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杉本博司「光学硝子舞台(小田原文化財団 江之浦測候所)」2017年 神奈川 ©小田原文化財団
日本の現代建築が、世界から熱い視線を集めていることを、ご存知でしょうか。丹下健三、谷口吉生、安藤忠雄、妹島和世など多くの日本人建築家たちが、国際的に高い評価を得ています。その独創的な発想と表現の源を読み解く展覧会「建築の日本展:その遺伝子のもたらすもの」が、2018年4月25日(水)より六本木ヒルズ・森美術館15周年記念展として開催されます。
今展は木造建築や日本の美学、屋根、工芸などをテーマとした9つのセクションで構成。古代から連綿と引き継がれてきた日本の価値観や文化、伝統、技術、歴史が、どう日本の建築を形作ってきたのか。また、今後にどう繋がっていくのか。これらが一望できる企画展示となっています。
数多くの貴重な資料や模型が並ぶ中でも、特に注目したいのが、原寸で再現された千利休作の茶室、国宝「待庵(たいあん)」や、1/3スケールで再現した丹下健三の自邸巨大模型。また、齋藤精一が率いるクリエイティブ集団、ライゾマティクス・アーキテクチャーによる体験型インスタレーションは、日本の古建築から現代建築までをレーザーファイバーで再現した新作で、こちらも見逃せません。
また、剣持勇や長大作など戦後のモダニズム建築を彩ってきたデザイナーによる名作家具のオリジナルを集め、実際に座れるラウンジもあり。展覧会関連図書を読みながら、ひとときを過ごすことができます。
会期は、2018年9月17日(月・祝)まで。100以上のプロジェクト、400点以上もの展示は圧倒的なスケール! じっくりと「ニッポン」の建築に向き合える、最上の機会です。
◆建築の日本展:その遺伝子のもたらすもの
会期:2018年4月25日(水)〜9月17日(月・祝)
会場:森美術館
住所:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階
開館時間:10:00〜22:00、火〜17:00 ※入館は閉館時間30分前まで ※会期中無休
入館料:一般1,800円
お問い合わせ:03−5777−8600(ハローダイヤル)
https://www.mori.art.museum/jp/
世界で1点しか確認されていない、春信初期の作品。多色摺の錦絵が生まれる以前の時代に描かれた、紅色と緑程度と色数が少ない紅摺絵(べにずりえ)
昨年から全国を巡回中の「ボストン美術館浮世絵名品展 鈴木春信」が、2018年4月24日(火)から6月24日(日)まで、大阪・あべのハルカス美術館で開催されます。
鈴木春信は、江戸時代中期に活躍した浮世絵師。本来、浮世絵には木版画も肉筆画も含まれますが、一般的には多色摺の木版画をイメージする方も多いでしょう。春信は、この多色摺の木版画である「錦絵」の草分けなのです。春信は主に美人画を描き、人気を博しました。
アメリカ・ボストン美術館には603点もの春信作品が所蔵されており、今展ではその中から約150点が公開されます。現存する春信作品のうち、実は8割以上が海外にあるため、日本で展覧会を開くのは至難とのこと。また、1図あたりの残存数が非常に少なく、今回公開される作品の中には、世界でたった1枚または2枚しか確認されていないものもあるそうです。
春信は、実在した江戸で評判の美人を描いたことでもよく知られています。今展では、谷中笠森稲荷の水茶屋「鍵屋」の娘お仙が主題の「浮世美人寄花 笠森の婦人 卯花」が公開されます。また、江戸の町を背景に描かれた恋人たちの逢瀬や遊ぶ子どもたちの浮世絵も多数残しており、今回の展覧会で観ることができます。
鈴木春信「風俗四季歌仙 神楽月」明和5年(1768)頃 中判錦絵 ボストン美術館蔵 William Sturgis Bigelow Collection, 11.19499 All Photographs Ⓒ Museum of Fine Arts, Boston
柔らかで華奢、そして優美な表現で、ファンの多い鈴木春信。この時代の錦絵は植物由来の絵の具が多く、中でも紅による赤、紅と露草(青花)の混色による紫は光によって退色します。ボストン美術館所蔵の浮世絵版画は長く展示されることがなかったため、良好な保存状態のものが多いのだそう。今回の日本での展示以後は、5年間、ボストン美術館内でさえ、展示しないことが取り決められています。
次はいつ、再会できるわからない、春信の浮世絵をじっくり楽しめる貴重なチャンスを、どうぞお見逃しなく。
◆ボストン美術館浮世絵名品展 鈴木春信
会期:2018年4月24日(火)〜6月24日(日)
会場;大阪・あべのハルカス美術館
場所:大阪府大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43 あべのハルカス16F
時間:10:00〜20:00(月・土・日・祝〜18:00)※入館は閉館30分前まで
休館日:5月7日、14日、21日、28日の各月曜日
料金:1,300円(当日・一般)
お問い合わせ:06-4399-9050(代表)
http://harunobu.exhn.jp
草間彌生「南瓜」1998年(30.5×27×20.5㎝)。落札結果:588万香港ドル(約8,000万円) ©Sotheby’s
