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白い空間に設置することでこれまでとは異なった表情を見せる「ガラスの茶室」
人間と自然との関係性に着目し、人間の感覚を光や音、香りなどの要素で表現した実験的なアート作品を多数発表している吉岡徳仁氏。彼の代表作、「ガラスの茶室」が九州で初お目見えしました。
2019年2月11日(月)まで佐賀県立美術館で開催されている、「吉岡徳仁 ガラスの茶室-光庵」。2011年のヴェネツィア・ビエンナーレ国際美術展に出店し、2015年には京都・東山の頂上にある将軍塚青龍殿の大舞台に設置され話題となった「ガラスの茶室-光庵」を、白い空間内で光と融合させたインスタレーションとして展示するとともに、同じく吉岡の代表作であり、パリのオルセー美術館にも展示されているガラスのベンチ「Water Block」や、ガラスのテーブル「Waterfall」なども一緒に展示されています。
Water Block 2002
デザイン、アート、建築など、幅広い領域において国内外から高い評価を得ている吉岡氏は、特に、光からもたらされる人間の感覚に対して追求と研究を重ね、光を透過する素材を使って壮大な自然のエネルギーを表現した作品に定評があります。
吉岡氏によれば、今回の「ガラスの茶室」のように、自然のエネルギーやオーラを知覚化した作品は、それを鑑賞する人間の視覚や感性と共鳴することによって完成されるのだとか。
人間の感覚を超越する、新しい光の体験を楽しんでみてはいかが。
◆吉岡徳仁 ガラスの茶室-光庵
会期:2018年11月28日(水)~2019年2月11日(月・祝日)
※休館日=12月29日-12月31日、1月21日、1月28日、2月4日
会場:佐賀県立美術館
佐賀市城内1-15-23
開館時間:9:30~18:00
公式サイト:https://saga-museum.jp/museum/exhibition/limited/2018/07/001926.html
◆吉岡氏によるギャラリートーク
日程:2018年12月23日(日)
時間:12:00~
岡田三郎助「ダイヤモンドの女」1908(明治41)年 福富太郎コレクション資料室蔵
美人の定義はその時代によって変わるもの。特に日本においては、西洋文化が流入した明治から太平洋戦争前の昭和初期にかけて、女性の服装や髪型などに大きな変化が起こったことを受けて、女性の美意識も転換期を迎えました。
2018年12月8日(土)から2019年3月17日(日)まで、箱根町のポーラ美術館において開催される「モダン美人誕生 岡田三郎助と近代のよそおい」は、生誕150年を迎えた洋画家、岡田三郎助の作品を中心に、近代日本のモダンな美人像がいつどのように生まれたのかを紐解いていく展覧会です。
明治から大正にかけて活躍した洋画家たちは、現代で言うクリエイティブディレクターのように最先端の流行を作り出す役割を担っていました。特に岡田は、日本初となった美人写真コンテストにも携わるなど、その作品の中で新しいタイプの美人像を次々と発表していったのです。
岡田三郎助「あやめの衣」1927(昭和2)年 ポーラ美術館蔵
藤島武二「女の横顔」1926-1927(大正15-昭和2)年 ポーラ美術館蔵
今回の展覧会では、岡田の傑作と言われる15点のほかに、藤島武二や鏑木清方などの絵画、当時のポスター、化粧道具など200点ほどを紹介。また、染織品コレクターでもあった岡田が、作品の中でモデルに纏わせた着物も6点展示されています。
これらの作品をながめていると、明治から昭和への時代のうねりの中で、どのように新しい美人イメージが形成されていったのか、女性の美意識の変遷を知ることができます。
平成も終わりを告げる今、この展覧会で、現代に通じる「美人イメージ」の原点を探ってみてはいかがですか。
◆モダン美人誕生 岡田三郎助と近代のよそおい
会期:2018年12月8日(土)~2019年3月17日(日) ※1月30日(水)は展示替のため「モダン美人誕生」展は休室
会場:ポーラ美術館
神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285
開館時間:9:00~17:00(最終入館は16:30)
