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避暑地・軽井沢で、眠りを整える3日間
2026.6.30
星のや軽井沢のスリープツーリズム「軽井沢 眠りの逗留 -夏-」
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星のや軽井沢では、2026年7月1日から8月31日まで、良質な眠りに着目した滞在プログラム「軽井沢 眠りの逗留 -夏-」を提供。避暑地ならではの冷涼な気候を活かし、心身を整えながら安眠へと導く3日間のプログラムだ。
世界保健機関(WHO)の調査によると、日本人の平均睡眠時間は先進国の中でも短く、特に夏の睡眠時間は年間でもっとも短くなる傾向があるという。そこで本プログラムでは、睡眠や覚醒のリズムを司る体内時計に着目。森林浴や温泉、専門スタッフによる枕の調整などを通じて、良質な眠りへと導く。
めざめの朝餉
涼風の夕餉
滞在中は、眠りのホルモンと呼ばれる「メラトニン」の材料となる「トリプトファン」が豊富な大豆製品を取り入れた朝食「めざめの朝餉」と、体内の熱を覚まし、心地よい眠りをサポートする夕食「涼風の夕餉」を用意。信州の恵みを味わいながら、体の内側から睡眠環境を整えていく。
日中は、体内時計を穏やかに整え、安眠へと繋げる「緑陰巡り」も実施。爽やかな風が吹き抜ける木陰で読書をしたり、清流沿いを散策したりと、思い思いに森林浴を楽しみながらくつろげる。また、爽やかな梅蜜を使った「梅あんみつ」も提供され、涼やかな午後のひとときを演出する。
宿泊者専用の温泉「メディテイションバス」
就寝前には、宿泊者専用の温泉「メディテイションバス」で浮力を利用した「深呼吸入浴法」を実践。さらに、専門スタッフが羊毛100%の「エルゴ枕」を一人一人の寝姿勢に合わせて調整。就寝着として用意されるセルフメディケーションウェア®「Resona Bio®」は持ち帰り可能で、自宅でも快適な眠りの環境を整えられるのがうれしい。
軽井沢の緑陰と涼風に包まれながら、心と体をゆっくりと休める3日間。暑さや忙しさで乱れがちな睡眠を見つめ直し、心身を整える、大人のためのウェルネスステイだ。
◆星のや軽井沢「軽井沢 眠りの逗留 -夏-」
【期間】2026年7月1日~8月31日(除外日あり)
【料金】1名 56,900円(税・サービス料込、宿泊料別)
【含まれるもの】枕の貸し出し・セルフメディケーションウェア®「Resona Bio®」持ち帰り可能・深呼吸入浴法レクチャー・めざめの朝餉・涼風の夕餉·緑陰巡り(冷茶・涼菓つき)
【定員】1日1組(2名まで)
【対象】星のや軽井沢宿泊者
【予約】公式サイトにて7日前まで受付
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旅館の矜持 THE RYOKAN COLLECTIONの世界
2026.6.19
歴史的文化建築と現代の快適さを追い求める「琴平花壇」の三好りつ子女将
敷地内で最も格式の高い離れ「長生殿」の縁側に座る三好りつ子女将。
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「ザ・リョカンコレクション」に加盟する旅館の女将や支配人を紹介する連載「旅館の矜持」。今回は香川県琴平町にある「琴平花壇」の三好りつ子女将を紹介する。
400年の歴史を有する旅館
香川県琴平町といえば、「こんぴらさん」の愛称で知られる神社・金刀比羅宮を擁する土地である。主祭神として祀られているのは、大物主神(おおものぬしのかみ)と崇徳天皇。琴平町は、江戸時代から連綿と続く‶こんぴら参り″とともにある町だ。
金刀比羅宮がある象頭山の麓に位置するのが「琴平花壇」である。
宿の3階のガーデンラウンジでは、眼下に琴平の街が広がり、遠方に雄大な讃岐富士(飯野山)を臨むことができる。
ガーデンラウンジから琴平の街並みを一望
三好女将に話を聞いた。
「旅館業の始まりは1627(寛永4)年と古いんです。金刀比羅宮の表参道沿いに旅籠屋の『備前屋』として創業しました。来年で400周年となります。創業から約280年後の1905年、16代目の三好源次郎が、日露戦争の戦勝記念として、『備前屋』の別邸の料理旅館として高台に建てたのが『琴平花壇』となります」
現在、敷地内には3つの客室棟と、当旅館の象徴とも呼ぶべき3つの離れである長生殿、泉亭、延寿閣の計6棟が立っている。とりわけこれらの離れは、多くの文人墨客が投宿したことで知られている。
中庭の全景。真ん中左が泉亭、右が延寿閣、<wbr />その奥に長生殿がある。
「延寿閣には文豪の森鴎外、泉亭には北原白秋、長生殿には高松宮殿下が宿泊されました。ほかにも、与謝野晶子・鉄幹夫妻、吉井勇、井伏鱒二らが宿泊なさっています。鴎外は陸軍の軍医総監をしていた時代のことですが、当館に三日間逗留されています。その時に詠んだ一首が、『松あおく もみじは赤に 琴平の 花壇に逢いし 人は忘れじ』です」
鴎外の小説『金毘羅』には、
<文学博士の小野翼君は、高松市で講演を済まして、一月十日に琴平まで来て、象頭山の入口にある琴平花壇に這入つた。>
と、冒頭で宿の描写が出てくる。
文化財的な価値のある3つの離れ
100年以上も前に建てられたこれらの離れの建築があまりにも素晴らしい。そして、三好源次郎が蒐集した美術品の数々がさらなる風格を添えている。
例えば長生殿の美術品だが……。
「三つの離れのうちでいちばん大きな長生殿は、茶室建築を取り入れた数寄屋造です。この離れだけは、源次郎が自身の出身地である多度津から移築したものなんです。入母屋造りの玄関を入ると、正面には琴塚英一のお軸、書院造りの客間の床の間には堀江頼直による『寒山拾得』の三副対、ほかにも多数の作品が飾られています」
「長生殿」の傘張り天井が残る浴室。
建築の細部も見事だ。
「浴室の天井は傘張り天井の様式ですが、空調の役割を果たす放射状になっています。漆塗りの床、お手洗いの天井は折り上げ格天井(ごうてんじょう)で、古い和式のトイレをあえてそのまま残しています。実際に使うシャワートイレは別室にあります。波打つガラス窓や照明も明治から大正にかけてのもので、いずれも今となっては稀少な設えです。こうした設えはとても風情があるのですが、壊れても直せないので、そこが悩ましいところでもあります」
こうした建築にはなかなかお目にかかれない。古材や旧設備に関しては、「残すもの」と「機能更新するもの」を選別していることがわかる。
「家屋の全体が歪んできて、ジャッキアップで歪みを補正したこともあるんですよ。言うならば、保存と改修のせめぎ合いです(苦笑)。とは言え、こうした建築は歴史的な文化財ですから、その価値はやはりこの宿の中核にあるものです。維持していくことの使命を感じています」
こうした古い日本建築を好むのは日本人ばかりかと思いきやさにあらず。
「欧米はもちろんですが、特にアジア圏の、台湾、香港、韓国の方々にも人気がございます。やはりインバウンド需要の増加は最も大きな変化です。従来は閑散期であった2月などでも、春節の時期を中心に高い稼働を維持できるようになってきています。また桜の時期である4月には海外顧客比率が4割に達しまして、年間を通じた稼働率の安定にとってインバウンドの影響を感じています。皆さん、インスタグラムなどをご覧になって、インターネットで直接にご予約いただくことが多いですね」
最も格式の高い離れ「長生殿」。数々の美術品が数寄屋造りの客室に風格を添える。
インターネット予約の普及は、新たなおもてなしの形をもたらしている。自室の露天風呂で温泉に浸かり、歴史ある庭園や琴平の町並みを眺めるひとときは、旅の大きな醍醐味だ。
「私どもの露天風呂付き客室13室は、一室一室が異なる個性を持っています。 最近は海外、特にアジア圏のお客様は非常に旅慣れていらっしゃって、事前にウェブサイトの写真を細部までチェックし、お好みの間取りを明確にイメージしてご予約くださいます。
だからこそ私どもも、ご期待を超える感動をお届けできるよう、事前のご要望を丁寧に汲み取り、最適なお部屋をご案内できるよう細心の配慮を重ねています」
臨床検査技師から旅館のお嫁に
琴平花壇は、1627年に表参道で創業した「備前屋」に端を発し、来年は400周年を迎える。女将がこの宿に来たのは結婚によってだった。
「私は生まれが北海道の帯広でして、地元の高校を卒業してから東京の医療系の専門学校で3年間学びました。卒業後はお茶の水の順天堂大学付属病院で臨床検査技師として、また、病理細胞検査士として勤務していました。細胞検査士とは、人体の細胞を顕微鏡で観察して悪性腫瘍かどうか確認していく仕事でした。
主人とは学生時代に知り合いまして、彼は旅館の長男でしたから、29歳で結婚してこちらに参りました。それから丸42年が経ちます。来た当初は学会に参加したり、また、県内の病院、検査センターからお誘いをいただいたりしましたが旅館との両立は難しく、旅館の仕事に専念することにしました」
旅館の仕事にはすんなり入り込めたのだろうか。
「旅館の仕事はやるつもりでお嫁に来ましたね。若かったし、真っ新(さら)でしたから、特に難しいとも思わずに飛び込んだ感じです。主人の両親は『備前屋』にいて、『琴平花壇』には主人の祖母がおりました。なので、女将の修行をやるというよりは裏方の事務の仕事をしていました。
旅館業のことが何も分からずにいましたので、お客様目線で旅館業を捉えられたのは良かったかもしれません。周囲をよく観察しながら、その都度、何が正解なのかを考えていきましたね。主人の祖母はもう高齢でしたし、私が裏方のせいもあって、あまり指導されるようなことはありませんでした。教えられたのは、『障子のサンを指で撫でて、ホコリのチェックをしなさい』と言われたことぐらいでしょうか(笑)」
「泉亭」の天蓋付きベッドの向こうで。窓外では庭の緑が映え、紅葉の季節は格段に美しいという。
歴史ある宿に訪れた、新たな転機
創業から長い歳月が流れる中、時代の変化に伴い難局に直面する時期もあった。
「地域に深く根ざしてきた琴平花壇だからこそ、伝統ある歴史をこれからも守り、未来へ繋いでいかなければならないという強い想いがございました。そうした中、ご縁に恵まれ、2007年にはホテルニューアワジグループの一員として、新たな歩みを始めることになりました。グループの木下社長は当時から本当に温かく伴走して支えてくださいました。何よりも『琴平花壇』という屋号をそのまま残してくださったことには感謝の念に堪えません。
これを契機に、それまでの歴史と伝統を何よりも大切に守りながら改装を行い、時代に求められる宿へと生まれ変わることとなりました。この新しい出発とあわせて、私は女将として本格的に旅館運営の表舞台に立つこととなりました」
2008年のグランドリニューアルでは何が変わったのか。
「私たちが大切にしてきた琴平花壇ならではの良さは残しながら、お客様が快適に過ごせるように新しく改装をいたしました。まず、宿の象徴でもある3棟の離れですが、その歴史ある建築と趣きはそのままに、今の時代に合う心地いいお部屋に生まれ変わっています。また、自慢の回遊式庭園を活かして客室を全面改装したほか、一部を日本庭園や琴平の町並み、そして遠くの阿讃山脈まで見渡せるゲストラウンジにいたしました。
温泉についても、琴平山の麓という立地を活かして、山の緑をすぐ近くに感じられる露天風呂を新しく作っています。ここから讃岐富士まで見渡せる素晴らしい景色を楽しんでいただいた後は、庭園にあるスパ棟で本格的なタイ古式マッサージやトリートメントをお受けいただけます。湯上がりの心地よさと極上のマッサージで心身共にリフレッシュし、旅の夜をゆっくり贅沢に楽しんでいただけたら嬉しいですね」
讃岐の旬が彩る前菜の一皿。これからはじまる美食への期待感が高まる。
食体験のアップデート
「ソフト面では、リニューアルを機にお料理が変わりました。それまでは宴席のように食べきれないほどの品数を最初にすべて並べるスタイルだったのですが、一番美味しい瞬間に召し上がっていただけるよう、温かいものは温かいうちに、冷たいものは冷たい状態で、厳選した品を一品ずつお出しする形に変えたのです。
主役となったのは、当時から『讃岐三畜』と呼ばれていた、讃岐平野で丹精に育てられる讃岐牛やコーチン、夢豚などですね。これらを軸に、自然豊かな瀬戸内海の新鮮な魚介や、地元の瑞々しいお野菜やお米など、地産の食材をふんだんに取り入れたコースをご用意しました。
それに伴ってお料理を丁寧にお客様へ説明するようになり、スタッフもおのずとサービスに熱心に取り組むようになりました。皆の意識が変わっていったことが何よりも大きな変化ですね」
その結果、顧客満足度も向上し、当然、インターネットでの口コミ評価も右肩上がりで、以前では難しかった若く意欲のある人材も集まるようになり、サービスの質は飛躍的に向上した。メインダイニング「けやき」での晩ご飯では、オリーブ牛を使った山菜鍋がとりわけ印象に残った。オリーブ牛はサシが少ないのに柔らかくてスッキリした味わいだ。肉がとても甘い。地元の讃岐米も甘味があって非常に美味しい。
「讃岐米というのはコシヒカリです。さらに山奥に入りますと、同じ讃岐米でももっと甘くなります。私どもは、山奥の米と平地の米をブレンドしてもらっています」
また関東の人間にとっては、いりこ出汁を使った赤出汁もじんわりと染みた。
格式高き「長生殿」の長い縁側にて。照明の一つ一つが古式ゆかしい。
地域連携で試みていることは……。
「当館の立地は、金刀比羅宮があってこそのものです。まさにそのお膝元です。
金刀比羅宮の大物主神は『海の守り神』として船会社関係者が毎年参拝に訪れますし、商売繁盛や万能の神として広く信仰を集めています。パワースポットとしても一般観光客にも人気が高いですね。やはり、785段の階段を登って御本宮まで行くのがいいです。上は空気が違いますね。
当館の裏道から山道を抜けますと、『四国こんぴら歌舞伎大芝居』が開催される旧金比羅大芝居金丸座まではダイレクトに行けます。この期間中は特に忙しくなります。ほかに当館の位置づけとしましては、ここを拠点にして、徳島県の祖谷(いや)渓谷や、瀬戸内国際芸術祭で賑わう直島や小豆島に向かうハブ地点としての役割も果たしています」
地域文化との連携はどうか。
「こんぴら観光まちづくり協会の一員として活動しています。
琴平町は江戸時代から盛んになったこんぴら参りと共に、地域の文化、商業、情報の中心として発展し、名所や旧跡、伝統芸能の歌舞伎、工芸、美術館、博物館などさまざまな文化、水辺などの自然環境にも恵まれています。このようなまち全体をミュージアムのように、文化、自然、食、歴史などの魅力を知り、楽しみ、親しんでいただくことを目的に活動しています。
旅館というものが『地域の文化の牽引役』を果たすという意味合いにおいては、当館と地域との連携はまだまだ不十分だと感じています。ちなみに、館内においては表参道にある伝統工芸の『一刀彫』の店が制作するオリジナルの達磨を館内に飾っておりますが。
今後はこんぴら観光まちづくり協会で発案している体験プログラムを実現させるように、会員として努力しながら、さらなる連携強化をしていければいいですね。旅館として地域に深く根差して、その土地の文化や魅力を発信する拠点としての役割をもっと果たしていければと考えております」
3階のガーデンラウンジにて。地元の一刀彫やガラス器も並ぶ。
三好りつ子(みよしりつこ)
北海道の帯広生まれ。地元の高校卒業後、東京の医療系専門学校で3年間学ぶ。順天堂大学付属病院で細胞診スクリーナーの臨床検査技師。「琴平花壇」の後継者と知り合い、29歳で結婚。以来、42年が経つ。本格的な女将業は2008年から。
構成/執筆:石橋俊澄
Toshizumi Ishibashi
「クレア・トラベラー」「クレア」の元編集長。現在、フリーのエディター兼ライターであり、Premium Japan編集部コントリビューティングエディターとして活動している。
