Review: PEUGEOT 308 Allure Blue HDi

シンプルな朝定食のような1台──プジョー308アリュールBlue HDi

プジョーのコンパクトカー「308」のディーゼル・モデルに今尾直樹が試乗した。乗れば乗るほどその魅力にハマるワケとは? 文・今尾直樹 写真・望月浩彦
シンプルな朝定食のような1台──プジョー308アリュールBlue HDi
【主要諸元】全長×全幅×全高:4275mm×1805mm×1470mm、ホイールベース:2620mm、車両重量:1330kg、乗車定員:5名、エンジン:1498c直列4気筒DOHCターボディーゼル(130ps/3750rpm、300Nm/1750rpm)、トランスミッション:8AT、駆動方式:FF、タイヤサイズ:205/55R16、価格:304万9000円(OP含まず)。
大オススメのディーゼル・エンジン

ディーゼルは死なず。世界は電動化に一直線かと思いきや、歴史は一筋縄にはいかない。むしろ、ディーゼルの魅力を増し、そのポテンシャルは大きくなっている。新開発の1.5リッター直列4気筒ディーゼル・ターボ・エンジンを搭載したプジョー「308」はそのよき見本だ。

2018年12月に国内で発表されたこの1.5ディーゼルはアイシンAWの8速オートマチックと組み合わされて、ものすごくイイ。こんなにイイのだったら、だれだって好きなっちゃうだろう。

PEUGEOT 308 Blue HDi|プジョー308 Blue HDi 搭載されるエンジンは1498c直列4気筒DOHCターボディーゼル(130ps/3750rpm、300Nm/1750rpm)。
PEUGEOT 308 Blue HDi|プジョー308 Blue HDi 搭載されるトランスミッションは8AT。シフトレバーは細身だ。

現行プジョー308は2013年秋の発表で、日本に上陸した当時、筆者は1.2リッター直列3気筒ガソリン・ターボ・エンジン搭載モデルを試乗しているはずだけれど、う〜む、よく覚えていない。筆者が忘れっぽい、ということはあるにしても、印象の薄いクルマだった。

それが、新しいディーゼル・エンジンの搭載でコロッと変わった。フォルクスワーゲン「ゴルフ」に対抗する実用車の鑑として、プジョー308は大オススメである。かれこれ6年目を迎えているわけだけれど、市川団十郎の襲名を控えた海老蔵ぐらい円熟期を迎えている。

PEUGEOT 308 Blue HDi|プジョー308 Blue HDi ボディは全長×全幅×全高:4275mm×1805mm×1470mm。
PEUGEOT 308 Blue HDi|プジョー308 Blue HDi 定員は5人。
PEUGEOT 308 Blue HDi|プジョー308 Blue HDi フロントグリルは新デザインのチェッカータイプ。ヘッドランプはフルLEDだ。
PEUGEOT 308 Blue HDi|プジョー308 Blue HDi 特徴的な3連のリア・ランプ。
PEUGEOT 308 Blue HDi|プジョー308 Blue HDi アルミホイールは16インチ。スポーツグレードは18インチを装着する。
81%が新開発のエンジン

従来の1.6リッターに代わる新世代の1.5リッター・ディーゼルは、先代とおなじくフォードとの共同開発プロジェクトによるもので、今後のPSA(プジョーシトロエン・グループ)の主力エンジンである。

排気量を小さくしたことでエンジン自体をコンパクトにしている。先代エンジンの「DV6」に対し、新しい「DV5」は81%が新開発で、新設計のシリンダー・ヘッドは16バルブ化されている。

華々しいのはピストン形状が、2009年のル・マン24時間を制したプジョー「908HDi FAP」のそれをベースにしているという点だ。ボッシュのコモンレール式高圧噴射のインジェクターを備えていて、最高出力130ps/3750rpm、最大トルク300Nm/1750rpmを発揮する。

車重1330kgには十分なトルクである。それだけではない。DV5は1750rpmで300Nm、3500rpmで260Nm、4500rpmで190Nmを生み出す。ディーゼルとしては高回転域でのトルクの落ち込みが少ないとされる。じつのところ、ほかのディーゼル・エンジンのデータは持ち合わせいないけれど、体感的にプジョーが発表しているこの説明は納得がいく。上までまわして気持ちがイイ。

