2019年7月11日、全日本空輸(以下ANA)は、ボーイング「777-300ER」型機の新しい機内仕様をお披露目した。
注目は、約10年ぶりに新シートを導入したファーストクラスおよびビジネスクラスだ。
新しいファーストクラス・シート(全8席)は「THE Suite」と呼ぶ。広報資料には「5つ星ホテルのようなくつろぎ空間をご提供します」とある。実際座ると、広くて心地よい。
新しいファーストクラス・シートは、“ANA最大級の広さを実現した”とされる。ドア付きの個室型タイプだ。シートは、これまでとおなじくフルフラットになる。調整は電動式だ。可動式パーティション(電動式)も備わる。
東京(羽田)〜ハワイ線に就航したエアバス「A380」型機のファーストクラス・シートと基本はおなじだ。ただし、シート表皮がレザーからファブリックになるほか、スペースも若干拡大されるなど細かい部分は異なる。
実際に座ると、たしかにこれまでのファーストクラス・シートより広い。くわえて、目前のモニターサイズの大きさに圧倒される。なんと、現行モニターサイズ(23インチ)の2倍近い、43インチに拡大された。また、機内の個人用モニターとして世界で初めて4KおよびフルHD画質に対応したとのこと。
ファーストクラスとともに、「THE Room」と呼ぶ、ビジネスクラスの新シート(64席)も魅力的だ。
大きな特徴は、ANA初のドア付き個室タイプにした点だ。また、進行方向と逆向きにもシートを配列した結果、世界最大級の居住空間を実現したという。
電動調整式のシートは、寝心地にこだわったクッション(ふとんの「西川」と共同開発)を使ったという。また、シート最大幅は現行シートの約2倍に拡大された。広報資料には「世界最大級のシート幅」と、うたう。
また、ファーストクラスとおなじく個人用モニター(24インチ)は、4KおよびフルHD画質に対応した。
なお、ファーストおよびビジネスクラスのシートは、ともに機内エンターテインメントもアップデートされた。携帯端末のアプリケーションとリンクする「MY SKY CHANNEL」を備えたほか、機外カメラで撮影した映像をパーソナルモニターで楽しめるようになった。
新シート導入とともに新しくなったインテリア・デザインは、建築家・隈研吾氏が総合監修を務めた。先進的で、同時に日本らしさを感じられる機内空間を実現したという。
たとえば、ファースト&ビジネスクラス・シートのドアは、引き戸形式の障子などをイメージしてデザインしたそうだ。また、バー・カウンターに設置された大型パネルを照らすライト・カバーは、和紙をモチーフにしている。「日本らしさを感じていただくとともに、やわらかい雰囲気を演出します」と、広報資料に記されていた。
なお、照明もこだわったという。パナソニックも監修にくわわり、位置や色をこれまで以上に吟味したほか、睡眠時や起床時に適した明かりが点灯する「ウェイクアップモード」も内蔵し、快適な眠りや目覚めをサポートするという。
さらに、インテリア・デザインの変更にあわせ、機内食で使う洋食器のデザインも変更された。
お披露目にあわせ、東京都大田区にあるANAの機体工場で、プレス向け発表会および実機の内覧会がおこなわれた。
発表会に登壇した隈研吾氏は、「日本の伝統的空間を、近代的な旅客機の中でどう作り上げていくか? ANAとともに考えた」と、述べた。
また、隈氏は“光”にも着目したという。「これまでとは異なる“光”の演出によって、(機内は)よりあたたかい雰囲気になった」と、続けて述べた。
さらに、「優しく、そしてぬくもりある新しい機内を、すこしでも早く世界中の人に体験してほしいと願っている」と、隈氏は話す。
隈氏とともに登壇したANAの平子裕志代表取締役社長は、新シートについて「プライバシーを今まで以上に確保したのが大きな特徴です。機上の過ごし方が大きく変わると思う」と、述べた。
新しい機内仕様の777-300ER型機は、2019年8月12日から、東京(羽田)〜ロンドン線(NH211便/NH212便)に就航する。そのほかの路線については、「ニューヨーク線などへの投入を考えています」と、平子社長は述べた。なお、現在保有する777-300ER型機も順次、改修していくそうだ。