パリのグルメシーンに異変あり。肉の最前線から続々誕生するおしゃれなフードコート、伝統回帰するレストランまで、ヨーロッパのグルメトレンドを牽引するパリの注目店をピックアップする連載。2019年、パリの最新飲み食い事情を網羅する。
シュヴァル・ドール
フレンチをベースにアジア諸国の要素を取り入れ、独創的な料理を生み出すレストラン「デルス」。オーナーシェフの関根拓は今、パリで最も注目を集めるシェフのひとりだ。2015年には国際的な料理イベント「Omnivore」で最優秀賞を受賞。グルメガイド「Fooding」では、2016年のベストレストランに輝いた。昨年は、フランスを代表するメディア「ル・モンド」の「アジア料理に息を吹き込み新しいガストロノミーを生み出すシェフたち」という記事で取り上げられ、パリのフード業界を席巻している。
世界中の著名シェフとコラボレーションを続け、グローバルに活躍する関根氏は、 2019年4月、東部19区に「シュヴァル・ドール」をオープンした。兼ねてから「パリにアジアの食堂を作りたい」という彼の夢を叶えた、アジア料理と自然派ワインの店である。元々は中華料理店で「シュヴァル・ドール」という店名はそのまま残し、内装はモダンなフレンチタッチにリノベーション。天井が高く、陽がさんさんと差し込む。どこかアジアの食堂に迷い込んだかのような、懐かしい温かみのある空間だ。
メニューは9つのカテゴリーからなる構成で小鉢、冷菜、炒めもの、揚げもの、焼きもの、米類、麺類、蒸しもの、デザートに分かれている。それぞれ2から4種類の選択肢がある。例えば、炒めものは「コック貝&レモングラス&ジャスミン」、「オマールエビ1/2匹 スイート&サワーチリソース」、揚げものは「ナスの棒々ソース」、「リ・ド・ヴォー(仔牛の胸腺肉)&青梗菜」、備長炭を使った炭火焼は「イベリコ豚のチャーシュー」、「アニス風味の鳩丸ごと一羽」など。センスある組み合わせで、素材の味を十二分に引き出したアジア料理に仕上げている。そのほかに肉まん、パイタンラーメン、ルーローファー(煮込み豚肉がけご飯)、バナナの皮で包んだもち米など、人気のアジア飯がラインナップされている。正統派フレンチガストロノミーで培った高度な技術をもって、最新の調理テクニックを駆使したモダンな料理だ。
「僕たちは最高の食材を使って、既存のアジア料理に磨きをかけています」と関根氏。化学調味料は一切使わない。出汁は自家製、調味料もなるべくいちから手作りしている。例えば、「ラングスティーヌの辛味炒め」を炒めるオイルは、養鶏家から届けられる大量の鶏肉から抽出したもの。ラングスティーヌ(アカザエビ)は殻ごと鶏オイルで炒めて旨味を殻にまでぴっちり閉じ込める。そしてホワイトアスパラ、グリーンピース、野生のアスパラガスを加え、最後にラングスティーヌの頭からとった出汁で旨味を閉じ込める。
「キレイなものを重ねることで味を構築しています。既存の鶏がらスープや中華だしなどを使わないで、味を補っていくのが僕らの計算です。料理人としては、こんな味は食べたことがない、とお客様が感動してくださるのが夢でもある。その部分にも取り組んで行きたいですね」
界隈には緑豊かなビュットショーモン公園があり、ブーランジュリーやワインショップ、オーガニックのエピスリーが点在する、庶民的ながらも感度の高いエリアだ。パリ中心からは少し離れているが、ここにしかないフレンチ・アジアンを試す価値はありそうだ。
Cheval d'Or
シュヴァル・ドール
21 rue de la Villette, 75019 Paris
ディナー 水〜日19:30~23:00 ランチ土・日12:30~14:00
https://chevaldorparis.com/