この春、現代美術の世界で、日本人作家に対する評価が堅調であることを示すできごとがありました。先日、2018年3月31日(土)に開催されたサザビーズ香港 コンテンポラリーアート イヴニングセールで出品された日本人作家作品・計8点がすべて落札され、総額は3億9800万香港ドル(約54億円)に。翌4月1日(日)のデイセールでは、落札額上位10作品のうち、草間彌生、奈良美智の作品がなんと9点もランクイン。トップ10のほとんどを、日本人作家の作品が占めました。同オークションに出品された33点の草間彌生作品はすべて落札されています。
また、上前智祐(うえまえちゆう)、五木田智央(ごきたともお)の作品でも、それぞれアーティスト記録が更新されたとのこと。いかに日本人作家への注目度がアップしているかが、わかります。
五木田智央「Night In Tunisia」2015年(162.6×129.5㎝)。落札結果:212万5,000香港ドル(約2,900万円)©Sotheby’s
今年2018年1月より、サザビーズ コンテンポラリーアート部門アジア地区部長を務める寺瀬由紀さんは、「今回のオークションでは、アジアからのお客さまのみならず全世界から日本人作家への強い関心が集まりました。白髪一雄や今井俊満、斉藤義重など戦後美術を代表する作家から、現在も精力的に世界的な活動を展開する草間彌生、奈良美智や五木田智夫の作品まで、幅広い時代に亘って入札が相次ぎ、香港の現代美術マーケットにおける日本人作家の取り扱いが益々堅調である事を象徴する結果となりました」というコメントを出しています。
現職就任時に、「昨今のコンテンポラリーアート市場の稀に見る転換期に、サザビーズのグローバルなネットワークと優れた専門性を通じて、コレクターの皆さまに最高の蒐集体験をご提供していく」と語った寺瀬さん。まさに今は、現代美術の世界でも、大きな変革のタイミングなのでしょう。
「アート、特に現代美術は難しいから…」と思いがちではありますが、草間彌生や奈良美智が好きという方はきっと多いはず。こんなニュースを糸口に、世界が認めるニッポンの現代美術、改めて見直してみたいところです。
◆サザビーズ
http://www.sothebys.com
◆サザビーズジャパン
http://www.sothebys.com/jp
田中一村「熱帯魚三種」昭和48年(1973) 岡田美術館蔵 ©2018 Hiroshi Niiyama
神奈川県箱根・小涌谷にある岡田美術館で、田中一村・生誕110年を記念した特別展「初公開 田中一村の絵画 ―奄美を愛した孤高の画家―」が2018年4月6日(金)から開催中です。
50歳で奄美大島に移住し、69歳で亡くなるまで、亜熱帯の動植物など奄美の風物を描いた日本画家・田中一村。画材を手に入れるために、大島紬の染色工として働くなど、経済的には厳しさを極めながらも、質素な暮らしをかえって画作の糧としました。生前は無名に等しかった一村ですが、近年、その独自の画風や生き方が注目を集め、再評価が進んでいます。
今展では、岡田美術館収蔵の一村の作品すべてを初公開。奄美で制作された「白花と赤翡翠」「熱帯魚三種」のほか、最高傑作と名高い「アダンの海辺」(個人蔵・展示期間8月24日(金)〜9月24日(月・祝))が特別展示されます。
田中一村「白花と赤翡翠」昭和42年(1967) 岡田美術館蔵©2018 Hiroshi Niiyama
伊藤若冲「花卉雄鶏図」(部分)江戸時代 岡田美術館蔵
また、東京美術学校の同級生だった東山魁夷や、写生に基づく濃密な花鳥画を描いたことで共通点のある伊藤若冲、一村が学んだ中国画・文人画・琳派の作品等も併せて展示。豊富な関連作品とともに、田中一村の世界を知ることができる格好の機会となっています。
飲食施設「開化亭」
岡田美術館は、明治時代にこの地にあった欧米人向けホテル「開化亭」の跡地に建設された美術館。全5階・展示面積約5,000㎡という広い会場に、日本・中国・韓国を中心とする古代から現代までの美術品を常時約450点展示しています。敷地内には、約15,000㎡ある庭園や、昭和初期の日本家屋を改築した飲食施設「開化亭」、100%源泉かけ流しの足湯カフェがあり、アートを楽しんだ後はのんびりと箱根の自然を楽しめるのも嬉しいところ。首都圏からの日帰り旅行に、丁度良さそうです。
今展の会期は9月24日(月・祝)まで。日本画家としては異色な、だからこそ極めて美しい一村の世界観を覗きに、箱根までどうぞお出かけ下さい。
◆初公開 田中一村の絵画
―奄美を愛した孤高の画家―
場所:岡田美術館
住所:神奈川県足柄下郡箱根町小涌谷493-1
TEL:0460-87-3931
会期:2018年4月6日(金)〜9月24日(月・祝)
時間:9:00〜17:00(入館は16:30まで)
入館料:一般・大学生2,800円、小中高生1,800円
庭園入園料:300円
http://www.okada-museum.com
今年で生誕150周年を迎える横山大観。2018年は近代日本画壇の巨匠である彼の回顧展が、各地で開催されます。4月7日(土)からは新潟市秋葉区の新津美術館で、「足立美術館所蔵 横山大観と近代日本画名品展」がスタート。今展では、横山大観の作品22点を含む近代日本画の名品55点が公開されています。
足立美術館の創設者・足立全康(あだちぜんこう)は、戦後に繊維問屋、不動産関係の事業家として成功した後、美術品のコレクターとして知られるようになった人物。幼少の頃から日本画へ深い興味を持ち、昭和45年に自身の故郷・島根県安来市に創設した足立美術館は、広大な日本庭園と優れた近代日本画中心の所蔵品で知られています。特に横山大観コレクションは代表作を含めて120点にも及び、日本随一と高い評価を受けています。
