Kawasaki(カワサキ バイク)

ニンジャZX14R HIGH GRADEの試乗インプレ【2019】

発売から12年経ったカワサキ(Kawasaki)のメガツアラーバイク「ZX14R」を、都内の通勤で試乗してインプレッションします。2019年モデルには上級モデルのHIGH GRADEも設定されました。その装備の詳細とは? 足つきや燃費などを検証してみました。

相京 雅行

執筆者:相京 雅行

バイクガイド

熟成されたメガツアラーZX14Rは街乗りでも使えるか?

ZX14R フロントビュー

カワサキ(Kawasaki)ZX14Rのフロントビュー

発売開始から一度も国内の正規ラインナップに並んだことがなかったものの、ツーリングに出かけると必ず見かけるバイク、カワサキ(Kawasaki)のZX14R。このバイクは2006年に海外向けにリリースされ、仕向け地によって「ZX14」、「ZZR1400」の2通りの名前で販売されています。
 
ZX14は、2012年にモデルチェンジを実施。1352ccから1441ccへ、エンジンの排気量を拡大。全回転域においてトルクが向上したのに合わせて、アルミのモノコックフレームも剛性が大幅に見直しに。スイングアームは10mmも延長されました。名前もRが一個ついて今のZX14Rになりました。
ZX14Rのサイドフィンは初代から踏襲された特徴的なデザインの一つ

ZX14Rのサイドフィンは、初代から踏襲された特徴的なデザインのひとつ

サイドの特徴的な4連フィンはさらに強調されています。4眼プロジェクターヘッドライトやフロントカウル中央に配置されたラムエアダクトは、一部デザインを変更しつつも再び採用され、さらに「ZX14Rらしさ」を感じるデザインとなりました。
 
今回は海外向け2019年モデルのZX14Rをお借りすることができたので、通勤で試乗してインプレッションしたいと思います。
 

ZX14R HIGH GRADEはオーリンズとブレンボが標準装備! 気になる価格は?

現在でもZX14Rは国内向けラインナップには入っていません。代わりにカワサキブランドの海外向けモデルを逆輸入し販売している株式会社ブライトが、国内でのZX14Rの販売をサポートしています。ブライトのホームページを見ると、2019年モデルの「ZX14R」と「ZX14R HIGH GRADE」の2車種が掲載されています。
ZX14R HIGH GRADEにはオーリンズとブレンボが採用されている

ZX14R HIGH GRADEにはオーリンズとブレンボが採用されている

今回お借りしたのはZX14R HIGH GRADE。ZX14RもZX14R HIGH GRADEも前後サスペンションはフルアジャスタブルタイプ。サスペンションの初期沈み込み量を調整するプリロード、スプリングが伸び縮みする際にかかる抵抗(減衰力)を調整するダンパー調整機構などが備わっています。
 
ZX14R HIGH GRADEの前後サスペンションには、二輪と四輪どちらのレースでも採用されることの多いサスペンションメーカー「オーリンズ社」と共同開発したモデルが採用。また二輪と四輪のハイパフォーマンス車両に採用されることが多いブレーキメーカー「ブレンボ社」の量産車に装着可能な最高グレードの製品も採用されています。
 
そんなスポーティーな走行性能に特化したZX14R HIGH GRADEは、乗り心地が硬めになったり、ブレーキの初期タッチが「ガツン」と効く感じになっているかもしれません。今回筆者は街乗りとしてZX14R HIGH GRADEに試乗します。果たしてZX14R HIGH GRADEは、街乗りとの相性が良いのでしょうか?

ところでZX14R HIGH GRADEのリアサスペンションには、工具を使わなくてもプリロードの調性ができる「リモートプリロードアジャスタ機能」が備わっています。奥に装着されているリアサスペンションのプリロード調整は慣れないと大変なので、この点は嬉しいポイントです。
 
ZX14R HIGH GRADEの価格は173万円(税抜き)となっています。ベースモデルZX14Rは156万円なので、その価格差は17万円。標準でもフルアジャスタブルタイプのサスペンションが備わっているので、無理にHIGH GRADEにする必要はないと思います。しかし後から前後サスペンションをオーリンズの製品に変更しようとすれば、フロントフォークだけでも30万円ぐらいはしますので、価格的にはベースモデルよりお得、と言っても過言ではないでしょう。
 

ZX14R HIGH GRADEの装備は?