photo by Toshiyuki Furuya
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世界が注目する日本の宿
2026.6.16
「ルレ・エ・シャトー」に加わった3つのデスティネーション
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世界65カ国以上に広がるホテル&レストラン協会「ルレ・エ・シャトー」。その厳しい審査基準をクリアし、新たに日本から3つの施設が名を連ねた。それぞれの個性を大切にしつつも、ルレ・エ・シャトーが誇るホスピタリティにおける価値観とビジョンを体現する3施設を紹介する。
北海道・函館「HOTEL 白林 HAKODATE」
「HOTEL 白林 HAKODATE」
「HOTEL 白林 HAKODATE」ウェルネススイートB
北海道の宿泊施設で初加盟したのが、函館港を見渡す幸坂に、100年以上も前に建てられた旧ロシア領事館を再生したスモール・ラグジュアリーホテル「HOTEL 白林 HAKODATE」。全6室オールスイートの館内には、北海道の山海の幸を味わえるダイニングやウェルネススペースも備えられ、函館港を望む景観とともに、静かなリトリートの時間を楽しめる。
静岡県・須走「強羅花壇 富士」
「強羅花壇 富士」
静岡県の富士山麓に位置し、39室のスイートと3棟の離れを備えるラグジュアリーリトリート「強羅花壇 富士」。こちらは、1948年創業の老舗高級旅館「強羅花壇」が培ってきたおもてなしの精神を継承しながら、富士山を正面に望むロケーションを最大限に生かした設計が特徴。懐石、割烹、鉄板焼き、鮨といった日本料理の魅力を堪能できるほか、富士山源泉の温泉も楽しめる。
大分県・由布院「ENOWA YUFUIN」
「ENOWA YUFUIN」ヒル・トップ・スカイ・パビリオン Room No.02
「ENOWA YUFUIN」インドアガーデン
由布岳を望む高台に佇む「ENOWA YUFUIN」は、自然・食・ウェルビーイングを軸にした滞在体験を提供するオーベルジュ。施設の中心となるレストラン「Jimgu」では、畑の土づくりや食材を育てることから始める“ファーム・ドリブン”をコンセプトに、野菜を主役とした料理を展開している。全室にプライベート温泉を備え、 由布院の自然と静寂に包まれながら心身を整える滞在が叶う。
函館、富士山、由布院──。それぞれの土地に根ざした自然や文化、食の魅力を大切にしながら、唯一無二の滞在体験を提供する3施設。世界が認めた日本のデスティネーションとして、今あらためて注目したい。
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「星野リゾート トマム」雲海シーズン到来
2026.6.15
北海道の絶景を望む「雲海テラス」がオープン
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北海道の大自然が織りなす幻想的な雲海を望む「星野リゾート トマム」の展望施設「雲海テラス」が、今シーズンの営業を開始。新たに来場者参加型イベント「Cloud Wish」が始動するほか、オリジナル商品や朝ヨガ体験など、ますます充実したコンテンツを展開している。
クラウドプール
クラウドバー
「雲海テラス」は、片道約13分のゴンドラでアクセスできる展望施設。2021年にリニューアルしたメインデッキに加え、雲の上にいるような浮遊感を味わえる「クラウドプール」や、空中散歩気分を楽しめる「クラウドウォーク」、バーカウンターをイメージした「クラウドバー」など、個性豊かな9つの展望スポットを巡りながら、雲海や雄大な自然を堪能できる。
クラウドウィッシュ
2005年の開業以来、多くの人々を魅了してきた雲海テラスは、2026年夏に累計来場者数200万人を突破する見込み。これを記念して、来場者参加型イベント「Cloud Wish」がスタートした。願いを書いたカプセルを雲型のオブジェに加えていくことで、ひとつの“雲”を完成させる企画だ。
さらに今シーズンから、雲をモチーフにしたオリジナル商品「雲キャンディ」が新登場。「雲海テラス」では、絶景を眺めながら参加できる無料のヨガプログラムも実施されている。
クラウドラウンド
今季より混雑緩和を目的とした事前予約制も導入され、北海道の雄大な自然が織りなす絶景を、これまで以上にゆったりと満喫できそうだ。
◆「雲海テラス」
【期間】営業中~2026年10月13日(火)
【料金 】大人2,500円、7~11歳1,600円、愛犬500円(いずれも税込)
*リゾナーレトマム、トマム ザ・タワー宿泊客は無料
【時間】5:00~8:00(上りゴンドラ最終乗車)、9:00(下りゴンドラ最終乗車)
【対象】宿泊、日帰り客
*営業時間は時期により異なります。
*天候や気象条件により、ゴンドラが運休となることがあります。
*融雪の状況により、一部の展望スポットを利用できない場合があります。
*愛犬との乗車の際はバギーまたはクレートの利用をお願いしています。
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京都「季の美ハウス」のポップアップバーが東京に初登場
2026.6.13
JWマリオット・ホテル東京にて10月下旬まで期間限定オープン
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京都産のジャパニーズクラフトジン「季の美」を味わいながら、ブランドホーム「季の美ハウス」の世界感を体験できるポップアップバー「季の美ルーム」が、高輪「JWマリオット・ホテル東京」の隠れ家的バー「4-0-3(フォー・オー・スリー)」にオープン。2026年10月下旬まで期間限定で展開中だ。
季の美は、京都産の柚子や玉露、山椒をはじめとする11種類のボタニカルを、それぞれの特性に応じて6つのエレメントに分類し、個別に蒸溜した後にブレンドして造られる、京都発のジャパニーズクラフトジン。
季のTEA マティーニ
期間中は、季の美の世界観が溢れる空間で、京都らしいボタニカルの味わいや季節感を活かした「季の美 京都ドライジン」「季のTEA 京都ドライジン」「季の美 勢 京都ドライジン」などを使った特別なカクテル数種類を、2ヶ月ごとにメニューを変えてラインナップする。
季の美 抹茶トニック
6月中は新茶の季節に合わせて、「季の美」のボタニカルの1つである”茶”をテーマにした3種のカクテルが登場。「季のTEA 京都ドライジン」と冷たい緑茶の香り溢れる「季のTEA マティーニ」、「季の美 京都ドライジン」に抹茶を合わせた香り高い「季の美 抹茶トニック」、「季の美 勢 京都ドライジン」に柚子の酸味とミルクのコクが調和した「季の美 勢 セイグローニ」 が楽しめる。
季の美 勢 セイグローニ
また、6月26日(金)には、季の美グローバルアンバサダーの佐久間“マーシー”雅志氏の限定セミナー&カクテルイベントも開催する。(セミナーは完全予約制)
あなたも大人の隠れ家で特別な一杯を楽しんでみてはいかが。
◆ポップアップバー「季の美ルーム」
【期間】2026年10月下旬まで
【場所】ポップアップバー「4-0-3」
東京都港区高輪2-21-2 JWマリオット・ホテル東京30階
【時間】17:00~23:00(L.O. 22:30)
※予約は下記、予約サイトを要確認
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JCCO
PREMIUM JAPAN AWARD
PREMIUM JAPAN AWARD 2026
2026.6.9
世界が注目する銘石「伊達冠石」を用いた「大蔵山スタジオ」の挑戦
「大蔵山スタジオ」を率いる山田能資(たかすけ)さんがデザインを手がけた、ローテーブル「KON PAC」。天板に用いられているのが「伊達冠石(だてかんむりいし)」。「大蔵山スタジオ」の活動を象徴するプロダクトのひとつである。
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「伊達冠石(だてかんむりいし)」。今、とある石が日本のみならず、欧米のアーティストやクリエーターの注目を集めている。この「伊達冠石」を100年以上前から、宮城県の最南端に位置する大蔵山を本拠地として採石してきた会社がある。現在の社名は「大蔵山スタジオ」。日本の風土が育んだ石の価値を世界へ発信する取り組みが高く評価され、「PREMIUM JAPAN AWARD 2026」を受賞した。柔らかな雨が新緑を優しく濡らす5月、単なる採石会社の域を超えた先鋭的な活動を親子2代にわたって続けている「大蔵山スタジオ」を訪れた。
目の前に広がる、不思議な景色。押し寄せるエネルギー
不思議な景色が目の前に広がっている。雨に濡れた緑の草原に、黒褐色の塊が無数に転がっている。鋭利な刃物で削いだかのような断面が、やはり雨に濡れ鈍く光っている。静かだ。しかし、個々の塊が発する圧倒的なまでの存在感と、ひとつとして同じ形のない造形美が、強大なエネルギーとなって押し寄せてくる。気圧(けお)され、言葉を失う。この塊は岩と言えばよいのだろうか、それとも石と呼ぶべきか。ただ立ちすくみ、そんな埒(らち)もないことを考えていた。
大蔵山の山腹に出現する、不思議な光景。黒褐色の塊はどれも「伊達冠石」。その数は無数だ。
ひとつとして同じ形のない「伊達冠石」。2000万年という途方もない時間をかけて地球がもたらした、唯一無二の造形美を宿す。
2000万年以上前の火山活動による地殻変動で形成
東北新幹線白石蔵王駅から車でおよそ20分。人家も疎らになった細い山道を上がると、この光景が出現する。地名は宮城県伊具郡丸森町、標高300mほどの山の名は大蔵山。山腹に転がる無数の石塊は、地質学的な分類では「安山岩」に属するが、ここ大蔵山で産出されるものに限り、「伊達冠石(だてかんむりいし)」と命名されている。名前には理由がある。世界でも唯一という、特異な性質を持っているからだ。「大蔵山スタジオ」を率いる山田能資(たかすけ)さんは、その特異さを次のように語る。
「2000万年以上前の火山活動による地殻変動で『伊達冠石』は形成されました。形成以来、鉄分を多く含んだ泥土に何百万年もの間埋まっていたため、土っぽく丸みを帯びた石や、焼物のような石など、多様な表情を持っています。ところが切削して磨き上げると、黒檀のような深い黒褐色の極めて滑らかな断面となります。また、鉄分を多く含んでいるので、年月を経るに従い、やがて味わい深い鉄錆色へと変化していきます。安山岩は地球上で最も多い岩石ですが、こうした特質をもっているのは、世界中でも大蔵山で採れる『伊達冠石』だけです」
「大蔵山を訪れたアーティストや音楽家の姿を幼いころから見てきました。それが大きな刺激を与えてくれたのだと思います」と、「大蔵山スタジオ」代表取締役の山田能資さん。
「山田採石計画株式会社」から「大蔵山スタジオ」へ
地表から10メートルほど掘り下げると姿を見せる石は、表面が黄色い泥のような土に覆われていたことから、地元では「泥かぶり」と呼ばれていた。その石を「伊達冠石」と命名したのは山田さんの父、山田政博さんだ。また、4代目として政博さんが営んでいた「山田採石計画株式会社」を「大蔵山スタジオ」へと名称変更したのが、5代目の能資さんである。能資さんによると、初代は明治期に兵庫から移り住み、仙台でのいくつかの橋脚工事に関わり、大蔵山で採掘を始めたのは晩年だったそうだ。当時、「伊達冠石」はその特質を見出されることもなく、土石の崩壊を防ぐ「土留め(どどめ)」用の建材等に用いられることが専らだった。
「祖父の代には、太平洋戦争で多くの方が亡くなったこともあり、墓石の需要が国中に広まりました。祖父は全国に何か所も採石場を抱えるだけでなく、海外からも積極的に石材を輸入し、原石販売のほか、自社加工した墓石を製造、販売していました。父が事業を引き継いだ1980年代になると、バブル景気も後押しし、彫刻や公共工事の依頼も増えたため、一時期はモニュメントだけを制作する会社として運営。しかし、景気の落ち込みと共に、モニュメントの制作依頼も減少したため、父は改めて墓石中心の業態に戻していました」
「山に命を還す」。4代目が抱いた信念。
1970年代になると、長年の採掘が続いた大蔵山の採石現場は、他の大半の採石場がそうであるように、山肌が削られ荒涼とした姿を曝け出していた。特異な性質を持つ石が採れるということを除けば、大蔵山は日本各地に点在する採石現場と変わりのない、殺伐とした様相を呈していたかもしれない。しかし、政博さんが抱いた信念がそれを変えた。
その信念とは「山に命を還す」。この信念に基づき、採掘が終わった場所に土を戻し植樹をすることで、大蔵山は豊かな緑に覆われた里山へと姿を変えていく。政博さんの信念を支えたのは、政博さん自身の気質に加え、1970年代初頭から「伊達冠石」の魅力に魅せられて大蔵山に足を運び、作品を制作したイサム・ノグチをはじめとする数多くのアーティストと山田家との交流によるところも大きかった。80年代、政博さんは大蔵山の文化的再生に多くの時間を費やした。「持続可能」「サステナブル」という言葉など、まだ誰も口にしていなかった頃のことだった。
1980年代後半、様々な作家が大蔵山に集い、「大蔵山ランドスケープキャンプ」が発足。旧採石場の再生と活用について連日議論が交わされた。こうした情熱的な活動の結果は現在、「石舞台」や「山堂サロン」として大蔵山の敷地に佇んでいる。
「およそ50ヘクタールくらい。東京ディズニーランドがすっぽり入るくらいの広さです」
車のハンドルを握り、大蔵山に設けられた山道を走らせながら、能資さんはこともなげに言う。しかも「父までの代で十分に掘り出しましたから、私はこれ以上採石するつもりはありません」とも。冒頭で紹介した景色は、先代までが掘り出した「伊達冠石」のストック兼ディスプレイの場だった。「転がっている」のではなく「転がしてある」といった方が正しいのかもしれない。
掘り出された「伊達冠石」が置かれている場所の近くに、「伊達冠石」がむき出しとなっている崖がある。幾筋にも入った亀裂。自然崩壊したのか、崖下に積み重なる大小さまざまな形状の瓦礫。黄土色から茶褐色へのグラデーション。「伊達冠石」が、何万年にもわたり地中でどのように眠っていたかがよくわかる。そしてこの崖も、圧倒的な存在感で迫ってくる。
冷却が進み、そのまま柱状となった岩盤。多種多様な形状に加え、海水が染み込み酸化。まるで焼物のような表情を持った石が多く産出する。
「伊達冠石」を媒介とした、広大な屋外ミュージアム
前述したように、「大蔵山スタジオ」と名称を変えたのは能資さんだ。今から7年前のことである。このネーミングは能資さんの現在の活動を端的に表している。なぜならば、緑に覆われた広大な大蔵山は、「伊達冠石」を媒介とした屋外ミュージアムでもあり、実験ラボのようでもあるからだ。そこには、ユニークな構造の本社社屋をはじめ、英国のストーンヘンジを思わせる、「石舞台」と名付けられた屋外ステージ、ラトビア共和国の自然思想と日本の五輪思想を合体させたモニュメントなど、「伊達冠石テーマパーク」と言っても過言でないほどの“施設”が点在する。その大半は、父である政博さんが作り上げたものだが、それらを拠点として、能資さんはさまざまな活動を試みている。
ドアハンドルや洗面台など「大蔵山スタジオ」のプロダクトのディスプレイも兼ねた本社社屋。柱のない斬新な構造の建物を手掛けたのは、宮城県在住の建築家、小田島正仁氏。
日本の石彫家3名に加え、ラトビア共和国やオーストリアの作家が共同で作り上げたモニュメント。ラトビアの自然崇拝と、「地・水・火・風・空」から万物が生じるという「五輪思想」を合体させた、「大蔵山スタジオ」のシンボル的な存在。
