方が多様化する今、そのバランス感覚こそが最大の魅力なのかもしれない。
渋谷の中心で、“暮らすように泊まる”という選択肢が、新たな旅のスタイルとして選ばれている理由に納得する。
東京都渋谷区桜丘町3-3
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日本のプレミアムなホテル
40代以降は体重が落ちにくくなるものですが、49歳の筆者はがんばらずに「-3kg」を達成できました。ダイエット成功のコツは、「食事制限」ではなく「腸活」を意識したこと。発酵食品や水の取り方、サプリメントの活用など、実践した習慣をご紹介します。
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2026.3.3
真木千秋 テキスタイルアート展「Voice of Nature」
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北インド・ヒマラヤの麓に工房を構え、類稀なテキスタイルアートを生み出す真木千秋による展覧会「Voice of Nature」が、2026年4月2日(木)から12日(日)まで、東京・代官山のヒルサイドフォーラムで開催される 。
「織物は暮らしの中で使われるものがいちばん愛おしい」。その想いを胸に、長年にわたり用途のある織物を手掛けてきた真木。2012年以降はヒマラヤ山麓に拠点を置き、植物を育て、糸を紡ぎ、染め、織りまでを手がけている。本展では、圧倒的な自然とあくなき手仕事の連なりから生まれた約40点を披露する。
会場に並ぶ作品は、真木の五感に届いた“自然の声”。人が意図して何かを「作る」というよりも、素材が自らの行き先を決め、いつの間にか形として立ち現れる──その一連の流れが、まるで“風景”のように静かに迫る。
真木千秋と建築家の中村好文
会期中には、真木千秋と染織作家の石垣昭子、建築家の中村好文によるトークセッション「自然の声を聴く」も開催 。三者それぞれの視点が交差する、濃密な鼎談となりそうだ。
また4月7日(火)には、インドを代表する建築家で、真木の工房「ganga maki」の設計を手がけたスタジオ・ムンバイ主宰、ビジョイ・ジェインとのギャラリートークも開催される。
作品について真木は「用途を想像していただいても、ただ眺めていただくのも自由。それぞれの方の心の距離感で向き合っていただけたら何よりの喜びです」と語る。
ヒマラヤの自然とともに紡がれ、造形へと姿を変えたものたち。その前に立つとき、私たちはどう感じるか、会場で確かめてみてはいかがだろうか。
◆CHIAKI MAKI & ganga maki 「Voice of Nature」
【会期】2026年4月2日(木)~12日(日)
【会場】東京都渋谷区猿楽町18-8 ヒルサイドテラスF棟1階
【時間】11:00~19:00(最終日は17時終了)
【入場料】一般 800円、学生 500円
ギャラリートーク「自然の声を聴く」
【日時】2026年4月4日(土) 14:00~15:00
【登壇】真木千秋、石垣昭子、中村好文
【定員】60名
※専用フォームより申し込み(定員になり次第締切)
真木千秋×ビジョイ·ジェイン氏 ギャラリートーク
【日時】2026年4月7日(火) 18:00~19:00
【登壇】真木千秋、ビジョイ・ジェイン
【定員】60名
【参加費】無料 ※別途入場料(一般800円/学生500円)が必要
【申込】2026年3月31日(火)〆切
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Features
2026.2.26
「東京アートアンティーク2026」が4月23日(木)から25日(土)まで開催
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投稿 真木千秋 テキスタイルアート展「Voice of Nature」 は Premium Japan に最初に表示されました。
【管理栄養士が解説】ダイエットの成功を握る「朝食」には、ヨーグルトなどの発酵食品を取り入れるのもおすすめです。なぜダイエット効果があるのか、ヨーグルトの選び方のコツについても、あわせてご紹介します。(※画像:Shutterstock.com)
JCCO
PREMIUM JAPAN AWARD
日本文化発信機構 JCCOが目指すもの
2026.2.27
日本の魅力を世界へどう伝えていくか 観光立国“Nippon”の未来 村田茂樹観光庁長官
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今年6月に「日本文化発信機構(JCCO)」が、「PREMIUM JAPAN AWARD(プレミアムジャパン・アワード)の第一回目を開催するに当たって、観光庁がその後援にあたることが決定した。Premium Japan編集長で同機構専務理事の島村美緒が、村田茂樹観光庁長官に聞いた。
