NYで生まれた彼は、学生時代に日本に滞在したことがきっかけとなって「この国に恋した」という。そんな彼の手首に着けられているのは、グランドセイコー。10代からの時計好きで、かつては「時計はスイスメイド」と決めていたという男に、このMADE IN JAPANの時計を使う理由を尋ねた。
▲1971年、NY生まれのセオドール・ミラーさん。
14歳のとき、スイスに家族旅行をした際、父に時計を買ってもらって以来の時計好きだ。
「今思えば、それほど高級なものではなかったんですが、当時の僕にしてみれば初めての本格的な腕時計でした。時計ってきれいだなと感動したのを憶えています。それ以来、時計はすべてスイスメイドと決めていました。飛行機が好きでパイロットウォッチも何本か持っていますが、もちろんすべてスイス製です」
そう語るのは、NY生まれで現在、日本でイベントや映像を中心としたクリエイティブエージェンシーを経営するセオドール・ミラーさん。「時計はスイス製がベスト」という言葉とは裏腹に、彼の左手首に着けられているのは、グランドセイコーのスポーツコレクション「SBGC223」。長年生活していても、まだまだ日本には発見があると語るミラーさんが最近気に入っている、ブライトチタンとセラミックスの組み合わせが斬新なクロノグラフGMTウォッチだ。
▲大ぶりのケースだが、「着けてみるとすごくバランスがいい」。これまでレザーストラップの時計ばかり着けていたというミラーさんだが、重さを感じることはないという。
「グランドセイコーというブランドを知ったのは、実はこの数年のことなんです。MADE IN JAPANの時計ブランドとして、世界の高級時計のマーケットにチャレンジしていることを知って興味を持ちました。調べてみたら、ブランドとしての歴史も長いし、実際に着けてみると、高い技術力を持っていることが伝わってきます。
この時計も一見大きく見えますが、すごく軽くて、ケースとブレスレットのバランスがいい。着けていて気持ちがいいし、レザーストラップの時計と比べても、重さが気になることはありません。文字盤はスポーティだけど、ケースの仕上げやガラスの曲面などを見ると、どこか有機的で自然な雰囲気。高級な質感で、毎日使っても全然キズがつかないのもすばらしいと思います」
機械式とクオーツが融合した独自の機構・スプリングドライブもミラーさんのお気に入りポイントのひとつだという。
「朝、時間を確認して、1日経ってどのぐらいずれているかをチェックするのが趣味になりました。ずれがあってもせいぜい1秒程度。僕の頭の中にある自動巻き時計の概念がひっくり返りました。針の動きはなめらかで、耳をあてても音がほとんどしない。正確で美しく、そして独創的。スプリングドライブには、こだわりを極める日本らしいモノづくりの精神を感じます」
▲ミラーさんが経営する2つの会社には、計40人、10カ国以上
日本文化に魅せられ、もう20年以上、日本で暮らすミラーさんは、日本らしさの本質を“ケア”だと語る。
「日本ではものごとの隅々にまでケアが行きとどいている。自分の事情や都合ではなく、相手のことを思いやり、ケアするのが日本文化の本質。モノづくりにおいて、とことんこだわり極めるのも“ケア”のあらわれです。そこまでやると思わせるほどに使い手のことを考え、細部を作り込む。グランドセイコーの繊細な作りを見ると、日本らしい時計ブランドだなと思います」
視認性を追求し、針やインデックスを丁寧に作り込む。手首に馴染むよう、繊細にカーブしたケースを作る。セラミックスやチタンを極限まで磨き込み、奥深い輝きを与える。そういった細かなケアに対する美意識は、グランドセイコーならではだ。
「日本にはすばらしいクリエイティビティがあるのに、リスクを恐れてチャレンジしない人が多い。でもグランドセイコーは、スイスメイドが席巻する高級時計の世界に挑もうとしている。このブランドには伝統があるし、革新し続けてもいる。これからどんなふうに成長していくか、とても楽しみです」
そう言って、手元のグランドセイコーを愛おしそうに見るミラーさん。彼のように、世界がグランドセイコーを“発見”する日は、もう目の前まで来ているのかもしれない。
セオドール・ミラー
ドキュメンタリー映画『THE CRUISE』エグゼクティブプロデューサーとしてエミー賞を獲得したこともあるミラーさん。兄は、『マネーボール』などの作品で知られるベネット・ミラー監督。
ジャケット¥340,000、シャツ¥43,000、タイ¥31,000、チーフ¥15,000、パンツ¥62,000、靴¥89,000〈すべてdunhill/ダンヒルTel.03-4335-1755〉