「石舞台」と名付けられた、英国のストーン・ヘンジを思わせるステージ。この場で、アーティストによるパフォーマンスが開催されたことも。
屹立する巨大な石柱。かつて人類が抱いていた原始の感情が蘇る
そのひとつが「山堂サロン」と称される建物だ。厚い土壁が囲う三角屋根の木造建築に一歩足を踏み入れる。目に飛び込んでくるのは、そそり立つ石の柱。これも「伊達冠石」であり、「柱状節理」と呼ばれる状態で掘り出された、極めて珍しい形状だそうだ。高さは4メートル以上。「屹立」という言葉がふさわしいこの「伊達冠石」を前に、誰もがひれ伏し、頭を垂れる。
「宗教というものが発生するそれ以前のはるか昔に、人類が抱いていたであろう、自然に対する崇拝と畏怖にも似た感覚。現在の人々が忘れてしまったこの感覚を呼び戻すことができる場所、『大蔵山スタジオ』をそんな場所にできたら」と思います。そう語る能資さんは、「山堂サロン」や「石舞台」などをアーティストに提供し、「GALLERY LOCI」としてライブパフォーマンスを実施してきた。また、「山堂サロン」や隣接して建つ「ゲストハウス」などを利用し、地元のシェフによる食イベントなどの構想もある。「伊達冠石」を随所に配した茶庭を持つ茶室も建設途中だ。
「自然に対する崇拝と畏怖を感じる場所であると同時に、この大蔵山からアートをキーワードにした文化を世界に発信していきたいと思います」
「山堂サロン」に足を踏み入れる。この巨大な石柱を目にした途端、畏怖感に貫かれ、思わず頭を垂れる。この「山堂サロン」の設計も、小田島正仁氏。
建設途中の茶庭。禅寺の枯山水の石庭にも似た趣。何年か後には、この庭の一画に茶室が誕生する。
大蔵山の一画には、工房も設けられている。人工ダイヤモンドを先端に付けたブレードが高速で回転し、「伊達冠石」を切断していく。工房で働くスタッフは7名。石を知り尽くした職人ばかりだ。
ロンドンの美術大学で学んだグラフィック
能資さん自身、アートの道を歩んできた。
「もともと絵画が好きで、大学時代は美術部に属していました。幸運にも個展まで開催する機会があり、その個展で私の作品を観た方が、イギリスかアメリカへ行った方がよい、とアドバイスしてくださったのです。それに勇気づけられ、卒業後はイギリスへ渡り、ロンドンの美術大学でグラフィックを学びました」
2008年に帰国後、5代目として家業を継いだ能資さんは社名を変えるとともに、大きな方向転換を試みた。「伊達冠石」の特質を設計事務所やプロダクトデザイナーに提案し、建材や作品素材として使用することを積極的に働きかかけたのである。
「父は大蔵山の再生に熱心でしたが、事業の中心はあくまでも墓石。それを方向転換したのですから、当初は売り上げも下がり苦労しました」
しかし、熱心な働きかけが功を奏し、次第に設計事務所からのオーダーが増えてきた。「伊達冠石」の複雑な表情が、ホテルやレストランなどの商業建築に際立った個性を発揮することに建築家たちが気が付きはじめたのだ。
また、信用を積み重ねたアーティストとの協業も増えていった。アーティストと関わる場合、能資さんが心がけていることがある。それは、単に素材として「伊達冠石」を提供するのではなく、作品がどのようなコンセプトを持ち、どのように扱われるかを、あらかじめ把握しておくということだ。そのため、協業する前段階で、表現の支柱となるコンセプトをしっかりと読み解き、「大蔵山スタジオ」が大切にしている物語と、作品のコンセプトが合致しているのかを注視する。
設計事務所の依頼のなかには、コンセプトから表現まで「大蔵山スタジオ」に一任するケースも多い。その場合はプランの早い段階からきちんと関わっていく。そのときは、プロジェクトの基本的な概念と方向性のみならず、周囲の環境、文化などもリサーチし、まずはコンセプトを立てる。そしてコンセプトから浮かびあがる造形を能資さんがスケッチし、自社工房にて「伊達冠石」を用いて造形を施す、というプロセスを辿る。また、現場での施工までをも一括で請け負う。
海外からモニュメントのオーダーを受け、能資さんが描いたデザインスケッチ。施主の大まかな意向だけをヒアリングし、実際の形状は山田さんが考案することも多い。英国で学んだ、コンセプトから造形を見出す思考が活かされている。
2023年、パリ16区に開業した「BLANC」。ミシュラン2つ星を有する佐藤伸一氏が率いるレストランの入り口に、井戸茶碗のような表情と、手磨きによる艶やかな表情が融合した「伊達冠石」のオブジェが設置された。
本社に展示された洗面台。ひとつひとつの石に潜む異なる表情の妙。ラグジュアリーホテルからのオーダーが多い。洗面台の上に掛かるのは、「伊達冠石」の表情を味わうウォールアート。
中央部分は栗材などを使い、上下に「伊達冠石」を用いたドアハンドルの数々。その重厚感が、エントランスを引き立てる。
香立てのほか、ランプシェード、小皿などの生活周りの小物も制作。また、原点ともいえる石塔事業も継続し、モダンなデザインの墓石なども手掛けている。
「伊達冠石」が内包する、「移ろいゆく美」
「大蔵山スタジオ」は、ドアハンドルや洗面台、バスタブ、テーブルなど、多様なプロダクトも手がけている。能資さんの美意識が息づくこれらの製品は、いまや世界的に注目を集め、海外での施工例も増えている。黒く艶を放つ鋭い断面と、黄土色から茶褐色へと移ろう複雑な色合いをたたえた表面。その取り合わせは、「伊達冠石」独特の造形美と相まって、きわめてモダンな印象を生む。
と同時に、茶の湯の「侘び寂び」にも通じる、日本ならではの美意識も確実に感じさせる。おそらくそれは、途方もない時間の流れの中で育まれた「伊達冠石」が、移ろいゆくものの美しさを宿しているからなのだろう。「伊達冠石」の経年変化を実感するのは、難しいかもしれない。しかし、石は悠久の時間のなかで確実に変化を遂げ、新たな美しさを浮かび上がらせてくる。それは、紛れもなく「移ろいゆく美」であり、日本人が大切にしてきた美意識そのものである。海外のアーティストが「伊達冠石」に関心を寄せるのも、この日本ならではの美を敏感に感じ取っているからに違いない。
柔らかな緑に包まれた大蔵山は、傾斜も比較的ゆるやかで、小学生の遠足にぴったりの丘陵公園のような趣がある。その地下10メートルに、世界に知られる銘石が眠っているとは、とても想像できない。親子2代が石に誠実に向き合い、時に対峙したことで、大きく発展し、今なお進化を続ける「大蔵山スタジオ」。東北の里山に、世界が熱い視線を注いでいる。
*「大蔵山スタジオ」の入場は、業務上の関係者のみ、予約の上での来山可となっている。
Photos by Kayo Takashima
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JCCO
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関連記事
投稿 世界が注目する銘石「伊達冠石」を用いた「大蔵山スタジオ」の挑戦 は Premium Japan に最初に表示されました。
Features
「星のや富士」初夏の森を満喫する、特別なグランピング体験
2026.6.5
緑輝く森で、木漏れ日や涼風を感じる滞在を
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河口湖を望むグランピングリゾート「星のや富士」が、2026年7月31日(金)までの期間限定プラン「初夏の森グランピング滞在」を提供。生命力あふれる森を舞台に、スイーツやビアタイム、散策など、自然の心地よさを味わうプログラムが用意される。
標高840~940mの丘陵地に位置する「星のや富士」では、初夏になると針葉樹の深い緑と広葉樹の若葉や新芽が入り混じり、美しい緑のグラデーションが広がる。標高の高さゆえ朝晩には爽やかな風が吹き抜け、ゆったりとした時間を過ごすのに最適な季節を迎える。
多種多様なフルーツスイーツを味わえる「森のスイーツフェスタ」
「初夏の森グランピング滞在」で楽しめるのが、木漏れ日が揺れるクラウドテラスでスイーツとドリンクを味わう「森のスイーツフェスタ」。江戸時代から伝わる山梨の果物「甲州八珍果」を用いた8種の小菓子を、すっきりとした水出しアイスティーとともに堪能できる。
「初夏の森 ディスカバーウォーク」は9:30集合、9:50分集合の2回開催
朝には、グランピングマスターとともに散策路を歩く「初夏の森 ディスカバーウォーク」を実施。朝露をたたえた若葉やリスの痕跡、ハルゼミの鳴き声など、初夏の森で小さな発見を楽しみながら、心地よく体を動かせる。
17:30〜19:00に開催される「夕涼みビアデッキ」
夕暮れ時には、クラウドテラスに「夕涼みビアデッキ」が登場。完熟桃に辛口生姜を合わせたビアカクテル「桃ジンジャーシロップ」を片手に、リラックスチェアに身を委ねる時間は格別だ。ノンアルコールカクテルも用意されているので、誰でも気軽に楽しめる。
「森の珈琲店」では、期間限定でピザトーストやカカオボウル(各1,452円 税・サービス料込)も楽しめる
※「森の絵葉書づくり」イメージ
さらに、焚き火で淹れた深煎り珈琲とともに朝食を楽しむ「森の珈琲店」や、自然の移ろいを絵や言葉で表現する「森の絵葉書づくり」など、自然と向き合う体験も充実。
木漏れ日、涼風、果実の恵み、そして森の静けさ。初夏だけの豊かな自然に包まれながら、日常を離れるひとときを過ごしてみてはいかがだろうか。
◆星のや富士「初夏の森グランピング滞在」
【期間】開催中〜2026年7月31日(金)
【対象】宿泊者
※天候や仕入れ状況により、提供内容や食材が一部変更になる場合があります 。
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投稿 緑輝く森で、木漏れ日や涼風を感じる滞在を は Premium Japan に最初に表示されました。
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日本のプレミアムなホテル
2026.6.2
伊豆・赤沢温泉「赤沢迎賓館」で味わう、静寂のウェルネス滞在
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伊豆高原の海沿い、約25万平米もの広大な敷地に広がる「プレジャーリゾート 伊豆赤沢温泉」。温泉、スパ、グランピング、アクティビティ施設など、多彩な滞在体験が揃うこのリゾートは、近年大規模なリニューアルを実施し、新たな“滞在型リゾート”として進化を遂げている。
2026年4月には、関東最大級となるグランピング施設「GRAX EARTH FIELD(グラックス アースフィールド)」と、全天候型アミューズメント施設「PLEASURE ARENA(プレジャーアリーナ)」が新たに開業。大人が静かに過ごすウェルネス滞在から、家族で楽しむアクティビティ滞在まで、多様な過ごし方ができる大型複合リゾートとして注目を集めている。
運営するのは、料亭や「つるとんたん」などでも知られるカトープレジャーグループ。京都・るり渓温泉や長崎「i+Land nagasaki」など、全国でレジャー&リゾート事業を展開する同グループならではの、“遊び”と“癒し”を融合した世界観がここにも息づいている。
全天候型アミューズメント施設「PLEASURE ARENA(プレジャーアリーナ)」のネット遊具。
最も静かで上質な時間が流れている滞在施設が「赤沢迎賓館」
2009年に開業した赤沢迎賓館は、2025年にリニューアルを実施。美しい数寄屋づくりの建築はそのままに、より快適な滞在へと誘う宿へとアップグレードした
赤沢迎賓館の最大の特徴は、約3,500坪の敷地に対して、客室数を15室に限定していることだ。
近年のラグジュアリーホテルが大型化へ向かう中で、迎賓館はむしろ逆方向へ振り切っている。稼働率を最大化するのではなく、“静けさ”そのものを価値化しているのである。
美しい日本の数寄屋造りの建物に広大な日本庭園にはまず圧倒され、ロビーに入れば、漆や西陣織を用いた意匠が配された其処ここに配され、日本の伝統文化を感じられる心地よさに包まれる。建物の中心には中庭があり、それを囲むようにある廊下を進むことで、自然と季節の移ろいを感じることができるのだ。そして館内では、人と人が過剰に交差しないように緩やかに施設が分散されており、滞在中に他の宿泊客と顔を合わせる機会は極端に少ないのだ。
客室はスタンダードタイプでも約70㎡。全室に海洋深層水を使った露天風呂が備わり、「離れ 特別室」にはサウナも設置されている。
赤沢プレジャーエリアの中でも、迎賓館は特に“和の静けさ”が際立つ場所だ。館内には余白が多く、時間がゆっくり流れている。読書をしたり、庭を眺めたり、湯に浸かったり——何かを“する”というより、“整う”ための場所として存在している。
室内から美しい庭園へと広がっていく、「露天風呂付き 和室」。
「赤沢迎賓館」の大浴場。
海洋深層水が導く、心と身体のウェルネス
プレジャーリゾート伊豆赤沢温泉の魅力を語る上で欠かせないのが、“海洋深層水”を活かしたウェルネス体験だ。
敷地内には海洋深層水の専用工場があり、水深約800メートルの深海から汲み上げた海洋深層水を、館内のさまざまなシーンで使用している。
太陽光の届かない深海で長い年月をかけて育まれた海洋深層水は、ミネラルバランスに優れ、肌あたりがやわらかいのが特徴。身体を芯から温め、保湿効果やリラックス効果も期待されている。
客室露天風呂や大浴場、料理、飲料水など、あらゆるシーンで海洋深層水の恵みを体験できるのは赤沢迎賓館のみだ。
客室風呂には5%、大浴場には3%という異なる濃度で海洋深層水を使用しており、それぞれ異なる入浴感を楽しめるのも特徴だ。
施設内には海洋深層水のミネラルウォーターが用意されている。
飲む、食べる、浸かるというすべての体験を海洋深層水でつなぐことで、滞在そのものをウェルネスとして設計している。
より開放感のある「離れ 特別室」。
地元食材を活かした、身体に寄り添う料理
食事もまた、この宿の大きな魅力のひとつだ。
ダイニングは基本的に全室個室仕様。周囲を気にせず、静かな時間の中で中庭を眺めながら料理を味わうことができる。
こちらの料理は伊豆近海の魚介や地元野菜などを中心として、派手さよりも素材本来の味わいを大切にした、大変優しい味わいである。日本料理では、料理人の方々の手仕事の丁寧さが味を作り上げていくものだが、こちらの料理はまさにその極みと言える。夕食はもちろん、朝食にもその心配りが感じることができる。まさに大満足な料理と言える。
中庭に面したレストランは、全て個室になっている。
旬の味わいが美しく盛り詰められた、先付。
ゆっくりと身体を目覚めさせてくれるような、朝食。
滞在を豊かにする「赤沢スパ」と「DEEP SEA LOUNGE(ディープシーラウンジ)」
迎賓館での滞在をさらに豊かにしてくれるのが、隣接する「海洋深層水 赤沢スパ」だ。海のミネラルが豊富な海洋深層水を使った露天風呂、内湯、寝湯、ジャグジー、ミストサウナ、ドライサウナ、水風呂,プライベートサウナなど、多彩な温浴施設が揃っている。
太古の水である海洋深層水は細胞に働きかけ、美肌とむくみ改善へと導いてくれる。海洋療法で心と身体を整えることに特化した施設になっている。さらにトリートメントやリラクゼーションメニューも充実しており、迎賓館の“静の滞在”を、より深く身体で感じるためのウェルネス空間として機能している。
全て水着を着用する必要があるが、施設でレンタルすることができるので安心。
赤沢スパの外観。
海洋深層水のスチームを浴びることができる「タラソハマム」。
タラソプールではゆっくりと歩いている運動をしている姿も多く見られる。
また、その奥にある施設「DEEP SEA LOUNGE(ディープシーラウンジ)」は、大人のための遊び場のような存在だ。
