SOLITARY RESTAURANT

⑥池尻大橋「鳥とみ」──ワンオペ店主のキャラクターが色濃く出る、孤独(な店主)のグルメ

店主がひとりで切り盛りをする小規模な店、「ワンオペ(ワンマンオペレーション)」のレストランが、最近おもしろい。手厚いサービスはできない分おのずとカジュアルになり、訪れる客も気張らなくていい。あっという間に店と親密になれる感じがクセになる、そんな個性派の飲食店を紹介する。第6回は、池尻大橋の「鳥とみ」。 文・小石原はるか 写真・岡本 寿
⑥池尻大橋「鳥とみ」──ワンオペ店主のキャラクターが色濃く出る、孤独(な店主)のグルメ
仕事ぶりはストイックだが、忙しい時でも客への対応は極めてやわらか。

鳥とみ
池尻大橋
焼き鳥業界には、修業の階梯が厳しいことを表現する〝串打ち三年・焼き一生〟というフレーズがある。が、2018年11月に三宿にオープンした「鳥とみ」の店主・土屋宝さんは、それほど難しいとされる焼き鳥だけでは飽き足らず、水炊きも提供する盛りだくさんのコースを、現在のところひとりで手がけている。

今や泣く子も黙る目黒の人気店「鳥しき」で4年にわたる修業経験を持つが、実はそれ以前には水炊きが評判の鳥料理店に10年勤めていた。だから、水炊きへの思い入れも格別。むしろ「水炊きの店を出そうと思っていたが、焼き鳥を望む声が多かった」から、両方の経験を活かして二本立てスタイルで営業することに。

水炊きと焼き鳥を提供するにあたり選んだのは福島の「伊達鶏」。身質・脂の質ともに、焼いてよし炊いてよしのバランサーだ。6000円のおまかせコースは、茶碗蒸しやよだれ鶏などの一品料理と焼き野菜の後に、自慢の焼き鳥4本(部位は日によって異なる)と水炊き、締めに濃厚スープで作る雑炊という構成。備長炭の香りをまとわせた串を堪能してから、鶏の旨味をじっくり引き出したスープで、正肉とつくねを煮て味わう寸法だ。

延べ15時間を要するというスープ作りも、大事な串打ちも、ひとりでフル稼働。念願の自分の城を構えて〝焼き〟も〝炊き〟も一生! の覚悟で、店を営んでいる。

肉とつくねのみでザクはなし、という潔い水炊き。スープへの自信の表れでもある。
鳥料理店での経験が光るバリエーション豊富な一品料理も魅力だ。
骨付きで皮のある手羽は表面をパリッと。ハツは過不足ない火入れで。部位の特性に合わせて、細やかに焼く。

鳥とみ
東京都世田谷区池尻
1-11-8 ワコーハイム1F
TEL 03-6805-5283
営18:00〜22:00最終入店
㊡日曜。月曜不定休
カウンター10席
※要予約