Review: Mazda CX-8 25T

3列SUVに高性能ガソリンターボ・エンジンは必要か?──マツダ CX-8 25T試乗記

マツダの3列SUVに追加されたガソリンターボ・エンジン搭載モデルに試乗した。はたして、ハイパワーは走りにどんな変化と楽しさをもたらしてくれるのか? 文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.)
3列SUVに高性能ガソリンターボ・エンジンは必要か?──マツダ CX8 25T試乗記
【25T Lパッケージ主要諸元】全長×全幅×全高:4900mm×1840mm×1730mm、ホイールベース:2930mm、車両重量:1880kg、乗車定員:6名、エンジン:2488cc直列4気筒DOHCターボ(230ps/4250rpm、420Nm/2000rpm)、トランスミッション:6AT、駆動方式:4WD、タイヤサイズ:225/55R19、価格:424万4400円。
ありそうでない上質な3列SUV

ありそうでなかった、3列シートのクロスオーバーSUVマツダ「CX-8」だ。2018年10月に追加された、2.5リッター直列4気筒ガソリンターボ・エンジン搭載モデル「25T」にようやく試乗した。はたして、パワフルで、気持ちよく走るのが印象的だ。

CX-8は、全長4900mmと大柄ボディながら、ハンドリングはけっこうシャープで、じつは走りが楽しい。そこで、よりスポーティなモデルを求める向きのために開発されたのが25Tだ。

Mazda CX-8 25T|マツダ CX-8 25T ボディは全長×全幅×全高:4900mm×1840mm×1730mm。CX-9は、すべて3列シート仕様だ。
Mazda CX-8 25T|マツダ CX-8 25T タイヤサイズは225/55R19。
Mazda CX-8 25T|マツダ CX-8 25T 2.5リッター直列4気筒ターボ・エンジン搭載モデルの駆動方式は、4WDのみの設定だ。

そもそも私は、CX-8のコンセプトが気に入っている。たとえば、2列目シートに、パーソナル感の高いキャプテンシートが備わっている点だ。しかも、シート表皮(レザー)の材質はしっとり、色づかいは落ち着いていて、クオリティも高い。こういったSUVは、国内外メーカー問わずほとんどないのが実情だ。

25Tは「低速から中速、さらには高速域まで意のままに加速し、その手応えを感じ、さらに走りたくなるような、力強く上質な走りを実現した」と、マツダの広報資料に記されているように、より走りが楽しめるパワフルなモデルだ。

Mazda CX-8 25T|マツダ CX-8 25T 25T Lパッケージシート表皮はナッパレザーだ。
Mazda CX-8 25T|マツダ CX-8 25T シート調整は電動式。調整スウィッチにはメッキ・パーツ。
Mazda CX-8 25T|マツダ CX-8 25T シートカラーはアイボリーも選べる。
Mazda CX-8 25T|マツダ CX-8 25T インテリア・パネルの一部には、ウッドパネル。
トルク感がじつに気持ちいい

搭載する「SKYACTIV-G 2.5T」エンジンは、最高出力169kW(230ps)/4250rpm、最大トルク420Nm/2000rpmを発揮する。

ノンターボの同排気量自然吸気エンジンは、最高出力140kW(190ps)/6000rpm、最大トルク252Nm/4000rpmを発揮する高回転型なので、数値からしても、ターボ・エンジンは日常的な使い勝手を重視しているのがわかる。

Mazda CX-8 25T|マツダ CX-8 25T 搭載するエンジンは2488cc直列4気筒DOHCターボ(230ps/4250rpm、420Nm/2000rpm)。

5時の位置が0rpmになる回転計のデザインは、ドライバーからよく見える10時、11時あたりでは5000rpm〜6000rpmになる。まるで高回転を常用するスポーツカーのようだ。実際は6時(1500rpm)のあたりから力が出てくる。

Mazda CX-8 25T|マツダ CX-8 25T メーターパネルのうち、センターにある速度計はデジタルタイプだ。

私が好きなのは、シフトレバー近くに設けられたドライブモードセレクターで選ぶ「スポーツ」モードでの走りだ。シフトスケジュールが変わり、ターボチャージャーがしっかり効き始める2500rpmから上を使うようになるので、トルク感がじつに気持ちいい。

