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ブルガリが描く、色彩の万華鏡
2025.8.30
国立新美術館で開催「ブルガリ カレイドス 色彩・文化・技巧」
《コンバーチブル・ソートワール=ブレスレット》ゴールド、アメシスト、ターコイズ、シトリン、ルビー、エメラルド、ダイヤモンド 1969年頃 ブルガリ・ヘリテージ・コレクション
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ローマを代表するハイジュエラー、ブルガリ。その比類なき色彩美に迫る大規模展覧会「ブルガリ カレイドス 色彩・文化・技巧」が、国立新美術館にて開催される。会期は9月17日(水)~12月15日(月)。
《「ビブ」ネックレス》 ゴールド、プラチナ、エメラルド、アメシスト、ターコイズ、ダイヤモンド 1968年 リン・レブソン旧蔵 ブルガリ・ヘリテージ・コレクション
《ペンダントイヤリング》 ゴールド、プラチナ、エメラルド、アメシスト、ターコイズ、ダイヤモンド 1968年 リン・レブソン旧蔵 ブルガリ・ヘリテージ・コレクション
日本におけるブルガリの展覧会としては10年ぶり、そして過去最大のスケールとなる本展には、約350点のジュエリーが集結。サファイア、ルビー、エメラルドといった原色に、アメシストやターコイズなど半貴石を自在に組み合わせ、カボションカットでその輝きを際立たせる「色石の魔術師」ブルガリ。その大胆かつ独創的な色彩の調和を生み出す唯一無二の手腕に、ジュエリーや現代アートを通じて光を当てていく。
《ブレスレット》 ゴールド、プラチナ、シトリン、ダイヤモンド 1940年頃 ブルガリ・ヘリテージ・コレクション
《ネックレス》 プラチナ、エメラルド、ダイヤモンド 1961年 ブルガリ・ヘリテージ・コレクション
本展では、ブルガリの色彩の革命を3つの章を通して探求。シトリンとダイヤモンドをあしらい、ローマの夕焼けを彷彿とさせる温かな輝きを放つ《ブレスレット》(1940年代頃)や、七つのエメラルドを配した「セブン・ ワンダーズ」と呼ばれる伝説的ネックレス《ネックレス》(1961年)、さらに、ネックレスにもブレスレットにも変化する多色使いの傑作《コンバーチブル・ソートワール=ブレスレット》(1970年代頃)など、ブルガリ・ヘリテージ・コレクションを中心に、歴史的傑作から希少なアーカイブまでが勢揃いしている。
《コンバーチブル・ソートワール=ブレスレット》ゴールド、アメシスト、ターコイズ、シトリン、ルビー、エメラルド、ダイヤモンド 1969年頃 ブルガリ・ヘリテージ・コレクション
さらに今回は、ジュエリーに加え、三人の現代女性アーティストによる新作も展示。回転する色とりどりの洗車ブラシを用いたララ・ファヴァレットのインスタレーションや、古事記に着想を得た森 万里子の瞑想的空間、水、音、鉱物顔料が混ざり合い、流動的なフォルムを形成するさまを空間に投影する中山晃子のインスタレーションなど、それぞれがブルガリのジュエリーと呼応し、色彩の持つ力を多面的に体感できる構成となっている。
会場デザインは、日本の建築家ユニット「SANAA」と、イタリアのデザインユニット「フォルマファンタズマ」が協働で担当。古代ローマ浴場のモザイクパターンと、東京のイチョウの葉の形に着想を得た空間は、訪れる人々を色彩の世界を巡る感覚の旅へと導く。
ジュエリーから現代アートまで、万華鏡のなかを巡るかのような体験をもたらす展覧会。壮麗な展示の数々を通じて、ブルガリの芸術性、クラフツマンシップ、そして精巧さを堪能してほしい。
◆ブルガリ カレイドス 色彩・文化・技巧
【会期】2025年9月17日(水)~12月15日(月)
【休館日】毎週火曜日 ※ただし9月23日(火・祝)は開館、9月24日(水)は休館
【開館時間】10:00~18:00(入場は閉館の30分前まで) ※毎週金・土曜日は20:00まで
【会場】国立新美術館 企画展示室2E
【観覧料】一般 2,300円、大学生 1,000円、高校生 500円
*本展は事前予約制(日時指定券)を導入
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打楽器芸術の“今”を、一夜に凝縮
2025.8.30
世界初演から大作まで──パーカッションの頂点を体感「Time for Percussion 2025」