館内にはビリヤードなどが用意され、フリードリンクやアルコールも楽しめる。温浴後にゆっくりお酒を飲みながら過ごしたり、仲間同士で語り合ったりと、時間を忘れてくつろげる空間となっている。
さらに、地元の人々にも親しまれているのは「赤沢ボウル」。地域の日常と観光が自然に混ざり合っているのも、このリゾートならではの魅力だ。
「DEEP SEA LOUNGE」はチェックイン前後も利用可能。
三世代で楽しめる、広大なプレジャーリゾート
広大なプレジャーリゾート伊豆赤沢温泉についても紹介しておこう。ここは大きく4つのエリアに分けて構成されている。
「赤沢迎賓館」、「海洋深層水 赤沢スパ」、大人向けラウンジ「DEEP SEA LOUNGE」、そして地元の人々でも賑わう「赤沢ボウル」などが集まっている「DEEP C AREA(ディープシーエリア)」。
二つ目は、2026年に開業した全天候型アミューズメント施設「プレジャーアリーナ」を中心としたエリアで、巨大ボールプールやエアアスレチックなどを備え、子どもから大人まで身体を動かして楽しめる「LEISURE AREA(レジャー エリア)」。
子供たちが夢中になって遊ぶ、「エアアスレチック」。全長約50mの周遊アスレチックには約8種類の仕掛けがある。
三つ目は、グランピング施設「GRAX EARTH FIELD(グラックス アースフィールド)」の他、GRAX宿泊施設者限定で利用ができる「GRAX LOUNGE(グラックス ラウンジ)」「GRAX CENTER(グラックス センター)、さらにはリーズナブルな宿泊施設「RED28 HOTEL(レッド28 ホテル)」のある「GRAX AREA(グラックスエリア)」。
各棟にはシャワーブースやダイニングスペースがあり、1棟につき1台のカートも設置されている。
そして四つ目が、「赤沢温泉ホテル」や「日帰り温泉館」がある「ONSEN AREA(温泉エリア)」。日帰り温泉は絶景温泉として高い評価を得ていると聞くが、施設内の広い休憩エリアもまた魅力的である。たくさんある個室ブースは、一日のんびり過ごしたくなる空間である。
海を見渡す「赤沢温泉ホテル」。
日帰り温泉の露天風呂。
日帰り温泉の「海のねころびラウンジ」。
広大な敷地内はカートや巡回バスで移動できるため、各エリアを散策感覚で回遊できるのも魅力。それぞれが自分に合った過ごし方を選びながら、一つのリゾート全体を自由に楽しめる構成になっている。
たとえば、祖父母は迎賓館で静かに過ごし、子ども世帯はグランピングに宿泊。日中はラウンジやプレジャーアリーナで合流するといった、三世代での滞在も自然に成立する。
宿泊スタイルが異なっていても、一つのリゾートの中でそれぞれが心地よく過ごせる。その自由度の高さも、この場所の大きな魅力となっている。
“楽しむ”“安らぐ”そんな一見相反する滞在がひと所で体験できるのが「プレジャーリゾート 伊豆赤沢温泉」の魅力である。
中でも、赤沢迎賓館は、“大人のための静かな贅沢”を体感できる特別な空間。
伊豆という地に誕生した新しいリゾートは、一度は訪れる価値がある。
静岡県伊東市赤沢字浮山163-1
Text by Yuko Taniguchi
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日本のプレミアムなホテル
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「ザ・プリンスギャラリー 東京紀尾井町」クラブフロア特典を拡充
2026.6.2
“日本を旅する”朝食で、より豊かな滞在を
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東京・紀尾井町のラグジュアリーホテル「ザ・プリンスギャラリー 東京紀尾井町」が、スイート、グランドデラックス、クラブフロア宿泊者向けの特典をアップグレード。より上質で心満たされる滞在体験を提案する。
新たに加わるのは、“日本を旅する”をテーマにした特別な朝食と、専用ウェルカムアメニティ。
朝食の会場は、窓一面に東京の街並みが広がる35階の「WASHOKU 蒼天 SOUTEN」。
※写真はイメージです。
※写真はイメージです。
日本列島10エリアから選りすぐった郷土料理に加え、手巻き寿司を楽しめる和朝食、さらに日本各地の厳選素材を取り入れた洋朝食が並び、絶景を眺めながら好きなものを堪能できる。
ウェルカムアメニティ イメージ
また、新たに用意されるウェルカムアメニティに加え、SPA & FITNESS KIOIのプール・フィットネスジムのほか、温浴施設も無料で利用可能。シューシャインサービスや専用ミーティングルーム利用などのサービスも引き続き提供される。
クラブラウンジ イメージ
近年、ホテルを旅の目的地として楽しむ滞在スタイルが広がるなか、日本各地を巡るような食体験や、絶景に身を委ねながら疲れを癒せるSPA体験など、滞在を豊かに彩るプログラムを用意。東京の空を望む特別な空間で、より優雅な時間を過ごしてみてはいかがだろうか。
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旅館の矜持 THE RYOKAN COLLECTIONの世界
2026.5.27
ホテルの稼働によって里海と里山の再生させる 「COVA KAKUDA」覚田譲治社長が描く壮大な未来図
入り江のロケーションは唯一無二。レストラン棟にかかる桟橋に立つ覚田譲治社長。
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「ザ・リョカンコレクション」に加盟する旅館の女将や支配人を紹介する連載「旅館の矜持」。今回は三重県の伊勢志摩に位置する「COVA KAKUDA(コーバ カクダ)」の覚田譲治社長を紹介する。
自然と一体化できる唯一無二のホテル
三重県・伊勢志摩国立公園、英虞湾の静かな静かな一つの入り江の畔(ほとり)に、そのホテル「COVA KAKUDA」はある。近鉄賢島駅からは車で30分ほどの距離である。開業して今年の6月で3周年を迎える。4万平米という広大な敷地の中に、10棟を超えない建物が佇んでいる。
レセプション棟、レストラン棟、サウナ棟、そしてゲストルームであるヴィラが4棟。北西風が強くなる冬季には、波のしぶきがレストラン棟の大きな窓を叩く。いちばん低位置にあるヴィラは、デッキテラスに出れば水面に手が届きそうなほど海に近い。 海は平水面なので、じつに穏やかだ。
レストラン棟を中心にして、目の前は静寂な入り江で、その両側には樹木が生い茂る小山が迫っている。ソファに腰かけて入り江を眺めていると、時折、小船が遠くを通り過ぎていく。時が経つのを忘れる。
これほど自然と一体化できて、心が和むロケーションがあるだろうか。至高の贅沢――これこそが真の意味でのラグジュアリーというものなのだろう。里海と里山を眼前と両脇に抱えたホテルは、まさに唯一無二と言える。
「COVA KAKUDA」オーナーの覚田譲治・代表取締役社長に話を聞いた。
海に最も近いヴィラのデッキテラス。海面には手が届きそうだ。
里海と里山がクロスする絶好のロケーション
ホテル名「COVA KAKUDA(コーバ カクダ)」は、何語なのか? その由来は?
「もともとの家業は真珠養殖と真珠の加工でして、私はその三代目となります。英虞湾は真珠養殖の発祥の地で、その全盛期は1950~60年代でした。現在のホテルが立つ場所に、真珠養殖場の陸上施設が点在していました。工場のことを昔は『コーバ』と呼んでいましたよね。ホテル名の『COVA』とはそのコーバのことです。『KAKUDA』はこの宿を経営する覚田真珠株式会社の覚田です」
覚田真珠は真珠業界では老舗企業の一つとして知られる。
「最盛期には120名ほどの従業員がこの工場で働いていました。1970年までは工場として稼働していたのですが、養殖業者が真珠をたくさん作りすぎたために価値が暴落することなどがあって、三重県内での養殖業者の減少とともに、その後はまったく使われなくなったのです。そんな中で、親たちと週末にそこに泊まったり、私の学生時代には部活の夏のトレーニングの場所としてそこを使ったりしていました。
それに、私の祖母は海女だったんです。子どもの頃は、サザエやアワビを一緒に獲ったりしましたし、5月から夏の季節にはキスがよく釣れるんです。それを母親が天ぷらにしてくれたりしまして、この界隈の海の面白さはよく理解していたんですね。
ですから、お客さんが来た時には、こういう遊びをすると楽しいし、こんな風にもてなしたら面白いだろうなということはアイデアとして沢山蓄積されていました。そんな妄想をたくましくしていたのが、ちょうど今から10年前の頃です。そしてコロナの頃には国から事業再構築補助金が出ることになって、それを一部に使って自分の資金も出しながら、妄想が実際の形になっていきました」
自然と一体化するような感覚
10年前とは2016年にG7サミットが伊勢志摩で開催された年だ。
「あの時、首脳のみなさんのスーツに着けていただく真珠の『ラペルピン』を我々で作りました。使用する真珠は、美しいものを集めてコンペをして選びました。その時よくよく考えたのは、このラペルピンを通じて私たちは何を伝えたいのだろうということです。真珠が美しいという要素だけではなくて、その真珠が生み出される背後にある‶里海の営み″を伝えることこそが大事なのではないかと思い至ったのです。
つまり、人が自然に働きかけるからこそ、自然が豊かになっていく営みがあるということです。それをお伝えするには、都会からこの土地に来てもらったとしても、日帰りではとても伝え切れません。やはり宿泊機能がないとダメだと痛感しました。そこで、有休不動産があり、使っていない建物がたくさんあるのなら、それをリノベーションして宿泊施設にすればいいという結論に至りました」
工場をリノベーションした室内、基調となるアースカラーが目に優しい。
元は工場だった建物は、骨組みや梁はそのままだ。
「自然にできる限り負荷をかけないようにして、リノベーションを施しました」
改装された室内は、尾鷲ヒノキや白壁といった自然な色合いを持ち、実にコージーだ。しかも、家具や一つ一つの小物にいたるまで実に趣味が良い。ゆえに、ゲストルームやダイニングにいても、この土地の空気に体がなじんでいく。周囲の自然と一体化するような感覚におちいるのである。
ヒノキや白壁を基調にしたゲストルームの居心地の良さは抜群だ。
ホテルとして地域にどんな貢献ができるか
覚田氏が考えるのは、自社の経済活動だけではない。
「私は車で50分ほど離れた伊勢市内に住んでいるのですが、半島の先である奥志摩に来るたびに、この土地がどんどん寂れていく現実を目にするわけです。都会の人がここに来て働きたいと思うような仕事があれば、限界集落化を遅らせることもできるのではないか、そう考えました。
さらに真珠の養殖業もそうですが、海苔や魚をなりわいにしている漁業従事者に、ここで観光業を営むことによって少しでも貢献できるのではないかとも考えました。この場所でホテルをやることに、二重にも三重にも意味を見出したことが、ちょっと難しそうだけれども、COVA KAKUDAをやってみようと思った理由ですね」
意味はそれだけではない。
「里山」はよく耳にする言葉だが、ここには「里海」もある。真珠をはじめ、豊かな恵みをもたらすのは確かに里海だ。問題はこの里海が危機に瀕していることにある。
「リアス式海岸は海底から隆起して出来上がった台地ですから、山の尾根がぜんぶ平べったい畑です。昔はそこで農業を営んでいたのです。肥溜めを作って農業をしていた。雨が降れば、その栄養素は海に流れ込む。すると、豊かな海が出来て、海藻が育ち、魚は群れ、緋扇貝(ひおうぎがい)や牡蠣も育ち、真珠のアコヤ貝も育ちました。
海苔や真珠養殖や食用の貝類養殖に携わる漁民が、貝や用具に付着する汚れを掃除して出たカス、それと収穫したもののうちで食べられない部分を、落ち葉に混ぜて土に返す――。そうした大きな循環が伊勢志摩にはもともとありました。 ところが、過疎化が進み、農業従事者がいなくなると、海は一気に豐じゃなくなり、海藻は減っていき、魚は減り、貝も以前のようには育たない海になってしまったのです」
では、どうすればいいのか。
「豊かな海を取り戻すしかない。いわば海の再生です。例えば、COVA KAKUDAのある場所は、入り江なので陸の影響を非常に受けやすい。ならば、陸側に手を加えればいい。 森に手を入れて、木漏れ日が出来て風通しを良くしてやると腐葉土が育つ。漁業で出たものをコンポストにして土に返す。
さらには農業をやっていけば栄養素が海に流れ込む。海水温度の上昇問題を別にすれば、1950年頃の海を再生させることもそう難しくないのではないか。 里海と里山がちょうどクロスする場所がCOVA KAKUDAなのです。つまり、そこで人間の営みをすることで、それを自然に返すことが出来る。それがCOVA KAKUDAの底に流れる基本的な考えです」
覚田氏が考えたのは、ホテルを作ることによって、里海と里山を回復させるという、この日本ではほぼ類例がなく、途轍もなく壮大な試みなのである。
農園では、野菜、オリーブ、ハーブ等を栽培している。放し飼いの烏骨鶏や養蜂所まである。
多彩なアクティビティ
まず、里山での営み。
山側では農園を作り、野菜畑、オリーブ園、ハーブ園、椎茸園があり、烏骨鶏と青い卵を産むアロウカナの2種を飼っている。おまけに養蜂まで始めた。
「海沿いには、ウバメガシという備長炭の原料になる樹木が群生します。備長炭は紀州が本場なのでしょうが、伊勢志摩にも多いのです。炭の職人さんに山に入ってもらって伐採してもらう。炭には使わない太い幹は、2年間天日で干すと非常にいい状態の薪になります。この薪は暖炉やサウナに使うのですが、とてもいい香りがします。
飛び込み専用の桟橋も作っていますので、この桟橋でゆったりと整いを楽しむ方も多いです。日本のゲストもよく入水されています。料理には伊勢志摩備長炭を使いますから、ローカルウッドでローカルフードを焼いています」
山の恵みと海の恵みを存分に活用できる理想郷と言える。では、里海の営みではどんなことが可能なのか。
「ひと言で言うならば、人とともにある海を体感してもらうことです。そこで働く人々のなりわいに触れてもらいたいのです。 例えば冬ですと、『緋扇貝(ひおうぎがい)』を養殖しているところに七輪持参で出かけて行って、ちょっと焼いて食べてみるとか、イセエビ漁の刺し網にかかった伊勢海老を網から外す体験をしてもらったりします。
トヨタで車を作っていたのにこの海に惹かれて、真珠の養殖を修業してくれている若者がいます。5月ぐらいからはアコヤ貝に真珠の元となる核を挿れる挿核作業が始まるので、それも一緒に体験してもらうとかですね。
一番人気は近くの漁港にある魚市場の見学です。だいたい朝の7時過ぎに漁船が戻ってきますから、魚を陸揚げしてセリにかけるところを見物します。一日の制限は300キロまでですが、マグロもよく揚がります。そこでピックアップした魚や貝や伊勢海老を夜のディナーに出したりしています。
海で生きる人たちがどういう風に海に向き合っているのかを体感していただく。そこがすごく楽しい、話している方言は通じないかもしれませんけどね。自分の旅行体験もそうですが、何かそこにしかないものに触れることに一番意味があると思うのです」
里山の中腹にある東屋で中国茶を嗜む覚田社長。眼下に入り江を望む。
他にも余りにも多彩なアクティビティがある。
里山の植生探索と薪割り&火起こし、草木染・アロマ抽出、東屋で楽しむ抹茶、リアスカヤック&カヤックフィッシング、アイランドシュノーケリング、サーフィン、フィッシング(外洋チャーターもあり)、サンセットクルーズ、夜のクルーズ、焚火と星空観察、養蜂体験……。
なぜに、それほど多岐にわたるのか?
