ロックン・ロールス・ロイス
「へぇ、どんなにすごいかと思ったら、意外とエンジンの音が静かなんだね」
ロールス・ロイス ドーンの6.6ℓV型12気筒ツインターボに火を入れたチバユウスケは、そんな感想を口にした。25年以上も日本のロックシーンを疾走し、フジロックのトリを務めた経験もあるチバユウスケの存在感はハンパない。パルテノン神殿をモチーフにしたとされるドーンの荘厳なフロントグリルにも、一歩も引けを取らない。イギリスのパンクやパブロックの影響を受けたチバさんだけに英国車とは相性がいい、とファンは勝手な感想を抱くのだった。
外に出ると、V12ツインターボはほとんどノイズもバイブレーションも感じさせないまま、地底から湧き出るマグマのようなトルクでドーンを押し出す。乗り心地は大船に乗ったかのように快適だ。ロールス・ロイスは歴史と伝統があるというだけでなく、最新技術で最先端を突っ走るブランドなのだ。屋根を開けると、初夏の陽射しが差し込む。ドーンとは夜明けの意。
「おもしろいね。ハワイでオープンカーに乗って気持ちがよかったのを思い出したよ。キャロルとか聴きたくなる」。ただし、ここ20年は運転をしていないという。「常に飲んじゃうからね(笑)」。なんて格好がいいんだ。「でも、クルマにちょっと興味があって考えてるんだ」。どんなクルマかを問うと、「あんまり言わないほうがいいかな。ごめんね」と、また格好いい。
チバさんが率いるThe Birthdayが3月に発表した新譜『VIVIAN KILLERS』は小細工を廃したストレートな音に満ちていて、いい意味でベテランらしくない。瑞々しい。いかにもライブで映えそうな曲ばかりですねと伝えると、「ライブで再現できないことは極力やらないようにしているからね」と、本日3度目の格好よさ。
チバユウスケもドーンも風格がある。ロックンロールの王様とクルマの王様だ。同時に、新作を出すたびに進化を続ける王様でもある。ロックン・ロールス・ロイス! レジェンドは、いつまでも転がり続けるからレジェンドなのだ。
Rolls-Royce Dawn
2ドアクーペのレイスから派生したコンバーチブルがドーン。今回の試乗車は、エンジンをさらにパワーアップし、強靱な足まわりを与えたブラック・バッジ仕様。よりダイレクトなセッティングとなったステアリングとトランスミッションがエキサイティングなフィールを提供する。
SPEC 全長×全幅×全高:5295×1945×1500mm ホイールベース:3110mm 車両重量:2560㎏ 乗車定員:4名 ¥44,600,000~
チバユウスケ ロックンローラー
1968年生まれ。96年にTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTのボーカルとしてデビュー。いくつかのバンドを経て現在はThe Birthdayで活動。3月に発表したアルバム『VIVIAN KILLERS』を引っさげて、10月まではツアーで全国を回る予定だ。