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マリンバ独奏から打楽器8重奏(+ピアノ)まで、世界水準のパーカッシブアーツの“今”を紹介する「Time for Percussion 2025」が、10月23日(木)、サントリーホール ブルーローズにて開催される。
演奏を率いるのは、マリンバソリストの小森邦彦。ドイツ・ヴィッテン音楽祭やニューヨーク・キメルセンターなど世界の舞台で多くの初演を担い、教育者として欧米やアジアの主要音楽院でマスタークラスを行うなど幅広く活動。現在は愛知県立芸術大学で後進を育成しつつ、国際的に演奏を続けている。
今回は、小森氏と7名の次世代打楽器奏者たちが共演。プログラムには、尾高賞・武満作曲賞・芥川作曲賞を唯一すべて受賞した坂田直樹によるマリンバソロ処女作の委嘱世界初演をはじめ、フィリップ・マヌリによる緻密な“鍵盤練習曲”マリンバデュオ、アジア初演となるアレハンドロ・ヴィニャオによる壮大な九重奏など、現代打楽器作品の名曲群が並び、圧巻のパフォーマンスを繰り広げる。
世界初演作品から、話題作ながら実現困難とされた過去の大作までを網羅し、打楽器芸術の最前線を体感できる一夜。サントリーホール・ブルーローズの空間に響く“パーカッシブアーツの頂点”を、ぜひ体感してはいかがだろうか。
◆「Time for Percussion 2025」
【日時】10月23日(木)
18:15開場 18:30プレトーク 19:00開演 21:00終演
【会場:サントリーホール ブルーローズ(東京都港区赤坂1-13-13)
【料金】一般 5,000円、学生 3,500円
障がい者手帳お持ちの方と付き添い お一人まで 3,500円
*未就学児入場不可
*学生・障がい者チケットでご入場される方は会場受付にて証明書をご提示下さい
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旅館の矜持 THE RYOKAN COLLECTIONの世界
2025.8.15
神々の住まう宿「旅館 神仙」の佐藤久美女将 ここにしかない美味と、磨き抜かれたサービスに心和む。
女将の佐藤久美さん。正門のしめ縄から一歩中に入ると、結界に入ったように空気感が変わる。
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「ザ・リョカンコレクション」に加盟する旅館の女将や支配人を紹介する連載「旅館の矜持」。今回は宮崎県高千穂町に位置する「旅館 神仙」女将・佐藤久美さんをご紹介する。
高千穂町は神話の町だ。天照大神(アマテラスオオミカミ)が隠れた天岩戸(あまのいわと)があり、それを解決するために八百万の神が集まった天安河原(あまのやすかわら)の大洞窟がある土地でもある。
また、瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)が天界から降り立った天孫降臨の地だ。霊感ってものには縁がなくても、何となく‶神域〟を感じてしまう人もあるようだ。
今回紹介する「旅館 神仙」にしても、インフルエンサーたちがインスタに投稿する際に、「#神様のいる旅館」などのハッシュタグをつけたりする。
佐藤久美さんは、高千穂随一の名旅館の看板女将である。明るく朗らか。
東京から向かうと、阿蘇くまもと空港から車で1時間20分、女将に会った瞬間に心がほぐれる。
若女将から女将へ
佐藤さんは直系の2代目であるから、女将になったのは自然なことでもある。
「母が初代の女将として旅館に出ていて、私は若女将の時代がありました。17年前のあるとき、楽天トラベルの『女将さん‶おもてなしの心″コンテスト』への参加を楽天さんから打診されまして。父が、『母ではなくて、お前が出なさい』と言うので、私が応募したのです。日本全国、北海道から沖縄まで、自薦他薦で宿の女将さんが30数名出まして、オンラインでの投票でしたが、私が優勝してしまいました。そこからは、若女将の若が取れて、女将となり、母は裏方に回りました」
こうして30代の女将が誕生した。
「30代前半の女将さんて、なかなかいないじゃないですか。50代でも若いぐらい。ですから、もの凄くハードルが高くて、とても思い悩んだ時期もあったんですよ。最初の5~6年はいちばん辛かったです……。とは言え、いまだにお客様の前に出るときには緊張しますけれども」
女将っぷりは堂に入っているのでご安心を。
でも、なぜ「#神様のいる旅館」?
