Review: NISSAN Cars

GT-R、フェアレディZ、スカイライン…往年の日産名車は今?──最新モデルに一気乗り!

日産のオールラインナップ試乗会がおこなわれた。ブランニュー・モデルがここ数年ほとんどない最新日産車の魅力とは? 文・サトータケシ 写真・阿部昌也
GTR、フェアレディZ、スカイライン…往年の日産名車は今?──最新モデルに一気乗り!
現行の6代目フェアレディZは2008年に登場した。
現行GT-Rは歴史に名を刻めるか?

東京都港区にある東京プリンスホテルで行われた日産車のオールラインナップ試乗会。オールラインナップといってもひとりで全部に乗ったら何日かかるかわからないので、パパッと4台をリストアップした。

日産でまず乗りたいモデルといえばもちろん「GT-R」だ。「アルティメイトシャイニーオレンジ」というカクテルの名前みたいなGT-R Premium editionのキーを受け取り、タンの内装のコクピットに収まる。2007年のデビューだから干支が一巡したわけだけれど、内外装のデザインに古さは感じない。

GT-Rは2007年に登場。生産は栃木工場でおこなわれている。
GT-Rは、カルロス・ゴーン前CEOの肝いりで開発された。
フロントグリルには日産ではなくGT-Rのロゴがあしらわれる。
スッカフプレートやフロアマットなどもGT-Rのロゴ付き。

そういえば大阪なおみ選手に贈られたGT-Rのボディカラーは「アルティメイトメタルシルバー」だったなんてことを思い出しながら走らせる。

ハンドルから伝わる巌のような剛性感、硬質なエンジンフィールと乾いた排気音、そしてハードな乗り心地。市街地を流すような乗り方でも、GT-Rはタダ者ではない雰囲気を伝えてくる。

ランボルギーニ「ウルス」にしろポルシェ「718ボクスターGTS」にしろ、最新のハイパフォーマンスモデルは市街地ではプレミアムセダンのように走る。

最高出力は570ps/6800rpmに達する。なお、日産のモータースポーツ部門である「NISMO」がチューニングを施したグレードも選べる。
20インチタイヤはダンロップ製だ。
ショックアブソーバー特性などはインパネ下部のスイッチで調整出来る。
搭載するエンジンは3.8リッターV型6気筒ツインターボ。
トランスミッションはデュアル・クラッチタイプの6速ATのみ。MTの設定はない。

けれどもGT-Rは都心部でもヤル気満々の武闘派だ。街中でシャドーボクシングをしながらスパーリングの相手を探している、ちょっとあぶない人みたいだ。

アクセルペダルを踏み込むと、3.8リッターV型6気筒ツインターボ・エンジンの570psが炸裂! 轟音とともにドカンと前に出る。こんなクレイジーな乗り物を颯爽と乗りこなす大阪なおみ選手は、めっちゃカッコいい。

余談だけれど、過去のスカイラインGT-Rの相場が高騰している。たとえば1973年から製造が始まったC110型のスカイラインGT-R(通称ケンメリ)は、最低でも5000万円から6000万円。バブル期のR32型スカイラインGT-Rは、程度によるバラつきが大きいものの、ビカもんは700万円から800万円だ。

このR35型GT-Rは生産台数が多いからさすがに相場が上がることはなさそうだけれど、歴史に名を刻むモデルであることは間違いない。

レザーをたっぷり使ったインテリア。カー・ナビゲーションなどといった快適装備は標準だ。
ヘッドレスト一体型のシート。
BOSE社製のプレミアム・サウンドシステムも備わる。
シートカラーとおなじカラーのレザーを使ったステアリング。インフォテインメント用のスイッチも備わる。
10年選手でも魅力十分なフェアレディZ

次に選んだのは「フェアレディZ」のVersion S。現行のZ34型は2008年のデビューだから、こちらも10年選手。けれども、このスタイリングはいまだに魅力的だ。ルーフラインの美しさ、いかにも速く走りそうなロー&ワイドなフォルムなど、FRスポーツカーの傑作だ。

そういえば、フェアレディZのデザインはどの時代のモデルでも素敵で、それはヒストリックカー相場でもわかる。たとえば1960年代後半から1970年代前半まで生産されたHS30型の240Zは軽く1000万円オーバー。ハコスカのGT-Rと同じDOHC4バルブエンジンを積んだPS30型のZ432Rにいたっては、5000万円〜6000万円が相場となる。

現行フェアレディZは2シーター仕様のみ。
大型のハッチゲートを備えたリアスタイル。
ヘッドランプはバイキセノン・タイプ。
リアコンビネーションランプなどはLEDだ。
ボディサイドにはフェアレディZをしめすエンブレム付き。