「宿に着いて何もせずに完全に脱力して帰途につくーーそうして活力をもらうリバイタライズ(revitalize)のやり方もあるでしょう。旅行はこうありたいと私が考えるところなのですが、人間は振り子のようなものじゃないかと思うのです。ある程度、体に負荷をかけて、そこから解放されるときに究極のリラックスがある、そんな気がするのです。
アクティビティをある程度楽しんで、ある程度の刺激を受けることによって、むしろ深いリラックスにつながっていくんじゃないか。 ですから、私もスタッフも銘々が色んなメニューを発案します。私もお茶を点てますし、スタッフもそれぞれが得意分野を担当しています」
サスティナビリティの先のリジェネレイティブ
覚田氏が思い描くのは壮大な未来図だ。
「さらに言えば、自然の中に人がいてもいいし、むしろ、人がいることで自然がより豊かになるわけです。そうした大きなサイクル、サーキュラエコノミーと言い換えても良いのですが、それを感じてもらえたらゲストも少しホッとすることが出来るのではないでしょうか。たくさん感じるものがあったら、その後、精神的にフワッとできる時間がすごく充実すると思うのです」
要は、ここで実践されているのは、サスティナビリティ(持続可能性)の次の段階の話だ。サスティナブルだけでは、海や山にとっては全く足りないのである。
「サスティナブルって、その循環の機能が一つでも抜けちゃうと、もう回らなくなってしまいます。そうではなくて、ずっと回り続けて、さらにそれが増幅して良くなっていくイメージです。つまり、継続させてさらに良くして行くリジェネレイティブ(regenerative)を実践していくのが私どもの施設なんですね」
だからこの施設に華美なものはどこにもない。その代わりに、肌で自然を感じる本物のラグジュアリーなリトリートがある。感度の高い国内外のリピーターが増え続けているのも、そのためだろう。
海に面した部屋では、海に網を仕掛けて魚を獲る。すぐに食べたり、2時間ほど干してお土産にも。
別の観点からも自然に対する取り組みをしている。
「真珠養殖の過程で出る廃棄物があるのです。例えば、発砲スチロールやロープです。それらが廃業してしまった人で片付けられないようなケースで大量に出てきます。産業として出してしまったゴミならば、自分たちの業界の責任として片付けることをやっています。
日本真珠輸出組合という全国組織がありまして、私はそこの理事長なのですが、日本の真珠をどうプロモートするかを常に考えています。その観点からしてみても、そうした清掃活動は、真珠の美しさを世界中にアピールするのと同じくらい大事なことだと思っているのです」
最終的な目標はエリア全体の浮上
ダイニングにも触れておきたい。
「シェフの松本は旅館の副料理長をしていました。いちばん最初は彼の会席料理をあまりエキサイティングとは思わなかったので、私の好きなレストランにいろいろ連れていきました。その上で言ったのは、『国境を越えてください』『日本の心を持って国境を越えましょう。
いろんな料理方法、食材を自由自在に使っていきましょう』ということでした。 松本シェフが凄いと思う点は、自分の考えを持ちながら、人の話が聞けるところです。今では私が口を差し挟めないぐらいの料理になっています」
言葉にすれば和食がベースの「イノベーティブ・フュージョン」となる。季節で内容は変わるが、地元の名産である、伊勢海老、アコヤ貝、あおさのり、ワタリガニ、シマアジ、松阪牛などが供される。 ディナーのコースは約11品。伊勢志摩の食材を中心にして、和洋中の技術を駆使しながらも、食材の良さを引き出す料理はどれもこれも素晴らしいものだった。
バタークレープ生地でできた巾着袋の中には、スモークしたアコヤ貝の貝柱、クリームとキャビア、自家製の柚子麹。一品目から胃袋を掴まれる。
さて、最後になるが、覚田氏の視線の先にあるのは、COVA KAKUDAの成功が土地に呼び込むものだ。
「COVAでやっていることで、里海と里山が豊かになり、どうもあそこでやっていることがいい状態を生むらしいという風になれば、伊勢志摩の他の地域にも広がっていく可能性が大いにあると思います。 湾内をクルーズするとよくわかりますが、使っていない養殖小屋がたくさんあるのです。
COVAがうまく行ったら、そういう小屋をリノベーションしてくれる人も増えてくれるんじゃないか。それこそ船でしかアクセスできないような宿泊施設が、あちこちにあるといった具合に有機的に広がっていったら、『このエリア、面白いよな』と思われるようになりますよね。そうなることを期待しているのです」
賢島駅裏の港からホテルへ25分、手前に見えるクルーズ船を使ってアクセスしたら最高に気分はアガる(有料)。湾内へと向かうゲストが操るカヤックが見える。
覚田譲治 1995年、国際基督教大学教養学部社会科学科卒。同年、株式会社ミキモト入社。97年、覚田真珠株式会社に入社し、2014年、社長就任。その他、日本真珠振興会・真珠検定委員会委員長となり真珠検定を軌道に乗せる。日本真珠振興会・研究委員会委員となりPearl Standard策定に携わる。日本真珠輸出組合・副理事長としてJapan Pearl Pavilion Rule策定に携わる。三重県真珠振興協議会・会長として2016年伊勢志摩G7サミットでのラペルピンプロジェクトを主導する。
COVA KAKUDA(コーバ カクダ)
517-0701 三重県志摩市志摩町片田1397-14 ℡0599-52-0231 URL : https://cova-iseshima.jp
構成/執筆:石橋俊澄 Toshizumi Ishibashi 「クレア・トラベラー」「クレア」の元編集長。現在、フリーのエディター兼ライターであり、Premium Japan編集部コントリビューティングエディターとして活動している。
photo by Toshiyuki Furuya
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日本文化発信機構 JCCOが目指すもの
2026.5.19
世界と戦う日本の美意識をどう築き上げるか マツダで長年デザインを牽引する前田育男
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「性能や品質だけでは、もはや選ばれない」――。マツダ シニア フェローデザイン・ブランドスタイル監修の前田育男氏は、この現状に強い危機感を抱いている。その根底にあるのは「日本そのもののデザイン力」、すなわち「日本の美意識」が国際社会で十分にリスペクトされていないという問題意識だ。Premium Japan編集長で日本文化発信機構(JCCO)専務理事の島村美緒が、日本のデザインの未来について話を聞いた。
なぜ、マツダのデザイナーが「日本文化の発信」を担うのか
島村:日本文化発信機構(以下、JCCO)の活動への参画理由について伺います。前田さんは、マツダでのデザインという本業がありながら、なぜこの活動に理事として加わってくださったのでしょうか。
前田:根底には強い共感がありました。JCCOが掲げる「日本の文化を世界に発信する」というテーマは、私たちが目指す「日本の美意識を世界に発信していく」という目標と、ほぼ同義だと感じたのです。「文化」と「美意識」、表現は違えど、その根っこは同じ。やりたいことがシンクロしたのが一番の理由です。
島村:それは、マツダという企業全体としての取り組みですか。それとも、前田さんご自身のデザイナーとしての哲学に近いのでしょうか。
前田:これは、私がマツダのブランド様式作りを16年ほど手掛ける中で、個人的に強く抱いてきた問題意識です。今、自動車業界は世界中のブランドが乱立し、特に新興国のメーカーも台頭してきています。正直なところ、性能や機能だけではほとんど差がつかない時代になりました。では、お客様は何を基準に選ぶのか。それは「どの国が作っているか」、そして「どれだけ美しいか」という点にあると考えます。
だからこそ、私たちは日本の美意識を体現したものづくりを目指しているのですが、ここで大きな壁にぶつかります。それは、日本という国自体が「美意識を持った国」として今世界からリスペクトされていないという現状です。これは一企業の力だけではなく、土壌となる日本全体のブランド価値を高めなければ、私たちのクルマに込めた想いも正しく伝わらない。この根源的な課題意識が、私の活動の原点になっています。
日本の美の原点である伝統工芸から新たな発想を得る
島村:そのような課題に立ち向かう中で、前田さんは日本の伝統工芸の作家さんと交流を深めて、度々工房にも訪れていると聞いています。
前田:以前より、日本の伝統工芸の作家さんたちとは長くお付き合いをさせていただいて、工房にも定期的に伺っています。世界にたった1つの作品をつくるために、多くの時間を掛け、長年築き上げた手技と感性、経験から生み出す作品が素晴らしいことは言うまでもありません。完成するモノは違っても、彼らのモノづくりから学ぶことを非常に多くあると思っています。
しかし残念なことに、人間国宝レベルの方々の貴重な作品であっても、その素晴らしい作品を然るべき形で見せる場所、そのための資金も十分にないのが現実です。国からの支援も十分とはいえません。さらに、伝統工芸展が開催されたとしても、催事場のような場所で雑然と並べられている。この現実と、作品が本来持つべき崇高な価値との間にある巨大なギャップこそが、日本の文化に対する向き合い方なのではないかと呆然とすることがあります。
トレンドは追わない。AI時代に「オンリーワン」であるための逆張り戦略
島村:日本の伝統文化のあり方への問題意識を持ちながら、前田さんは「日本の美意識」をデザインに昇華させる独自の方法論を模索しているのですね。
前田:通常の自動車デザインは、企画から絵を描き、形にする、というプロセスを辿ります。しかし、そのやり方だけではもう限界が見えています。だからこそ、私は全く違うアプローチ、つまり「クルマから入らない」デザインを模索しています。
その一つが、日本の伝統工芸が持つ「匠の技」との共創です。実際に匠の工房を訪ね、私自身の「思い」を伝えて作品を制作してもらったことがあります。「こういう感情や世界観を表現したい」という抽象的な思いだけを伝え、対話を重ねて一つの作品を完成させていただく。このプロセスからお互いに影響を受け、私たちのデザインの作風にも変化が生まれるのです。
島村:自動車のデザインと伝統工芸。全く接点がないように感じますが、両者が影響を与え合うことで、新たな発想が生まれるのですね。
前田:実は今、マツダのデザインチームには、金工(金属工芸)のトップレベルの技術を持つ者が在籍しています。彼は今、自動車のデザインではなく、自身の作品として伝統工芸展への出品を目指しています。一見、クルマとは全く関係ない活動に見えるかもしれませんが、それでいいのです。そうした異分野の活動から我々が影響を受け、新たな知見を蓄積し、それを最終的にクルマのデザインに置き換えていけばいい。このスタートポイントの転換こそが重要だと考えています。
車のデザインの世界でも、A Iを活用すれば、それなりのデザインを描ける時代です。しかしそこには独自性や新たな発想、ましてや日本の文化や美意識を感じさせるモノを生み出すことは難しい。私たちが目指すのは時代を牽引し、人々の心に刻まれるデザインです。自分がトレンドを作るくらいの気概で臨まなければ、この世界では生き残れません。従来の手法では今を超えることはできない。新たな発想を生み出すためには、時には奇想天外なことも必要だと考えています。
「暴走するリーダー」はなぜ必要か?組織の創造性を解き放つ“妄想力”
島村:前田さんのおっしゃることはよく理解できます。その土台や風潮を築くためにはどんなリーダーであるべきでしょうか。そして、予定調和に陥りがちな組織の中で、いかにしてチームの発想力を引き出していくのですか。
前田:トレンドを無視し、全く新しいものを生み出すには、「リーダーの暴走」が必要だと思っています。私がよく言う「妄想」や「暴走」ですね。「君たちで自由に考えてみて」とだけ言っても、最近の若い人たちは真面目でこぢんまりとまとまりがちです。だからこそリーダーが、「これくらいかけ離れた目標を目指すんだ」という、壮大な青写真や戦略を示す必要がある。
島村:テスラのイーロン・マスク氏や、かつてのアップルのスティーブ・ジョブズ氏も、まさに「暴走するリーダー」の典型ですね。
前田:その通りです。彼らはまさに妄想家であり、暴走野郎とも表現できると思います。だからこそ、多くの人が魅了される。ただし、暴走にも質があります。大切なのは、その暴走が世界からリスペクトされる「美意識」に裏打ちされているかどうか。今、マツダが目指しているのも、まさにその美意識を体現した世界です。
「守る」だけでは守れない。文化継承に必要な「刷新」という視点
島村:美意識の探求には、異文化や異業種との交流は大変有意義ということですね。JCCOでは定期的な会議を行なっていますが、異業種のプロフェッショナルたちである他の理事たちとの交流からも新たな視点を得ている部分はありますか。
前田:JCCOの理事の方々とディスカッションしていると、「そういうモノの見方をするのか」という発見は多くあって、とても面白いですね。さまざまな分野で頂点を極めている方々ですから、その経験や挑戦から生まれる言葉の数々は、時には心を奮い立たせられ、時には新しい視点に気づかされます。
島村:2026年9月に開催予定のPremium Japan Awardは、伝統工芸や文化を次世代につないでいくことを目指すアワードですが、日本の美意識や文化を継承し、守るためにはどのようなことが必要だと考えますか。
前田:非常に難しい問いですが、私は「守る」という言葉はあまり好きではありません。守るだけでは、何も守れないからです。伝統を守り抜くためには、時に刷新し、時に破壊することも含めた、あらゆるチャレンジが必要です。新しい挑戦なくして、現状を「維持」することすら、おそらく不可能でしょう。
島村:その通りですね。アワードも、常に挑戦だと考えています。初年度から文化庁や観光庁の後援を受けて、異分野の才能が出会うコミュニティを形成しようとしていきたいと思っています。