エッジの効いたアワードに期待
村田 プレミアムジャパンのホームページを拝見しましたが、掲載してある記事から、ネットワークの広さに大変驚きました。
島村 ありがとうございます。まずは、私どもが企画しております「プレミアムジャパン・アワード」の後援を観光庁がお引き受けくださったことに、御礼を申しあげます。後援を決定された背景や理由を伺えますか。
村田 皆様の取り組みは、わが国の文化を海外の方に紹介する一つのツールであると捉えています。
特にアワードの選定というものは、知見のある方々が選び抜いた上で、「これが日本の文化の素晴らしさだよ」と伝えていく意味を持ちます。それは私たち観光庁が、外国の方にわが国の魅力を伝える取り組みを行っている目的と変わらないと考えました。
私たちは日本政府という立場がありますので、情報発信と言ってもどうしてもある意味、平等になってしまう側面があります。しかし、民間のアワードは、民間目線を中心にしていますから、ある意味、よりエッジの効いたものになっています。そういう洗練された情報発信に期待する部分があります。
プレミアムジャパンのコンテンツもそうですが、そのアワードが、この美しい日本文化の感動を世界中の皆さんに伝えるインターフェースとなることに大変期待しているわけです。
島村 日本にも様々なアワードがあるのですが、海外に向けて発信しているアワードがないこと、それがやってみようと思った最初の理由です。
選定条件に海外からの目線
島村 私ども以外は多言語でやってるメディアはほとんどないので、プレスリリースを送ってみると、海外のメディアの反応がすごくいいです。
あと面白かったのは、海外の投資家の方から連絡が来て、「日本文化に投資したいんだけど、どこに投資したらいいか選定ができない」と言うのです。
プレミアムジャパン・アワードは選定の条件として海外からの目線というものを入れています。海外の人から見て面白いかどうか、あとは海外に対して窓が開いているかどうかです。
アワードで選ばれた人たちが、その結果として、海外の投資家にとっての有益な情報になることも大いに考えられますね。
村田 日本の文化を維持、発展、継承させていくのに、後継者のことで悩んでいる分野も結構あります。その意味でも、海外へのビジネスがうまく成立すれば、日本の文化を持続的に継承していく一つのきっかけにもなるでしょう。そうした効果も期待したいです。
島村 ただ単にアワードを付与するのではなくて、受賞者たちが最終的にはは海外からの要望に繋げられる立て付けを作ることも目指しています。
村田 うまく好循環が出来ていい事例になれば、翌年からの先行事例になりますね。
4268万人と9.5兆円
島村 では、観光庁についてですが、特に日本の都市部では、多くの外国人旅行客を目にすることが日常になりました。最近のインバウンドをめぐる現状やトピックは何でしょうか。
村田 観光庁という役所ができたのが2008年で、その時のインバウンドの訪日外国人旅行者数はまだ800万人程度でした。その後コロナ禍があって一時落ち込みましたが、昨年2025年のインバウンドは4268万人で、4000万人の大台を初めて突破した記念すべき年になりました。これは過去最高の数字です。
それからもう一つ、人数だけではなくて、大事なのは消費額、経済効果だと考えます。インバウンドの方がいかに日本で消費してくれるかが経済的に非常に重要なわけですが、昨年のインバウンドの消費額は9.5兆円となっています。
もうすぐ10兆円に届きます。コロナ禍前の2019年は4.8兆円でしたから、その時の2倍になったことになります。
これは観光産業が外貨を稼ぐ輸出産業として、自動車に次ぐ第2番目の位置づけになっているということであり、観光はわが国の経済にとってなくてはならない産業に育っているわけです。


村田 トピックということでもう一つ付け加えますと、2019年から観光政策の財源として、「国際観光旅客税」を新設しました。日本人外国人どちらの方にも、出国の時に1回あたり1000円の税をご負担いただいております。
その税収は観光政策に使われているのですが、今年の7月からはこの旅客税を引き上げる方針が決まったところです。今後、財源がさらに充実してきますので、これを活用させていただいて、観光庁だけではなく、文化庁や環境省など、各省庁と連携してわが国の豊かな観光資源の魅力向上の施策を進めていくことが決まっています。
島村 訪日観光客をどんどん増加させたいわけですね。
村田 4000万人を超えたと申し上げましたが、もう少し先の目標は、2030年に6000万人を目指していますし、消費額は15兆円を目指しています。さらなる高みを目指して、官民を上げて取り組んでいるところです。