公式サイト:http://www.polamuseum.or.jp/sp/jmb/
中村健太
これからの日本のアートフォトをリードする若手写真家の支援と育成を目的とした展覧会「Lumix Meets/Beyond 2020 by Japanese Photographers #6」が、2018年11月30日(金)から12月9日(日)まで、天王洲のIMA galleryで開催されます。
2013年から開催しているこの企画も今回で6回目。今年も、昨年に続きアムステルダム、パリ、東京の3都市による巡回展として開催され、「不確実な世界との交信法」をテーマに、いま伝えるべき写真表現を追求しています。
三田健志
参加するのは新進気鋭のフォトグラファー6名。リアルとフィクションが入り混じる物語を通して、私たちに視覚的な体験を提示する三田健志氏、切実な世界の有様をジャーナリズムの視点から発信しようと試みる苅部太郎氏、動画と静止画のあわいを静謐な視点で切り取るネメス理世氏、イタリア版『VOGUE』が選ぶフォトグラファーベスト30に選出された中村健太氏、ニューヨークを拠点に活動する市田小百合氏、ファッションやカルチャー誌などで活動中の草野庸子氏といった顔ぶれです。
その複雑な現代社会において、若手写真家たちは世界をどのようにとらえ、何を発信していくのか。彼らの新しくユニークで大胆なクリエイションを通して、これからの写真表現について考えてみてはいかが。
◆Lumix Meets/Beyond 2020 by Japanese Photographers #6
会期:2018年11月30日(金)~12月9日(日)
会場:IMA gallery
東京都品川区東品川2-2-43 T33ビル1F
時間:11:00~19:00
公式サイト:http://beyond2020.jp/
子供地球基金は、これまで世界中で2000回を超えるワークショップ、3000回を超える展覧会を開催
1988年に創立され、想像力豊かな子どもを育てることを目的に、世界中で子どもたちと絵を描くワークショップを行ってきた特定非営利活動法人 子供地球基金が、今年で30周年を迎えました。この節目の年を記念して、これまでの活動の集大成ともいえる大展覧会「HAPPY EARTH展」が、2018年11月28日(水)から12月10日(月)まで、東京・六本木の国立新美術館で開催されます。
子供地球基金は、これまで30年にわたり戦争や災害、病気や貧困など様々な理由で心に傷を抱えた子どもたちと絵を描くワークショップや展覧会を行ってきました。子どもたちが絵を描き、その絵が基金となって他の子どもたちを救っていく。まさに子どもたちが子どもたちを救う活動として、世界47ヶ国で実績を重ねています。また、子どもたちが描いた作品は、その豊かな創造性から、フランス・ポンピドゥーセンターやロシア・プーシキンミュージアムでの展覧会をはじめ、国内外で高い評価を得てきました。
展示作品「心を繋ぐ一枚の絵」
今回は、同基金創設のきっかけとなったアーティスト志村星氏の作品を新作とともに展示するほか、世界各国のワークショップで描かれた子どもたちの作品を紹介するコーナーや、初公開となる横幅12mを超える巨大ペインティングも展示されます。また、会期中は、先着順で参加できる多数のワークショップを開催して、新たな作品も会場内に展示していきます。
このほか、各界著名人によるトークセッションやコンサート、ダンスパフォーマンスなど、節目の年を飾るにふさわしい企画が盛りだくさんです。
展示作品の中には、紛争終結直後の1995年クロアチアや、東日本大震災で被災した子どもたちによって描かれた作品も含まれているとか。ぜひこの機会に、基金の活動意義について考えながら、世界中の子どもたちからのメッセージと素晴らしいアートを体感してみてはいかがですか。
◆子供地球基金 30周年記念 HAPPY EARTH展
会期:2018年11月28日(水)~12月10日(月) ※火曜日休館
会場:国立新美術館
東京都港区六本木7-22-2
時間:10:00~18:00 ※金曜日のみ20:00まで ※12月10日は15:00まで
詳細は公式サイト:https://kidsearthfundjp.wixsite.com/happyearth
PHOTO CAMP会場(イメージ)
