Ferrari 360 Modena Long-Term Test / Vol. 20

29歳、フェラーリを買う──Vol.20 吉か凶か、新しい“音”の結果はいかに!?<後編②>

『GQ JAPAN』の編集者・イナガキ(29歳)が、ひょんなことから中古のフェラーリを購入した! 勢いで買ってしまったフェラーリのある生活とは? 今回は、フェラーリのオーディオ交換に迫る。ようやく装着されたオーディオ・システムはいかに!? 文・稲垣邦康(GQ) 写真・安井宏充(Weekend.)
29歳、フェラーリを買う──Vol.20 吉か凶か、新しい“音”の結果はいかに<後編②>
筆者が購入した360モデナは2000年製だ。
まるで歌詞の世界が、目前で繰り広げられている感じ

<後編①では完成したオーディオ・システムに迫る!>

はたして、“音”の印象はいかに。早速、公道に出て試した。

そのとき、懇意にしている作詞家・吉元由美さんのデビュー35周年記念パーティが、もうじき開かれるのを思い出した。そこで、吉元さんが作詞した曲を聴くこととした。

オーディオ・システムを装着し、ファクトリーを出発する直前の360モデナ。

まずは、平原綾香さんが唄った「Jupiter」を聴く。あたりまえだが、これまでのFMトランスミッターと異なり、雑音がまったくないのにまず感激した。荘厳なイントロが車内に響く。ボリュームを上げると、車内はまるでコンサート・ホールのような迫力だ! 平原さんの透き通る声がよく耳に入る。

ミリオンヒットとなった平原綾香さんが唄う『Jupiter』は2003年12月に発売された(写真提供:株式会社ドリーミュージック)。作詞した吉元由美さんは、今年デビュー35周年を迎えた。

フェラーリ・サウンドが聴こえないほどにボリュームを上げると、迫力満点だ。あのV8が聞こえなくても、コノリーレザーのバケット・シートに包まれ、パドルシフトを操作していれば、フェラーリに乗っていることはわかった。フェラーリの運転を楽しみつつ、音楽まで楽しめるようになったのだ!

フェラーリの運転を楽しみつつも、状況に応じ、音楽を楽しめるようになった360モデナ。「フェラーリ・サウンドがあれば音楽は不要」といった意見は多かったが、筆者は、エンジン・サウンドも音楽も楽しみたいワガママだったゆえ、オーディオ・システムを交換した。

心地よく音楽を聴いていると、ショート・メッセージが届いた。ヘッドユニットの専用スウィッチを押すと、なんとメッセージを音声で読み上げてくれた。機械音声ゆえ、決して流暢な読み上げではないものの、十分聞き取れる。

ショートメッセージの本文読み上げ時は、画面に「読み上げ中」と表示される。

さらに、「どこに向かおうかなぁ」と、思い、とりあえず音声操作スイッチを押す。なにも考えず、適当に目的地を話すと、Googleマップが自動で認識し、目的地がセットされた。

音声でも、Googleマップの操作は可能だ。
画面向きを縦・横自在に変えられるのは便利だ。

あてのないドライブの2曲目は杏里さんが歌った「SUMMER CANDLES」。吉元さんが作詞した曲のなかで、ボクが1番好きな曲だ。

『SUMMER CANDLES』は1988年に発売された杏里さんのシングル。日本テレビ系ドラマ『恋人も濡れる街角 URBAN LOVE STORY』の主題歌で、JT「サムタイム」のCMソングにもなった。

イントロが流れると、これまでのカー・オーディオでは聴いたことのない、美しいメロディーが流れた。一瞬、フェラーリを運転しているのを忘れてしまうほど、惚れ惚れするメロディーだった。