今回はその中から、横山大観の「神州第一峰」「霊峰四趣・夏」「海潮四題・夏」「龍興而致雲」、上村松園の「娘深雪」、橋本関雪の「唐犬図」などが出品されています。新潟県で足立美術館の所蔵品が公開されるのは、今展が初めて。なかなか目にすることのできない大観の逸品を、この機会にぜひ楽しんでみては。
◆足立美術館所蔵 横山大観と近代日本画名品展
会場:新潟市新津美術館
住所:新潟県新潟市秋葉区蒲ケ沢109-1
TEL:0250-25-1300
会期:2018年4月7日(土)~5月20日(日)
時間:10:00~17:00(観覧券販売は16:30まで)・月曜日休館(ただし、4/30、5/14は開館)
当日券:一般1,300円、大学・高校生700円、中学生以下無料
https://www.city.niigata.lg.jp/nam/index.html
https://www.city.niigata.lg.jp/nam/exhibitions/FY2018exh/adchi-niigata2018.html
監修:足立美術館 https://www.adachi-museum.or.jp/
かつては娯楽のひとつとして庶民が手に取って眺めていた浮世絵ですが、今は美術品となって少し遠い存在に。そんな浮世絵を間近で楽しめる珍しいイベント・浮世絵展「粋」“iki”が、大阪で開催されます。
今展は愛知県小牧市の「古美術もりみや」が主催。2018年4月13日(金)~4月15日(日)の3日間、大阪市西天満の会員制サロン「西天満竹井」にて開催されます。
「古美術もりみや」は、開業70年の古美術商で特に浮世絵に力を入れてきた店。取扱ジャンルは歌川国芳・月岡芳年・河鍋暁斎から葛飾北斎や歌川広重などと幅広く、状態のよい浮世絵、錦絵を多数取り扱っています。
今展では「粋」をテーマに、衣装やデザインなどにこだわって選び抜いた浮世絵を数十点、展示。主な展示品は、歌川国芳『酒田公時・碓井貞光・源次綱と妖怪』や三代豊国『近世水滸伝 競力富五郎』、月岡芳年『豪傑水滸伝 豹子頭林冲』、豊原国周『俳優見立遊侠十個揃 荒磯吉五郎』などです。普段は美術館などでガラス越しにしか見ることのできない浮世絵を、目前に見ることができるまたとない機会と言えるでしょう。
展示品はすべて購入可能で、数万円から最高300万円まで、中心価格帯は20〜30万円とのことです。また、管理者のもと、状態の良い浮世絵を手に取って閲覧できるブースも用意されています。
会場となる「西天満竹井」は、大阪が最も華やかだった大正9年に建設された貴重な民家。当時の家具や調度もそのままに、現在は会員制サロンとして使用されています。通常は一般公開していませんが、今展は非会員も入場可能。1階のバースペースではドリンク提供サービスも予定されています。
入場は無料。購入の予定がなくとも、浮世絵の魅力に触れに、ぜひ足を運んでほしいとのこと。直接目にすればこそよく分かる、浮世絵が持つ、美しさ、大胆さ、緻密さを感じに、この週末は今展に足を運ばれてはいかがでしょうか。
◆浮世絵展「粋」“iki”
会期:2018年4月13日(金)~4月15日(日)
主催:古美術もりみや
会場・後援:西天満竹井
会場住所:大阪府大阪市北区西天満1−13−4
問合せTEL:0568-76-2734(古美術もりみや)
06-6360-7111(西天満竹井)
開場時間:11:00〜19:00
入場料:無料
定員:50名(混み合った場合は入場制限あり)
http://morimiya.net
https://www.takei.studio/event/vol1/
写真家で映画監督の蜷川実花さんが京都の舞妓芸妓を撮り下ろした作品が、2018年4月14日(土)から5月13日(日)まで美術館「えき」KYOTOにて開催される『蜷川実花写真展UTAGE 京都花街の夢KYOTO DREAMS of KAGAI』で公開されます。
今回展示されるのは、京都の伝統的な美学の粋が蓄積された“花街”と四季折々の美しい京都の“景色”から構成された約80点。京都五花街(祇園甲部、宮川町、先斗町、上七軒、祇園東)から各3人、計15人の舞妓芸妓を選び、一人一人のイメージに合わせて一から創り上げた美術セットで撮影された作品です。
鮮やかで幻想的な蜷川実花ワールドの中で舞う、京都の伝統と文化を守り伝える舞妓芸妓達。2年以上の月日をかけて創り上げられたという本作品は、2018年4月26日(木)に『蜷川実花写真集trans-kyoto』としても刊行され、今写真展で先行販売されます。
先日、京都国際観光大使に任命された蜷川実花さん。その任命式の際に彼女は、「京都は完成度が高いまちで、キャリアを積み重ねてやっと表現できるようになった」と語っています。当代随一の実力と人気を兼ね備えた写真家にすら難易度が高いと言わしめる京都を、どう表現しているのか。この春、見逃せない写真展のひとつです。
◆蜷川実花写真展「UTAGE 京都花街の夢KYOTO DREAMS of KAGAI」
会期:2018年4月14日(土)~5月13日(日)
会場:美術館「えき」KYOTO(京都駅ビル内ジェイアール京都伊勢丹7階)
開館時間:10:00〜20:00(最終入館閉館30分前)
入館料:一般900円/高・大学生700円/小・中学生500円
お問合せ:075-352-1111(ジェイアール京都伊勢丹大代表)