ZX14Rサイドビュー

ZX14R HIGH GRADEサイドビュー

カワサキで新しくリリースされたバイクには、ライディングをアシストする電子制御がモリモリ装備されていますが、2006年に初期型がリリースされたZX14Rはモリモリとはいかず、最低限装備にとどまっています。
パワーモードの変更は左のハンドルスイッチで行う

パワーモードの変更は左のハンドルスイッチで行う

まずパワーモードは、「フルパワー」と「ローパワー」の2つのモードから選択可能。ローパワーモードはフルパワーモード時の75%の出力に抑えられています。滑りやすい路面でスリップするのを緩和するトラクションコントロールは、3段階とオフを選択可能です。
 
クラッチには、ギアダウン時に過度なエンジンブレーキによってリアタイヤをロックするのを緩和する「バックトルクリミッター」が装備。そんなバックトルクリミッターに、最近のカワサキ製バイクにはクラッチ操作を軽くする機能が追加された「アシスト&スリッパークラッチ」が装備されていることが多いですが、ZX14R HIGH GRADEにはこの装備が見送られています。大排気量ともなればクラッチも重くなりがち。この点は残念です。
収納式の荷掛けフックはツアラーであるZX14Rには便利

収納式の荷掛けフックはツアラーであるZX14R HIGH GRADEには便利

荷掛けフックには、使わない時に収納できるタイプを採用。タンデムグリップにも、左右2箇所荷掛けフックが設置されています。最近は純正で採用されることが少なくなったヘルメットロックも、ZX14R HIGH GRADEでは標準装備となっています。
 

ZX14R HIGH GRADEの足つき性や燃費は?

ZX14Rのシート

ZX14R HIGH GRADEのシート

スペック上は800mmと、決して高くはないZX14R HIGH GRADEのシート高。しかし想定されるメインの用途は長距離ツーリング、ということもあり、お尻が痛くなりにくい広めのシート幅。そのため股が開き気味になり、数値より足つき性は悪く感じます。ただ足をおろした際にステップなどが当たることがないので、身長165cmの筆者でもあまり不安は感じませんでした。
 
街中オンリーでの試乗では、燃費は13.8km/L。ZX14R HIGH GRADEのガソリンタンクは22Lと大容量なので、街中での連続航行距離は303.6kmとわりと長めです。高速域での走行性も確かめるため、高速道路でも走行してみましたが、その際の燃費は20.2km/L程度でした。高速道路を利用した長距離ツーリングでは、連続航行距離も伸びそうです。
 

ZX14R HIGH GRADEのハンドルポジションは意外とスパルタン

ZX14Rのハンドルはセパレートハンドルを採用

ZX14R HIGH GRADEのハンドルはセパレートハンドルを採用

ZX14R HIGH GRADEにはセパレートハンドルを採用していますが、フロントフォークを突き出して上側にクランプする装着方法になっています。そのためハンドルは決して低くはないのですが、実際に跨ってハンドルに手を伸ばしてみると、意外と前傾がきつく感じます。
 
その理由は、タンクが縦に長く、シートの位置が後ろの方にあるからです。同じくメガツアラージャンルであるスズキ(SUZUKI)のハヤブサも同じようなポジションになります。連続航行距離を伸ばすためには、タンク容量を大きくするのが必須。この前傾姿勢は仕方がないかもしれません。
 
それではいよいよ通勤でZX14R HIGH GRADEに試乗してみたいと思います。
 

さすが熟成された走り! ZX14R HIGH GRADEは街乗りも快適!