高層ビルが立ち並び、運河沿いの倉庫をリノベーションしたオシャレなブリュワリー、レストランなどが多い天王洲。周辺には大企業の社屋や高層マンションもあり、ビジネスマンから近隣に住むファミリーまで、様々な人が集まる人気のウォーターフロントエリアです。
この天王洲を舞台に、古き伝統と最新技術、働く人と住む人を結び付け、季節ごとに年4回行われるイベント「天王洲キャナルフェス」。2018年の冬は、11月30日(金)から12月2日(日)までの3日間、天王洲キャナルサイド周辺エリアで、アートフォトをテーマに展覧会やマーケットが行われます。
天王洲キャナルフェス2017 冬屋外展示の模様
ボンドストリートやボードウォークなど屋外の施設で大型のアート写真展示を行うほか、運河沿いにケータリングエリアも出現。アートファンはもちろん、どんな方でも楽しみながら最新のフォトアートに触れることができます。
多彩な催しの中でも特に、TERRADA B&C HALLで行われる「PHOTO MARKET」に注目。自ら撮影した写真を写真家自身が販売する、という新しい試みで、有名無名を問わずフォトグラファーが集まるフリーマーケットのようなもの。各ブースには、プリントや映像作品、書籍、プロダクトなどが並び、これからのフォトアート界を担う新しい才能との出会いが待っているかもしれません。
運河沿いを散歩しながら、最新のフォトアートに触れるもよし、グルメを堪能するもよし。この冬は天王洲エリアでアートな一日を過ごしてみてはいかがでしょう。
◆天王洲キャナルフェス2018冬 PHOTO CAMP
会期:2018年11月30日(金)~12月2日(日)
会場:天王洲キャナルサイド周辺エリア
東京都品川区東品川2-1-3
公式サイド:https://photo-camp.jp/
「白いフェンス, ニューヨーク州ポートケント,」 1916年 写真:ポール・ストランド 所蔵:京都国立近代美術館 ©Aperture Foundation, Inc., Paul Strand Archive
今はスマホで撮った写真を手軽にSNSにアップできる時代。写真は、現在の私たちにとって、最も身近な芸術であると言えます。そんな現代まで続く写真表現の基礎を築いた写真家たちの作品を集めた、貴重な展覧会が開かれています。
東京ミッドタウンのフジフイルム スクエアで、2018年11月28日(水)まで開催されている「アメリカ近代写真の至宝 ギルバート・コレクション展」。京都国立近代美術館が所蔵する写真コレクション「ギルバート・コレクション」から、珠玉の作品約70点を一堂に展示しています。
1800年代に登場した当初は、絵画の代用物のように扱われていた写真。1900年代に入ると“近代写真の父”と言われる写真家、アルフレッド・スティーグリッツが中心となって、対象物をストレートに撮影する「ストレート・フォトグラフィー」という手法で絵画的な表現から独立し、写真独自の芸術を求め始めました。
「月とハーフドーム, ヨセミテ・ヴァレイ」 1960年 写真:アンセル・アダムス
所蔵:京都国立近代美術館 ©The Ansel Adams Publishing Rights Trust
「ヌード」 1936年 写真:エドワード・ウェストン
所蔵:京都国立近代美術館 ©Center for Creative Photography, Arizona Board of Regents
今回の写真展では、スティーグリッツとその流れを継いだイモジェン・カニンガム、アンセル・アダムス、エドワード・ウエストン、ハリー・キャラハンなど、アメリカ近代写真を代表する10人の写真家の作品を集めています。これらの作品は、アメリカ・シカゴ在住のギルバート夫妻が20年に渡って収集した中から精選された1050点を京セラ株式会社が購入し、京都国立近代美術館に寄贈したもので、「ギルバート・コレクション」と呼ばれる日本初の大規模な写真コレクションの一部です。
現代の写真表現の原点とも言える「ギルバート・コレクション」の傑作たちを、オリジナル・プリントで鑑賞することで、近代写真の歩みを知ることができる今展覧会。写真表現の本質、そして可能性を感じてみてはいかがでしょう。
◆アメリカ近代写真の至宝 ギルバート・コレクション展
開催期間:2018年11月9日(金)~11月28日(水)