「旅館の敷地内に入られただけで、『結界が張られたような空気感があるね』とお客様に言われることが多いですね。『部屋で座敷わらしに会った』とお話しになる方もいらっしゃいます。みなさん、お化け系の怖い話じゃなくて、とても楽しそうなんです」
筆者の前には出てくれなかったが。
「露天風呂付和洋 月詠」の縁側はとても落ち着く。
祖母が始めた10室の旅館
この「旅館 神仙」、今でこそ押しも押されもせぬ名旅館であるが、そこに至るまでの道は決して平坦ではなかったようだ。女将の話に耳を傾けよう。
「この場所で旅館を始めたのは私の祖母です。1973年8月のことでした。当時の国鉄が1970年に、個人旅行の拡大を狙ってディスカバー・ジャパンというキャンペーンを始めたときに、宮崎県はハネムーン客で人気になりました。高千穂の町は世間でそこまで認知されていなかったのですが、そのときから人がどっと押し寄せるようになって、町には宿の部屋がぜんぜん足りなくなってしまったのです」
その機を捉えたのが祖母だった。
「10部屋で旅館をスタートしました。一部屋の間取りは6畳一間。大浴場が一つあるだけで、お手洗いは共用でした。民宿とも旅館ともどっちともつかないような宿でしたね(笑)。宿の始まりがこうですから、もー、懼れ多いことばかりで、『ザ・リョカンコレクション』に混ぜていただいただけで光栄なんです」
「もー」と身悶えする女将が可笑しい。
「露天風呂付洋室 和楽」の室内。ベッドの寝心地は抜群だ。
社長の一大決心
時計の針を今から50年ほど巻き戻す。この宿にとってのキーマンは、女将の父親・佐藤功宏氏だった。
「祖母からの要請で、父は大学を中退して郷里に戻りました。ちょうど20歳の頃です。当時お付き合いをしていた19歳の母を連れてきて、その何もわからない若い夫婦が旅館業を始めることになります」
父は21歳で初代社長となり、旅館の名前も「神仙」とする。しかし……。
「私と妹が生まれたころには、本当にお客さんがいなくて、旅館が私たちの遊び場でした。かくれんぼをしても、広いから絶対に見つからない(笑)」
10年後の30歳の頃に、一大決心をする。
「こういう経営をしていては、地元の似たような旅館とお客さんの取り合いにしかならない。『その状態から抜け出して、上を目指すぞ』と。純和風の方向に舵を切って、倉庫をつぶして囲炉裏のある部屋を3つ造ったり、料理も全部見直して、京風懐石のようにしました。少しずつ改装を重ねて、1985、6年には一応の形にはなっていました」
磨かれるソフト面とホスピタリティ
佐藤久美さんは中学生の頃から旅館の手伝いをしていた。結婚して一旦は外に出るが、やがて実家に戻ってくる。そして、事実上の女将になるのが冒頭のくだりだ。
「旅館を手伝い始めてからは、お客様に教えていただく方が早いので、客室にアンケート用紙を置きました。散々な書かれようではありましたが(笑)、いろいろ教えていただきました。ハード面はすぐに変えられませんが、ソフト面で出来ることから変えていきました」
そこには深いワケがあった。
「今は違うのですが、長い間、旅館に到着する寸前の道の幅が狭くて、お客様は着いたとたんに機嫌が悪いんです。『あんな道を通らせて』って。宿にいらした瞬間から怒ってらっしゃるので、そこからが勝負でした。もうマイナスからのスタートなので、一生懸命にみんなで盛り立てて、最後に帰られるときには、『ワハハ』というところまで持っていく。笑ってお帰りいただく、それが目標ですから。だから、ソフト面は非常に磨かれましたね(笑)」
現在は異常なほど幅の広い道から駐車場に入れるのだが、ナビに従うとその‶客を不機嫌にさせた細い道″に導かれ、坂の上からの下りの導線になってしまう。だからであろうか、上から車で降りてくると、下の駐車場で待機していたスタッフ2人が猛暑の中、坂を駆け上がってきた。確かに、極めてにこやかで丁重で、「なに、この歓待ぶりは?」と思ったほどだ(笑)。
鬼八塚のある庭「仙乗苑」の太鼓橋上にて。米国人から、この橋の上でサプライズの求婚の演出を頼まれたことも。
庭をいじり包丁も握る社長
