Review: LAMBRETTA V200 SPECIAL

“青春の光”を取り戻せ! ── イタリアン・スクーター、ランブレッタV200に試乗する

イタリアの老舗スクーターブランド「ランブレッタ」が復活し、日本でも販売されるようになった。レトロなデザインを纏った最新スクーターの成り立ちとその走りをリポートする。 文/写真・青木ヨシユキ
“青春の光”を取り戻せ! ── イタリアン・スクーター、ランブレッタV200に試乗する
モッズに愛されたイタリアン・スクーター

「200ccに満たないスクーターで高速道路なんて……と不安に思うかもしれませんが、私は自動車専用道を使ってランブレッタで通勤しています。すごく安定しているので、ぜひ試してみてください」とスタッフの方。

「そんなものか……」と思って、さっそくランブレッタV200スペシャルでハイウェイに乗ってみると、なるほど、安定している。80km/h巡航で、エンジン回転数は6000rpm前後。機関類のノイズは控えめ。路面からの振動はハンドルを通してそれなりに伝わってくるが、ボディがしっかりしているので、高速道路でも安心して走っていられる。なろうことなら、もう少しサスペンションがストロークするしなやかな足まわりだと嬉しいのだが、それは街乗り主体のスクーターには酷な要求というものだろう。

80km/hから100km/hへの加速はさすがに緩慢だが、一旦速度が乗ってしまえば、100km/hでのクルージングも現実的だ。直進性に不足はない。試乗車はオプションのウインドシールド(風防)を装着しているので、ヘルメットのアゴ付近から胸周りにかけて、よく風が抑えられる。通勤・通学、たまにはツーリングでランブレッタを足にする人に、ウインドシールドは強い味方に違いない。

ベスパと並ぶイタリアンスクーターの雄、ランブレッタ。映画『ローマの休日』(1953年公開)で、一躍世界に名を知られたベスパと較べ、ランブレッタが登場する代表作(!?)は、60年代の英国を舞台にモッズとロッカーの闘争を描いた映画『さらば青春の光』(1979年公開)というのがいささかマニアックだが、そんなところもむしろコアなファンに支持されるポイントかもしれない。

クラシカルな印象を残しつつモダナイズされたランブレッタのデザインは街に映える
V200は168.9ccの排気量があり、ツーリングも楽にこなすことができそうだ
フロントマスクを印象づけるヘッドライトをはじめ灯火類はすべてLEDを採用する
アナログの速度計とデジタルメーターを組み合わせたインストゥルメントパネル
キー付きのグラヴボックスにはUSB給電ソケットを備える
イノチェンティ社のロゴが入ったクラシカルなエンブレム
紆余曲折の末、スタートした新生ランブレッタ

金属加工を手がけていたイノチェンティ家が、第2次世界大戦後、手軽な移動手段としてのスクーターに目を付け事業化したのが、1947年。ベスパに遅れること約1年で、ランブレッタは誕生したわけだ。50~60年代にかけて、モッズカルチャーの象徴のひとつとして人気を博し、販売台数や生産する国も増加した。しかし“戦後”が遠くなるにつれ、欧州のスクーター市場は縮小。さらに悪いことにイタリアでは労働争議が激しくなり、1971年に当地でのランブレッタ生産が終了してしまう。

以来、ライセンスビジネスの混迷もあって、ランブレッタを称する類似スクーターが世界各地で作られることになるのだが、2017年に、イノチェンティ社とKSRグループが手を組んで、新生ランブレッタを設立。新たなスタートを切った。

現在、ランブレッタの創業主であるイノチェンティは、スイスに拠点を移してブランド管理を行っている。KSRは、自転車、バイク、バギーなどをラインアップするオーストリアのメーカーで、ランブレッタモデルの開発を手がける。同車のスタイリングは、KTMやハスクバーナで斬新なバイクを送り出した、やはりオーストリアのKISKAデザインの手になる。

新世代ランブレッタの生産は、SYMブランドのスクーターで知られる台湾の三陽工業が担当し、実際の工場は、中国は厦門(アモイ)に置かれる。いかにも21世紀らしいグローバルな体制で、その中に「イタリア」の国名が出てこないのがなんだか妙だが、かえってイタリアらしさやその魅力を客観視できていいのかもしれない。

日本への輸入は、バイク用品などを手がけるサインハウスが行う。ラインナップされるのは、実質的には「V SPECIAL」と呼ばれるモデルのみ。ボディカラーによって、フロントフェンダーが固定式(Fix Fender)か、または前輪と一緒に首を振るタイプ(Flex Fender)に分かれる。排気量は、50cc、125cc、169ccの3種類で、それぞれV50、V125、V200と呼ばれる。トランスミッションはスクーターで一般的なCVTだ。

共通の車体に50、125、200の排気量をラインナップする。ボディカラーは8色展開
ホイールサイズは前後12インチ。フロントには220mmのシングルディスクブレーキを備える
ユニットスイング式のリアサスペンション。高速でも安定した乗り心地を提供する
フラットな形状のシートはタンデム(2人乗り)がしやすい。かけ心地も良好だ
シート下にはヘルメット1個が収まるスペースがあるが、国産スクーターに比べると容量は小さい
スチールモノコック製パネルとパイプフレームを組み合わせるのがランブレッタの伝統的なボディ構造だ
見た目はレトロ、装備は最新

ランブレッタの特徴はスティールモノコックという贅沢なボディ構造を採ること。これがボディ剛性の高さにつながっていて、廉価版のスクーターと一線を画する、高級感のある乗り心地を提供する。シンプルなラインの中にランブレッタらしさを上手に盛り込んだボディは、たとえばホンダPCX150と類似の大きさ。車重は135kgだ。

装備面は、LEDのランプ類、ABS付きのディスクブレーキ、グローブボックス内にはUSB充電器と、現代にキャッチアップしている。メーターは、アナログの速度計と液晶デジタルを組み合わせたもの。もちろんシートクッションの下にはラゲッジスペースが備わる。シート高は770mmだ。

169cc空冷単気筒のスペックは、最高出力12ps/7500rpm、最大トルク12.5Nm/5500rpm。走り出しはおっとりしているが、ひとたび速度が乗れば、スロットルレスポンスよく、元気に走る。60km/h走行時で5500rpm前後だから、余裕の走りだ。ブレーキの利きにも不満はない。

価格は、V50が38万円、V125が40万円、V200が45万円。日本での販売が始まって1年弱。いまのところ、125と200で人気を二分しているという。用途や保険との兼ね合いもあると思うが、せっかくランブレッタを買うなら、V200をお薦めしたい。動力性能の高さもさることながら、やはり必要とあらば高速道路を走れるのが大きい。スクーター1台で、グッと世界が広がる。前後にアディショナルのキャリアを付ければ、ちょっとした泊まりの2輪旅行にも対応できるはずだ。

椅子にかけるように、背筋を延ばし、脚を揃えて乗るイタリアン・スタイルのライディングポジション
試乗車はオプションのウインドスクリーンとフロントキャリアを備えていた
ハンドルのスイッチ類は必要最低限のシンプルなものだが、不足はない
ガソリンの給油口には「Lambretta」ロゴが入った金属製キャップ
ランブレッタVシリーズの価格は「V50Specal」¥380,000、「V125Specal」¥400,000、 「V200Specal」¥450,000