前田:アワードなどの取り組みは、単に文化を紹介するだけでなく、この失われかけた「日本の美意識の幹」を再発見し、磨き上げ、世界にその価値を問い直すことにあるのだと思います。それは、一企業であるマツダのブランド価値を高めることにも繋がり、ひいては日本の国際競争力を取り戻すための、大きな一歩になると信じています。
島村:日本のビジネス界全体が、自らの足元にある美の価値を再発見し、それを未来への競争力へと転換していく。その大きな挑戦こそが、未来ある日本のためには必要ですね。今日はありがとうございました。
今回のインタビューを行ったのは、「MAZDA TRANS AOYAMA」。マツダのデザイン体感施設である本施設は、落ち着いた時間を過ごせる空間。1階には広島の宮島で創業した伊都岐珈琲(いつきコーヒー)監修のカフェのほか、クルマに限らない幅広いテーマによる期間限定展示や体験イベント・ワークショップの開催などが行われている。さらに、市販車、コンセプトカー、歴代のマツダ車といった実車の常設展示や、マツダ車の歴史を振り返るミニカー展示など、マツダのある生活が想像できる。
MAZDA TRANS AOYAMA
住所:東京都港区南青山5丁目6-19
営業時間:8時30分~18時30分 (8時30分~10時00分 1Fカフェのみ営業)
定休日: 月曜日
前田育男 Ikuo Maeda
マツダ エグゼクティブフェロー デザイン・ブランドスタイル監修
1959年、広島県生まれ。京都工芸繊維大学卒業後、1982年にマツダ株式会社に入社。マツダ北米スタジオ、FORDデトロイトスタジオ駐在を経て、本社デザインスタジオで量産デザイン開発に従事。チーフデザイナーとして複数車種を担当した後、2009年デザイン本部長に就任し、マツダブランドの全体を貫くデザインコンセプト「魂動」を立ち上げる。その後現在まで多くの自動車デザイン、CI/店舗などのブランドスタイルを手掛け、マツダブランドの確立に取り組んでいる。2013年執行役員、2016年常務執行役員デザイン・ブランドスタイル担当。2022年より現職。現在は新たなMSブランドであるMAZDA SPIRIT RACINGの代表兼レーシングドライバーも務める。 日本文化発信機構(JCCO)理事。
Photos by Toshiyuki Furuya
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酷暑を離れ、ジャングルの中のリゾートへ
2026.5.20
「星のやバリ」乾季のウブドで楽しむ、夏の避暑旅
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インドネシア・バリ島ウブドの滞在型リゾート「星のやバリ」では、2026年9月30日までの期間、乾季の爽やかな気候を満喫する宿泊プラン「ウブドの森の避暑地滞在」を提供する。
近年、日本の夏は深刻な猛暑が続き、新たな避暑先として注目されているのがバリ島・ウブド。日本の8月の平均最高気温が31~35度に達する一方、乾季のピークを迎えるウブドは、平均最高気温が27~29度ほどと、日本の秋口のような気候。
ヴィラ・ジャラク
標高の高いエリアならではの爽やかな風が吹き抜け、日陰に入れば涼しく、冷房なしでも快適に眠れるという。
最長70mのロングプール
ジャングルの緑に包まれた「星のやバリ」は、敷地内に3本のプールと宙に浮かぶようなガゼボ、渓谷を臨むダイニングが点在。自然と一体になるような時間が広がる。
新ランチメニュー「ランタン ・サリ」
本プランでは、ジャングルを望む「カフェ・ガゼボ」にて、インドネシア伝統の弁当箱「ランタン」を用いた新ランチメニュー「ランタン・サリ」を提供。ナシゴレンを取り入れたてまり寿司や、バリの花を模った練り切りなど、インドネシアのヒンドゥー教に伝わる生活哲学「トリヒタカラナ」に着想を得た料理を楽しめる。
バリニーズの手仕事体験より「チャナン」づくり
さらにリゾート内では、バリのお供え物「チャナン」づくりや、インドネシアのろうけつ染め「バティック」作り体験、近隣のライスフィールド散策など、地域文化に触れられるアクティビティも充実している。
カフェ・ガゼボで味わえる、コース仕立ての「ティガ・ラサ カキ氷」(有料)。
猛暑から離れ、ダイナミックな自然に抱かれる時間。涼やかな風とともに、ウブドならではの避暑体験を味わってみては。
◆星のやバリ「ウブドの森の避暑地滞在」
【期間】2026年5月1日~9月30日(宿泊日)
【日数】2泊3日~
【料金】17,563,392 Rp (ルピア)~(2泊・2名利用時、税・サービス料込)
【含まれるもの】室料、毎朝食、昼食「ランタン・サリ」1回
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投稿 「星のやバリ」乾季のウブドで楽しむ、夏の避暑旅 は Premium Japan に最初に表示されました。
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善光寺門前の宿坊「蓮華院」が再開
2026.5.18
自らと静かに向き合う、ひらかれた宿坊へ
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長野・善光寺門前の宿坊「信州善光寺宿坊 蓮華院(れんげいん)」が、大規模改修を経て2026年4月15日に再開。千年以上続く善光寺の信仰と精神性を礎に、自分自身と静かに向き合うための、ひらかれた宿坊として生まれ変わった。
蓮華院が提案するのは、常に何かと接続し続ける現代において、「自らと静かに向き合うための余白」。改修で大切にされたのは、「古いものの中に宿る美を取り戻す」こと。木の柱や障子、時を重ねた素材が生み出す陰影を活かし、光だけでなく、影の静けさまで感じられる空間へと整えた。
滞在の核となるのが、善光寺の「お朝事」への参加だ。早朝、蓮華院の住職とともに善光寺本堂へ向かい、道すがら歴史や信仰、仏教の考え方に触れることができる。1年を通して毎日欠かさず行われている「お朝事」では、読経の響きに包まれながら思考を手放し、無心へと向かう時間を過ごすことができる。
朝食には、精進料理の思想をもとに、肉や魚を用いず、粥や汁物を中心に、薬膳の知恵を取り入れた「小食(しょうじき)」を用意。信州の野菜や味噌、醤油を取り入れた滋味深い献立を薬膳茶とともに味わう一膳は、「これで十分である」という知足の感覚を静かに呼び覚ましてくれる。
また今回の改修では、長野の建築家や職人、地域事業者らと協働。宿坊で使われていた布団を一枚ずつ打ち直して再生するなど、古いものを活かしながら使い継ぐ姿勢も大切にしている。
掃き清められた門前、静かに手を合わせる人々──。一歩外に出れば、善光寺とともに歩んできた町の日常が広がる蓮華院で、自分を見つめ直す滞在を過ごしてみてはいかがだろうか。
◆信州善光寺宿坊 蓮華院
【所在地】長野県長野市元善町476
【電話番号】026-232-3026
【客室数】4名定員(トイレ、洗面付):2室、3名定員(トイレ、洗面付):1室、2名定員(トイレ、洗面無し):1室、6名定員(トイレ、洗面無し):1室
【宿泊料金】1泊朝食付1名10,600円~(税込、1室2名利用時1名料金)
【信州善光寺のお朝事】朝開催/別途 内陣券(800円)または 共通券(1,500円)が必要となります
※特別な法要がある際、お朝事が開催されない日があります
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2026.4.30
「静かな岡」の哲学 ーー 平和の都・静岡市が育むプレミアム
徳川慶喜公の屋敷跡にできた「浮月楼」。結婚式場、料亭として知られているが昨年に入ってから能舞台のある庭を楽しめるBAR KARYOがオープンしている。
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コロナ禍という未曾有の災厄を乗り越え、人類はようやく共通の敵に打ち勝ったかに見えた。だが、その後に訪れたのは、むしろ対立が剥き出しになった時代だった。各地で強い指導者が次々と台頭し、世界のそこかしこで戦火があがっている。
そんな時代だからこそ、平和とは何かを問い直す旅に出たい。
日本にも、長く深い平和の時代があった。徳川家康が1603年に開いた江戸幕府は、以来260年余にわたって戦のない世を築いた。その徳川の最初の将軍・家康と、平和のために幕府を閉じた最後の将軍・慶喜——この二人の将軍にゆかりの地が、静岡市だ。
美しい海岸線と良質な温泉に恵まれた伊豆半島、世界文化遺産・富士山の麓に広がる富士エリア、浜名湖、掛川、浜松などを含む西部エリアなど魅力的観光地が多い静岡県。「静岡」の名が付いた駅のある「中部エリア」の魅力は見過ごされがちだが、徳川家康は幼少期と晩年の3分の1をここ(当時の駿府)で過ごし、慶喜は大政奉還ののち、約20年間、ここで静かに暮らした。静岡駅の前には家康公の像があり、駅から徒歩3分のところには慶喜公の屋敷跡がある。
平和を開き、平和のうちに幕を閉じた二人の魂が宿る城下町を、平和のインスピレーションを求めて旅をした。
JR静岡駅北口には今川義元に見守られながら元服する若き竹千代(のちの家康)の像がある。近くには三河・遠江・駿河・甲斐・信濃の五カ国を支配した壮年期の家康公像もある。
静岡浅間神社の中心的存在、神部神社と浅間神社。二社同殿と言って1つの建物に2つの神社が入っている。
家康公の出発点にして、「静岡」の名の生まれた場所
家康公ゆかりの場所としてはずせないのが、静岡県の名前の由来にもなっている静岡浅間(せんげん)神社、通称「おせんげんさま」だ。
生涯の3分の1をこの駿府で過ごした家康公、「幼少期の人質時代には今川義元公に見守られながら、この神社で元服式(今で言う成人式)を行いました。家康公の人生の出発点が、ここなんです」。そう語るのはこの神社の禰宜(ねぎ)の宇佐美洋二さん。
のちに天下人となった家康だが、生涯を通してこの神社への崇敬を持ち続けた。関ヶ原の合戦では出陣前に必勝を祈願し、勝利ののちには戦で使った軍配を奉納。大御所として駿府に戻ってからは徳川幕府の祈願所と定め莫大な社領を寄進した。
家康公を神として祀る神社は全国にあるが「生前から縁があった神社で、家康公が同一境内に二座祀られているのは、全国でここだけです」だと言う。
縁があるのは家康公だけではなく、古くはヤマトタケルが賤機山の頂から伊勢神宮を遥拝してその神をここに祀ったとも言われ、能楽の始祖・観阿弥は最後の舞台をここで踏んでいる。
4万5千平方メートルの広大な神域には多くの社(やしろ)が併せ祀らされている。一番古い神部神社(かんべ)は約2100年前、崇神天皇の御代に創建した駿河最古の神社だ。それに1700年前にできた大歳御祖神社(おおとしみおや)と1100年前に富士山本宮から分祀された浅間神社を加えた3社が中心となっている。
その後、明治期の合祀政策で最終的に7社になったが、その中には、33社の神社が併せ祀られており、全部で40の神社と56の神様を祀るのが静岡浅間神社であり、縁結びや学問、病気平癒まで、人生の諸願をすべてここで託すことができる。 歴史的にも宗教的にも厚みのある神社だが、自然にも恵まれている。境内は背後にある山の豊かな緑と一体化しており足を踏み入れた瞬間、空気が変わる。宇佐美さんが境内を案内しながら、突然かがんで手を水路に浸したと思ったら、手のひらに小さなしじみが乗っていた。結構、たくさんいるようで、昔から「浅間神社のシジミを食べると畏れ多くて目がつぶれる」と言われて守られてきたらしい。生活に根差した自然保護の知恵にちょっと微笑ましくなる。境内の神池にはカワセミが飛来し、夜には樹間をムササビが飛びアナグマやタヌキが歩いていることもあるらしい。都市の真ん中に、手つかずの自然が残されていることに驚かされる。
この歴史と文化と自然の交差点のような神社こそが、実は「静岡」という地名の由来にもなっている。元々は「府中」と呼ばれていた地名を、明治維新後、変えることになったとき、神社背後にそびえる賤機山(しずはたやま)と古代の呼称であった青葉丘(あおばおか)の名から「静ヶ丘(しずがおか)」という名前が出てきた。「時世を思い土地柄を考えて静ヶ丘即ち静岡がよい」と「静岡」に定まり、そのことは石碑にも刻まれていると言う。
「静かな岡」——ここからも平和の意志が伝わってくるではないか。
漆と金箔と職人技——「東海の日光」と呼ばれた社殿群の美
総門を入るとまず目に入る楼門。その内側に少しだけ見えるのが素木作りの舞殿だ。
せっかくなので、静岡浅間神社の建築や装飾をもう少し丁寧に見てみよう。
建物としてまず目を引くのは総門の奥に立つ楼門だが、既にこの門から壮麗さと精緻な技術で来るものを魅了する。夜には閉めるという扉の上に佇む金色の龍だけでも金箔が1000枚、楼門全体では約22,000枚の金箔を使用しているという。龍以外にも麒麟や獅子など様々な彫刻が彫られており、一部には時間が経つほどに輝きが増す「生彩色(いけざいしき)」と呼ばれる高級な彩色を取り入れている。
楼門をくぐったすぐ先には観阿弥が最後の舞台を踏んだ舞殿がある。周囲は総漆塗、極彩色の装飾が施されたきらびやかな建物ばかりだが、この舞殿だけ色の塗られていない中世が甦ったかのような素木造りの質実な建築になっている。
「飛龍」や「波」の他、「獏」も彫られているが、「獏は金属を食べる動物とされています。金属とはつまり武器のこと。獏がいるということは、金属が豊富にある——つまり戦争をしていないということ。ここに獏がいるのは、平和の象徴なんです」と宇佐美氏は言う。ちなみに山肌に建つ御本殿の柱の上にも、金箔の貼られた獏がこの地を見守るように掘られている。
舞殿を超えると、その向こうには、国指定重要文化財で「漆塗りの神社建築としては日本一」の高さ21メートルを誇る大拝殿(おおはいでん)がそびえ立っている…はずだ。
一層目に千鳥破風付きの切妻屋根、二層目に入母屋屋根を重ねた二階建ての、さらにその上に小屋根を重ねた三層二階建ての「浅間造り」と呼ばれる構造で他にあまり例を見ない。高さのある構成は、富士山を象徴していると言われ、一階と二階の間には富士山にかかる雲の彫刻を配し、その上には天女が舞う。神が富士山の雲の上に鎮まるという世界観を、建物の垂直方向に重ねていると解釈されているらしい。
