SOLITARY RESTAURANT

⑤湯島「鮨 真菜」──ワンオペ店主のキャラクターが色濃く出る、孤独(な店主)のグルメ

店主がひとりで切り盛りをする小規模な店、「ワンオペ(ワンマンオペレーション)」のレストランが、最近おもしろい。手厚いサービスはできない分おのずとカジュアルになり、訪れる客も気張らなくていい。あっという間に店と親密になれる感じがクセになる、そんな個性派の飲食店を紹介する第5回は湯島の「鮨 真菜」。 文・田代いたる 写真・鈴木拓也
孤独(な店主)のグルメ──ワンオペ店主のキャラクターが色濃く出る
金井さんは江戸前寿司を踏襲しつつも、酒肴と握りに独自のセンスを加味。

鮨 真菜
湯島
路面店で、天神下の交差点からすぐ、という好立地ながら、店主の金井淳さんは言う。

「結構、皆さん、迷われるんですよ。店の前を何度も通り過ぎちゃうようで(笑)」

大通りに面するビルの1階に小さな黒い正方形の看板が出ている。これが「鮨 真菜」の場所を示す唯一の手掛かり。木戸を開けるとカウンターのみ、最大で6席の小体な空間が現れる。すぐそこに立つ、店主が飄々と迎える空気感は、フラッと立ち寄りたくなる街場の寿司屋。しかし、その正体はおまかせ一本で勝負する今どきのスタイルで、このギャップがなんとも堪らないのだ。広くはないが、天井は高く、狭苦しさは微塵も感じない。

「漠然とですが、ずっと寿司職人になりたかった」と言う店主が老舗の寿司店などで修業を重ね、独立を果たしたのは、今からちょうど6年前。当初からひとりで営むつもりだったが、実際にやってみると「意外と大変ですよ(笑)」。けれど、ひとりで仕込みから接客、予約の受付まで、すべてをこなしているからこそ、「全部、自分が思った通りにできます」とまた笑顔。自由闊達に、己の酒肴と握りを提供している。これがまた抜群。ほかでは決して味わえない旨さに感激し、良い意味で弛緩した時間を過ごした後は、自然と「また来るよ」、そんな言葉が口を衝く。

那智勝浦産のマグロの赤身をヅケに。料理はすべておまかせで¥18,000〜より。酒肴で8〜10品ほど、握りで10〜12貫と玉という流れ。
白エビの昆布締め。
塩締めの鯵。のせた薬味はアサツキのすり下ろし。
初鰹のタタキ。藁で炙った身とハラス。

鮨 真菜
東京都文京区湯島
3-46-6 TS天神下ビル1F
TEL 03-6803-0190
営17:30〜22:00
不定休 カウンター6席
カウンター12席
※カード不可