http://kyoto.wjr-isetan.co.jp/museum/
http://kyoto.wjr-isetan.co.jp/museum/exhibition_1805.html
◆『蜷川実花写真集trans-kyoto』
定価:30,000円(税抜)
発売日:2018年4月26日
発売元:パイ インターナショナル
セイコーウオッチ株式会社が、2018年4月17日から22日まで、イタリア・ミラノで開催される世界最大規模のデザインの祭典「ミラノデザインウィーク 2018」に高級ウオッチブランド「グランドセイコー」として初出展します。
「グランドセイコー」は、1960年の誕生以来、最高峰の腕時計を目指し、正確さ、美しさ、見やすさといった腕時計の本質を高い次元で追求・実現し続けきたブランドです。2010年から本格的なグローバル展開を開始し、世界でも数少ない真のマニュファクチュールにしか成し得ない最高レベルの性能と洗練されたデザインを誇ります。2017年春にはデザイン領域の拡大、ブランドカラーの刷新とともに、Grand Seikoロゴをダイヤル(文字盤)の12時位置に配し、独立ブランドとなりました。
本展では、「グランドセイコー」の中でも、高い精度と長時間駆動を兼ね備えた独自の機構である「スプリングドライブ」を2組のデザイナーが表現します。スプリングドライブとは、ぜんまい駆動でありながら、従来にはない、日差1秒以内という高精度を実現したセイコー独自の駆動機構で、20年以上の開発期間を経て、究極の省エネルギー設計と流れるように動く秒針を備えています。その卓越した匠の技による日本の繊細なものづくりと先端技術の融合は世界中から高い評価を得ています。
本展示のテーマは「THE FLOW OF TIME」。精度を追究し、その先に辿り着いた「スプリングドライブ」に、デザインスタジオ TAKT PROJECTとCGディレクター兼デザイナーの阿部伸吾氏の2人が向き合いました。究め辿り着いた時計の新しい次元を、高精度につくられた部品と流れる時を呼応させるような空間で表現した、TAKT PROJECT。スプリングドライブのダイヤル上を滑る秒針の美しい動きと自然とをかけ合せた、感性に響く一体感を阿部伸吾氏が映像にしました。
「スプリングドライブ」というセイコーにしかなしえない技術と、今をときめく日本のクリエイター2人が魅せるコラボレーションの世界。一見の価値ありです。
出展内容
出展テーマ:「THE FLOW OF TIME」
開催期間:2018年4月17日(火)〜 4月22日(日)
会場:トリエンナーレ美術館 クーボ ビー (Cubo B, La Triennale di Milano)
Viale Alemagna, 6 Milano (イタリア・ミラノ センピオーネ公園内)
参加クリエイター:TAKT PROJECT、阿部伸吾
https://www.grand-seiko.com/jp-ja/special/milandesignweek/2018/
【Approach to TIME.】 TAKT PROJECT
時の本質に迫り、時の移ろいを感じさせる新しい次元に辿り着いたスプリングドライブの世界観を、空間として表現。ムーブメントの部品を封入した透明なオブジェを12体ならべ、その背後には時がうつろいゆく映像が投影されています。オブジェを覗き込むと、きらめく一つひとつのパーツと、すっぽり映り込んだ映像が融合し、ムーブメントが時の本質に迫る様を感じさせます。また、透明なオブジェの中でまたたく小さな光は、部品達が自ら生み出す微弱な電気の存在を静かに暗示。覗き込むことでグランドセイコーの思想を感じられるインスタレーションです。
【Kizamu / Nagareru】 阿部伸吾
太陽の軌跡のように、もともと連続的である自然界の「運動」を「刻む」ところから時計の歴史は始まりました。時は「流れる」ものから「刻む」ものとなり、時計はその性能を追い求める中でより高い精度で時を「刻む」ことを目指してきました。一方、スプリングドライブの秒針は独特のなめらかな動きを持ち、それは降り落ちる雨のように、舞い落ちる木の葉のように、夜空を回る星のように、「流れる時」を感じさせます。その「刻む時」と「流れる時」の対比を映像表現に閉じ込めた作品となっています。
≪デザイナープロフィール≫
TAKT PROJECT(デザインスタジオ)
吉泉聡を代表に、2013年設立。DESIGN THINK+DO TANKを掲げ、デザインを通して「別の可能性を作る」多様なプロジェクトを展開しているデザインスタジオ。実験的な自主研究プロジェクトを行い、その成果をミラノデザインウィーク、デザインマイアミ、メゾン・エ・オブジェ・パリ、香港M+など国内外の美術館やデザインインベントで発表・招聘展示。その研究成果をベースに、様々なクライアントとコラボレーション、プロジェクトに応じてデザインの役割を最大化する独自のアプローチを特徴とする。
阿部伸吾(CGディレクター/デザイナー)
1981年生まれ。東北芸術工科大学にてメディアアートを学ぶ。卒業後ビジュアルデザインスタジオWOWに所属。CGデザイナー、アニメーター及びディレクターとして広告に携わる。その後多くの作家とのコラボレーションの中で、映像のみならず映像投影に関わる空間演出、インタラクティブ作品、インスタレーション、さらにはファッションショーや舞台における映像演出など、メディアの形にとらわれない作品を多く手がけている。