残念ながら歯切れが悪いのは、現在、その姿を見ることができないからだ。今、静岡浅間神社では2014年から2037年頃まで続くという「平成令和の大改修」と呼ばれる改修工事の只中にある。工事期間は25年以上総費用55億円という大規模な改修で、現在、この大拝殿全体が覆われていて、その姿が見えない。
2020年に塗り替えが完了した楼門だけでも「漆の塗り替えだけで3年かかりました。工事費は4億2千万円ほどかかり、およそ1トンの漆が塗られています。」と宇佐美氏は言う。
これだけ手間とお金と時間をかけた大改修が行われていることからも、日本にとってこの神社がどれだけ大事なものかが伝わってくる。
かつて儒学者・貝原益軒が「日本にて神社の美麗なる事、日光を第一とし、浅間を第二とす」と記し「東海の日光」と称えたそうだが、その美を、この先の未来にもつなげようとする努力に希望を感じる。ちなみに、宇佐美氏によれば神社の彫刻の改修などで職人が集まってきたことが、木工や家具、さらにはプラモデルを含む模型づくりといった現在の地場産業につながっているのだという。
改修中の大拝殿を迂回してその奥に進むと、横に長い社殿が現れる。一見すると単一の社殿だ。だが宇佐美さんが言った。「これ、実は二社なんです」。
神部神社と浅間神社——主要三社のうちの二社が、文字どおり「一つ屋根の下」に同居している。二社同殿、と呼ばれる様式だ。屋根はひとつに見えるが、よく見ると棟の稜線がわずかに二段に分かれている。中央には「相の間」と呼ばれる空間があり、かつて神主が神事のために籠もった部屋だという。
この建物には、もうひとつ仕掛けがある。浅間神社は木花之佐久夜毘売命(このはなのさくやひめ)を主祭神とした富士山信仰の神社。だから「富士山を正面に拝むよう、ほんのわずかに軸をずらして建てられている。大拝殿の工事の足場が、今はその視線を遮っている。足場が取れたら、またここから富士山が見えます」と宇佐美氏は言う。
大改修が終わってから再訪したいのはもちろんだが、歴史を未来へとつなぐ今だけの改修中の姿にも尊さがあると感じた。
龍や獅子、獏はそこかしこに彫られている。舞殿の彫刻は無彩色だが、浅間神社/神部神社の彫刻は金箔が貼られた極彩色になっている。写真は比翼三間社流造りの神部神社・<wbr />浅間神社の本殿のうちの神部神社の向背柱の木鼻の獏と獅子
海越しの富士と3万本の松——三保松原という奇跡
美保松原から見る富士山(写真提供:静岡市)
駅からは遠いが、静岡市の名所としてもう1つはずせないのが、三保松原だ。清水港の先に突き出た三保半島の先端、推定3万本の松が海岸線を覆い、その向こうに駿河湾が広がり、晴れた日には45キロ先の富士山がそびえる。2013年、富士山の世界文化遺産登録の構成資産のひとつとなったこの松原は古来、多くの人々が「海越しの富士」を愛でてきたスポット。
2013年、富士山が世界文化遺産に登録された際、三保松原はその構成資産のひとつとして名を連ねた。しかしそこに至る道は、決して平坦ではなかった。
最大の問題は距離だった。三保松原から富士山まで、直線でおよそ45キロ。「ここに富士山はない」——登録審査の過程でそう指摘され、構成資産から外すよう強く求める声が上がった。イコモス(国際記念物遺跡会議)も一時、除外を勧告したと言う。
それでも市は諦めず登録に向けての働きかけを続けた。
主な論拠となったのは、絵画の世界における両者の不可分な関係だ。室町時代の水墨画家・雪舟は日本平から富士山と三保松原を一体の景色として描いた。北斎をはじめ江戸の浮世絵師たちも同様に、この松原越しの富士を繰り返し画題に選んだ。さらに信仰の観点からも、富士山と三保松原は「人間の世界と天をつなぐ境界線」として一体的に認識されてきたという文脈が示された。
最終的に、その訴えは認められた。三保松原は富士山世界文化遺産の構成資産25か所のなかでも「最も遠い」地点として、異例の逆転登録を果たした。登録された地域には国有林、県有林、公園、民有地が入り組んでおり、管理の所管も分かれており、保全と活用は極めて難しい。しかし、登録をきっかけに全国的に深刻な松枯れ病の抑制でも全国的にも希少な成功事例を作った。
今回は訪れる時間がなかったが、すぐ近くには三保松原文化創造センター「みほしるべ」があり名勝及び世界文化遺産「富士山―信仰の対象と芸術の源泉」の構成資産としての価値や魅力、松原保全の大切さを紹介しているという。
ただ、驚かされたのが、文化創造センター前を通る「神の道」と呼ばれるきれいに整備された松並木と、その美しい松並木の前に普通の住宅が建ち並ぶ景色だ。庭先からは松越しに富士山が見え、朝には駿河湾の潮の香りが漂う。世界遺産の絶景を日常の窓として生きる——これこそ、究極の贅沢ではないか。
これだけの美しい景色が当たり前に日常の生活空間にあるその贅沢さこそが、平和を願う市民性の源泉なのかも知れないと感じた。
ちなみに松原の中心には「羽衣の松」がある。天女が、羽衣をこの松にかけたという木の伝説があるが、元々の木は現在は海の中で、現在は3代目となる木が伝説を今に伝えている。樹齢2〜300年ほどの巨木は、幹を海のほうへ向けて伸ばし、その姿はまるで翼を広げるようだ。
静岡県静岡市の「御穂(みほ)神社」から世界遺産・三保松原の「羽衣の松」まで続く、神様が通る道とされる約500mの松並木。周囲には住宅や静岡市三保松原文化創造センター「みほしるべ」がある。
慶喜公が月を愛でた庭で、魯山人の味をいただく
能舞台のある庭が美しい「浮月楼」。能舞台のある池を中心とした池泉回遊式庭園は国登録記念物。その周りに結婚式場、 料亭(国登録有形文化財の明輝館)、茶室、今回紹介するBARと茶寮のある「浮月花寮(ふげつかりょう)などいくつかの施設がある。
静岡市で、もう1つ紹介したい名所がある。静岡駅から徒歩3分のところにひっそりとたたずむ料亭、「浮月楼(ふげつろう)」——実はかの徳川慶喜公の屋敷跡だ。
大政奉還ののち、静岡に移り住んだ慶喜公は、明治2年から明治21年まで、およそ20年をここで過ごした。政治を一切遠ざけ、狩猟、油絵、写真撮影に没頭した日々。鴨を追って市内の川や沼へ出かけ、遠くは伊豆の天城山にまで足を伸ばしたという。戦乱の時代を生き抜いた武将の最期は、静かな趣味人としての余生だった。静岡の市民たちは今も彼を「慶喜様(けいきさま)」と親しみを込めて呼ぶ。
慶喜公が造営した庭は、江戸時代から続く名作庭師・小川治兵衛の手によるもの。当時の敷地は現在の倍近い4500坪以上あり、大小の池が広がっていた。現在も残る池泉回遊式庭園には、紅白梅や彼岸桜、染井吉野、紫陽花、椿など、 四季折々の花が咲き、季節の表情を見せる。 安倍川の清流が循環し、春楡が水面に映る。池に月が浮かぶ光景から「浮月楼」と名づけられた。
建築においても卓越していて、昭和初期に日本近代数寄屋建築の巨匠・吉田五十八が手がけた料亭棟は、戦火で焼失したのち、その設計方針を継承する形で再建された。
そんな歴史ある浮月楼に2025年、体験型ギャラリー&サロン「浮月花寮(ふげつかりょう)」がオープンした。「花には化(ばけ)が潜んでいる」をコンセプトに、自然の生命力を抽象化し、古来の日本がもっていた自然観を新しいかたちで未来に接続する空間だ。
昼は「花寮御膳」として、木・金・土・日・祝の2部制(11時〜、13時〜)で6席限定の茶懐石の精神を写した御膳を供する。春に芽吹く山菜や筍、秋に潜む木の子——その場で調理した焼物が季節八寸盛とともに運ばれ、薄茶で締めくくられる。器には静岡在住の世界的な陶芸家・道川省三氏の作品を用い、様々なギャラリーでも評価される現代陶芸の傑作が静謐な食卓を彩る。料理は、美食家にして芸術家であった北大路魯山人が最後に手がけた「星岡茶寮」の流れを汲み、その思想を受け継ぐ井関脩智の系譜に基づくものも用意されている。メニューは二十四節気に合わせて毎月趣向を変え、旬の恵みが一皿ずつ運ばれてくる。
夜になると、同じ空間はBAR KARYOへと姿を変える。2000年前の神代杉をレジンに閉じ込めたカウンターに腰を落ち着け、浮月庭園を眺めながら酒を傾ける。昼の茶懐石とは異なる静けさで、慶喜公が月を愛でたその庭が、夜の闇の中に広がる。
2000年前の神代杉をレジンに閉じ込めた巨大カウンターが美しいBAR KARYO。カウンターの後ろの壁は開閉式でイベントによってはここにアート作品などが飾られる。
屋外テラスもあり庭の風を感じながらカクテルを楽しむことができる。
山と海の食の王国で採るワサビ、食すソバ
「わさび山」とも呼ばれる有東木(うとうぎ)では貴重なわさびの収穫体験ができる。
もちろん、「食」も静岡市の魅力の1つになっている。まず地形の話をしなければならない。静岡市の最高峰は海抜3100メートル、駿河湾の最深部は水深2500メートル。その高低差はほぼキリマンジャロに匹敵する、という。この極端な地形が豊かな水を生み、山と海の両方の恵みをもたらしているという。 「お金を出せば美味しいものが食べられる都市はたくさんある。しかし普通のスーパーの普通の鮮魚コーナーに質のものが並んでいること」が静岡市民の誇りなのだという。
そんな静岡市にある清水港は日本のまぐろ水揚げ量の約半分を担う港だ。世界中の海で獲れたまぐろがここに集まり、目玉から尻尾まで全部位が市場に並ぶ。近年は一般向けの模擬競りも開催され、港の空気ごと体感できる。駿河湾はまた、世界に二か所しか産地がない桜えびの海でもある。生の桜えびのかき揚げ、缶詰を開けた瞬間に立つ磯の芳香、釜揚げしらすのふわりとした甘み——他の産地では希少なものが、ここでは日常の食卓に当たり前に上る。それを静岡市のもう1つの名産である缶詰の技術と掛け合わせ、ここでしか買えない珍しい缶詰がいっぱいあるのもちょっと楽しい。
山の幸も豊かな静岡市だが、はずしてはいけないのは「わさび」だろう。
安倍川を遡ること2時間、静岡市最奥部の有東木(うとうぎ)集落は、日本のわさび栽培発祥の地とされる。収穫体験を受け付けているわさび田もある。旬は10〜11月で「香りと旨味と辛味のバランスが一番いい」と言う。茎、葉、花、根、すべて食べられる。
そんな静岡での夕食。定石ならここで魚介類を食べに行くべきところかも知れないが、手打ちそば「たがた」という蕎麦屋を勧められ訪れると、なるほど面白かった。
実は静岡とそばの縁は深く、800年前、静岡出身の正一国師が中国から製粉技術を持ち帰り日本に蕎麦を普及させ、その蕎麦が家康とともに江戸へ伝わり「江戸打ち」の原型になったという。大政奉還後には慶喜公の随行者が発展した江戸そばを駿府に持ち帰った——つまり、蕎麦の文化が徳川とともに、静岡と江戸を往復したのだ。
店主の田形治さんは、10年以上の営業マン生活を経て、静岡在来種の蕎麦の香りを嗅いだ瞬間に職を辞した。。夜のコースでは予約者が希望をすれば、食事の前に1階のステージを使って目の前で蕎麦打ちをしてくれる。粉に水が入る瞬間、木の実のような甘く香ばしい香りが立ち、打ち立てを「水そば」として何もつけずに口に入れると、静岡の山の香りが溶けて広がる。自分を変えたこの体験を他の人にも体験して欲しいと、わざわざこの空間を作ったのだという。
実は2015年には同じ体験をミラノ万博で披露した。同年のミラノ万博で、山梨と静岡が共同で「富士山ウィーク」を設け、日本館のステージに8回立たせてもらったという。カメラとビジョンが据えられたステージで、そばの歴史を話しながら江戸打ちを実演した。一番拍手が多かったのは、丸い生地が四角に変わる瞬間だったという。「いきますよ。3、2、1——じゃーん」とやると、会場がどっと沸いた。イタリア人が8時間、9時間並んでくれた。「ものすごく喜ばれて、ハマってしまいました。本当に一生の経験ですね」と振り返る。
「静岡から来ましたって言っても、誰も知らないんですよ。でも、富士山の麓から来ましたって言うと、おお!ってなる。だから静岡は世界に出ていくべきだと確信しました。」と田形さん。「静岡はすごい食材の倉庫なんです」と胸を張る。
蕎麦の実の仕入れから製粉、麺打ちまで全工程に携わり蕎麦の魅力を伝える手打ち蕎麦たがた。産地・製粉・製麺の違いが楽しめる、蕎麦の食べ比べも用意。店主が酒蔵と作り上げた、蕎麦に合う日本酒もある。メニューにはないが、そばを氷で潰した新鮮な茶葉につけて食べる蕎麦の香りに衝撃を受けた。
「たがた」店主の田形治さん。在来作物連絡協議会の会長を務め、古き良き在来作物を広めている。貸切予約ができれば1階のこの特注の台で手打ちしている様子を間近に見て、蕎麦の香りが広がるのを味わうことができる。
田形さんが蕎麦を打ちながら語っていた言葉が、帰りの新幹線の中でも頭から離れなかった。「焼き畑をやると森が育ちます。森が育つと川と海が育つんです。僕たちが生きている代では無理です。でも、誰かが始めたら、300年先の静岡が豊かになる」。
浅間神社の宇佐美さんも、境内の片隅で漆の木を育てていた。15年育てないと使えないその木を、25年後の修復工事のために、今植えている。
平和とは、遠い未来を信じて今日を丁寧に生きることではないか。戦乱の世紀に生きる私たちが静岡に求めるインスピレーションは、実はそこにある。徳川家康が平和の幕府を開き、慶喜が血を流さずその幕を閉じたこの城下町には、「静かな岡」という名の通り、長い時間をかけて育まれた、そういう知恵が今も息づいている。
Profile
林信行 Nobuyuki Hayashi
1990年にITのジャーナリストとして国内外の媒体で記事の執筆を始める。最新トレンドの発信やIT業界を築いてきたレジェンドたちのインタビューを手掛けた。2000年代からはテクノロジーだけでは人々は豊かにならないと考えを改め、良いデザインを啓蒙すべくデザイン関連の取材、審査員などの活動を開始。2005年頃からはAIが世界にもたらす地殻変動を予見し、人の在り方を問うコンテンポラリーアートや教育の取材に加え、日本の地域や伝統文化にも関心を広げる。現在では、日本の伝統的な思想には未来の社会に向けた貴重なインスピレーションが詰まっているという信念のもと、これを世界に発信することに力を注いでいる。いくつかの企業の顧問や社外取締役に加え、金沢美術工芸大学で客員名誉教授に就いている。Nobi(ノビ)の愛称で親しまれている。
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取材/文:中嶋千祥(Premium Japan編集部)
