Ferrari 360 Modena Long-Term Test / Vol. 19

29歳、フェラーリを買う──Vol.19 完成! これがフェラーリのオーディオ・カスタムだ!<後編①>

『GQ JAPAN』の編集者・イナガキ(29歳)が、ひょんなことから中古のフェラーリを購入した! 勢いで買ってしまったフェラーリのある生活とは? 今回は、フェラーリのオーディオ交換に迫る。ようやく装着されたオーディオ・システムはいかに!? 文・稲垣邦康(GQ) 写真・安井宏充(Weekend.)
29歳、フェラーリを買う──Vol.19 完成! これがフェラーリのオーディオ・カスタムだ!<後編①>
オーディオ・システムの最終チェック風景。なお、筆者が購入した360モデナは2000年製だ。
美しく設置されたオーディオ・システム

<後編②では装着したオーディオ・システムの音を体感! 感想はいかに?>

最新のオーディオ・システムを搭載したボクの360モデナはいかに? 預け入れてから1週間後、ボンドプラス(埼玉県さいたま市)へ引き取りに行った。

ファクトリーに置かれたボクの360モデナは、最終作業中だった。担当する關口(せきぐち)さんを含む数人のスタッフが、丁寧に内装パーツを取り付けていく。

ドアの内張は、ふたりで取り付けていた。
取り外したパーツ類は、丁寧に置かれていた。

「取り外しより、取り付けが大変です」と、關口さんは言う。そういえば、交換作業中の経過写真を見たが、多くの内装パーツが外されていた。たとえば、フロントシートは2脚とも綺麗に外されていたから、作業は相当大変だったはず。

フロント・シートが取り外された状態。滅多に見られない光景だ。

まだ作業中ではあるものの、気になったので恐る恐る車内を覗いた。見て、びっくり! 想像以上に美しく設置されているではないか! 加工したMDF(Medium Density Fiberboard)にクロスオーバー・ネットワーク、サブウーファー、アンプが綺麗に並べられている。それに、配線類はMDFの裏に隠されているからすっきりしている。

加工したMDF(Medium Density Fiberboard)にクロスオーバー・ネットワーク、サブウーファー、アンプが綺麗に取り付けられている。
ふたつのクロスオーバー・ネットワークは、並べて置かれた。
パワー・アンプは使用中、青く光る。ただし、夜間でも気にならないレベルだ。JBLのロゴが誇らしい。

「360モデナの場合、配線設置などを慎重におこなう必要があるため、時間を要しました」と、關口さんは話す。にもかかわらず、比較的短期間で仕上げてくれて、ありがたい限りだ。なお、同程度のシステムを一般的な日本車に搭載する場合、2日前後で可能という。やはりフェラーリは特別なクルマなのだ。

F1マチック・シフトレバーの再装着風景。配線を通すために、センターコンソールまわりの一部パーツは外される。

ボルドーのウルトラスウェードで覆われたMDFも、すっかりインテリアに馴染んでいる。それなりに費用は要したが、納得の完成度だ。ちなみに、ウルトラスウェード以外の人口皮革は、耐久性がイマイチという。

東レが開発したウルトラスウェードは超極細繊維を使う。なお、おなじく東レが手がける人工皮革ブランド「アルカンターラ」は、最新フェラーリのインテリアにも一部使われている。

とはいえ、懸念事項もあった。それは、タイミングベルトの交換だ。360モデナは、先代のF355と異なり、エンジンをおろさずにタイミングベルトが交換出来る。なぜなら、インテリアからエンジンルームにアクセス出来る大型の“穴”があるからだ。

その“穴”は、フロント・シート背面のちょうど真ん中あたりにある。が、今、そのあたりは加工したMDFで覆われている。はたして、大丈夫か? 取り外しに多額の費用を要したら困る。取り付け前に確認するのをすっかり忘れていた。

加工したMDF(Medium Density Fiberboard)。配線を通すため、複数の穴があけられている。

關口さんに訊くと「MDFはマジックテープで取り付けていますから、簡単に取り外せますので問題ありません」とのこと。安心した。ノーマル状態へ容易に戻せるよう設計し、設置したという。

アルミテープで補強されたドア内部。ネジが外れていた助手席も、しっかり固定してくれた。

さらに、スピーカー交換にあわせて、ドア内部もリフレッシュ。経年劣化によって、だらしなく垂れ下がったビニール部分を、アルミテープで補強してくれた。また、きちんと固定されていなかった助手席は、脱着時に再固定されていた。オーディオ・システムとは関係ない部分まで、手を入れてくれたのはありがたい。

パイオニア製のヘッドユニットは、1番最後に取り付けられた。
ネジ1本で変わる音質

内装パーツをすべて戻し、オーディオ・システムの音調整に入る。クラシックや最新の洋楽・邦楽など、あらゆる音楽を流しチェック。そして、アンプやサブウーファーなどの設定を細かく設定していく。

アンプの調整は、側面にあるダイアルでおこなう。

外で聞いている限り、「お、いい音が流れている!」と、感激したものの、まだ音質向上の余地があるという。

新たに設置されたJBLのスピーカー。すっきりとおさまっている。

「どこからか、余計な音が響いていますね」と、スタッフのひとりが気づいた。あらゆる箇所をチェックした結果、原因はドアの内張に使われているネジだった。しかも、たった1本である。たしかに耳をすますと、かすかなビビリ音が聞こえた。

音質向上のため、ドア内張のネジを1本外した。

「外しても問題はないと思います」と、言われたので、試しに外した。すると、さっきまで気になっていたビビリ音が消えているではないか! ネジ1本でこんなに変わるとは……。なお、何も考えずにヘッドユニットを処分した前回の反省から、このネジも、厳重に袋に詰めて保管しているのは言うまでもない。

複数の曲やラジオを聴き、ツイーターの位置などを細かく調整する。

最後、ドア上部に設置されたツイーターの位置などを調整し、交換作業は完了した。

運転席に座る限り、いつもとおなじ見慣れた風景だ。とはいえ、うしろを振り返ればサブウーファーを筆頭に、オーディオ・システムを構成する機械が鎮座している。専用MDFによって、シートうしろに備わる小物入れ用ネットは使えなくなったがとくに問題はなさそうだ。

物理的なスウィッチ類を極力なくしたパイオニアのヘッドユニット「MVH-7500SC」も、シンプルなデザインで好ましい。

シンプルなデザインゆえ、インテリアにマッチしているパイオニアのヘッドユニット「MVH-7500SC」。操作性も良好だ。

早速、スマートフォンを取り付けてみる。内蔵されているクレイドルは、しっかりとスマートフォンを固定するうえ、画面を縦・横自在に動かせるのも便利だ。

ほとんどの操作は、スマートフォンにダウンロードした専用アプリケーションでおこなう。このアプリケーションの使い勝手も優れていた。たとえば、音楽検索は容易だったし、ショート・メッセージなどを読み上げてくれるのは便利だった。

スマートフォン固定用のクレイドルは、本体に内蔵されている。

はたして、フェラーリでは珍しいと言われているオーディオ・システム交換の結果はいかに? 後編②では、驚きの変化を報告する!

<後編②では装着したオーディオ・システムの音を体感! 感想はいかに?>

純正パーツのほとんどは、想像以上にコンディションはよかったものの、一部は劣化が相当進んでいた。