Mazda CX-8 25T|マツダ CX-8 25T トランスミッションは6ATのみ。

スポーツモードにすると、アクセルペダルを軽く踏み込んだだけで、力強い加速を味わえる。ダイレクトな感覚はかなり気分がよい。ちょっと硬めのサスペンションとのマッチングもよく、高速のレーンチェンジだろうとワインディングロードだろうと、全長4900mmのクロスオーバーとは思えない軽快な身のこなしを楽しませてくれるのだ。25Tならではの魅力である。

Mazda CX-8 25T|マツダ CX-8 25T WLTCモードの燃費は11.6km/L。なお、使用燃料はレギュラー・ガソリンだ。
数少ない不満点

あえてネガをあげるなら、よりストローク感があると好ましいサスペンション(17インチタイヤで試してみたい)と、ラゲッジルーム・フロアの高さ、回転半径の大きさといったところだ。

ラゲッジルームのフロアが高いのは、フルタイム4WDシステムが搭載されているからだろう(25Tに前輪駆動の設定はない)。もう少し低く出来たのでは? と、思わないでもない。なぜなら、フロアの下には、それなりに深い物入れがあるからだ。

Mazda CX-8 25T|マツダ CX-8 25T ラゲッジルームには、フル乗車でも9インチのゴルフバッグを2個積める。
Mazda CX-8 25T|マツダ CX-8 25T ラゲッジルームのフロア下には、307mmもの深さを持つサブトランクがある。
Mazda CX-8 25T|マツダ CX-8 25T テールゲートは電動開閉式。

回転半径については、慣れれば取りまわしも不便でなくなるだろう。試乗した「Lパッケージ」には360度カメラが搭載されていたので、ボディの大きさが気になる人は、重宝するはずだ。

Mazda CX-8 25T|マツダ CX-8 25T 360°カメラも搭載する。
悩ましい選択

乗用車的なドライビングポジションや、ゴテゴテ感を取り払ったクリーンなダッシュボード、しっとりした感触のレザーで巻いた細身のステアリングなどを見ていると、マツダの開発者が、「万人ウケするファミリーカーでなく、万人がいいと思えるスポーティなクルマを作ろうと努力したんだろうなぁ」と、思うのであった。

Mazda CX-8 25T|マツダ CX-8 25T 上質なレザーとウッドを使ったインテリア。
Mazda CX-8 25T|マツダ CX-8 25T エアコンは左右前後独立調整式。シートは、ヒーターおよびベンチレーション機構付き。

ちなみに、私がもうひとつ気に入っているのは、オーディオ・システムだ。中音域が気持よく、ギターやボーカルの音源に向いていると思う。

Aピラーに高音を担うツィーターが埋め込まれていて、“耳の高さから音を出す”という昨今のプレミアム・カーらしい音を楽しめる。

Mazda CX-8 25T|マツダ CX-8 25T 2列目シートがキャプテン・タイプの場合、中央には大型のセンターコンソールが備わる。
Mazda CX-8 25T|マツダ CX-8 25T 2列目シートはヒーター付き。また、大型のセンターコンソールにはカップホルダーおよび小物入れがある。
Mazda CX-8 25T|マツダ CX-8 25T リアシートにも、専用のエアコン操作スウィッチが備わる。
Mazda CX-8 25T|マツダ CX-8 25T 2列目シート用のサンシェード付き。
Mazda CX-8 25T|マツダ CX-8 25T 3列目シートは、専用のカップホルダーおよびアームレスト付き。

さらに、25Tが追加されたタイミングで、インフォテインメントシステム「マツダ コネクト」もアップデートされた。Apple CarPlayとAndroid Autoに対応したのだ。純正ナビゲーションシステムの性能が、優れているとは言い難かったので、多くのユーザーにとって朗報だろう。

Mazda CX-8 25T|マツダ CX-8 25T インフォテインメントシステム「マツダ コネクト」は、Apple CarPlayとAndroid Autoに対応した。

25Tの価格は、自然吸気エンジンを搭載する「25S Lパッケージ」が375万8400円であるのに対して、「25T Lパッケージ」は424万4400円になる。なお、駆動方式は4WDのみの設定だ。

ちなみに2.2リッター直列4気筒ディーゼルターボ・エンジン搭載の「XD Lパッケージ」は446万400円。駆動方式は4WDだ。

よく考えられた価格差だ。ターボにするかディーゼルにするか、そしてガソリンにするか……実際、購入するとなると大いに悩みそうだ。

Mazda CX-8 25T|マツダ CX-8 25T
Mazda CX-8 25T|マツダ CX-8 25T