日常に流され心身ともにふと余白がほしくなったら、北陸新幹線に乗って加賀温泉駅へ。そこからタクシーで約10分、山代温泉にたどり着きます。温泉街の中心に建つ界 加賀で温泉に身をゆだね、静かにゆったりと過ごす2泊3日を体験してきました。
この滞在では、温泉、美食、そして金継ぎを学ぶ「金継ぎいろは」や、加賀獅子頭ねつけの絵付けを体験する「手業のひととき」など、加賀文化に触れるアクティビティにも参加します。山代温泉の街歩きの楽しさも格別。文化と癒しを存分に味わう旅です。
「界 加賀」生きた文化財に触れる温泉旅館
タクシーの車窓からのどかな田園風景が続きます。加賀温泉駅から約10分ほどで山代温泉のランドマーク、レトロな風情が美しい古総湯が見えてきました。その目の前にたたずむのが「界 加賀」です。
界 加賀は、登録有形文化財に指定された旧来の建築を活かし、紅殻格子(べんがらごうし)など加賀特有の意匠を今に伝える空間。山代温泉の中心「湯の曲輪(ゆのがわ)」という歴史的街区に位置し、温泉文化とともに建築が生き続けています。保存にとどまらず、現代の滞在として機能することで、生きた文化財といえる価値を備えている温泉旅館です。
モダンと伝統を印象付けるロビー。水引のインスタレーションが際立つ。
トラベルライブラリーの窓から茶室が見えます。苔の蒼さが麗しい。
ご当地部屋 文化が彩るくつろぎ「加賀伝統工芸の間」
地域らしさを表現する界ならではの「ご当地部屋」。界 加賀では、加賀文化の粋が集められた「加賀伝統工芸の間」を用意しています。九谷焼や山中塗、加賀友禅、水引などの伝統工芸が部屋を彩り、九谷焼の茶器まで揃えられています。リビングとベッドルームを配した和モダンの設えは、華やかさの中にも落ち着きを感じさせるもの。調度の細部にまで加賀の美意識が息づき、滞在そのものが文化体験に。露天風呂付き客室では、山代温泉の湯をプライベートに楽しめます。
今回は古総湯を眺めるサイドのお部屋に宿泊。温泉街を眺めながら、のんびりするのにはぴったりでした。
夜、部屋から眺める古総湯と総湯。
今回は2泊3日の旅。2泊目は朝から温泉に入ってゆっくりしたかったので、「連泊おこもりセット」をお願いしました。ランチは特製の「昼餉弁当」がお部屋に届きます。
「連泊おこもりセット」には、ご当地の日本酒 加賀鳶とおつまみ、そして水引セットもお部屋に届きます。説明書を読み解きながら水引にもチャレンジしてみました。
美人の湯として知られる山代温泉を楽しむ
山代温泉は開湯1300年歴史を誇る温泉地。そのお湯は美人の湯としても知られます。ナトリウム・カルシウム―硫酸塩・塩化物泉の、弱アルカリ性でやさしいお湯なので、いつまでも入っていたくなる。そんな温泉です。
さっそく「界 加賀」の大浴場へ。浴室周りには、九谷焼のアートパネルや加賀提灯など、地元の伝統工芸が随所に配され、湯に浸かりながらこの土地の文化に触れられる設えに。旅先に身を置いている実感が、静かに満ちていきます。また、界 加賀のゲストは、山代温泉のランドマーク 古総湯にも入れます。界からサンダルをひっかけて目の前の古総湯へ。温泉街の雰囲気が旅気分を満たしてくれます。
内湯でゆったりお湯に浸かったら、露天風呂へ。湯上がり処にはアイスキャンディーや冷たいドリンクのサービスがうれしい。
界 加賀の目の前に建つ古総湯は山代温泉のランドマーク。明治時代の総湯を復元しています。界 加賀の部屋に備えてある風呂敷を見せれば、宿泊中は何度でも無料で温泉を楽しめます。
「金継ぎいろは」界 加賀で大人気のアクティビティ
その土地や文化に触れることができるアクティビティが用意されているのも、界ならでは。2泊3日の滞在中、一度は体験してみたかった金継ぎそして加賀獅子頭ねつけの絵付け体験に参加してみることにしました。
界 加賀に行くなら絶対に体験してみたかった「金継ぎいろは」。旅館の中でこれだけの工房を持っていることに驚かされます。日本で初めて、温泉旅館の内部に設けられた金継ぎ工房。加賀地方の伝統的な建築様式「紅殻格子(べんがらごうし)」を備えた登録有形文化財の中に佇み、歴史の趣を感じさせる空間です。
宿泊者限定で体験できる「金継ぎいろは」では、割れや欠けのある器を美しく蘇らせる日本の伝統技法「金継ぎ」の奥深さに触れることができます。美しい九谷焼の食器を見ながら、まずは界のスタッフが器を見ながら金継ぎの説明。その後、漆で欠けを埋める「埋め」や、金属粉を施す「粉蒔き」など、実際の工程の一部を体験します。
欠けたり割れたりした部分に金継ぎを施すと、異なるニュアンスが加わり妙味を増し、美を宿す。金継ぎを施すという選択が、器に新たな価値を与える……この美意識の高まりがたまらないのです。
実際に器を見ながら、金継ぎとは何か、その工程などをスタッフの方がていねいに説明してくれます。
今日は「埋め」と「粉蒔き」を体験することができました。ひとつひとつの工程には、硬化させる時間を十分に取る必要があり、すべての工程を経て仕上げまでに約1か月はかかるそう。
加賀獅子「加賀獅子頭ねつけの絵付け」体験
手業のひととき「加賀獅子頭の400年の伝統に浸り、職人と語らう工房ツアー」は、獅子頭の制作や修理を手掛ける知田工房さんに伺い、制作風景の見学、そしてミニ獅子頭の根付に絵付け体験もセットになっています。知田工房は創業70年を誇る工房。二代目 知田清雲さんにお話しを伺いながら、根付に絵付けをしていきます。
この界隈には何軒も加賀獅子頭の工房があったそうですが、現在では知田工房だけになってしまったそうです。修理のために、全国各地から知田工房に獅子頭が集まります。能登半島地震で傷んでしまった獅子頭もこちらで修復しているそうです。加賀文化を守るためには、その文化を学び、触れることが大切なのだと、界 加賀のアクティビティから知ることができました。
すでに彫りあがっている獅子頭の根付をひとつ選び、絵付けをしていきます。可愛く仕上がったでしょうか?
知田工房 二代目 知田清雲さん。奥さま、息子さんとご家族で伝統を守っています。
北陸の美味と器の美を味わう 北陸海宝会席
旅の楽しみはやはり食。界 加賀では、ご当地先付け「鮑のわかめ蒸し」から始まるディナー「北陸海宝会席」を用意しています。もちろん界 加賀だからこそ器にも注目してください。山代温泉に長く逗留し器を学んだ北大路魯山人は、器は食物を乗せる容器ではなく、味や盛り付けと共に高め合うものとして「器は料理の着物である」という言葉を残しています。その言葉通り、器と料理のマリアージュも感じさせる会席に仕上がっています。
豪華な宝楽盛りとお造り取り合わせ。金継ぎ工房でよみがえった器が使われています。合わせた日本酒「やましろ」は、界 加賀近くの温泉寺の湧き水で仕込んだもの。
北陸と言えばのどぐろ。のどぐろとふぐのしゃぶしゃぶはさっと湯通ししてすぐ召し上がれ。しゃぶしゃぶのスープで作る雑炊は思わずおかわりしてしまう美味しさ。
鮮烈な赤がドラマティックな「べんがらラウンジ」でくつろぐ
食後には伝統建築棟内の2階にある「べんがらラウンジ」へ。ラウンジに足を踏み入れると、古総湯からこぼれる光が窓から入り、べんがらの赤、吊るし飾りの水引の白が相まって、不思議な没入感を醸し出します。
メニューの中からワンドリンクと、おつまみ2種類選ぶというスタイル。約100種類あるという小皿、酒器の中から好きなものを選びます。器の色、形、質感などで思いがけない組合せを見つける面白さは、うつわ好きにはたまりません。
華やぎと落ち着きが同居する、不思議な没入感が魅力。静かにお酒を飲みながら語らったり、本を読んだりして過ごし方はさまざま。
色とりどりの九谷焼や山名塗の並ぶ、べんがらラウンジのエントランス。
九谷焼の小皿に載せた甘味とナッツと鰤の生ハム。萬歳楽 加賀梅酒 12年熟成をロックで。古総湯の灯りとべんがらの赤が溶け合ってロマンティックな雰囲気です。
ご当地楽「加賀獅子舞」界スタッフの大迫力の演舞
21時半。ライブラリーラウンジにゲストが集まります。界 加賀のスタッフによる加賀獅子舞の幕開けです。加賀獅子の勇壮な動き、空気を切り裂くように歯を打ち鳴らす音で、場の温度が一気に高まっていきます。
加賀獅子舞の起源は、初代加賀藩主・前田利家の時代にさかのぼると伝えられています。なかでもこの「白銀の舞」と呼ばれる演目は、独特の迫力を湛え、観る者の視線を逃がしません。
大迫力の加賀獅子舞。毎晩開催されています。
観光&お土産 山代温泉街歩きのすすめ
自分だけの山代温泉の魅力を見つけるための山代温泉ガイド
界 加賀は古総湯の目の前に位置し、まさに山代温泉の中心にあります。服部神社、温泉寺などの名刹、北大路魯山人寓居跡いろは草庵など散歩の途中に立ち寄るのにぴったり。地元名産の和菓子店や九谷焼の名店も歩いてすぐです。途中、とてもシックな小物屋さんや、界 加賀のスタッフおすすめのお蕎麦屋さん、お寿司屋さんを見つけました。温泉街を探検してみてください。
服部神社 https://www.tabimati.net/spot/detail_193.html (加賀温泉郷WEBサイト内)
服部神社 縁結びと願いを叶えるご利益で有名
927年に建立されたと伝わる服部(はとり)神社。機織の神・天羽槌雄神(あめのはづちのおのかみ)と縁結びの神・菊理姫神(くくりひめのかみ)を祀っています。ひとつだけ願いを叶えてくださる一言地蔵も有名です。
薬王院 温泉神社 山代温泉 1300年の昔、山代温泉開湯伝説を持つ寺
行基上人が白山へ向かう途中に発見されたと伝わるお寺。十一面観世音菩薩像、不動明王像など文化財も所有する由緒あるお寺です。住職を務めた明覚上人はあいうえお五十音の創始者だとも言われています。
れん 永昌堂 https://www.yorunoume.com/
れん 永昌堂 シックな外観が素敵。上品な甘さの二百年羊羹をお土産に
200年の歴史を誇る老舗、れん 永昌堂。モダンな外観が湯の曲輪通りでも際立っています。二百年羊羹は上品な甘さでお土産にぴったり。レトロなパッケージの羊羹もかわいい。界 加賀よりすぐです。
九谷焼窯元 須田菁華https://sudaseika.com/
九谷焼窯元 須田菁華 北大路魯山人とも縁が深い老舗
北大路魯山人とも縁の深い九谷焼窯元 須田菁華。畳敷きの店内には九谷焼の名品がずらり。静謐な雰囲気の中、器を吟味する贅沢な時間が過ごせます。
月月 tsuki-tsuki Instagram @tsukitsuki_official
月月 tsuki-tsuki オリジナルのお香や素敵な小物が見つかります
界 加賀でも購入できる植物△線香の企画制作販売を手掛けるショップです。異なる香りのお香を焚いて香りのレイヤードを楽しむなど、オーナーの世界観が広がっています。お香立てや食器などセンスの良い小物類など発見のあるお店です。
おんせん図書館みかん https://akurume.com/mikan
おんせん図書館みかん 山代温泉に集う人たちの交流スペース
地元の有志がボランティアで運営する「おんせん図書館みかん」。地元の方、観光客、移住者など様々な人が集まり、交流する私設図書館です。一箱本棚のオーナーが貸し出したり販売する本を読んだり、コワーキングスペースとしても使用可能。新しい山代の息吹を感じる場所です。
前川売店(前川ゆせん玉子店) 山代温泉名物のお土産
界 加賀の並びにある和菓子店「前川売店」の看板商品「ゆせんたまご」。早い話が温泉玉子なのですが、緩すぎず硬すぎず、絶妙なゆで加減が美味。日持ちもするので、ユニークなお土産になります。
亀寿司 界スタッフおすすめの名店。北陸の海の幸をお寿司で味わえます
2泊3日の連泊旅なら、2日目のディナーは外食も選択肢。新鮮な北陸の海の幸をお寿司で味わえます。風情あふれる店構えも素敵です。界から歩いてすぐなのも便利。
トラベルライブラリーとお土産処で最後までくつろぐ
最終日の朝はもう一度、古総湯へ。戻ったらトラベルライブラリーでお茶を一服。たくさんお土産も買ったのに、界 加賀スタッフがキュレーションしたお土産コーナーでさらにお買い物。ほかにはない、可愛いものがたくさんあって目移りしてしまいます。
トラベルライブラリーでひと際目を引く北大路魯山人が揮毫した十曲屏風。山代温泉に長く逗留し、器や料理の研究をした魯山人の豪胆で自由な筆使いが見られます。温泉寺の明覚上人が五十音あいうえおの発案をしたという由来から、したためとものと思われる。
月月の植物△線香はどれもナチュラルな香り。
昨日購入した、れんの二百年羊羹に合う、加賀棒茶鏡花をお土産に。
界 加賀でほどよく満たされ、静かにほどける2泊3日
温泉に浸かり、アクティビティで伝統文化に触れ、気ままに街を歩く。山代温泉の界 加賀には、時間に追われない贅沢が用意されています。ただ静かに、自分の感覚が戻ってくる場所。少し息を抜きたくなったとき、ふっと距離を取りたくなったとき。界 加賀には、日常から切り離された、軽やかな時間が流れています。
◆界 加賀
1624年から多くの文化人を迎えてきた老舗旅館の歴史を受け継ぎつつ、新しい感性が息づく加賀伝統の温泉旅館です。フロントホールをふくむ伝統建築棟と茶室は、国の有形文化財に登録されています。加賀友禅・水引をはじめとする伝統工芸をちりばめた客室や、美食家・北大路魯山人の思想が生きる料理、迫力の加賀獅子舞など、加賀文化に浸る滞在を楽しむことができます。
界 加賀 2泊のすすめ
温泉を存分に楽しみ、心身ともにリフレッシュするには1泊ではもったいない。ゆっくりのんびり滞在する2泊3日をおすすめ。心ゆくまで旅の時間を楽しむ連泊滞在をご提案します。
界 2泊のおすすめhttps://hoshinoresorts.com/ja/brands/kai/sp/renpaku_kai/
◆界ブランドとは
界は、星野リゾートが運営する日本初の温泉旅館ブランドです。現在、全国 23 か所に展開しており、今後数年かけて日本有数の温泉地に約 30 か所展開し、日本旅の拠点となることを目指しています。「王道なのに、あたらしい。」をテーマに趣のある心地よく快適な空間で、ホスピタリティ溢れるスタッフが旅の醍醐味である「地域」や「季節」へこだわり、その土地ならではの旅の提案をするブランドです。
photos by Azusa Todoroki
text by Chisa Nakajima
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