アルバムアートがわかりやく表示されるのも便利だ。ちなみに、筆者はAORもよく聞く。

そのあとは終始、高音および低音のメリハリが効いた、爽やかなメロディーが聴けた。印象的だったのは最後の盛り上がり部分。「♪幾千の胸に眠ってる 星が輝きを放つとき 奇跡がいま ふたりを呼び合う〜」のところで、(音量を上げると)多くのカー・オーディオが音割れしていたものの、ボクのJBLサウンド・システムはまったく音割れしなかった。むしろ、迫力がさらに増し、感動的なフィナーレを堪能出来た。

おさまりのよいドアスピーカー。装着するにあたり、大きな加工は一切していない。なおサイズの都合上、スピーカー・カバーは装着しなかった。

とはいえ、“聴き疲れ”はない。低音と高音のバランスがいいからだ。低音重視のオーディオ・システムは、はじめのうちこそ、迫力ある音に満足するというが、ある程度の時間聴いていると耳が疲れてくるそうだ。

ツイーター(高音用スピーカー)は、カバーを装着した。

聴き疲れ知らずのJBLオーディオ・システムは、まるで歌詞の世界が、目前で繰り広げられている感じだ。そのあと聴いたほかの曲もまさにそうだった。オーディオ・システムを変えた結果、驚くほど音楽が楽しめるようになったのである。

Ferrari 360Modena|フェラーリ 360モデナ

正直、車検前には少々痛い出費ではあったものの(MDFの加工などが発生したため、当初予定額の1.5倍要した!)、これほどの素晴らしいサウンドが聞けるのであれば費用対効果は高いと思う。しかも、簡単にノーマル状態へ戻せるのもありがたい。

終わりなきオーディオ・カスタム

「いい音が聴けてよかった!」と、思ったものの、オーディオ・カスタムの上級者を目指すのであれば、やるべきことはまだまだあるという。

ひとつはバッテリーの交換だ。オーディオ・システムはそれなりに電力を必要とする。現在、ボクの360モデナに搭載されているバッテリーでは性能不足の可能性があるという。バッテリー上がりのリスクも高まるそうだ。

現在装着されているバッテリーは「グロバット」というブランドだ。

そもそも、搭載されているバッテリーは純正品ではない。「グロバット」というブランドで、バングラデッシュ製である。關口さんも、「見たことないですね」と、話す。

ラゲッジ・ルーム奥にキルスウィッチが備わっているのを關口さんが教えてくれた。これで、バッテリー上がりの恐怖から解放されそうだ。

では、どうすべきか? 關口さんのオススメはパナソニック製の「caos」とのこと。大容量のうえ、長持ちするという。公式ウェブサイトを早速調べると、「強くしっかりとした音質で、コンサートホールなど、会場の空気感や臨場感までも感じることができます」と、記されている。

關口さんも「音は変わりますよ」と、話すから間違いないはず。バッテリーで音が変わるとは知らなかった。現在搭載されているバッテリーは製造年月日もよくわからないから、早々にcaosへ交換しようと思う。

パナソニック製「caos」にバッテリーを交換すれば、音質は向上するそうだ。

また、ドア内部を補強すると、音質はより良くなるという。ボクの360モデナのドア内部には、比較的多くの空洞部分があるが、これは音質を低下させる要因という。ただし空洞について、關口さんが予想するに「軽量化のためではないか?」とのことであった。

空洞部分の多いドア内側。

ちなみに、音質向上を目指すのであれば、ほかにも方法はあるという。とはいえ、予算は限られる。バッテリー交換はするものの、ほかは一旦保留としたい。が、時間と費用が許せばあらゆる施策を試してみたいのが本音である。

そういえば以前、「カスタムにハマると抜け出せない」と、雑誌『Option』の編集部に在籍する知人が話していたが、その理由がようやくわかった。オーディオ交換にしても、きりがないのだ。

はたして、オーディオ・システム交換企画は今回が最後になるのか、それともいずれ復活するのか……いっそのこと、読者の反響次第で、考えたいと思うのであった。

<後編①では完成したオーディオ・システムに迫る!>

Ferrari 360Modena|フェラーリ 360モデナ