Fire Works

走行距離・1年7万キロ。花火を求めて全国を回るハナビスト物語

花火写真家であり、ハナビストを名乗る冴木一馬による花火をめぐる旅のおはなし。第1回は愛車・花火号の巻。 文と写真・冴木一馬
走行距離・1年7万キロ。花火を求めて全国を回るハナビスト物語
サマータイヤ専用の花火号
花火

私はハナビストである。皆さんは初めて耳にする言葉だと思うが、何をしてるのかと申せば世界中の花火を記録しながら火薬を含めた花火の歴史や文化を研究しているのである。これを総称してハナビストと名乗っている。まぁ私が勝手に作った造語なので世間ではほとんど知られていないのが現状ではあるが、これからGQ JAPANのWEBで何やら連載できるというので1年もしたら世界中に知れ渡ることだろう。

何を書こうかといろいろと考えた結果、やはり花火のことはもちろん全国を取材で走り回っているときにお世話になっている花火号のことにしようと決めた。

花火号とは私が取材で使用している車のことで、年によって走行距離が3.5万から7万km走るのである。何故こんなに差があるかと言えば、海外取材が多くなると日本にいる時間が少ないから、と至極簡単な理由である。

花火号は時として変わる。別に変身するわけではないが夏の間、スタッドレスを要する冬の間、そしてメンテナンス期間や修理など複雑なのだ。だからハナビストは大型車以外はどんな車でも乗りこなしてしまう。

お気に入りのCDを聴きながら鼻歌を唄い高速道路をクルージングする。実は数年前までは何とカセットテープを使用していた。それも中学や高校時代に録音したものもあった。未だにカセットの音は懐かしい。勿論レコードから録音してるからノイズがたまらんのだ。あぁ、青春時代にタイムスリップ。

自分の好きな曲でCDを制作。
免許取得

さてハナビストが免許を取得したのは自動二輪で16歳の時だった。山口百恵さんの大ファンで白のSHOEIのヘルメットに真似たサインを書いていた。もう何度も練習して完璧なサインなのだ。ヤマハのロードバイクRDに乗り始めて1週間、国道7号線の水沢付近でスピード違反で捕獲された。

初めての出来事に心臓はばくばく。止まれの真っ赤な旗を持ったおまわりさんに誘導され側道へ。そこには灰色の制服に身を包んだおじさんポリスが数人いたと思う。私はヘルメットを小脇にかかえ椅子に座らされた。みんなジロジロ私のことを舐めるように見る。「君は山口百恵のファンかね !」と、質問されたことに私は嬉しくなって「ハイ」と答えた。そこから一カ月の免許停止。RDは大きく庇の出た屋根の下で黙々と休んだ。それにしてもサインを見て山口百恵のものだと気づいた制服おじさんは大したものだ。

長距離・長時間移動にはドリンクホルダーは必須である。

PROFILE
冴木一馬
1957年、山形県鶴岡市うまれ。1987年頃より花火の撮影をはじめ、ハナビストを名乗り活動する。http://www.saekikazuma.com/