九島辰也連載 トヨタクラウン九島辰也連載 トヨタクラウン

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カーライフその先の未来へ

2024.1.26

トヨタが誇るクラウンの驚くべき変身をどう読み解くか




想像を超えた姿で登場した、クラウンの品格

 

2023年を振り返ると話題となったクルマはやはりトヨタ・プリウスだろう。それまでとは異なるスポーティなスタイリングに二度見した方は多いはず。走りを含め歴代モデルとは異なるベクトルへと進み、その仕上がりの良さは2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤーのイヤーカーに輝いたほど。クルマ好きも納得のパフォーマンスである。
そしてもう一つトヨタは我々を驚かせるモデルを登場させた。2022年に登場したクラウン・クロスオーバーだ。伝統あるモデルがガラリと姿を変えて登場したのだから衝撃は大きかった。多くの人が「これがクラウン?」と呟いたことだろう。事前に新型クラウンはSUVになるという情報が飛び交ったが、多くの人がそれを信じなかった気がする。
ところがそれは発表された。想像を超えたカタチで。興味深かったのは4つのモデルがそこにあったこと。セダン、エステート、クロスオーバー、スポーツという面々が並んだ。「なるほどこういう展開なんだ」と思い知らされる。時代を鑑みて背の高いモデルをラインナップしながら王道セダンもしっかり揃えるところがある意味トヨタらしい。

 

前置きが長くなったが、クロスオーバーに続きスポーツとセダンが昨年後半に発表された。スポーツは10月6日、セダンは11月2日である。なぜかエステートはまだだが、これで4つのうち3つのモデルが揃った。
そんなクラウンスポーツとセダンを昨年12月の初旬に試乗したので、その概要をお届けしよう。

 

スポーツからセダン、幅広いニーズを捉える戦略手腕

 

まずは4つのモデルのポジショニングだが、プレゼンテーションによると明確に分けられていた。マトリクスのセンターにクロスオーバーを置き、一番エモーショナルでクリエイティブなのがスポーツ、その間反対にいるのがセダンとなる。つまり、革新的なスポーツに対し保守王道的なのがセダン。そしてそんなセダンにクリエイティブさを注入したのがエステートとなる。同一のセグメントにおいて4つのモデルでマーケットを包囲するよう仕向けた。かなり頭脳的な戦略である。






SPORT Z(2.5Lハイブリッド車)。 SPORT Z(2.5Lハイブリッド車)。

SPORT Z(2.5Lハイブリッド車)。全長4,720mm 全幅1,880mm 全高1,565mm 燃費WLTCモード21.3km/L 総排気量2.487L




メーカー希望小売価格 SPORT Z 590万円。 メーカー希望小売価格 SPORT Z 590万円。

メーカー希望小売価格 SPORT Z 590万円。









ではそのキャクターだが、スポーツは新しいカタチのSUVとして“美しいデザイン”、“楽しい走り”を求めてつくられた。サイズはクロスオーバーの全長を縮めワイドを広くし、若干だが背を高くした。そしてホイールベースを短くし、タイヤを大径化することで俊敏性を向上させている。まさにその名の通りのスポーツ。スタイリングのイメージは、ポルシェのパナメーラと同スポーツツーリズモに近い。クロスオーバーがパナメーラ、スポーツが同スポーツツーリズモといった感じ。パワーソースはハイブリッド(HEV)とプラグインハイブリッド(PHEV)の2つが設定された。








クラウン セダン Z(ハイブリッド車)<オプション装着車>。価格はHEV(ハイブリッド)が730万円、FCEV(燃料電池車)が830万円(消費税込)。 クラウン セダン Z(ハイブリッド車)<オプション装着車>。価格はHEV(ハイブリッド)が730万円、FCEV(燃料電池車)が830万円(消費税込)。

クラウン セダン Z(ハイブリッド車)<オプション装着車>。価格はHEV(ハイブリッド)が730万円、FCEV(燃料電池車)が830万円(消費税込)。








これに対しセダンは正統派セダンを再定義することからスタートした。パーソナルでもビジネスでも使えるとし、ショーファーカーとしての室内の広さも確保する。従来型セダン比では、全長とホイールベースを長くし、車幅を広くした。

 

再定義したスタイリングはセダンとはいえ流れるようなフォルムを持つ。先代もそうだったが、なだらかなルーフラインが特徴だ。いわゆるスリーボックスと呼ばれる箱型とは別物となる。

 

ユニークなのはパワーソースで、燃料電池車(FCEV)とハイブリッド(HEV)が用意された。燃料電池車は先に発売されているトヨタ・ミライのパワートレインと共有する。






最高出力134kW(182PS)/6,940rpm、最大トルク300Nm/0〜3,267rpmを発生する永久磁石式同期型モーターで駆動する。 最高出力134kW(182PS)/6,940rpm、最大トルク300Nm/0〜3,267rpmを発生する永久磁石式同期型モーターで駆動する。

最高出力134kW(182PS)/6,940rpm、最大トルク300Nm/0〜3,267rpmを発生する永久磁石式同期型モーターで駆動する。






全長 5,030mm 全幅 1,890mm 全高 1,475mm 全長 5,030mm 全幅 1,890mm 全高 1,475mm

全長 5,030mm 全幅 1,890mm 全高 1,475mm。






ではなぜセダンに燃料電池車を設けたのかだが、これには明確な理由があって、ターゲットを官公庁や自治体に定めている。つまり、SDGs的な側面からそれを欲する人たちに焦点を絞った。そうすればなかなか増えない水素ステーションも全国に普及すると思われる。国の補助金と地方財政がそれをサポートするからだ。それにそういった役所では今もまだセダン至上主義的な空気がある。お偉方の送迎にはSUVよりセダンの方が好評のようだ。もう何年も前にアメリカ大統領車がセダンからSUVにスイッチしているのにそこは変わらない。

 

ということで、今回はクラウンの2つのモデル、スポーツとセダンにスポットを当てた。トヨタのメジャーなモデルだけにいろいろな意見はあるだろう。ただどちらのモデルも走りは気持ちよかった。スポーティに変貌したプリウスのようにクラウンもまた高いレベルの走行性能を持つ。実はここがキモ。マーケティングが完璧でもそこが欠けていたらモデルの寿命は長続きしない。最近は特にそうだ。その意味では4つ目のモデルも期待出来るだろう。クラウンエステートで長距離テストドライブも悪くない。

九島辰也 Tatsuya Kushima

 

モータージャーナリスト兼コラムニスト。現在、サーフィン専門誌「NALU」のメディアサイト編集長、メディアビジネスプロデューサーを担当。これまで多くのメンズ誌、ゴルフ誌、自動車誌、エアライン機内誌などの編集長を経験している。メディア活動以外では2023-2024日本カーオブザイヤー選考委員、(社)日本葉巻協会会員、日本ボートオブザイヤー選考委員、メンズゴルフウェア「The Duke`s Golf」のクリエイティブディレクターを務めている。

 

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