父である社長の変革は続いた。
「現在、客室は15室ですが、一つとして同じしつらえの部屋はありません。天井もすべてが違います。設計士は埼玉県の方でしたが、細部の注文は父がしました。父は本職を入れることを嫌うんです。そのようにすると、他の宿と似てしまうからと言うのです。ですから、庭園も京都のお寺さんを独学で勉強して、地元の庭師さんに自分が思い描くイメージを伝えて造園しました」
敷地を拡張していったのも社長である。
「私が戻ってきたときには、旅館の周囲は田んぼと畑でした。カエルの大合唱がBGMでしたね。今ではうちの「はなれ」や「別邸・神庭(こうにわ)」になっています。それと、高千穂には悪行を働いていた鬼八(きはち)の伝説がありまして、退治された後に、三つに切り離されて、首塚、胴塚、手足塚の三カ所に埋められました。その胴塚がちょうど隣の敷地にあったんです。災いばかりが起きるので持ち主が売りたがっていまして、父が買い取りました」
鬼八塚を含む小さな森と庭園は、「仙乗苑(せんじょうえん)」と命名されている。
「鬼八塚を手に入れてから、ウチはうまく行っていますので、見えない何かに守られているなあって感じますね」
社長はツキもあるし、なにしろ多才だ。
「竹の垣根なんかも父がスタッフに教えながら一緒に造っていましたね。できる限り自分たちの手でと言って、庭木の剪定や庭の整備もやっていました。かつては父が、お客様にお出しする鯉を捌いたり、ヤマメの姿造りを作ったりしていました」
現在、73歳になった。
「今日も、ご希望のお客様にお出しする天然の鮎を釣りに行っています。川に腰まで浸かって、命がけです(笑)。鮎が釣れる川は近くに3本あるんですが、今日は見立川ですね」
社長がイメージして造園した本館の日本庭園にて。
社長が高千穂町に抱く郷土愛
社長の高千穂町との関わり方は珍しい。
「父は30歳で煙草をやめたのですが、ご飯が美味しくなって太った。ダイエットのために地元の運動公園で走り始めたら、高校生や陸上部の生徒さんと仲良しになりまして。それをきっかけにして、高千穂高校駅伝部の指導をすることになったのです。3年計画を立てて生徒を鍛えました。宮崎県で駅伝の名門と言えば小林高校ですが、そこに勝って全国高校駅伝大会に行ったのです。周囲からは棚ボタだと言われて、ならばと奮起して、もう一度勝ちました。この3年計画を立てた経験が、その後の旅館の経営にも活かされたそうです(笑)」
歩くことも好きだ。
「父はうちの旅館をスタートして天岩戸神社まで歩く『高千穂歩こう会』を始めたんですね。それが発展して、マラソン大会になった。やがて高千穂町を巻き込んで『神話の里高千穂マラソン大会』となり、前夜祭も企画しました。前夜祭があれば、宿泊も増やせますから。ある程度盛り上がったところで、高千穂町に主催を渡しました。町は数年間続けてから、立ち切れになったようです」
「高千穂トゥギャザーウォーク」というウォーキング大会は町に渡して今も続く。
「父は高千穂に生まれ育っていますから、町のことが好きで高千穂を盛り上げていきたいという気持ちが強いのだと思います。だから発起人になって、何かを始めてしまうのです」
高千穂と言えば、高千穂峡に行かずしては帰れない。レンタルボートなら滝の真下まで行ける。
癒し空間を提供することに特化
現在、「旅館 神仙」のことを考える中心は女将に他ならない。
「ザ・リョカンコレクションに参加してから、各施設様がいろんな体験をお客様に提供しているのを見て、うちは何が出来るのだろうかとずっと考えてきました。でも、高千穂という町自体には素材がいっぱいあります。例えば、高千穂峡や神話史跡コース巡り、あまてらす鉄道、阿蘇山のアクティビティもあります。ですから、旅館から提案する必要はないかなと思い始めています。逆に、地域のDMC(地域に特化した旅行会社)の方たちを応援しながら、様々なプランを作り上げてもらう。その部分は旅館からも紹介して彼らにお任せする」
「露天風呂付洋室 和樂」の露天風呂。各部屋に露天風呂が完備されている。
では、「旅館 神仙」の立ち位置は?