三大都市圏に7割、地方部に3割
島村 重点的な地域はあるのですか。
村田 まさに我々の課題となっているのが、地方への誘客です。
現状は大都市部、特に東京、大阪、京都に多くのインバウンドの方が来て宿泊しています。大都市部への観光客の集中を、少しでも地方に分散させていきたいのです。
ちなみに、三大都市圏以外の地方部での外国人が泊まっている割合は、地方部では2024年で30%ぐらいになっています。
島村 東京、大阪、京都が7割ですね。
村田 都市部でのお客様の集中については、いろんな弊害が出てきています。やはり観光を持続可能にするためにも、いかに地方にお客様を誘客するかが大きな課題の一つです。
もう一つの課題は、さきほど消費額15兆円を目指すと話しましたが、1人当たりの消費単価を上げていかねばなりません。
2025年のデータですと、1人当たりの消費額は23万円ぐらいです。これをさらに上げていくためには、日本でたくさんのお金を消費して下さる特に「欧米豪」と呼んでいますが、ヨーロッパ、アメリカ、オーストラリア、こうした国々の旅行者に訴求するような取り組みをさらに進めていきたいのです。
島村 富裕層向けみたいなことですか。
村田 富裕層じゃなくてもこうした国の方々は、お金を平均よりも使って下さっています。一つは滞在期間が長いことがあります。人数はアジアの方が多いのですが、欧米豪の方はやはり遠方から来られるため、一人当たりの単価はかなり大きくなっています。
「観光」とは国の光を観ること
島村 地方への誘客を進めていくには地域の魅力を引き出していくことが重要です。日本の地域が持つ魅力についてはどのようにお考えですか。
村田 中国の四書五経の一つ『易経』で、私どもがよく使っているくだりなのですが、「観國ノ光。利用賓于王」という一文があります。「国の光を観るのは、王に賓(ひん)たるに利(よ)ろし」 が、「観光」の語源とされています。
光というのは文物や、国が生み出した文化や人の営みで、国のそうしたものをよく観ることが、王様の賓客としてふさわしい、という意味です。観光とは、この国の光を観るという文脈から来ています。観光は、その国のもの、あるいは地域の光輝くものを観て感動する、そういう人間的な行為と考えています。
わが国の観光政策においても、来訪者の方を感動させる光り輝くものや魅力を生み出していくことが、まさに観光の充実につながっていくのではないでしょうか。
わが国の魅力として特筆すべきは、その多様性をです。四季があり、季節によって、全く違う風景や自然の姿を見せます。自然環境とともに、長年育まれてきた食文化、あるいは地域の名産を生かした伝統工芸、あるいは地域コミュニティのシンボルとなるような祭事や、歴史的な建造物、こういうものは他の全ての国に揃っているとは限らないものです。それらはわが国の地域に豊富にあって、多様な魅力となっています。
島村 最近、海外の例えば『ニューヨークタイムズ』が「20〇年に行くべき52ケ所」と題して、日本の地方都市が発表されています。直近では長崎、<wbr />沖縄とかです。こうした記事は、すごく追い風になりますね。
村田 私たちの方向性から言うと大変ありがたい報道です。やはり欧米のメディアが、直接読者に日本の地方都市の魅力を伝えてくれるのは大変効果的です。
和食の細部への感動
島村 観光資源としての日本文化の強みとはどのような点にあるとお考えですか。
村田 わが国の文化は、極めて特徴的で固有のものだと思っています。
例えば食で言いますと、インバウンドの方が訪日に際して最も期待していることの一つに、和食が挙げられています。和食については、単に食べる行為だけではなくて、この生産者がどれだけ丁寧に素材を育てているかから始まって、料理人がどう素材を吟味し、手を凝らして調理していくかまで考えれています。
さらには食器と食材の組み合わせ、盛り付けの仕方、その一つ一つにメッセージが込められていて、そうした意味で和食は芸術の域に達している。それを堪能される外国の方たちは、それぞれの細部に感動しているのではないでしょうか。
ユネスコに無形文化遺産の登録制度というものがありまして、わが国においては、和食に加えて、伝統的な酒造り、能や歌舞伎、あるいは雅楽、和紙、こうした23件もの文化財が登録されています。
最近の話題で言いますと、神楽と温泉文化の2つについて、新しくユネスコに無形文化遺産の登録申請をする方針が決定しました。
温泉は全都道府県にありますし、私どもの日本の国民の皆さんにも非常に親しみ深いものです。こうしたものの歴史あるいは文化性もまた、新たな魅力として外国人の方に伝えていきたいですね。
日本政府観光局が世界26ケ所に