会場:FUJIFILM SQUARE (フジフイルム スクエア)
東京都港区赤坂9-7-3
開館時間:10:00~19:00 (入館は終了10分前まで) ※会期中無休
入場料:無料
公式サイト:http://fujifilmsquare.jp/detail/1811090123.html
『菅原伝授手習鑑 寺子屋』松王丸 2012 年 9 月 新橋演舞場 ©鍋島 徳恭
当代の中村吉右衛門といえば、現代歌舞伎を代表する立役であり、テレビドラマの『鬼平犯科帳』などでもおなじみ。堂々とした動きと滋味あふれるセリフ回しで、時代物や義太夫狂言、新歌舞伎や喜劇まで、あらゆるジャンルで活躍しています。その二代目 中村吉右衛門が今年、初舞台から70年を迎えたことを記念し、舞台上や楽屋、舞台裏での貴重なショットを集めた写真展が開催されます。
ミキモト銀座4丁目本店のミキモトホールで、2018年12月9日(日)まで開催中の「二代目 中村吉右衛門 写真展」は、2006年から中村吉右衛門が出演するすべての歌舞伎公演を記録している写真家・鍋島徳恭氏による約30点の作品を公開する展覧会。写真はすべて手すきの伊勢和紙にプリントして展示され、味わい深い作品に仕上がっています。
『菅原伝授手習鑑 寺子屋』松王丸 楽屋にての拵え風景 2012年9月 新橋演舞場 ©鍋島 徳恭
場内には、鍋島氏の写真を屏風に仕立てた『中村吉右衛門 初代/当代 三役屏風』を展示していますが、これは、鳥居清忠が初代 中村吉右衛門の役者姿を描いた屏風絵へのオマージュとして制作されたもの。初代から二代目 中村吉右衛門へと継承されてきた、伝統文化としての歌舞伎の姿を象徴する作品です。
70年に渡って立ち続けてきた歌舞伎の舞台で、今もなお圧倒的な存在感をみせ続ける中村吉右衛門。そのリアルな姿を通して、守り継承されるべき伝統の技と文化の魅力、奥深さを知ることができます。長年の歌舞伎ファンもビギナーも、ぜひ足を運んでいただきたい写真展です。
◆二代目 中村吉右衛門 写真展
会期:2018年11月7日(水)~12月9日(日)
場所:ミキモト銀座4丁目本店 7階ミキモトホール
東京都中央区銀座4-5-5
時間:11:00~19:00(最終入場18:45)※11月11日(日)は17:00閉場
入場料:無料
公式サイト:https://www.mikimoto.com/jp/news/181023/01.htm
重要文化財・二条城 唐門のプロジェクションマッピング
生け花と先進アートを融合させたイマーシブ(没入型)イベントで、通算30万人を動員している「FLOWERS BY NAKED」。この秋は、重要文化財である京都・二条城を舞台に、2018年12月9日(日)まで、歴史的な建造物と生け花、光の演出を融合させた体験型のアートイベントを開催中です。
城内の生け花を担当するのは、華道家元池坊の次期家元である池坊専好氏。各地で体験型アートイベントを手掛ける、NAKED Incとのコラボレーションにより、伝統的な空間を活かした新しいアートの世界を展開しています。
重要文化財・台所に展示される「秋桜と蒲公英」
清流園のライトアップでは音楽との連動して鮮やかに色が切り替わっていく
城内では、今回のイベントで初となる紅葉のライトアップを行うほか、二の丸御殿の御清所の部屋一面に広がるススキ野原、台所を使ったコスモスとたんぽぽの演出など、伝統建築と秋の草木が融合した新しい空間を体感できます。また、重要文化財の唐門をプロジェクトマッピングで優美に浮き上がらせ、今まで見たことのない、新しい二条城の姿を目にすることができます。
単に見るものではなく体験するアートへと変化していく「FLOWERS BY NAKED」。この秋、二条城の伝統建築の中で、新たな芸術の世界に触れてみてはいかが。
◆秋季特別ライトアップ FLOWERS BY NAKED2018―京都・二条城―
期間:2018年11月3日(土)〜12月9日(日)
場所:二条城(京都市中京区二条通堀川西入二条城町541)
開催時間:17:30〜22:00(最終入場 21:00)
入場料金:大人1,200円、小学生800円
公式サイト:https://flowers.naked.works/2018nijojo/
「私も連れて行ってください」2018年 ミクストメディア、紙50×40㎝