PEUGEOT 308 Blue HDi|プジョー308 Blue HDi 燃費はWLTCモードで15.6km/L。
PEUGEOT 308 Blue HDi|プジョー308 Blue HDi メーターパネルは、中央に車両情報などを表示する液晶モニターを配したデザインだ。
PEUGEOT 308 Blue HDi|プジョー308 Blue HDi サスペンションは、フロントがマクファーソンストラット式、リアがトーションビーム式だ。

ディーゼル・エンジンは高圧縮から生まれる低中速のトルクが持ち味で、ガソリン・エンジンのようにガンガンまわしても意味がない。早めにシフトアップするのが効率よくて、かつ知的で正しい。筆者のように、ガンガンまわすことが自動車の正義であり、快楽だと信じ込んでいるタイプにとっては、つまらない、あかんエンジンなのだ。

ところが、そういうタイプにとっても、DV5は頼もしいと感じる。「S」、「ノーマル」、「エコ」の3つのドライビングモードがついているけれど、オススメはノーマルである。ドライバーのフィーリングとしてはこれがピッタンコで、Sだと前に進み過ぎちゃうように感じる。単に慣れの問題、ということは言えるにしても、ノーマルで十分なのだから、それでいいではないか。

PEUGEOT 308 Blue HDi|プジョー308 Blue HDi ドライブ・モードの切り替えスイッチは、センターコンソールにある。
PEUGEOT 308 Blue HDi|プジョー308 Blue HDi レーン・キープ・アシストも標準。走行中に車載カメラが車線を検知し、ウインカー操作をせずに車線からはみ出しそうになると、自動的にステアリングに反力を生じさせ、もとの車線へと戻そうとする。
PEUGEOT 308 Blue HDi|プジョー308 Blue HDi フロントバンパーのレーダーが前方車両の速度と距離を検知し車間距離を一定に保つACC(アクティブ・クルーズ・コントロール)は標準。アクセル、ブレーキ、エンジンブレーキの自動制御によって設定された車間距離を保ち、前方車両が停止した場合には車間距離を保ちながら自動停車する。作動車速域は約30~180km/h。
PEUGEOT 308 Blue HDi|プジョー308 Blue HDi 排ガス浄化用のアドブルーの補給口は、燃料給油口 のとなりにある。
万人に勧められる実用車

乗り心地は、205/55R16サイズのグッドイヤーの当たりがちょっぴり硬いとはいえ、じつにふんわりしている。

17インチのGT Lineの経験から申しあげると、断然16インチのこちらの方がイイ。ハンドリングはちょっぴりアンダーステア感があるけれど、その分、高速スタビリティがど〜んとしている。実用車はこれでいい。

PEUGEOT 308 Blue HDi|プジョー308 Blue HDi

山道は今回試していないけれど、高速コーナリング中、ロールはほとんどしない。ふんわりした足まわりなのに、ちょっと不思議ではある。ともかく、安心感がきわめて高い。実用車はこれでいい。電動のパワーステアリングがやや重めで、これもまた安心感につながっている。

なお、一見新奇なデザインのi-コクピットの極小径ステアリングホイールとガングリップ型のシフトレバーはすぐに慣れる。人間工学的に正しいからだと思われる。

シンプルな朝定食のような1台──プジョー308アリュールBlue HDi
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もしもいま、ゴルフ・クラスの5ドア・ハッチバックをお探しの読者諸兄がいらっしゃったら、このクルマを試乗されることをオススメしたい。たとえて申しあげれば、これはフツーの朝定食である。白いごはんとみそ汁にシャケの塩焼き。これがうまい。そういう朝定食になかなか出合えないことは読者諸兄もご存じの通りである。

つまり、プジョー308のディーゼル・モデルは、万人にオススメ出来る実用車なのだ。

PEUGEOT 308 Blue HDi|プジョー308 Blue HDi ボディはハッチバックのほかに、全長が325mm伸びたステーションワゴンも選べる。
PEUGEOT 308 Blue HDi|プジョー308 Blue HDi
PEUGEOT 308 Blue HDi|プジョー308 Blue HDi