島村 日本の文化や魅力を諸外国にしっかり伝えていくには、観光庁としてどのような取り組みを進める予定ですか。
村田 文化や地域の魅力ですが、どんなにいいものを持っていても、伝わらないことには日本に来てもらえません。
魅力の発信活動を行う組織として、JNTO(日本政府観光局)があります。JNTOは各国あるいは地域の日本大使館などとも連携しながら、海外へのプロモーション活動に力を入れてきました。
そうした活動を通じて、わが国の文化や魅力の理解は相当に進んできており、外国人で2度3度と来日するリピーターが増えていることも、理解が進んでいることの一つの表れではないでしょうか。
それから連携という意味では、JNTOの海外事務所が26ケ所にありますので、駐在している各国の国民性とか、関心というものも十分にリサーチしながらその国に合ったマーケティングを行っています。日本の各地域の魅力を十分に情報収集しながら、効果的に行っています。
島村 私はコミュニケーションが一番問題だと思うのです。本当にいいものを作っていても、知られなければ何も始まりません。知らせるだけじゃなくて、なぜ価値があるかというところまで伝えなければと常々考えています。
村田 外国人の方に分かるように伝えることが大切なのですが、それがなかなか難しい。その背後にあるものやストーリーも一緒に伝えていくことがやはり重要ですね。
観光の高付加価値化を支援
島村 国として特に力を入れていきたい取り組みなどはありますか。
村田 旅行客の皆さんの期待に応じた多様な観光資源を用意しておくことが重要だと思っています。お客さんが世界の各国から来ているわけですが、その国民性の違いによっても、興味の対象が変わります。
様々な方に満足してもらうためには、体験できるメニューが非常に重要なポイントとなります。それを「コト消費」と呼んでいます。
例えば、伝統的な酒蔵で醸造体験をしてみる、あるいは伝統工芸品の製作を自分の手でするなどですが、職人の方の指南が付帯していればさらに充実します。
そこに行かなければできない体験を数多く提供していくのが、わが国の観光資源に厚みをもたらす上でもポイントになってきますし、それが観光の高付加価値化につながります。その結果、地方部への誘客も自ずと実現し得るのではと考えています。
私ども観光庁としては、そうした観光資源が全国の隅々で生み出されるような取り組みを支援していきたい。また、観光資源を魅力あるものに磨き上げていく取り組みも積極的に支援して、実績を上げていきたいのです。
観光を地域経済の活性化の揮爆剤にしたいと思っておられる地域の方は多いですから、しっかりと期待に応えていきたいです。
島村 インバウンドはこれから右肩上がりしていくイメージしかないですから、今後が楽しみですね。
村田 いわゆるオーバーツーリズム的な問題を未然に防止していく取り組みも並行してやっていかなければ、6000万人という数字は円滑には達成できないと考えています。
島村 それが観光立国ということですね。
村田 その通りです。
島村 最後に、長官がお感じになっている、「日本の美意識」とはどのようなものでしょうか。
村田 「日本の美意識」という抽象的なものを言葉で表すのはなかなか難しいです。
一つは、日本には「粋(すい)」という言葉があります。これは混じり気がなく、最高の純度を持ったものであるというような意味だと理解していまして、粋を尽くすとか、粋を凝らすというふうに用いますね。
最高の材料や食材であるとか、あるいは最高の技術を集めて心を込めて作り込む、そういった意味でしょうか。わが国の多くの文化資源は、この「粋」に裏打ちされているとも言えるのではないでしょうか。
一つ一つの食や工芸品の完成度に加え、混じり気のない純度の高いものを作り上げるために要した長い時間や努力、その背景に思いを致しますと、それ自身の尊さあるいは美しさがより一層感じられるように思います。そういったことが日本の美意識と言えるのではないでしょうか。
島村 ものすごく知的なお答えですね。
村田 そもそも美意識というのは、人によって感じるポイントが少しずつ違うので、そこからある程度日本人が共通に感じる部分を抽出して昇華させていくと、今言ったような話につながるのではないかなと私なりに考えた次第です。
島村 ありがとうございました。
村田茂樹 Shigeki Murata
東京都出身。1990年、東京大学法学部を卒業、同年4月、運輸省へ入省。2019年7月、観光庁観光地域振興部長。2021年7月、観光庁次長。2022年6月、内閣府総合海洋政策推進事務局長。2023年7月、国土交通省鉄道局長。2024年7月、国土交通省大臣官房長。2025年7月、観光庁長官に就任。
Photos by Toshiyuki Furuya
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