閑話休題。GT-Rの場合は怪物の凄みがあって古いとか新しいとか関係なくなってしまったけれど、現行のフェアレディZ のVersion Sをドライブすると、ちょっと古かった。

どこが古いかというと、3.7リッターV型6気筒エンジンのラフな回転フィールや、路面からのドンという突き上げが、どんどんソフィスティケイトされている最新のスポーツカーに比べて見劣りがする。

ただし古さを感じるのは快適性に関する部分だけで、低いノーズが路面を舐めるようにスムーズに曲がるコーナリングフォームや、その時のタイヤからルーフまでがひとつの塊になったかのような剛性感は、優れたスポーツカーならではのものだった。

スタイリングといい、やっぱりスポーツカーはいいと強く思うのだった。

スウィッチ類の多いインテリアは、フェアレディZが10年選手であることしめす。
メーターはアナログ。中央が回転系だ。
上級グレードのシート表皮は本革×スエード調ファブリックのコンビタイプ。
ラゲッジルームは、深さこそないものの、奥行きはそれなりにある。
搭載するエンジンは、自然吸気の3.7リッターV型6気筒。最高出力は336ps/7000rpmを誇る。
インパネ上部には油温などをしめす、3連メーターが備わる。
ドイツ勢とも十分たたかえる現行スカイライン

続いて乗った「スカイライン350GT HYBRID Type SP」には、ちょっとびっくりした。快適でスムーズ、しかもムチを入れればスポーティ。このクラスであればBMW「3シリーズ」やメルセデス・ベンツの「Cクラス」にばかり目がいってしまうけれど、スカイラインという選択肢もあるのだ。

と、思いながら値段を見てもう一度びっくり。車両本体価格が555万9840円で、試乗車には50万円近いオプションが載っかっていたから乗り出しで軽く600万円オーバー。値段でもドイツ勢といい勝負なのだ。

現行スカイラインはガソリンターボ・エンジンおよびハイブリッドが選べる。
日本仕様のボディ形状はセダンのみ。
現行スカイラインのエンブレムは、日産ではなくインフィニティ・ブランドのもの。
最上級グレードのタイヤは245/40R19だ。
すべてのグレード名に「GT」が入る。

でも繰り返しになるけれど、スカイラインの出来はいい。値段の割には良く出来ているのではなくて、値段相応のプレミアムサルーンだ。

と、ここまで試乗して、「日産車は栃木モノに限る」と思った。

ハイブリッド仕様は3.5リッターV型6気筒エンジン+モーター。
ドライブモードやインフォテインメント用スウィッチの一部はセンターコンソールにある。
メーターパネルはアナログタイプ。中央に配されるインフォメーションディスプレイはフルカラーだ。

日産の栃木工場というのは世界のマザー工場という位置付けで、主にスカイラインやフェアレディZ、それにインフィニティブランドで販売されるFR車を生産している。この日試乗した、栃木工場から送り出されたモデルはどれもクルマ好きの琴線に触れる出来映えだった。

インパネは、フルカラーの液晶ディスプレイを2つ使う。
上級グレードのシート表皮はレザー。調整は電動式だ。
リアシートはセンターアームレスト付き。また、専用エアコン吹き出し口も備わる。
希望は栃木工場発のEV&FRモデル!

で、最後に試乗したのが「e-NV200」。つまりEVのワンボックスだ。

試乗しながら思うのは、EVは楽しいということ。アクセルペダルを踏んだ瞬間にピピッと電流が流れて、モーターは最大の力を発生する。

GT-R、フェアレディZ、スカイライン…往年の日産名車は今?──最新モデルに一気乗り!
ギャラリー:GT-R、フェアレディZ、スカイライン…往年の日産名車は今?──最新モデルに一気乗り!
Gallery54 Photos
View Gallery

しかも振動はなくてほぼ無音。レスポンスがいいから、ワンボックスでさえ運転が面白い。

というわけで、4台の日産車の試乗を終えての結論は、ぜひ栃木工場でEVのFRモデルを生産してほしいということだ。もちろんヨンクでもいい。プレミアムでスポーティな、世界に類を見ないモデルに仕上がるのではないか。

インテリアは、現行リーフの部品などを流用する。
エンジンスタート/ストップのスウィッチはインパネ下部にある。
ステアリングはオーディオ・コントローラー付き。
横滑り防止装置は標準。
上級グレードのフロント・シートはヒーター付き。また、ステアリングもヒーター付きだ。
乗用登録モデルは7人乗りも選べる。日本メーカー唯一の、7人乗り市販乗用EVだ。
助手席シートバックレストは可倒式。倒すとテーブルとしても使える。
2列目シートはベンチタイプ。
3列目は独立タイプだ。