「私どもの宿は『癒し』の部分を重点的にお引き受けすることだと思っているのです。例えば、お風呂は各部屋に露天風呂が付いていますから、タトゥーがあろうがなかろうが、好きなだけ入っていただける。食事もすべて個室ですので、小さなお子さんがいて泣いても何しても、気にされることなく楽しめます。もちろん、情報を望んでおられれば一生懸命に一緒に探します。そうやってお客様に寄り添った癒し空間を提供することに特化するのがウチらしいのかな」
これが幻の尾崎牛のしゃぶしゃぶだ! 何と言う美味しさか。
ここでしか味わえない料理の数々
食事処は14カ所ある。夜と翌朝は個室を替えてくれるので、違う雰囲気で食事が楽しめる。そして、夕食の口開けは、青竹から注いだ熱燗の「かっぽ酒」とキャビアで始まる。
「九州はご飯が美味しいと言われますね。日本三大秘境と言われる椎葉村が宮崎県にあります。そこで養殖しているチョウザメは、耳川の源流かけ流しの水で育てているので、水温が低いために育ちが遅いのです。普通は6年ぐらいでキャビアを取るのですが、ここでは8年まで育てます。すると、卵形が大きくなりますが、その中でもいちばん大きなものを『神仙キャビア』としてお出ししています」
確かに、味わったことがないくらい粒は大きく、塩気は少なく、卵黄のようにすこぶるクリーミーだった。毎年一回のワイン会では、<wbr />チョウザメの解体ショーが目玉になっている。
「お客様の前で捌いて、取れたてのキャビアをお酒で洗って提供しています。生産者しか食べられないフレッシュそのもののキャビアです。これをご飯に載せてキャビア丼も楽しめますよ」
ひゃー、それは堪らん。残念ながら、とりあえず、<wbr />来年3月開催が最後の予定。
幻の尾崎牛もある。
「尾崎牛は一年中お出しできます。この牛肉は融点が28度ととても低いので、舌の上でも脂がすぐに溶けます。ぜんぜんくどくないですね。それをしゃぶしゃぶとステーキの両方でお召し上がりいただくことも可能です」
確かに戴きました。凄まじいばかりに美味しい肉でした。中居さんがソッと明かすには、女将のコネクションがあってこそのものだそうだ。
朝食の目玉は卵かけご飯。箸で切れるほど黄身がプリプリ。五ヶ瀬町の「ひのひかり米」もねっとり甘くて秀逸。
他にも、農家との繋がりも緊密だ。
「宮崎の農家さんのマンゴー、熊本の農家さんのスイカ、メロン、ナシなどは収穫のお手伝いをさせていただいて、直接に仕入れています。ちょっと傷がついて売れないものでも、味は変わりませんから、旅館で使います。少しでも農家さんのお手伝いになるように考えています」
大プロジェクトが進行中
実は、来年7月の開業に向けて、大プロジェクトも進行中だ。
「大分の別府に『別府 神仙』をオープンします。場所は市内の鉄輪ではなくて南立石のほうです。6棟の宿ですが、土地を買って一から建てていまして、高千穂よりもハイレベルなものを目指しています。部屋は120平米から200平米で、お子様はNG、大人の宿にします。50数年間にわたって宿をやってきた私ども、というか父の集大成になるはずです」
女将 佐藤 久美(さとう くみ)
1974年宮崎県西臼杵郡高千穂町生まれ。1992年宮崎県立高千穂高等学校普通科卒業、1994年CICカナダ国際大学通訳翻訳科2年課程卒業を経て、「旅館神仙」入社。1995年スペイン・マドリードのEstudio International Sampereにて5週間の語学研修。2006年楽天「女将〝おもてなしの心〟コンテスト」日本一に輝き、母(現大女将)から女将を引き継ぐ。2009年バリ島にてBalinese Traditional Body Massage Diploma取得、翌年バリ島にてBalinese Traditional Facial Massage Diploma取得。2013年日本ソムリエ協会認定ソムリエ資格取得。
構成/執筆:石橋俊澄 Toshizumi Ishibashi
「クレア・トラベラー」「クレア」の元編集長。現在、フリーのエディター兼ライターであり、Premium Japan編集部コントリビューティングエディターとして活動している。
photo by Toshiyuki Furuya
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