黒の背景にオイルパステルで鮮烈に描かれた女性や花々、動物たち。どこかなまめかしさをたたえながら、純粋でスピリチュアルな作品を描き続けるアメリカ在住のアーティスト、藤田理麻氏の絵画展が、2018年11月7日(水)から11月13日(火)まで、伊勢丹新宿店で開かれます。
絵画展のテーマは、サンスクリット語で感謝の気持ちという意味の「Anjali(アンジャリ)」。今年でアーティスト生活30年を迎えるという藤田氏が、自分とこの世界を包む、宇宙や神、何か大きな存在への感謝の気持ちを表現したという「私も連れてってください」や「ユニオン」などの新作が展示されるほか、過去の作品も合わせて30点ほどが公開されるそうです。
「ユニオン」2018年 ミクストメディア、紙40×32.5㎝
創作活動のほかに、貧しい国々の子供たちへ絵本を贈る機関の設立や、チベット難民孤児への教育支援など、社会奉仕活動に尽力している藤田氏。チベットへの支援は、夢でお告げを受けたことがきっかけと語り、チベット仏教の最高指導者であるダライ・ラマ14世とも交流があるとか。
大きな存在に導かれ、生かされていることへの感謝、自分を包む万物への尊敬を、極彩色のパステルで鮮やかに描き出す作品からは、しなやかで優しいパワーを感じ取ることができます。
目で見える世界ではなく、夢で見た鮮明な情景をそのままに描くことが多い、という藤田氏の作品。この展覧会で、スピリチュアルで心安らぐ、極彩色の世界に触れてみてはいかがでしょう。
会期中は毎日14時から16時まで、藤田氏が来場する予定とのことです。
◆藤田理麻25周年新作絵画展
会期: 2018年11月7日(水)~11月13日(火)
会場:伊勢丹新宿店本館5階=アートギャラリー
東京都新宿区新宿3-14-1
時間:10:30~20:00 ※最終日は18:00終了
◆ギャラリートーク&サイン会
11月11日(日) 14:00~15:30
エストニア国立博物館 (2006‒16年)photo: Eesti Rahva Muuseum / courtesy of DGT.
フランスを拠点に国際的に活躍している建築家・田根 剛氏の連携企画展が、東京オペラシティアートギャラリーとTOTOギャラリー・間、ふたつの会場で開催されています。
田根氏といえば、20代の若さで勝ち取った「エストニア国立博物館」の国際設計コンペや、2012年に行われた新国立競技場基本構想国際デザインコンペにおいて11人のファイナリストに選ばれた「古墳スタジアム」などで知られる気鋭の建築家です。
今回の展覧会では、「Archaeology of the Future ─ 未来の記憶」を共通のテーマに、2004年以降100作品以上の田根氏の全活動と、建築は記憶を通じていかに未来をつくりうるかという挑戦を、紹介しています。
新国立競技場案 古墳スタジアム (2012年)image courtesy of DGT.
東京オペラシティアートギャラリーでは「Digging & Building」と題して、場所をめぐる記憶を発掘し、掘り下げ、飛躍させる手法と、そこから生み出された「エストニア国立博物館」をはじめ現在進行中のプロジェクトを加えた7つの作品を、大型の模型や映像などによって体感的に展示しています。
そして、TOTOギャラリー・間では「Search & Research」にもとづき、建築における思考と考察のプロセスが展開され、田根氏のすべてのプロジェクトで実践されている「Archaeological Research(考古学的リサーチ)」の方法論を紹介しています。
ふたつの展覧会によって、場所の記憶をさまざまな角度から分析することで新たな系をつくり、未来につながる建築へと展開させていく、田根氏の探求と実践のプロセスが総合的に提示されていて、建築の持つ力や使命、未来への可能性を考えるきっかけとなるでしょう。
記憶は過去のものではなく、未来を生み出す原動力へと変貌する。と語る田根氏の創造の源に触れられる展覧会です。TOTOギャラリー・間では、田根氏によるギャラリーツアーもあるので、合わせてチェックしましょう。
◆田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future
東京オペラシティアートギャラリー:2018年10月19日(金)~12月24日(月・祝)