ZX14Rリアビュー

ZX14R HIGH GRADEのリアビュー

エンジンをかけてみると、迫力のあるサウンドが響きます。さすが1441ccの4気筒エンジン。最近のカワサキはエンジンやマフラー、吸気の音にこだわっていますが、ZX14R HIGH GRADEの大排気量4気筒エンジンは、迫力があるバイク好きにはたまらないサウンドを奏でます。
 
最高出力200PSのハイパワーエンジンを搭載したZX14R HIGH GRADE。おそるおそるアクセルをあけてみましたが、アクセルのレスポンスは鋭すぎず、発進で気を使わなくても良さそうでした。デフォルトの設定はフルパワーモードですが、街中でも使い勝手は悪くありません。そこでローパワーモードも試してみましたが、極端にセッティングが変わる感じはありませんでした。撮影日はあいにくの雨。フルパワーモードで1時間程度の街中を走行しましたが、トラクションコントロールにお世話になることもなく、安心して走行することができました。
 
加速が非常に滑らかなので、混雑した都心の運転でもアクセルレスポンスに気を使うことがなく、まったりと走るのも苦になりません。ハンドリングも車両の重いバイクのわりに素直。前傾姿勢をとって腕に余裕をもたせ、ニーグリップをしっかりとしていれば、極低速のコーナーやUターンも苦になりませんでした。
 
2、3日は初期セッティングのまま走行していましたが、その後は前後サスペンションのプリロードセッティングを初期の沈み込みが最も大きくなるようにし、圧側の減衰力も調整。簡単に言ってしまえば柔らかく感じるようにセッティングしました。すると波状路のコツコツとした段差を感じにくくなり、乗り心地が良くなりました。スポーティーなイメージの強いオーリンズのサスペンションですが、乗り心地を重視したセッティングにも変更可能です。ブレンボのブレーキもガクンと効くタイプではないので、街中でも意識せずに使えちゃいます。
 
車体を倒しこんでのコーナリングは、重量車でホイールベースも長いために決して軽くはありませんが、よいしょっとお尻を少しずらして体重移動すれば素直に寝るので、ワインディングも決して苦手なシチュエーションではなさそうです。
 
高速道路の走行は快適の一言。圧倒的な直進安定性が、ライダーに安心感を持たせます。ただウィンドスクリーンは思ったほど風よけ効果を感じることができませんでした。ここはハイスクリーンに交換しておきたいところです。
 
残念に感じたのは、これだけ長距離ツーリングを快適に走行できる性能を持っていながら、アクセルの操作無しに特定の速度で走行することができる「クルーズコントロール」が採用されていないこと。またETCも標準装備ではありません。ETCは後付けすることもできますが、クルーズコントロールが装備されていないのは残念です。
 

街中の走りが苦手でないことが意外!

ZX14R HIGH GRADEは重くて排気量が大きいバイクなので、今回の通勤試乗はしんどいだろうな……と思っていましたが、渋滞の多い日も快適に走ることができた点には驚きました。長距離を真っすぐ走る高速道路がZX14R HIGH GRADEの主戦場と言えますが、街中が不向きとは思いませんでした。
 
ZX14R HIGH GRADEなら、下道も高速道路も快適に走行することができちゃいます。最新のツアラーには快適装備やライダーの操作をアシストする電子制御が数多く入っています。一方の発売から12年のロングセラー・メガツアラーにはがっつり装備があるわけではありませんが、走りは熟成され、最新ツアラーに勝るとも劣らない魅力がありました。
 

ZX14R HIGH GRADEをちょっとカスタムするなら

  前傾姿勢をとっていても、ウィンドプロテクション効果はあまり高くないように感じました。長距離ツーリングするなら、体に当たる風をやわらげて疲労対策をしておきたいところ。MRAのスクリーンは種類がいろいろあるのでおすすめです。

  低速時など重量級のZX14R HIGH GRADEを支えるのはニーグリップ。バイクとのホールド性を高めるストンプグリップは、操作性を向上するためにもおすすめです。
 

ZX14R HIGH GRADEスペック

通称名:Ninja ZX-14R/HIGH GRADE
全長・全幅・全高:2170mm×780mm×1170mm
車両重量:269kg
カラー:メタリックスパークブラック×パールメテオグレー×エメラルドブレイズドグリーン
    :メタリックスパークブラック×キャンディカーディナルレッド
シート高:800mm
価格:HIGH GRADE 173万円 STD156万円
 

ZX14R HIGH GRADE関連リンク



 
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