倣夏珪山水図 雪舟等楊筆 室町時代・15世紀 山口県立美術館寄託
[展示期間:5月8日~5月27日]
室町時代の禅僧であり、日本独自の水墨画を確立した、雪舟。現存する作品のうち6点が国宝に指定されるなど、日本美術史の巨匠として名高い彼の幻の作品が昨年2017年に、84年ぶりに再発見され、話題を呼びました。その「倣夏珪山水図(ほうかけいさんすいず)」は、藍や緑などで彩色を施し、手前に大きな岩、遠くには山が描かれ、軸装された約30cm四方のうちわ形の作品。墨の線で区切られた画面の、内側には「雪舟」、外側には「夏珪(かけい)」と、二人の画家の名が書かれており、南宋(12~13世紀)の著名な画家・夏珪の様式を模していることがわかります。
今回、2018年4月13日(金)から5月27日(日)まで、東京国立博物館 平成館で開催される特別展「名作誕生—つながる日本美術」にて、この「倣夏珪山水図」が公開されることになりました。東京での一般公開は、これが初めてとなります(展示期間は5月8日~5月27日)。
雪舟は中国の名画家に倣っていくつかのうちわ形倣古図を描いており、今回発見されたものはそのシリーズの1点。昭和8年に西日本鉄道の前身である九州電気軌道の社長をつとめた松本松蔵氏の旧蔵品として競売に出された以降、行方がわからなくなっていたそうです。しかし昨年再発見されて話題となり、山口県立美術館の「雪舟発見!展」で展示されました。『國華』編輯委員で学習院大学教授の島尾新さんは、「夏珪に倣うといっても、そっくりではありません。『古に倣い』ながら『新意を出す』、雪舟風のアレンジで、オリジナリティを獲得しています。この絵のようなプロセスを経て、「山水長巻」(毛利博物館蔵)や「秋冬山水図」(東京国立博物館)のような、夏珪風の代表作が生まれました」と解説しています。
特別展「名作誕生—つながる日本美術」は、名作や巨匠などをテーマに、日本美術史上の名作たちを集めて展示。名作がどのようなつながりで誕生したのか。また巨匠たちが何と、また誰と、どのようにつながって名作を生んだのかを解き明かす企画展です。雪舟は、「倣夏珪山水図」「四季花鳥図屏風」をはじめ9件の作品が、【雪舟と中国】のつながりをテーマに、南宋時代の夏珪や玉㵎(ぎょくかん)などの作品と共に紹介されます。(※会期中、展示替えあり。)
左隻
右隻
重要文化財 四季花鳥図屏風 雪舟等楊筆 室町時代・15世紀 京都国立博物館蔵
[展示期間:4月13 日〜5月6日]
日本美術史の中では別格の扱いを受け、多くの模本が存在する雪舟。しかし、彼の本当のパワーは、真筆に触れてこそ。今企画はアートファンならずとも足を運ぶ価値の高い展示といえるでしょう。
創刊記念『國華』130周年・朝日新聞140周年
特別展「名作誕生—つながる日本美術」
場所:東京国立博物館 平成館(上野公園)
東京都台東区上野公園13-9
問い合せ先:03-5777-8600(ハローダイヤル)
会期:2018年4月13日(金)〜5月27日(日) ※会期中、展示替えあり。
9:30〜17:00(金土は〜21:00、日祝は〜18:00 入館は閉館の30分前まで)
月曜休館 ※4月30 日(月・休)は開館
http://meisaku2018.jp/
※会期中、展示替えがあります。
20階ロビーに展示される3つのゲートは「光のゲート」シリーズより
開業5周年を迎えるインターコンチネンタルホテル大阪では、1年を通して【ハッピー ラグジュアリー】をテーマにしたアートや文化に関するセレブレーションイベントが開催されます。イベントの第2弾は4月12日(木)~5月9日(水)に和紙アートの展示「和紙ワンダーメント~美しき和紙アートと光のエキシビジョン~」と題して、 京都出身の和紙デザイナー・堀木エリ子氏が手掛けた大小様々な作品6点が、ホテル1階エレベーターホールと20階ロビーやラウンジ3-60(スリーシクスティ)にて展示されます。堀木氏は「建築空間に生きる和紙造形の創造」をテーマに、空間や壁面に広がるインパクトのある大きなオブジェから、小さなものまで多岐にわたる作品を国内外で出品。和紙アートと光が織り成す幻想的な質感がホテル館内に溶け込み、魅力あふれる空間を創り出します。
展示場所の1つとなる20階ロビー
現代的でありながら、大阪の街や日本の伝統要素を色彩や形などのディティールに取り入れたコンテンポラリーラグジュアリーなインテリアと、常に感動と気づきを与える堀木氏の和紙アートの調和をホテルで感じてみては?
「和紙ワンダーメント~美しき和紙アートと光のエキシビジョン~」
日程:2018年4月12日(木)~5月9日(水)
展示場所:
インターコンチネンタルホテル大阪
〒530-0011 大阪府大阪市北区大深町3-60
1階/「光屏風」「光テーブルshirabe」「ライトオブジェMOKU」
20階/「光のゲート」「伎楽面トルソー」「ライトオブジェSachi/Fuku/Tori」
問い合わせ先:06-6374-5700(ホテル代表)
日本美術の殿堂、東京国立博物館で「博物館でお花見を」が開催中です。本館の各展示室に桜をモチーフにした作品が並び、まるで室内でお花見を楽しんでいるような気分に。国宝「花下遊楽図屛風」などの桜を描いた絵画、桜をモチーフにした工芸品、サクラ材の仏像などが展示されます。また東京国立博物館が誇る庭園では約10種類もの桜を楽しむことができます。この時期限定のワークショップ、お茶会、音楽祭などのイベントも盛りだくさん。
一足先に、東京国立博物館でお花見を楽しみませんか?