TOTOギャラリー・間:2018年10月18日(木)~12月23日(日・祝)
東京オペラシティアートギャラリー公式サイト:http://www.operacity.jp/ag/exh214/
TOTOギャラリー・間公式サイト:https://jp.toto.com/gallerma/ex181018/index.htm
◆TOTOギャラリー・間 田根 剛氏によるギャラリーツアー
11月15日(木) 11:30~
洞内の観光コースは約1km。総延長は10.7kmを越え国内第2位。
冬の足音も聞こえてきそうなこのごろ、全国各地でイルミネーションイベントがスタートする季節になりました。山口県にある日本最大級の鍾乳洞「秋芳洞」では、11月4日(日)まで、期間限定のイルミネーションイベント「未来維新 光響ファンタジー」が開催されています。この期間だけ、通常は一般公開していない夜間に洞内を散策することができる貴重なチャンスです。
ひんやりと肌をさす冷気漂う杉木立を通り抜けると現れる、秋芳洞の入口。洞内の温度は四季を通じて17℃で一定しているので、夏涼しく冬は温かく、快適に観光できるスポットです。
山口県を代表する観光名所として知られる、国の特別天然記念物「秋芳洞」
今回のイベントでは、世界的な照明デザイナー・石井幹子氏の演出で、漆黒の洞内が7色のLEDで鮮やかに彩られ、さらに洞外遊歩道や秋芳洞出口側の黒谷口では、プロジェクションマッピングも行われます。
まるで時間が凍結したような不思議な自然の造形美は、見る者に大きな感動を呼び起こさせてくれます。洞内には幻想的なBGMも流され音響効果も抜群。まさに光と音の饗宴ともいえる空間を、ぜひ体感してみてください。
◆未来維新 光響ファンタジー
会期:2018年11月4日(日)まで。
場所:山口県美祢市秋芳町秋吉「秋芳洞」周辺
時間:17:00~20:00
イベント公式サイト:https://karusuto.com/event/201081026/
喜多川歌麿「深川の雪」(部分)江戸時代 享和 2年~文化 3年( 1802~06 )頃 岡田美術館蔵 展示期間:9月30日~12月28日
2013年、箱根・小涌谷の地に、東洋を中心とした絵画、陶磁器など、貴重な名品を集めて華々しく開館した岡田美術館。
この秋、同美術館のコレクションの中から主役級の名品だけを展示する特別展「開館5周年記念展 美のスターたち―光琳・若冲・北斎・汝窯など名品勢ぞろい―」が、2018年9月30日(日)から2019年3月30日(土)まで開催中です。
岡田美術館は、明治時代に存在したという欧米人向けホテル「開化亭」の広大な跡地に建設され、浮世絵や屏風絵、土偶、陶磁器、ガラス工芸、仏教美術に至るまで、東洋のあらゆる美術品の傑作が集まる美殿堂として親しまれています。館内には、美術館を開設する契機になったという、尾形光琳の「雪松群禽図屏風」や、重要文化財に指定されている尾形乾山の「色絵竜田川文透彫反鉢」など、日本の美術史を彩るスター級の名品が揃っています。
伊藤若冲「孔雀鳳凰図」(部分)江戸時代 宝暦 5年( 1755)頃 岡田美術館蔵 展示期間:9月30日~10月10日、12月29日~2019年3月30日
今回の展覧会は、これらのスターたちが多数展示され、名品を一度に鑑賞できる貴重なチャンス。特に、2016年に83年ぶりに発見された伊藤若冲の「孔雀鳳凰図」、同じく2012年に60年ぶりに再発見された喜多川歌麿の「深川の雪」が同時に展示されるのは、初の試みだとか。(10月10日まで)
重要文化財 尾形乾山 「色絵竜田川文透彫反鉢」 江戸時代 岡田美術館蔵
このほかに、葛飾北斎、横山大観、小林古径などの日本絵画、青磁や汝窯などの中国陶磁、古伊万里や古九谷、鍋島といった江戸時代の日本の陶磁器、土器やガラスなど、重要文化財を含む約450点が展示されます。
紀元前の中国青銅器から近代の絵画まで、名品ばかりを鳥瞰できる本展覧会は、言わば日本と東洋の美術史のベスト盤。美術を深く学びたい方も、興味を持ち始めたビギナーも、一度チェックしてみてはいかがでしょう。
◆開館5周年記念展 美のスターたち ― 光琳・若冲・北斎・汝窯など名品勢ぞろい ―
会期:2018年9月30日(日)~2019年3月30日(土) ※休館日:12月31日(月)、1月1日(火)
場所:岡田美術館
神奈川県足柄下郡箱根町小涌谷 493-1
開館時間:9:00~17:00 ※入館は16:30まで
入館料:一般・大学生 2,800円、小中高生 1,800円
公式サイト:http://www.okada-museum.com/exhibition/
Sky Mirror, 2006 / Photo: Tim Mitchell ©Anish Kapoor, 2018
2012年ロンドンオリンピックの記念モニュメント「Orbit」や2015年ヴェルサイユ宮殿で行った個展など、ダイナミックな作風で国際的に活躍している現代彫刻家、アニッシュ・カプーア氏の芸術祭『アニッシュ・カプーア IN 別府』が、2018年10月6日(土)から11月25日(日)まで開催されます。
この芸術祭『in BEPPU』は、毎年、国際的なアーティストを1組招聘し、別府の地域性を活かしながら展開する大規模なアートプロジェクト。今回は、山と海の間に位置する広大な別府公園内に、日本初展示となるカプーア氏の代表作『Sky Mirror』のほか、世界初公開となるパビリオンを含む10点以上の作品が展示されます。
左)Orbit, 2012 / Queen Elizabeth Park, London Photo: Dave Morgan / ©Anish Kapoor,2018
右)アニッシュ・カプーア氏 Portrait by Gautier Deblonde
園内での展示構成は3つ。世界初公開の新作『void the pavilion(仮)』は、奥行12m程度の空間内部に入ると、正面に暗黒の壁が現れ、時が経つにつれて不思議な知覚体験を引き起こすという、昨今カプーア氏が取り組んでいる彫刻と建築が融合した作品。
そして、日本初公開となる『Sky Mirror』。光を反射し空を映し続ける直径5mのステンレス製のミラーが、あたかもこの場所にポッカリと突然空いた異世界への入り口のように存在しています。
この2つの大型作品のちょうど中間にギャラリー企画展『コンセプト・オブ・ハピネス』を設置し、有機的で筆致も荒々しいドローイングや彫刻を10点展示。ギャラリー内では、イギリスBBCが制作したカプーア氏のドキュメンタリー映像も上映予定です。
いずれもシンプルな形と独自の素材の選択によって見るものに広い視野と深い思考をもたらすカプーア氏の世界観を示すもの。期間中は、カプーア氏の講演会など、本展の内容や作家自身の創作活動に触れられる連続講座 『in BEPPUカレッジ』もあるので、こちらも要チェックです。
◆アニッシュ・カプーア IN 別府
会期:2018年10月6日(土)~11月25日(日)
会場:別府公園(大分県別府市)
料金:高校生以上1200円、小中生 500円、未就学児 無料、プレミアムパスポート5000円 ※『Sky Mirror』のみ無料
公式サイト:http://inbeppu.com/
重要文化財 釈迦如来坐像 行快作 鎌倉時代・13世紀 京都・大報恩寺蔵
京都御所の北西、北野天満宮の側に位置する大報恩寺は、鎌倉初期に開創された古刹。別名“千本釈迦堂”とも呼ばれ、本堂は創建当時のままの姿を残す貴重な中世建築として国宝に指定されています。
東京国立博物館で、2018年10月2日(火)から12月9日(日)まで開催される特別展「京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ」は、2020年に開創から800年を数える大報恩寺の仏像たちを、創建当時の配置で詳らかに公開する貴重な展覧会です。
大報恩寺が開創された鎌倉初期、京都や奈良、鎌倉の諸寺でたくさんの仏像を制作し活躍していたのは、運慶や快慶に代表される慶派の仏師たち。中でも東大寺南大門の金剛力士像や浄土寺の阿弥陀三尊像などで知られる快慶、その弟子の行快、運慶の晩年の弟子である定慶は、精力的に制作に携わったと伝えられています。
左)重要文化財「十一面観音菩薩立像(六観音菩薩像のうち)」肥後定慶作 鎌倉時代・貞応3年(1224)京都・大報恩寺蔵
右)重要文化財「迦旃延立像(十大弟子立像のうち)」快慶作 鎌倉時代・13世紀 京都・大報恩寺蔵
大報恩寺には、行快作の釈迦如来坐像のほか、快慶作の十大弟子立像、定慶作の六観音菩薩像が伝来しています。普段、本尊である釈迦如来坐像は本堂で秘仏として安置されており、年に数回しか公開されませんし、十大弟子立像は本堂とは別の霊宝殿に安置されています。