「博物館でお花見を」開催概要
期間:2018年3月13日(火)~4月8日(日)
開館時間:9:30~17:00
※金・土曜日は21:00まで、4月1日(日)・8日(日)は18:00まで
※入館は閉館の30分前まで
http://www.tnm.jp/
主な展示作品
≪本館10室≫
飛鳥山花見 (あすかやまのはなみ)
鳥居清長筆 江戸時代・18世紀
展示は3月20日(火)~
飛鳥山は8代将軍吉宗ゆかりの桜の名所で、花見客で賑わいました。ちょっと飲み過ぎた美人の姿も。
振袖 染分縮緬地枝垂桜菊短冊模様
(ふりそで そめわけちりめんじしだれざくらきくたんざくもよう)
江戸時代・18世紀
枝垂桜が肩にかかる模様が優美な友禅染。模様を上下に分けるスタイルは江戸時代中期の流行です。
≪本館7室≫
観桜図屛風(部分)
住吉具慶筆 江戸時代・17世紀 西脇健治氏寄贈
展示は3月20日(火)~4月22日(日)
『伊勢物語』第八十二段「渚の院」の一場面。狩りに出掛けた先で花見に興じる惟喬親王らが描かれています。
≪本館2室(国宝室)≫
国宝
花下遊楽図屛風 (かかゆうらくずびょうぶ)
狩野長信筆 江戸時代・17世紀
満開の桜の下、歌舞音曲の宴を楽しむ人々の姿が400年前のお花見の賑わいを今に伝えます。
<u>イベント</u><u>
</u>※特記以外はすべて無料参加(ただし、当日の入館料が必要)、事前申込み不要
※事前申込制のイベントについての詳細は博物館ウェブサイトでご確認ください。
◆鑑賞ガイド
桜にちなんだ作品の見どころをダイジェストで紹介。
※いずれも場所は本館地下 みどりのライオン(教育普及スペース)にて
・3月23日(金)14:00~14:30
講師:小島有紀子(教育講座室アソシエイトフェロー)
・3月28日(水)14:00~14:30
講師:勝木言一郎(教育講座室長)
◆桜ギャラリートーク
※いずれも場所は本館地下 みどりのライオン(教育普及スペース)にて
・「古典の香り『春』」
薫物を焚きながら、いにしえの春の香りについての話を聞けます。
3月30(金)14:00~14:30
講師:田邊留美子(登録室アソシエイトフェロー)
・「国宝『花下遊楽図屏風』を楽しむ」
今から400年前のお花見を描いた作品の魅力や見どころについての話を聞けます。
4月4日(水)14:00~14:30
講師:大橋美織(絵画・彫刻室研究員)
◆桜セミナー
「桜咲く絵画の世界」
桜は、日本人に最も親しまれている花ではないでしょうか。桜の描かれた絵画の紹介、その人気の秘密を考えます。
4月7日(土)13:30~15:00(13:00開場予定)
講師:田沢裕賀(学芸研究部長)
平成館大講堂 定員380名(先着順)
そのほかのイベントの情報は上記記載の博物館ウェブサイトよりご確認ください。
福島善三 中野月白瓷香炉 径14.3×12.2cm
陶芸、染織、漆芸、金工、木竹工、人形、それぞれの工芸分野における重要無形文化財保持者(人間国宝)総勢40名による、第3回目の展覧会が銀座・和光にて開催されます。
左から:森口邦彦 友禅訪問着 黒地位相割付文「序」、前 史雄 沈金箱「清音」12×23×高さ11.5cm、大角幸枝 南鐐蛤盒子「月宮」9.3×11×高さ4.3cm
自然が生活の中に溶け込み、人々の生き方と一体となり日本の美意識を形成していくところに日本の工芸文化はあります。その自然の魅力を最大限に生かしながら、作り手の高度な技を駆使し、自らの創造性や芸術性を表現していくこの文化は、現代でも脈々と受け継がれています。今展では、技の美の頂点を極めた最高峰の作家たちが持てる力を余すことなく注ぎ込んだ、日常を豊かに彩る至高の作品100余点が展示されます。工芸の可能性を広げていく大作から日常の小品まで、さまざまな魅力に満ちた工芸の美が楽しめる展覧会です。
左から:藤沼 昇 束編花籃「福々」径34×高さ30cm、林 駒夫 木芯桐塑布木目込「蘭亭流觴」 高さ22cm
◎会場にて出品作家によるギャラリートークを実施予定(各日14:00~)。
4月7日(土)福島善三(陶芸)
8日(日)十四代 今泉今右衛門(陶芸)
14日(土)桂 盛仁(金工)
15日(日)藤沼 昇(木竹工)
21日(土)村上良子(染織)
工芸・Kôgeiの創造-人間国宝展-
開催期間:2018年4月6日(金)~22日(日) 10:30~19:00(最終日は17:00まで・無休)
会場:和光ホール 東京都中央区銀座4丁目5-11 和光 本館6階
入場料:無料
問い合わせ先:03-3562-2111
ものがたりが込められた襖(ふすま)の引手。
京都を拠点に、茶の湯をはじめとした伝統文化のこころの意味を問い直し、ひとつひとつにものがたりを込めた「読む器」を展開する、SIONE(シオネ)。代表取締役 兼 陶板画作家/陶磁器デザイナーの河原尚子氏は、330年続く茶陶の窯元「真葛焼」に生まれ、佐賀で陶芸の修行を積んだあと、独特の技法で陶板画制作を開始。デザイナーとしても活躍する傍ら、茶会などを通じて現代のおもてなしの文化を積極的に伝えています。2018年1月に実施された、日本の各地で新しいモノづくりに取り組む若き「匠」をサポートする「LEXUS TAKUMI PROJECT 2017」では、本年度の注目の匠の一人に選出され、国内外を舞台にさらなる活躍が期待されるアーティストです。
戸や襖を開閉する際に手をかけて引くために取り付ける引手。その小さな円の中にブランドものがたりが描かれたSIONEの引手は、遊び心に溢れる線と色彩が特徴です。磁器製で、水で溶いた釉薬の表面張力を用い、何度も塗っては焼き重ねられ、 グラデーションや厚みをもたせた独自の彩色技法が用いられています。シリーズは、第0章から4章までの5種からなり、それぞれには《星がうまれた「場所」と「訳」》、《海の奥底の物語》、《繁栄の森と一匹の蝶の物語》、《きのこと虫の物語》、そして《こころが生まれる物語》について語られています。
第0章(左上):漆黒の宝石 ー星がうまれた「場所」と「訳」ー
第1章(右上):かそけきものたち ー海の奥底のモノガタリー
第2章(左下):RINRAN ー繁栄の森と一匹の蝶のモノガタリー
第3章(右下):森ヲ継グモノ ーきのこと虫のモノガタリー
本としても鑑賞できるSIONEの引手は新しい様の美、そして、まるで一つの物語の中に入るような空間とその空間で愉しむ時間を提供してくれます。
また、自分だけの物語をオーダーメイドすることも。是非、チェックしてみては。
ものがたりのある<襖 引き手>
内容:引手2枚、物語の冊子
サイズ:直径約76mm(内凹部分約58mm)
価格:60,000円~ ※意匠により異なる。オリジナルの引手のオーダーも可能。
「SIONE(シオネ)」 HP:http://sione.jp/
1869年(明治2年)創業、「子ども達の感性の翼をひろげよう」をコンセプトに、様々なモノ・コトの本物の価値を提供するベビー&子供服のブランド、ギンザのサヱグサ。そして、世界の数多くの著名なカメラマンが愛用する、ドイツのカメラブランド、ライカ。長い歴史を持ち、クラフトマンシップに根付いたものづくりをする両社がこの度、コラボレーションプロジェクトとなる写真展「WANNABE A PHOTOGRAPHER」を3/15(木)から4/8(日)まで開催します。パリ生まれのキッズファッション誌『Milk JAPON』がプロデュースしたという本写真展。写真家・映画監督の若木信吾氏が、SAYEGUSAの最新コレクションを着て、ライカのインスタントカメラ「ライカ ゾフォート」を手にした子どもたちの姿をライカSLで撮りおろしました。ファインダーをのぞく子どもたちの真剣な表情、遊びながら撮りあう姿、撮った絵がフィルムに浮かび上がるのを待つワクワク感。そこには子どもたちの感性溢れる瞬間がとらえられています。
会場となるのはSAYEGUSA ザ・メインストア銀座とライカ GINZA SIX。期間中はSAYEGUSA ザ・メインストア銀座にて、子どもたちが「ライカ ゾフォート」で撮影した写真も合わせて展示され、「ライカ ゾフォート」の販売も行われます。ゴールデンウィーク中の4月28日(日)には、SAYEGUSAの店舗にて「ライカ ゾフォート」を使ったワークショップも開催されます(詳細はサヱグサHPにて www.sayegusa.com)。
かわいらしい子どもたちの姿だけではなく、こどもたちの視点も収められているのが魅力の写真展。4月上旬まで開催しているので銀座へ立ち寄る際に是非覗いてみては。
ギンザのサヱグサ×ライカ
若木信吾写真展「WANNABE A PHOTOGRAPHER」
会期:2018年3月15日(木)~4月8日(日)
会場:
SAYEGUSA ザ・メインストア銀座
〒104-0061 東京都中央区銀座4丁目4-4
営業時間:10:30~19:30
www.sayegusa.com
ライカ GINZA SIX
〒104-0061 東京都中央区銀座6丁目10-1
GINZA SIX 5F
営業時間:10:30~20:30
「明治ザ・チョコレート」とメイジ・デモンストレーション・ファームで収穫したカカオの実
メイジ・デモンストレーション・ファームのあるベトナムを視察させてもらうことになった。嬉しいことにカカオの植樹からチョコレートになるまでをすべて体験できるという。期待に胸を⼤きく膨らませて旅⽴った。
カカオ農園への旅については拙著『ショコラが⼤好き!』でも書いているが、あの事前のアポなしの極めてワイルドな旅とは違い、今回はカカオやチョコレートのスペシャリストで「チョコレート博⼠」こと明治の⼤阪⼯場⻑で農学博⼠の古⾕野哲夫さんの解説付きである。ちなみに連載《第四回》で紹介した古⾕野さんのお話はこの旅中に訊いたことだ。
カカオ農園に到着すると「メイジ・デモンストレーション・ファームにようこそ!」と⾚字で書かれた横断幕が掲げられ歓迎ムード。ここで明治は「メイジ・カカオ・サポート」として技術指導や肥料の無償配布などの⽀援活動を⾏なっているという。
左:カカオの木は周りに植えられた大きな木の陰で、直射日光や強風から守られ育つ。
右:収穫体験。カカオの実一個採るだけでも慣れないとかなり大変な作業。
カカオ農園に⾜を踏み⼊れるとカカオの葉がたくさん落ちていて地⾯がフカフカしていた。カカオが落葉樹であることがよくわかる。農園には、7〜8種類のカカオの⽊が800本あり、コーヒー、コショウ、アボカド、ドラゴンフルーツ、パイナップルといった作物が⼀緒に育てられている。ところどころにカカオ⾖を取った後の実の殻が集められていて半ば堆肥化していた。古⾕野さんによれば、アグロフォレストリーという農法なのだそうだ。
アグロフォレストリーとはアグリカルチャー(農業)とフォレストリー(森林学)をあわせた造語。森林伐採などで荒廃した⼟地に、多種多様な農産物を混合して栽培する農法のことで、事業として成り⽴つうえに、⼗年ほどで森の⽣態系を蘇らせることから「森をつくる農業」と呼ばれ世界的に注⽬されているのだという。