しかし、本展覧会では釈迦如来坐像を囲むように十大弟子立像を展示し、手に取るように間近で鑑賞できます。光背や台座まで当時のまま残る貴重な六観音菩薩像は、会期後半の10月30日からは光背を外し、普段は光背で隠れて見えない美しい後ろ姿まで公開するそう。行快作の釈迦如来坐像のキリリとした表情に魅せられ、快慶作の十大弟子立像で絵画のような繊細な表現を堪能。六観音菩薩像の精緻な彫刻に定慶の技術の高さを知ることができます。
寺外初公開となる釈迦如来坐像や十大弟子立像など、慶派の傑作たちを目の前で鑑賞できる貴重なチャンスです。仏師たちの熱い想いや人々の信仰心を集めて、満ち溢れんばかりに輝くみほとけたちの姿に、鑑賞する我々も心癒されること間違いありません。
◆特別展 京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ
会期:2018年10月2日(火)〜12月9日(日) 休館日:月曜 ※10月8日(月・祝)は開館、翌10月9日(火)は休館
会場:東京国立博物館 平成館 特別第3・4室
東京都台東区上野公園13-9
開館時間:9:30〜17:00 (入館は閉館の30分前まで)※会期中の金・土曜、10月31日(水)、11月1日(木)は21:00まで開館
料金:一般1400円(1200円)、大学生1000円(800円)、高校生800円(600円)、中学生以下は無料
※カッコ内は前売り、20名以上の団体料金
展覧会公式サイト:https://artexhibition.jp/kaikei-jokei2018/
重要文化財 真如堂縁起 下巻(部分)京都・真正極楽寺
貴族文化の衰えと共に武士が台頭し始めた平安末期、京都において山城鍛冶の祖となる三条宗近とその一派が登場し、京の刀剣文化の長きにわたる物語が始まったと言われています。そんな、京都における刀と政治、歴史、人々の生活にまつわる興味深い展覧会が開催されます。
京都国立博物館で、2018年9月29日(土)から11月25日(日)まで開催される特別展「京のかたな 匠のわざと雅のこころ」。京都周辺に工房をおいた山城鍛冶作品の中でも国宝に指定されている品はほぼ全て出品されており、京都国立博物館が開館以来120年間で初の刀剣に関する大規模な展覧会となっています。また、王貞治氏が所有し九州国立博物館へ寄贈された刀「銘九州肥後同田貫上野介」が公開されることでも話題です。
左)刀 銘九州肥後同田貫上野介(王貞治佩用)九州国立博物館 中)重要文化財 太刀 菊御作 京都国立博物館 右)重要文化財 騎馬武者像 京都国立博物館
刀剣は武力の象徴であると同時に、天皇家や公家衆、寺社仏閣においても、政治力や経済力を象徴する宝物として君臨し続けました。研ぎ澄まされた一振りの刀は、芸術品として鑑賞されるだけでなく、日本の歴史において特異な意味を持つものとして位置づけられています。
本展覧会では、特に京都で製作された“京のかたな”が、平安から平成までの日本の歴史と文化に与えた影響を多数の刀剣作品を通じて紹介しています。さらに、絵巻物や屏風絵などから、当時の武家、公家、京の町人の生活を鑑み、人々が刀剣に対して抱いていた畏怖の念、刀工たちと町衆との関係などを掘り下げて行きます。後鳥羽上皇自らの作と伝えられる「太刀 菊御作」や、伊藤若冲による「伏見人形図」など、注目すべき作品が多数出品される本展。京都で製作された芸術性の高い刀剣と、この刀剣が京の人々に与えた影響を分かりやすく知ることができます。
日本の伝統文化や芸術作品に興味のある方、歴史に興味のある方など、たくさんの方が楽しめるはず。京都国立博物館で初となる試みですから、この機会にぜひ足を運んでみてはいかがでしょう。
◆京のかたな 匠のわざと雅のこころ
会期:2018年9月29日(土)〜11月25日(日)
休館日:月曜 ※10月8日(月・祝)は開館、翌9日(火)は休館
会場:京都国立博物館
京都府京都市東山区茶屋町527
料金:一般1,500円(1,300円) 大学生1,200円(1,000円) 高校生700円(500円) ※カッコ内は前売り・団体20名以上の料金
公式サイトURL:https://katana2018.jp/