この農法を⽣みだしたのは、ブラジル北東部のトメアスーに⼊植した⽇本⼈移⺠たち。主作物と想定していたカカオの栽培がうまくいかず、アマゾンの過酷な環境の中でジャングルを切り開き、コショウ栽培を始めるなど、紆余曲折を経てたどり着いた農法だった。その壮絶なストーリーは涙なくしては訊けない。古⾕野さんはブラジルでカカオ⾖のリサーチをしているときにトメアスーの⽇系⼈が設⽴した「トメアスー総合農業協同組合(CAMTA)」と出逢い、2009年に明治との共同プロジェクトが始まることになった。今では明治ザ・チョコレートの、エレガントビター、サニーミルク、フランボワーズで使⽤している他、業務⽤のチョコレート「グリーンカカオ」として販売している。「グリーンカカオ」はドライフルーツのような味わいがあって、そのまま⾷べても楽しめるうえ、トメアスーのカカオ農家を応援することにもなるので一消費者としては⼩売も希望したいところだ。
「明治ザ・チョコレート」は日本が世界に誇れる上質な味わいとデザインを目指している。
明治のスペシャリティチョコレート担当の佐藤政宏さん(下、集合写真右)によると、明治のチョコレートは、スタンダード、健康志向、スペシャリティという3つのカテゴリーに分けられている。スペシャリティチョコレートは、選び抜いたプレミアム・カカオを使⽤し、カカオの特徴を際⽴たせた⽇本が世界に誇れる上質な味わいのもので、明治ザ・チョコレートはこのカテゴリーを牽引していく存在だという。
⾃分たちが求める理想のカカオ⾖を安定的に供給してもらうことについては、連載《第四回》で紹介したようにブラジルやベネズエラを始めとする国々のカカオ農家⽀援活動「メイジ・カカオ・サポート」を通じて構築したシステムがそれを可能にしているのだった。
植樹体験。アグロフォレストリーについて話を訊いた後だったので、この農法を生みだしたブラジルの日本人移民に敬意を表して、植樹にはコショウの根が残る場所を希望した。
農園では、ポットで発芽させたカカオの苗を植えて育て、実がつくと収穫して、実からカカオ⾖を取り出して発酵させ天⽇⼲しをする。数年かかる⼯程を数時間で体験させてもらった。実から取り出したばかりのカカオ⾖にはまわりにみずみずしい果⾁がついている。ベトナムのカカオは糖分が⾼く酸味の強いカカオ⾖になりやすいため、果肉がついたままの⾖を絞って⽔分量を減らしてから発酵させる。この時にできるフレッシュな絞り汁(カカオパルプジュース)はたまらなく美味しい。小さなコップに⼊れられた果汁を恍惚として飲み⼲した。
写真:発酵体験。上は実から取り出したばかりのカカオ豆。下は発酵して数日が経ったカカオ豆。
絞った⾖は発酵箱に⼊れて発酵させる。発酵中の⾖の中に⼿を⼊れると、ヌルヌルしていて予想外にかなり熱いがなんだか⼼地よい。⽩い果⾁は数⽇経つとチョコレート⾊に変わり温度も摂⽒50度程になるという。⾖の中に⼊れた⼿は取り出した後もしばらくしっとりとしていた。発酵を終えたカカオ⾖は、⼿作業で外に運び天⽇⼲しをする。
チョコレートに情熱を注ぐ明治の皆さんとベトナムのカカオ農園にて。「チョコレート博士」こと古谷野哲夫さん(中央、ブルーのキャップ帽)を囲んで。カカオの実がたわわに生ったカカオ農園では、その場でココナッツの実をカットして振る舞ってくれた。右端はカカオ農園のオーナー。
こうして乾燥したカカオ豆はチョコレート工場に運ばれて、ローストして砕き皮を取り除いてから、砂糖などを加え磨り潰してチョコレートにする。
明治のカカオクリエイター佐久間悠介さん(上、集合写真左端)が額に汗して準備万端に整えてくれていたおかげで、自分だけの板チョコレートを完成させることができた。
明治のカカオクリエーター佐久間悠介さんの指導で、ベトナムのチョコレート工場で作った farm to bar チョコレート。実際に自分で手がけたのは型に流しただけだけれど出来上がると感激だ。プロの手(佐久間さん)によるテンパリングを経ているので仕上がりはきわめて美しい。
今後は⼀般募集の旅として企画する可能性もあるのだとか。ブラジルの⽇系移⺠が⽣みだしたアグロフォレストリーや、カカオ農家支援活動「メイジ・カカオ・サポート」を通してプレミアム・カカオを安定供給してもらうシステムなど、チョコレートへの情熱と志の⾼さが⽣み出すジャパン・クオリティの魅⼒に触れた旅だった。これから参加する⼈は、知識が豊富になるのはもちろんのことチョコレートへの愛がますます深くなることだろう。
<u>明治ザ・チョコレート その1 ホワイトカカオの記事 >></u>
text © Mika Ogura 2018
【プロフィール】
小椋三嘉(おぐら・みか)
エッセイスト、食文化研究家。
十数年のパリ暮らしを経て帰国。2008 年にはフランス観光開発機構・ パリ観光会議局の名誉ある「プレス功労賞」を受賞。フランスのチョコレート愛好会「クラブ・デ・クロクール・ド・ショコラ」の会員。著書は『高級ショコラのすべて』、『チョコレートのソムリエになる』、『ショコラが大好き!』、『アラン・デュカス進化するシェフの饗宴』、『パリを歩いて―ミカのパリ案内―』など多数。
【商品情報】
明治ザ・チョコレート
写真下段左から:
⼒強い深み コンフォートビター (カカオ 70%)
華やかな果実味 エレガントビター (カカオ 70%)
濃密な深みと旨味 ベルベットミルク (カカオ 51%)
優しく⾹る サニーミルク (カカオ 54%)
写真上段左から:
深遠なる旨味 抹茶 (カカオ 58%)
鮮烈な⾹り フランボワーズ (カカオ 44%)
可憐に⾹る ブリリアントミルク (カカオ 55%)
軽やかな熟成感 ビビッドミルク (カカオ 54%)
各3枚⼊り